表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔界探偵2~四種族と死神の復讐~  作者: クレキュリオ
プロローグ 悪魔と死神と探偵と
10/62

第9話 推理議論クライマックス~事件の全貌~

「これが事件の真実だ!」


 僕はみんなに納得してもらうため、もう一度事件を振り返った、

 最初から犯人と共犯者の目的を明らかにする。


「まずアスハさんは、昨夜の内に被害者をさせて攫った」


 被害者は昨夜から、行方不明になっている。

 油断した被害者を、電気魔法で気絶させて。

 トリックを仕込むまで、どこかに監禁していたのだろう。


「気絶したチイさんを、空洞のある丸太の中に押し込むと」


 空洞のある丸太なんて、事前に用意していたものに違いない。

 ドワーフならともかく。手先が器用でないエルフに、短時間で仕上げられない。

 

「丸太を密閉して、崖下の道脇に置いたんだ」


 最初からその場に丸太があったように見せかけるために。

 彼女は自然に見えるよう、注意を払ったはずだ。

 

「その後、彼女は偶然を装って、丸太を橋にするために……」


 丸太を橋にしないと、酸素が無くなるまで、時間がかかり過ぎる。

 だけど丸太を川に流している所を、見られるわけにはいかない。

 だから自然と丸太が川に接触するよう、注意する必要がある。


「事前強く電子を帯電させた橋。その上空にプラス帯電したペットボトルロケットを発射した」


 会場で見たメイ液を使った風船は。見えなくなるほど空高く飛んでいた。

 風船ほどではないにしろ。ペットボトルも相当上空へ向かったはずだ。

 橋が燃えるには相当な電力が必要だから。プラス帯電も、魔法で操ったはず。

 

「橋から発射されたロケットに向かって。雷は下から上に発生した」


 上から下だと、雷の軌道をコントロールできない。

 確実に落雷で橋が燃えたと錯覚させるには。

 橋側から電気が発生する必要がある。


「僕達が落雷を錯覚している頃。アスハさんは、もう一度、逆向きにペットボトルロケットを使ったんだ」


 メイ液はエルフなら簡単に調達可能だし。

 ペットボトルなんて、その辺に売っている飲み物で手に入る。

 

「ロケットと重力の勢いでロープを引き、滑車を使って崖上まで登ったんだ」


 メイ液の気化噴射は、一瞬で上空まで行くほどの勢いなうえ。

 エルフ族は大人でも、人間の赤ん坊ほどしか重さがない。

 空を飛ぶために、進化した一族だからね。


「何故この時、僕達が滑車に気付けなかったかだけど。橋が燃えていたからだ」


 雷が落ちて燃え上がる橋に、僕らは注意が向かった。

 崖の脇道なんて、気にしている余裕はなかったんだ。

 恐らくそこまで計算して、滑車を使ったのだろう。


「こうして一分で、崖上に登ったアスハさんだけど。問題が二つあった」


 ロープとペットボトル。この二つの処分についてだ。

 魔法を使うと痕跡が残る。でもエルフは魔法に特化した種族だ。

 燃やせる道具なんて、国にない。


「ロープは近くの茂みにでも隠したんだと思う」


 橋が焦げたせいで、魔界側は調べられていないけど。

 探せばすぐに分かるはずだ。

 それにロープだけ見つかっても、証拠としては薄いから。


「でもペットボトルを処分する時間はなかった。直ぐ傍まで僕らが居たからね」


 ロープと一緒にペットボトルが捨てられたら。

 トリックに気付かれるという心理が働いたはずだ。

 だからアスハさんは。別々の場所に捨てようと考えた。


「彼女は何気ない顔で僕らと合流。案内と称して、僕らを誘導したんだ」


 僕らは初めてエルフの国を訪れる。

 そのため案内人が必要だった。


「丸太が置いてある道にね。川を渡るために、丸太でも使えば良いと提案し……」


 この時僕と暗黒騎士が、二人で丸太を運んだ。

 中に被害者が居たから、今より丸太は重かったし。

 慎重に運べと言われたから、一人で運ぶ気になれなかったんだ。


「僕らを誘導して、他人の手で被害者を溺れさえた」


 この時僕らは全員が渡れるように、丸太が転がらないよう注意した。

 丸太は円柱なので、転がり易かったんだ。


「この時。アスハさんには、予期せぬ協力者が現れたんだ」


 多分アスハさんのトリックは、もっと単純だったはず。

 そいつのせいで、この事件はややこしくなったんだ。


「暗黒騎士に化けた、ツカサさんがね。彼は絶妙な位置に、丸太を置いた」


 丸太を川で流すには、位置関係も必要になる。

 アスハさんはもっと雑な方法で、丸太の位置をずらす予定だったはずだ。


「僕らが橋で渡り切るのを確認すると、アスハさんは最後に丸太を渡った」


 丸太はエルフが入れるくらいしか、太さがないので。

 僕らは渡るのに神経を使った。

 そのせいで割り切った後に、疲れていたんだ。


「誰にも気づかれないよう、後ろ足で丸太を蹴り、位置をズラしたんだ」


 僕らが去った後、ゆっくり転がった丸太が川に入る様に。

 しかも協力者のおかげで、丸太は絶妙な位置にあった。


「被害者は意識を取り戻しても。酸素が薄いから、声を出すことすらできなかったはずだよ」


 意識を取り戻した頃にも、朦朧としていただろうし。

 丸太に押し込められたら、手足を動かせない。

 音を出して助けを求める事すら、出来なかったんだ。


「丸太は川まで流され。被害者は窒息した」


 その死亡時刻が、もう一つの事件と同時刻だった。

 これはアスハさんも予測していなかった事だ。


「被害者が死んだとき。中の空気薄いから。丸太は浮力を失っていた」


 何度も言うが、エルフは軽いけど脂肪がないのだ。

 だから水に入ると、体重の割に沈む。

 

「この時丸太に浸水した影響で。丸太の蓋が開いたんだ」


 被害者は湖に投げ出されて、水中に沈んだ。

 あたかも溺死したかのように、見せかけられて。


「アスハさんの計画はそれで終わりだったけど。彼女に有利になる、想定外が起きたんだ」


 元々は被害者の死亡時、自分は会場に居た程度のアリバイだったんだろう。


「人界代表暗殺未遂事件。一本の矢が、人界代表の剣士に向かったんだ」


 これが事件をややこしくしていた。


「この事件は、ツカサさん本人が引き起こしたものだったんだ」


 どういう訳か、アスハさんに協力しているツカサさんは。

 彼女のアリバイを、強固とする必要があった。

 

「演出の風船を飛ばす様の、メイ液を盗み。空洞のある矢に仕込んだ」


 そのまま氷点下状態を維持したまま、矢を自分の脇にもっていく。

 

「メイ液を常温にさらして、噴射で矢を飛ばした。自分の脇を逸らすように」


 この時僕達は二重の罠に引っかかっていた。

 一つは人界代表が、何者かに狙われていたと錯覚させられ。

 二つ目は殺エルフ事件と、関係があるように錯覚させられた。


「でもこの二つの事件は。全くの別人が、別の意図で起こしたものなんだ」


 アスハさんはツカサさんの協力を、知らなかったはずだ。

 彼は犯人すらも気づかないうちに、共犯者として暗躍した。


「これが真実ですよ。エルフ族の騎士。アスハさん」


 僕は最後に、力強く人差し指を向けた。


「ぐ……。ぐぐぐ……」


 アスハさんは剣を、噛み始めた。


「ぐおおおおおお! おおおおおおお! おおおおおお!」


 彼女は剣を歯でかみ砕く。一本の立派な剣が砕かれて。

 只の鉄くずになっていく。


「おおおおおおお! ……。ごめん……」

「え?」


 彼女は最後に。誰かに謝罪しながら。

 その場に倒れ込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ