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魔界探偵2~四種族と死神の復讐~  作者: クレキュリオ
プロローグ 悪魔と死神と探偵と
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プロローグ

素人なんで、トリックには期待しないで欲しいです。

前作とスタイルは全く変わっていないです。

「人界代表殿にお越しいただきました!」


 魔王城から遠く離れた、青空が見える場所。

 魔界とエルフの国の国境付近に。簡易ステージが作られていた。

 舞台の上には魔界の王魔王と、人界の代表剣士がそれぞれ座っている。


 本日は魔界と人界。魔物と人間の長き戦乱に終わりを告げる日だ。

 和平交渉が結ばれて、二人の代表の手で正式に発表される。

 この発表が終われば。両者の国に本格的な交流が始まる。

 

 それを待ち望んでいる者もいた。だが。

 和平を阻まんとする者もいた。

 その者は黒いレインコートに身を包み。その時が来るのを待っていた。


「それでは人界代表殿! 皆に一言を!」


 人界代表は周囲を見渡しながら、マイクを受けとった。

 彼が一言発しようとした時。一筋の雷光が鳴り響いた。

 ほぼ同時に、一矢が人界代表の直ぐ脇を通り過ぎた。


「あ、暗殺だ! 代表剣士殿を守れ!」


 衛兵がステージ付近を付近を封鎖して。

 魔王と人界代表の周りを固めた。

 会場に緊張が高まる中、外を警備していた兵士が慌てて駆けだしてきた。


「大変です! エルフ族の衛兵長が……。溺れております!」

「なんだって!? 何故こうも次から次へと……」

「隊長! 弓を持った者が、会場に誰も居ません!」


 更なる報告で、会場はパニックに陥った。

 誰も弓を持っていないのに、何故か放たれた矢。

 代表剣士暗殺とほぼ同時に行われた、エルフの騎士長の死。


 次々引き起こされる謎に、騎士団は混乱状態だ。

 そこで魔王がマイクを受け取り、魔物の衛兵に叫んだ。


「彼を呼んでくるんだ。魔界探偵、ユウキを」


――――――――――――――――――――


「やれやれ……。随分と大胆不敵な、犯行だなぁ」

「これも、和平反対派の仕業……。なのかなぁ?」


 小柄で赤毛の髪の毛を、ロングにした少女。

 灰色の肌と赤い瞳で、不安そうに現場を眺めている。

 黒い服に身を包んでおり、クリーム色の短パンを履いている。


 彼女の名前は『ルシェ』。魔王の娘であり、僕とはややこしい関係にある少女だ。


「そうとも限りませんよ。現段階ではまだ何も分からないし」

「確かに。それで、ユウ。今回はどんな捜査をするの?」


 僕の名前は『ユウキ』。魔界で探偵とルシェ様の世話係を兼任する悪魔族だ。

 悪魔族は本来、魔力と腕力に優れているのだが。僕にはそのどちらもない。


 みんなからは悪魔にしては迫力がないと、良く言われていている。

 僕自身も荒事は苦手なので、自分でも頼りないという自覚はある。

 そんな僕にも誇れるものがある。


 魔物達の住む国、魔界の探偵であるという事だ。

 まあ探偵を始めてまだ三カ月ほど。

 解決した事件も多いとは言えないけど……。


「まずは状況を整理してきましょう」


 ルシェ様は魔王の娘なので、当然和平の場に参加していた。

 僕も側近として、ステージ脇に立っていた。

 状況は大体把握している。まずは一つずつ整理しておこう。


「事件は人界代表の、和平発表の瞬間に起きた」


 魔界と人界の和平なのに、エルフの国で交渉が成立した。

 これは人族が、人界に魔物を連れて行きたくないというのと。

 魔界だと罠の可能性があるからと、提示してきた条件だ。


 そのためエルフの国で、和平交渉と発表を行う事になった。

 つまりこの場には。人界と魔界、それとエルフの精鋭騎士達が集まっているのだ。

 当然仕掛けによる暗殺も警戒して。厳しい持ち物検査と、事前捜査が行われた。


「犯人は、事前に仕掛けを施すチャンスなんて、殆どなかったはずですよ」

「う~ん。じゃあさ。事前捜査の後。つまり発表の直前から、仕掛けたってことだね」


 弓やボウガンを持たずに、矢を放つ仕掛けか……。

 事前捜査後も、持ち物検査は厳しかったはず。

 仕掛けられたとしたら、不自然の無い持ち物ってことになるな。


「それに矢だけど。本当に人界代表を狙ったものなんでしょうか?」

「え? どういう事?」

「僕が見た限りだと、矢の軌道は魔王様とも、人界代表とも大きく外れていました」


 それどころか、あれだけの衛兵の誰にも当たらなかった。

 適当に撃ったにしては不自然だし、狙ったにしても妙だ。

 矢を放った犯人の目的は、命を奪う事じゃないんじゃないか?


「それと、事件直前。雷が光ったのも気になりますよね……」

「天気が悪かったとはいえ、予報士は曇りって言ってたのにね」


 魔法を使って天気の予測をする、予報士が外すとは考えにくい。

 それにあんなタイミング良く、雷が光るだろうか?


「最後に、溺れていたエルフ族の衛兵長さんだね」

「うん。エルフ族は軽いけど脂肪がないから。水に落ちたら泳げないけど……」

「溺れていた場所が、不自然ですよね」


 魔界とエルフ族の国境には、吊り橋が存在する。

 吊り橋の真下には川が流れていて、その先に湖に繋がっている。

 被害者は湖で溺れている所を発見された。


 和平発表は崖の上で行われていた。

 そもそも崖下には何もないはず。

 被害者はなんでそんなところで、溺れていたのだろうか?


「それと、雷が光ったのはあの時が二回目でしたよね?」

「うん。一回目の時は大変だったね~。橋が燃えちゃってさぁ」


 国境の端に落雷したせいで、橋が燃えていた。 

 そのせいで僕達は人界の人たちと、迂回を余儀なくされた。

 

「今調べる事をまとめると。まずは会場の矢が飛んできた仕掛けですね」

「うん。ユウが呼ばれたのは、その謎を解くためだろうし」

「それと衛兵長が溺死した理由と、関係があるのか」


 僕はこの二つの出来事が、偶然だとは思えない。

 

「そのためには。吊り橋の方も調べないと」

「う~ん。でもあそこに残留魔力はなかったけどなぁ」


 残留魔力とは、魔法が使われた時に残る痕跡だ。

 色から使われた魔法の属性を判別でで、二十四時間ほどで消える。

 その濃さから、どのタイミングで使われたのか。大体予測できる。


 残留魔力は魔法が使われた場所に残る。

 つまり吊り橋付近で魔法は、使われていないという事だ。


「それと、犯人を絞るためにも。関係者に話を聞かないと」

「うん。動機から絞るのも、ミステリーの定番だよ」


 ルシェ様は読書がお好きなのだ。


「分からない事だらけで、やることが一杯ありますね」

「うん。私も微力ながら、ユウを応援するよ!」

「そこは協力するじゃないんですね……」


 微力じゃないし、応援されても何の解決にもならないが。

 魔王様が直々に僕を指名してくれたんだ。

 恥の無い仕事をしないと!


「あ! そうだ! ユウ。今回一つだけ確認なんだけど……」


 捜査に乗り出そうとした僕に、ルシェ様が声をかけた。


「今回はエルフの国で、事件が起きたという事は忘れないでね」

「はい。捜査権も法執行の権限も。エルフ族が持っているという事になります」

「魔界での捜査や、魔界裁判と微妙にルールが違うから。気を付けてね」


 魔界裁判。魔界で事件が起きた時、関係者全員が捜査員となる法律だ。

 当然そのルールは、魔界でのみ適応される。

 僕に捜査が許されているのは、魔王様の手腕とエルフの温厚だと忘れてはいけない。


「異国での捜査は初めてだけど、ユウなら出来るよ!」

「ご期待に応えられるよう、善処します」

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