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魔界探偵2~四種族と死神の復讐~  作者: クレキュリオ
第1章 双子塔事件
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第2話 捜査開始~現場の捜査~

「ホソさん……」


 遺体を調べるのは辛いけど。僕はホソさんに近寄った。

 エルフ族から捜査の許可が下りるとは限らない。

 今のうちに調べられることは調べないと!


 顔が識別できないほど、殴打されている。

 間違いなく死因は、これだろう。手には何故か、剣が握られている。

 撲殺である以上、剣は関係ないんだけど。気になる。


「お前、何を勝手に調べているのです?」


 ホソさんと僕の間に、アリスさんが立つ。

 

「お前達に権限はありませんよ。現場保存は素人でも知っているでしょ?」

「分かっているよ! でも知り合いが殺されたんだ! 僕だって、黙っていられない!」


 ホソさん。付き合いは短いけど。僕を信じて良く、情報を教えてくれた。

 一緒に捜査した事件も、少なくない。

 だからこそ。彼を殺した犯人を純粋に見つけたい。


 どうして彼が殺される必要があったのか?

 探偵としてだけじゃなく、友として知りたいんだ。


「はぁ……。言っても聞きそうにない顔ですね……。分かりました。見なかった事にしましょう」

「アリスさん……!」

「ただし。お前だけが限界です。他のものは、近づかないように」


 どうやら聖騎士団にも、魔物の情は分かるらしい。

 元々ユキやルシェ様に、近くで見せたくない。

 僕は頷いて、アリスさんの提案を受け入れた。


「それと。万が一お前が犯人でも、問題がないよう。私が見張りましょう」

「見て見ぬ振りを、するんじゃなかったんですか?」

「それはそれ。これはこれ」


 まあ当然か。アリスさんからすれば、僕は騎士ですらない。

 良く分からない使用人なのだから。


「それから。お前のことは何と呼べば?」

「ユウキで良いです。この際なんでも」

「では私の事も気さくに。"アリス様"とでも呼んで構いません」


 良いだろう。心の中でもアリス様って呼んでやる!


「それはそうと、ユウキ。気づきましたか?」

「え? ああ。勿論。これだけ、派手に頭をやられているのに……」

「凶器らしきものは、見つかりませんね」


 そうなんだ。現場には血が流れているが。

 撲殺に使用したと思われる、凶器が存在しない。

 ホソさんの頭を潰すほどのものだ。相当重たくて、大きいはずなんだけど……。


「誰かが持ち去った。とは考えられないよね?」

「ならば。犯行場所は別にあり。そこに気づかれない形で、置かれてある。と考えるべきでは」

「…………」


 僕は言葉を失った。アリスさんの推理に関心したわけじゃない。

 先ほどのボケた言動の人と、思えない観察力だ。

 おっちょこちょいで、ドジなだけか……。確かにそうだな。


「どのみちアリス様には見えないと思うけど。現場には残留魔力はないね」

「つまり。この部屋で、魔法が使われていない。なら小さくして、持ち運ぶのは不可能ですね」

「でも、犯行現場が別なら。この血の量は一体……」


 ホソさんには他に、傷らしきものはない。

 でも現場には、飛び散ったような血痕がある。


「寝ている王様の血でも使ったのでは?」

「魔王様にも傷はないし。あの血は上から塗ったものだよ」


 もしここが現場でないとしたら。誰の血なんだ?

 本当に被害者のものなのか? 検証する必要があるな。


「人界には血液から、個人を特定する技術があります。検視にでも回しましょう」

「へえ。死亡時刻を割り出せたり。人界って凄いんだね……」

「その分事件の数も多いですが」


 アリス様、分かり易く険しい表情になった。

 人界の騎士って、多忙なんだな……。


「痕跡が少な過ぎる。アリス様の言う通り。本来の殺害場所は違うね」

「なら証拠は期待できませんね。では情報と言う観点で、見てみましょうか」


 確かに物的証拠はなくても。この部屋の情報は、重要だ。

 例えばだけど。この部屋の窓は丁度、"反対側の塔が見える"んだ。


「魔王様が外に出た所を、エルフは目撃していないはずだよ」

「あんな大きい存在を見逃さないし。隠れて運ぶのも不可能ですね……」

「あ! ちなみにあの翼は飾りらしいから。空は飛べないみたい」


 魔王様が空を飛んだという線は、なさそうだろう。

 エルフならこの高さなら飛べそうだが。彼らは非力だ。

 魔王様を持ちながら飛ぶなんて、出来ない。


「まあ、エルフの騎士が偽証している、可能性も否定できないけど」

「まあ私の前で嘘などついたら。この剣で斬りますけど」

「死体が増えない事を祈るよ」


 魔王様やホソさんがどうやって、この塔に来たのか。

 このことも調べておいた方が良いな。


「それにしても、犯人は何がしたかったのでしょうか?」

「僕も気になるよ。魔王様に罪を着せたいにしては、犯行が雑過ぎる」


 部屋の中で気絶させて。雑に血を塗っただけ。

 こんなの罪を着せようとしたと、疑えと言わんばかりだ。

 でも逆に言えば……。"魔王様を容疑者から外せる"んだよな。


「この部屋、本来は誰が使っていたんですか? 三階ですから一人部屋ですよね?」

「騎士長です。彼が頼み込んで、この部屋を指定したそうですよ」


 この部屋に拘りがあるのだろうか?

 騎士長が指名したこの部屋で、死体が見つかったのは偶然なのか?


「お前。まさか騎士長を疑っている訳では、ないですよね?」

「彼に犯行は不可能だよ。ルナティックさんは、ずっと魔界側の塔に居たからね」


 能天気な歌声が聞こえてきたのを、覚えている。

 わざとらしいと言えば、そうなんだけど。

 あくまで僕とルナティックさんが遭遇したのは、偶然だ。


「そう言えば、ルナティックさん……」


 僕はポケットに仕舞った、鍵を取り出した。

 自分の部屋に十年前の捜査資料を置いたと言っていた。

 こんな時だけど、正直気になる。僕は部屋を探して、彼のカバンを探す。


 すると魔王様の倒れている直ぐ傍に、鍵のかかったカバンがあった。

 ご丁寧にチェーンで、ベッドに括られている。

 なるほど。盗難対策はばっちりだな。


「騎士長のカバンがどうかしたのですか?」

「直接は事件と関係ないかもだけど……。なんか僕の直感がね……」


 このカバンを放置すると、良くない事が起きそうな気がするんだ。

 だから僕は、迷いなくカバンのカギを開けた。

 カバンの中には衣服などが入っていたが。そこに一つだけ、ファイルが入っている。


 ファイルには、"双子塔事件"と書かれている。

 ……。え? 双子塔!?


「ユウキ。人界の聖騎士長の私物を物色するとは、良い度胸でね」

「アリス様! そんな場合じゃないんだよ! このファイル名を見て!」

「……。え!? 双子塔って……」


 騎士長がこの部屋に拘った理由。双子塔事件と言う名前。

 僕はファイルを開き、事件の概要を見た。

 殺害されたのは、僕の父とアスハさんの父親だ。


 アスハさんの父親は圧死。僕の父は爆発に巻き込まれて死亡している。

 犯人は人界の殺し屋、死神と言う所まで特定できている。

 そして……。その現場となった場所は……。


「まさに今! 我々が居る場所ではありませんか!」


 なんだよこれ……。死因も被害者も、状況も全然違うけど……。

 なんで十年前と全く同じ場所で、事件が起きているんだよ!

 僕は嫌な気配を感じて、咄嗟に隠す様にファイルを懐に仕舞った。


「坊主。アリス。残念ながら、許可は下りなかった」


 背後の扉が開き、ルナティックさんが苦い表情をしている。

 僕らが二人そろって、固まっている事に。彼は察しがついたようだ。


「この場所は、直ぐにエルフの騎士団が封鎖する」

「致し方ありません。ここは彼らの国なのですから」


 そうだな。ここで調べられることは調べた。

 十年前の事件の事は気になるけど……。

 今は現在の事件に集中しないと! 絶対に本当の現場を見つけ出してやる!

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