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魔界探偵2~四種族と死神の復讐~  作者: クレキュリオ
第1章 双子塔事件
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第4話 捜査中盤~集まる証拠~

 僕達は隠された渡り廊下を、調べ始めた。

 入口付近を調べると、妙に綺麗だ。最近使用された形跡がある。

 隠し通路には窓がある。外からは通路そのものが見えないけど


 こちらから外は見えるようだ。僕は窓を一つずつ調べた。

 窓の縁には随分と、埃が溜まっている。

 どうやら最後に窓が開けられたのは、随分前のようだ。


「これで、見張りにバレずに塔を移動できる手段は明らかになりましたね」


 アリス様の言う通り、この通路には最近『繋がれた』形跡がある。

 でもなんだか違和感がある。埃が溜まり過ぎている気がするんだ。

 本当に隠し通路を通った存在なんているのかな?


「ん? この窓だけ綺麗だな」


 何故ここだけと思い、近づいて観察してみる。

 じっくり見つめると。窓に備え付けられた手すりに何か絡まっている。


 もっと近づいて見つめると、それはロープのようなものだった。

 先端が焦げていて、巻かれた部分だけが残ったようだ。


「焦げたか……」


 確か魔物側の塔で、炎の魔法が使われたな。

 まあ紐を燃やすくらい、マッチがあれば十分だけど。

 偶然にしては出来過ぎなような気がするなぁ……。


 僕らは隠し通路で、反対側の塔に向かった。

 他に気になる点は見当たらなかった。

 反対側にもやや浮かんでいるタイルがあったので。


 アリス様がそれを踏み込むと、隠し通路は見えなくなった。

 これが魔法のかかった、仕掛けと言う事なのだろう。


「アリス様。現場の反対側にある、部屋を覗いても良いかな?」

「良いでしょう。その部屋は誰のものです」

「えっと。確かあの部屋に泊まっていたのは……。"魔王様"だったはずだよ」


 現場で倒れていた魔王様と、現場は隣り合わせだった。

 答えは分からないけど、無関係とは思えない。

 僕はアリス様と共に、三階にある魔王様の部屋に向かった。


 知り合いの見張りに許可を取ると、部屋のドアを開ける。

 そこで僕達は、本当の凶器を見つけた。

 それはもう、あっさりと。


「な、なんだよこれ……」


 煙突に繋がる暖炉に、真っ赤な液体が付着していた。

 何かを引きずった跡もあり、真っすぐ窓に向かっている。

 

「どうやらここが。本当の殺害現場のようですね」

「うん。最悪なことに」


 まだエルフの騎士団は気づいていないみたいだが。

 これは魔王様にとって不利な状況とも言える。

 不幸中の幸いか、アリス様は犯人が魔王様と思っていないようだ。


 人界側の騎士にまで疑われたら、捜査出来ないだろう。

 でもエルフの騎士に納得してもらわないと……。

 間違いなく魔王様が犯人にされる!


「いつまでも黙っている訳にはいきません。今のうちに捜査を済ませましょう」

「そうだね。ここが本当の殺害現場なら、痕跡が残っているはず」


 時間が惜しい。さっさと現場を調べさせてもらおう。

 気になるのは引きずられたものが、窓に向かっている事だ。

 開きっぱなしの窓からして、ここから外に出したんだろうけど。


「エルフ族は非力だから、被害者を持ち上げるのは不可能そうだね」

「ええ。それと人界人が、この場所に来るのを許可されるとは思えませんね」

「うん。ここは魔王様の部屋だからね」


 和平交渉成立後とはいえ、元々敵対していたんだ。

 歴史の禍根を簡単に消すことは出来ない。

 魔王様だって、信頼できる人間以外は入れなかったはずだ。


「でも死体を入れるだけなら、屋上からでも出来るよね?」

「不覚な事に、こちらの煙突は見てませんでした」


 あの時は隠し通路に注意が逸れていたから。

 調べなかったのも、仕方がないけど。


「ところで、魔王の私物が見当たらないのですが」

「ああ。魔王族は異空間に、物を仕舞っているからね」


 魔法で異空間を作り出して、その中に物を入れる。

 そうすることで、身軽に長旅出来るんだ。

 

「この魔法は、魔王一族にしか、使えないよ」

「なるほど。凶器を隠すとしたら、魔王一族だと」

「どのみち魔王様以外、アリバイがあるけどね」


 見張りが証言している以上、間違いない。

 問題は魔王様なら二つの塔を出入りできるという点だ。

 この部分を崩さない限り、僕らの劣勢は変わらない。


「ふむ。でしたら犯人は、どうやって死体を運んだのでしょうか?」

「運ばれたのが死体とは限らないけどね」


 何かを引きずった跡は、所々途切れている。

 死体をそのまま引きずったにしては、妙な痕跡だ。

 それにホソさんの遺体には、引きずられた跡なんかなかったはずだしね。


 魔王様の部屋に私物は一切置いてないし。

 この部屋には暖炉とベッド以外、物は存在しない。

 だったら考えられる事は一つだけ。


「外から持ち込まれたって言うのは、無難な考えじゃないかな?」

「理解不能ですね。これだけ痕跡を残しながら、何故死体の保護を?」


 確かに外から運べるものを持ち運べるなら。

 真っ先に痕跡を消すはずだよな?

 でもそうしなかった。そこには何か意図があるはずだ。


 例えばここで血痕を発見して欲しいと言う意図があったが。

 死体が運べなかった。だから運ぶものが必要だったとか。


「これ以上は限界ですね……。私の方からエルフの騎士に伝えましょう」

「うん。お願いするよ」


 本当の殺害現場を黙っていたら、怪しまれかねない。

 近くに居るエルフの騎士に報告しないと。

 アリス様が報告してくれるらしく、部屋の出口に向かった。


「私が見張っていないからと言って、現場を荒らさないように」

「し、しないよ! そんなこと!」

「まあ、お前はバカではなさそうです。そんな疑われる事はしないでしょう」


 アリス様はしてやったりと言う表情で、口角を上げた。

 なんだろう。この敗北感は……。

 僕は溜息を吐きながら、窓の方へ向かった。


 エルフの騎士達が、反対側の塔でまだ捜査をしている。

 特に進展がないのか、みんな苛立っている様子を見せた。

 これは再びあそこの調査許可は下りないだろうな。


「……。あ! これは残留魔法!」


 僕は窓のすぐそばで、残留魔法を発見した。

 屋上で発見した炎の残留魔法だが。この部屋で使われた形跡がある。

 魔王様が炎の魔法を使った。とは考えられない。


 つまり窓の傍で、犯人が炎の魔法を使ったという事になる。

 ……。この窓から反対側の窓までの間。

 その真上には隠し通路が存在する。


 そして隠し通路の窓は、一つだけロープが括られた跡があった。

 これが意味することって……。


「それにしても……。下の方がやけに騒がしいな……」


 塔の周辺って、ルナティックさん達が捜査している場所だよな。

 何か発見でもあったのだろうか?

 僕が考えていると、アリス様が戻ってきた。


「どうかしたのですか?」

「いや、なんだか下の方が盛り上がっているなぁって」

「ああ。それでしたら。騎士長が気球を見つけたそうです」


 どうやら先ほど報告した際。

 他の聖騎士と情報共有をしたようだ。

 抜け目がないってところだな。

 

「まあ気球といっても。一人乗れるくらいの大きさですが……」

「気球か。気球ってさ、空気を暖めて、空を飛ぶんだよね?」

「ええ。それがなにか?」


 炎の残留魔力がここに残っている。更に気球の発見か。

 この真上には隠し通路がある。

 見上げても見えないだけで、あの通路は常に繋がっているんだ。


 真相に近づいてきている。まだ犯人は分からないけど。

 僕には最後に、調べるべきことがあるんだ。


「アリス様。この部屋の対角線上にある部屋へ向かおう」

「む? 何故です? そこは事件と関係あるのですか?」

「忘れましたか? 二つの塔は全く同じつくりなんだ」


 『左右対称』ではなく、『全く同じ形』になっているのだ。

 僕はそこに注目した。


「なるほど。位置関係的に。あちらの現場と全く同じ位置にあるわけですね」

「はい。ならば、部屋の作りは全く一緒だろうね」


 十年前の事件の現場ともね……。まだ事件同士の関わりは分からないけど。

 ここが本当の殺害現場だと分かった以上。

 犯人があの部屋に死体を置いたのには、理由があるはずだ。


 その理由を解く鍵が、十年前の事件にあるのかもしれない。

 僕の父が命を落とした事件に。


「反対側は誰の部屋なのです?」

「マホさんだったはずだよ。彼女なら協力してくれると思う」


 エルフの要人も、二手に分かれて三階に泊まっていた。

 彼女はこの階層で、ルシェ様と会っている。

 アリバイがあるはずだ。


「良いでしょう。報告も兼ねて、もう一度彼女と話しましょう」

「そうだね。この塔の仕掛けを教えてあげないと」


 僕達は確実に真実に近づいてきている。

 一見バラバラで、関連性が見えてこない証拠品だけど。

 繋げてみれば、全て一つ事実に向かっているんだ!

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