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魔界探偵2~四種族と死神の復讐~  作者: クレキュリオ
第1章 双子塔事件
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第1話 新たな事件とライバル騎士

 ユウガ。僕の父。魔王様の側近で十年前に亡くなった魔物。

 魔王様の話によると、父は魔界で初めての探偵を目指したらしい。

 騎士とは違い、捜査専門の機関が魔界には必要だった。


 僕は結果的に彼の意思を継いで、探偵になったけど……。

 実のところ。父に思い入れはない。

 僕は父さんの事を、よく覚えていないからだ。


 生まれた頃から、彼は多忙で家に居なかった。

 母さんが失踪したあの時も。あの魔物は家に帰ってこなかった。

 でも。あの時彼は確かに。苦渋の決断を迫られた表情をしていた。


 だから僕は、彼の事を恨んでないし。思い入れもない。

 父の事を多く知らない僕に。彼をどう思う資格なんてない。

 でも今。僕の目の前に。父が殺された事件の鍵がある。


 もし。過去の事件の軌跡を追えば。父の事が分かるかもしれない。

 彼が僕らをどう思っていのかさえも……。

 魔界へ出発する前に、ルナティックさんに聞いておこう。


 僕には父さんが、冷たかったようには思えない。

 でもだったら何故! 母さんを探しに行かなかったんだ!

 だから知りたい。父の事をもっと……。


「ユウ、大丈夫? 鍵をじっと見つめて、睨んでいるけど……」

「え? ああ……。大丈夫だよ」


 僕はユキと二人だけの廊下で、鍵を見つめてボーっとしていたようだ。

 夜が明けるまでまだまだある。

 

「ユキ。先に部屋に戻る……。のは嫌なんだね?」

「ん。ユウが魔王様に会いに行くなら……。着いていく」

「良く分かったね?」

「何年一緒に居ると思っているの?」


 僕とユキは昔から一緒だった。だから表情で考えが分かる。

 僕はこれから、魔王様に許可をもらいに行く。

 ルナティックさんに資料を、見せてもらうために。


「さっきの人。魔王様に会いに行くって、言った」

「あ! そうだね。また鉢合わせするかも……」

「だったら、ついでに彼の部屋も聞いておく方が良いよ」


 そういえば。人界側の塔に行っても、部屋の場所が分からないや。

 ユキは細かい所に気が付くな。


「じゃあ。三階に向かおうか」

「王族だらけの階……。死ぬかも……」


 そんなに緊張するなら、部屋に戻れば良いのに……。

 僕はユキに背中を掴まれながら、三階に登った。

 三階で使われているのは、四つの部屋。


 一つはルシェ様の部屋。二つは魔王様の息子の部屋。

 最後の一つは、当然魔王様のもの。

 部屋の場所は聞いていたので、僕は迷わず彼の部屋の前に向かおうとした。


 そこで、赤毛の少女が慌てて廊下の角から飛び出す。

 僕に気付くと、飛び掛かる勢いで近づいてきた。


「ど、どうしたんですか、ルシェ様? そんなに慌てて……」

「お父様がどこにも居ないの! 塔を隅から隅まで探したのに!」

「え? とんでもない事じゃないですか!」


 魔王様が消えた? 背中を嫌な汗が流れる。

 僕は息を飲み込みながら、呼吸を落ち着かせた。


「こっちの塔を探しても、居ないなら。人界側の塔では?」

「いいや。それはなさそうだぜ」


 緊張感のこもった声で、男性が背後から話しかけてきた。


「ルナティックさん? どういう事ですか?」

「嬢ちゃんの騒ぎを聞いて、聞き込んだが。一階の見張りは、この塔から誰も出ていないってさ」

「騎士長閣下!」


 次から次へと、この場に現れてくる。

 廊下に来たのは、人界側の騎士だ。

 聖騎士なのか、上質な白い鎧を着ている。


 体型は中くらいで、金髪ロングの少女。

 ルシェ様とは対照的に、蒼い瞳が特徴だ。

 勝気そうで、ルシェ様とは正反対な性格の印象を受けた。


「何故、魔界側の塔に居るのですか!?」

「ああ。ちょっと野暮用でな!」

「そんな場合ではありません! 塔で……。塔で死体が見つかりました!」


 嫌な出来事が立て続けに起こると。脳はフリーズするようだ。

 僕らはただ、言葉を失う事しかできなかった。

 ルナティックさん以外は……。


「なあ、"アリス"。その死体。魔物……。じゃねえよな?」

「少なくとも、人ではないと思われますね」

「ん? 歯切れの悪い言い方だな」


 僕も気になったけど。人族でないなら死体は、エルフか魔物だ。

 まさか……。いや! そんなはずはない!


「直ぐに案内しろ! この場の全員をな!」

「はっ! あ、でも魔物を人界の者に近づけるのは……」

「うるせぇ! 責任は俺が取るから、さっさとしやがれ!」


 凄い気迫で少女の騎士を怒鳴る、ルナティックさん。

 死体が発見されて、異常事態なのは分かるけど……。

 彼のこの慌てようはなんだ?


「分かりました。お前ら、悪さするんじゃありませんよ」


 僕らはアリスと呼ばれる少女に案内されて。

 もう片方の塔に向かった。向かったの三階の部屋。

 人界の重鎮が泊まっているはずの一室だ。


 ルナティックさんを先頭に、僕らは部屋の中に入った。

 そこで僕らは……。信じがたい光景を目の当たりにする。


「嘘だろ……? なんだよ……。これ……?」


 僕の前に広がった光景……。

 それは無残にも頭が潰されて、顔の判別のできない魔物の死体。

 でも僕には……。僕達にだけは身元が分かった。分かってしまった!


「ホソさん……? なんで……?」


 信じたくなかった。でも上半身の鎧だけ脱ぎ。

 筋肉を見せつけたその体型は、間違いなくホソさんのものだ。

 顔が分からなくても、僕らには分かる。


 今朝の事件やその前から。彼とは一緒に捜査したことがあった。

 彼はいつも半裸だったから……。その姿を見間違えることはない。


「アハハ! その様子だと。親しい間柄が殺されたのは、初めてなのかな?」


 僕達の背後で。あの悪魔の笑い声が聞ける。

 僕は腕力もないのに、拳を固めて。そいつに近づいた。


「お前が……! やったのか!? ツカサ!」

「いやいや。僕は自分で手を下したりしないよ」


 僕は深呼吸をして、興奮を収めた。

 コイツの事だ。例え実行犯でも尻尾は掴ませないだろう。

 

「まあ、僕に憎しみをぶつけたいのは分かるけど。驚いているのは、僕も一緒なんだよね」


 ツカサが驚いているだって? 彼の表情から、嘘は読み取れなかった。

 どちらかと言うと、戸惑いの様なものを感じる。


「それに。今回、犯人は明らかですよ」

「え?」


 アリスさんから予想外の言葉を受けて、僕は情けない声を出した。

 彼女は人差し指で、ベッドの方を指す。

 そこには血を浴びて、気絶している魔王様の姿が。


「お、お父様!」

「上から浴びた血だ! 命に別状はないはずだよ!」


 急いで駆けよろうとするルシェ様を、僕は慌てて止めた。

 この状況は、魔界にとって最悪の状況だ。


「まさか……。魔王様が犯人とか言いませんよね……?」

「一応言っておくけど。私はバカではないわ。それくらい、現場を見れば明らかよ」

「じゃあ、犯人が明らかって……」


 アリスさんは見事なドヤ顔で、僕らに言い切った。


「犯人は……。魔王が油断するほどの相手よ!」

「…………。あの、アリスさん。それは何も分かっていないのと、同じでは」

「坊主。許してくれ。この子、おっちょこちょいでドジなんだ……」


 心底呆れた表情で、ルナティックさんを含めた全員が彼女を見た。

 僕は死体発見の次くらいに強い、衝撃を受けた。

 このいかにも厳しそうで、クールで優秀そうな騎士さんが。


「とにかく。この事件は、人界守護隊である、聖騎士団が担当する。魔物は帰って良い」

「ちょっと待って下さいよ! 被害者は魔物で。魔王様も事件に巻き込まれています!」

「これは人界側で起きた事件よ! 我々が担当するのは、当たり前でしょ!」

「ええっと……。その理屈なら、エルフの騎士が担当するのが普通では?」


 ここはエルフの国なのだから。などと思っていると。

 アリスさんは剣を引き抜いた。そのまま素振り。のはずなのに。

 何故か僕の頬を傷みが、貫いた。


「痛ぁ!」

「ぶっ潰す!」

「アリス。頼むから現場でふざけるな。あと、俺の顔に泥を塗らないでくれ」


 ルナティックさんは、アリスさんを叱ると。

 僕の方を振り向いた。


「坊主。エルフ族には、俺から取りつける。万が一を考えて、今のうちに調べろ」


 冷静にでも緊張感ある言い方で、ルナティックさんは言った。

 部屋の外に出るすれ違いざまに。彼は僕にだけ聞こえるように口にする。


「絶対に魔王が逮捕されるなんて展開にするな。そうなれば魔界も闇に飲まれる」

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