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魔界探偵2~四種族と死神の復讐~  作者: クレキュリオ
第1章 双子塔事件
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第5話 捜査終盤~核心へ~

「あ! マホさん」


 僕達は本当の現場から出ると、マホさんと出くわした。

 さっき、人界側の塔にいたはずだけど……。

 なんでこんなところに?


「やあやあ! 犯人見つかったかな?」

「いいえ。でも事件で何が起きたのかは、掴めてきました」

「そう! それは良かったのね~。でも……。ユウ君にはあまりいい状況じゃないかも……」


 時間がないってことか……。騎士団は魔王様を疑っている。

 早く真実を明らかにしないと、連行される。

 今は人界との和平が結ばれたばかりなんだ。


 それにルナティックさんが言っていた言葉も気になる。

 魔王様が犯人にされたら、魔界も闇に飲み込まれる。

 『闇』ってなんだ? 魔界もって事は。他に国は既に?


「ユウ君。私の部屋を見ていくと良いね。現場と同じ造りだから」


 マホさんは穏やかな笑みを消して。真顔で僕に言った。


「マホさんは、魔王様を疑っていないんですか?」

「この事件の犯人は明らかだよ。"死神"なんだよ。間違いないね」

「え?」


 『死神』って、人界で暗躍する殺し屋のことだよな?

 それと十年前の事件の、犯人と呼ばれている人物だ。

 なんでエルフの国の政治家である彼女が、死神の事を知っているんだ?


 それに死神って……。人界の騎士が勝手に読んでいるだけだよな?

 僕はアリス様の表情を伺う。明らかに怪訝そうな顔をしている。


「なんで貴方が"死神"を知っているんですか?」

「それはね……。私が死神に命を狙われていたからなの」


 マホさんは懐から、紙を取り出した。

 そこには真っ赤に染まった字で。今日の日付が書いてある。

 これはマホさんへの殺害予告だ。その宛名には、『死神』と書かれている。


「十年前。ここで事件が起きた時、私は思ったね。普通の捜査じゃ、敵は倒せないと」

「マホさん……。貴方は一体?」

「だから私は権力を持つことにしたのね。十二年前の事件を、もみ消さないために」


 十二年前の事件……? 僕の父が捜査していた事件だ。

 確か『コン家没落事件』だったな。


「私、十二年前はただの衛兵だったのね。コン家のね」

「え!?」

「旦那様は犯罪なんてしないエルフね。だから私、ユウガさん達を応援していたのね!」


 ユウガ、僕の父親の名前だ。彼女もまた、事件の関係者だったという事か。

 

「でもユウガさん達ですら、大きな力に破れた。だから私は、政治家になったのね」


 自分が権力を持つことで、大きな力に対抗しようとしたのか。

 それにしても、雇い主とはいえ。

 そこまでするのだろうか? 僕が疑問に思っていると、マホさんは再び微笑んだ。


「君の疑問は理解するね。でもね。旦那様は捨て子の私を、衛兵にしてくれた恩人ね!」


 捨て子が衛兵にか。と言う事は、生きるための訓練を補助してくれたんだな。

 コン家の当主は、それだけ立派なエルフだったんだろう。


「自分も偉くなって分かったね。上に立つと敵が増えるってことが」


 この殺害予告の事か。誰が何のために、彼女を殺害しようとしたんだ?

 

「正直周りは誰も信用できなかったけど……。君達なら信用できるね!」

「なんでそう思われたんですか?」

「分かるよ。君は真実を見つめる目をしているからね!」


 マホさんは鍵を渡してくれた。彼女の部屋のカギだろう。

 誰も入れないように、施錠したんだ。


「じゃあ、後は頼んだのね! 死神、絶対捕まえるのね!」


 マホさんはそう言いながら、再びエルフの騎士団の下へ。

 僕は鍵を握りしめながら、廊下を歩きだした。


「お前、随分と大きなものを背負っているのですね?」


 着いてきたアリス様が、そんな一言を口にする。


「望んで背負ったわけではないけどね……」

「ええ。気持ちは分かります」


 なんだろう? アリス様、経験があるような言い方だ。


「さあ、真実まであと一歩です。最後の捜査を始めましょう」


 彼女達の事は少し気になるけど。今は事件に集中だ。

 僕も真実を見つけないと!

 僕は改めて、事件の捜査資料を見つめた。


 殺害されたのはアスハさんの父と、僕の父さん。

 アスハさんの父が先に殺された。原因は圧死。

 被害者は暖炉の中で発見されたらしい。


 魔王様の証言が残っている。現場には、空気の魔法が使われた形跡があると。

 他には炎の魔法が使われた痕跡があるな。

 なんだか使用魔法が今回の事件と、類似しているような……。


「彼の死後、数分後に僕の父が部屋を訪れた」


 父が部屋のドアを開いた瞬間。爆発が発生したらしい。

 炎の残留魔力から、魔法による爆発だと考えられていた。

 でも魔法を使った本人は、現場に居なかった。


「そもそも部屋が吹き飛んだなら、中に居ちゃ危ないだろうし」


 それに死神は人界で暗躍する殺し屋だ。

 中身も人間だろう。部屋を吹き飛ばす爆発なんて。

 魔法で引き起こせるわけがないんだ。


「それに塔の付近で、妙にデカいスポンジが発見されたらしいな」


 気球と言い、時間後に変なものが発見されるな。

 これも偶然なのだろうか?


「現場につきましたよ。最後に確認しておくことはありますか?」

「取り合えず、怪しいところは徹底的に調べよう」


 僕はアリス様と共に、最後の捜査を始めた。

 ドアを開くと少しだけ違和感が。妙に立て付けが悪いな……。


「ここは古い塔の様ですからね。建て方が悪いのでしょう」

「建て方?」

「ええ。このドア、空気を逃しにくいため、気圧でドアが塞がれてしまいます」


 そう言えば、魔王城も古い部屋はそうなっていたな。

 古い建物は空気逃げ道がないから。

 外と中で気圧差が生じるって。じゃあこのドア部屋は、空気の機密性が高いのか。


 次に僕は暖炉に近づいた。今回も十年前も、鍵となるのは暖炉だ。

 アスハさんの父は何故暖炉なんかで、亡くなっていたんだ?


「ん? 暖炉の隙間に何かあるな……」


 僕は隙間にあるものを取ろうと、指を入れた。

 次の瞬間。スライド式のドアが一気に落ちた。

 僕の指はドアと床に挟まれる。


「痛ぁ!」

「お前、バカなのですか?」


 アリス様に呆れられた。幸い重さはそんなにないので、痛みは直ぐに引く。

 僕は取っ手を持って、ドアを再び上に動かした。

 

「このドアが下がっていると、暖炉ないが密閉されますね」

「そのようですね。それに取っ手はネジで軽く止めただけのようです」

「と言う事は、ドライバーか何かあれば外せるのか……」

「ええ。取っ手を取れば、暖炉の中に閉じ込める事も可能そうですね」


 暖炉の中に閉じ込めるか……。そう言えば、部屋が爆発したんだよな?

 でも被害者の身元は特定されている。死因すらだ。

 これって、部屋が爆発した時。被害者は爆発の影響を受けなかったってことじゃないか?


「ああ! こんなところに居たぁ!」


 背後から元気のいい声が聞こえた。

 ルシェ様が勢いよくドアを開けて、僕を指している。


「ユウ! 探したよ!」

「どうかしたんですか?」

「お父様が……。お父様が連行されそうなの!」


 どうやらエルフの騎士団は、魔王様を犯人にするつもりだ。

 魔王様の部屋にあった血痕。現場と向かい合いだった。

 疑われるのも無理はない状況だ。連行はやり過ぎな気がするが。


「どうやら時間切れのようですね」


 魔王様の連行を阻止するには、今ここで推理するしかない。

 エルフの騎士団を納得させるような真実を!


「真犯人は、誰か分かっているのですか?」

「いや。今回だけは、本当に分からない……」


 今回の事件は謎が多すぎる。複雑に絡み合っても居る。

 殺されたのは魔物で。人界側の塔で、エルフの国の中の出来事で。

 容疑者があまりに多すぎるんだ。


「答えは、推理を進めていけば分かるかもしれません」

「はい。連行前に、騎士団の前で話し合いましょう!」


 僕達はルシェ様に案内されて、騎士団の下へ向かう。

 馬車に魔王様が乗せられている。これから連行するところなのだろう。

 他には、時間稼ぎをしてくれただろう。マホさんとルナティックさん。


 ヒラと言う謎の騎士とユキ。そしてあのツカサが、揃っていた。

 またお前なのか? 僕は警戒しながら、駆け寄った。


「おや。探偵さんのお出ましのようだね」


 ツカサは僕に気付くなり、意味深な笑みを浮かべた。

 

「坊主。真相は分かったか?」


 ルナティックさんに問われたけど、正直分かっていない事も多い。

 でも犯行時、何が行われたのかまでは証明出来る。

 今持っている情報だけでも、犯人の移動方法が分かるはずだ。


「ええ。掴めてきました」


 こんなに心臓に悪い、推理の披露は初めてだな……。

 僕の推理しだいで、魔界の運命すら変わってしまうなんて……。

 僕は深呼吸をして、事件の概要を振り返った。


・死体発見場所は人界側の塔

・殺害場所はも魔王の部屋

・塔の間には見えない各通路があった


・隠し通路の窓は一カ所だけ使われた形跡があった

・使われた窓には、焼かれたロープが残っていた

・現場の近くには、気球が残されていた


・使われた魔法は、炎と重力操作、空気を操る魔法。

・マホは死神に命を狙われていた


 これで事件の真相を掴んで見せる!

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