現場確認、異常なし
超能力もの。
ど忘れともいう。
鍵を開け、ドアノブを捻らず突進し、部屋へ突入する。
そして、素早く室内の様子を確認する。
電気も点けていないので暗い部屋、ただし、廊下の光は入っているから、人影の有無くらいはわかる。
並んだ机、異常なし。積み重なった書類・ファイル、異常なし。こちらに銃を向ける人影、異常なし。閉じたタンス、異常なし。閉じた大棚、異常なし。
机の下や棚の中に潜んでいるかもしれないが、とりあえず立っている人間はいない。
まずは死角から攻撃されないように……
銃声が鳴る。
異常なし。
体が倒れる。急に倒れるなんて、眩暈か何かだろうか。
体が動かない。
異常なし。
疲労でも溜まっていたのだろうか。
足音がする。
そういえば、侵入者を捜していたのだった。急に倒れれば、罠か攻撃かと、みんなが集まってしまうかもしれない。
調子が悪いから、一旦報告して休むにしても、そんな誤解で手薄になる箇所があってはならない。
誤解を解かなくては。
足音が止まる。
倒れてるのに異常がないから、困惑したのだろうか? 体は動かないが、声ぐらいは出せるだろうか。まずは、
「異、常な……」
銃声がした。
認識阻害。あるいは洗脳。
普通に見える場所にある探し物を見落とす現象ともいう。
見落とし程度の軽い誤認というか、「異変を探知する正常な能力」のうち、無意識な「これはいつも通り」と意識から除外する機能を暴走させたというか。
正常な機能の強化ぐらいしかできないので、機能を狂わせて裏切らせる、みたいなことはできない。ので、その場で始末した。
認識されないなら銃声なんか鳴らさずスルーすればいい?
後で認識関係なく入り口塞がれたりしたら困るので、入り口に近い=出会った敵は皆殺し。
警報が鳴ったように、機械は騙せないし、あえて鳴らした警報とか、銃声なら作中の通りだけど、普通にミスって本人も知らずに認識された警報=異変は「正常と認識」させれないので、自分の銃声はどんなに響いても良いけど、間違ってぶつかったり、音を立てたりしたらやばい。
最後に足音が認識されてたのと同じ。
別に油断してたとかじゃなくて、足音を消す歩法なんて知らないし、毎回「正常と認識」させるのは面倒だから、そのままやっただけ。