「浮気してるでしょ」と言われ傍観していると、彼女さんの彼氏さんが退学になった。なお実話である。
私は人に興味がない。
これはそんな私がかけられた謎な冤罪の話である。
私がいつも通り席で本を読んでいると、おそらく友人2人を左右に連れて私の席に近づいて来るクラスメイト。
開口一番
「私のダーリンと浮気してるでしょ」
可哀想な人来たー!と思った私は悪くないと思う。
とはいえ聞かれたならきちんと答えるべきだ。
「あなたのダーリン? さんの顔も名前も知らないし、会ったこともない。この状況で浮気ができるなら逆に知りたい」
事実である。
彼女さん達は黙って去って行った。何がしたかったのかと首を傾げつつ読書に戻る。
私はイジメられてるから三者面談をするという話を教師から聞いた。
初耳である。私はイジメられていたらしい。すでに決定事項のようなので黙って頷く。
まあ両親いわく、私は小・中と凄絶なイジメを受けながら毎日登校していたメンタルの持ち主らしい。誰のこと? と思いながら聞き流していたが、気づかなかっただけで何かあったのかもしれない。
この話は高校にも入学時に伝わっていたそうだが、私が知ったのは卒業後なので時効だろう。
家で三者面談。2人教師が来た。暇なのか。この日は父が対応。話題は浮気問題一択。
? を浮かべながら適当に話をあわせる父を横目に、何も聞かれないので置き物と化す私。
教師が帰った後父に聞かれた。
「何あれ?」
「知らん」
三者面談の話題終了。
席で本を読んでいると、彼女さんと直接話をするよう教師から言われた。
私をイジメていたのは彼氏さんらしい。
イジメの話と浮気の話は両立できるんだなと、新たな発見をしながら黙って教師について行く。
道中暇なので教師と雑談。
「山田(覚えてない)はなぁ」
「何ですか? それ」
人の名前だと認識出来なかった私は教師に聞く。固まる教師。前後の会話からおそらく彼氏さんと推測。
「ああ、人名!」
解ってスッキリ。教師は頭が痛そうにしている。どうやら私が相手の名前すら把握してないことに気づいたらしい。
会話の間中、彼女さん、彼女さんのダーリンさんとしか呼称してなかったのだが、気づくのが遅過ぎやしないか。その場で帰っていいと言われた。
私がいつも通り席で本を読んでいると、彼女さんアゲイン。
開口一番
「ダーリンが退学になった」
「あっそう」
それ以外に何を言えと。
彼女さん達は黙って去って行った。何がしたかったんだ。
読書に戻りつつ、彼氏さんが冤罪でないことを一瞬だけ祈っておこう。
私は人に興味がない。
休憩時間、移動教室でない限り席から一歩も動かず読書。
教師に当てられたら次の人指名制。名前を覚えていませんと言い放ち時を止めた。
彼女さんは私が顔を覚えてるので同じクラスで近くの席。何故浮気してるなんて思い込めたのか謎である。
後日、父は生徒指導の教師にめちゃくちゃ謝られたそうだ。
なお、一連の流れで私は一度たりとも、事情聴取も、事情説明も、謝罪も受けていない。
最初に一言聞いていればきちんと答えたのに。
そんな奴顔も名前も知らないと。