LINEのピン留め機能で恋人の有無が判明した話
LINEのトークのピン留め機能は基本的に便利だが、時に残酷な事件が起きることがある。
誰かのスマホの中身がチラッと見えてしまったとき、思ってもみなかった人がピン留めされていたら?知れて嬉しいこともショックなことも、この世に隠された人間関係を教えてくれるのである。
当時、私は気になる男の子がいたのだが、なんと仲間内の女の子のLINEに、その彼とのトークがピン留めされていた。嘘でしょ、あの二人付き合ってるんだ……。
さて、LINEのピン留め機能とは、基本的にはやり取りをした時刻順にトークが新旧で並ぶ中で、選んだ人のトークを常に一番上に固定しておくことができる機能である。
ピン留めをしておけば多くのトークの中からその人を探す手間が省けるので、かなり便利だ。そしてどうやら、全てではないが一定数のカップルが恋人とのトークをピンで留めておくようである。
しかし、私は皆が便利さだけの理由でピン留めをしているわけではないと思っている。
私、付き合ってる人がいるからすごいでしょっていう承認欲求と、この人は私のものなんだよっていう独占欲を満たしているのではないかと。
皆さん、恋人になった人のトークにえいってピンを刺すこと自体が嬉しいですよね?
本当はピン留めしてあるところをちらっと誰かに覗いてもらいたいですよね? ふふふ、わかってますよ、私だって楽しいですしちょっと優越感があるのも確かです。
さてさて、今回はそんなピン留め機能によって失恋した話。
大学生になってとある実行委員会に入っていたとき、気になる人ができた。恋人がいるかどうかはわからなかったが、周囲でそういう噂もなかったし、相手からLINEを追加してくれるという嬉しい出来事もあったので、てっきり私は彼に恋人はいないのだと思っていた。
その人とは実行委員の集まりがあれば話したし、LINEでもたまにやり取りをしていて、これはいい感じに展開していくのではとすら思っていた。
それがなんと大誤算で、私はかなり痛い女だったのである。
その実行委員で同じ担当になった人たちと大学の教室で作業をする日があった。そこで集まったメンバーのほとんどはまだあまり喋ったことのない人たちだったが、その中に以前何度か話したことがあるAちゃんがいた。
私はAちゃんの隣に座って作業をすることにした。ちなみにこの時、私が気になっていた人は別の担当でいなかった。
やらなければいけない作業はかなり時間がかかり、息抜きで何か食べたいという声が上がった。
そこでAちゃんと私が大学内のコンビニに買い出しに行くことになった。二人で大学の一番大きな通りを歩く。時刻は18時くらいで、あたりは割と暗くなっていた。
道を歩いていたとき、Aちゃんのスマホに別の実行委員のNちゃんから緊急の連絡があったようで、彼女は一度立ち止ってスマホを開き返事をし始めた。私はすぐ横にいたので、故意に見ようとはせずともそのLINE画面を覗くような形になった。
そして個人LINEを終えたAちゃんが、Nちゃんとのトーク画面を閉じたときである。いろんな人とのトーク一覧の画面が見えたとき、私が気になっていた人のアイコンが一番上に見えたのだ。
あれ?
だが、あたりが暗かったのでよく目を凝らしても彼にピンが刺してあるかどうかは判別がつかなかった。そして、Aちゃんはすぐにスマホの画面を消してポケットにしまってしまった。
あれ、私の気になる人がピン留めされてた?
でも、まさかそんなことはありえないと思った。だってAちゃんとOくん、話しているところは見たことあるけれど、そこまで親しい感じではなかったのだ。まさか、そんなことはあるはずない。
きっとピン留めは気のせいで、実行委員の関係で何か連絡することがあったのだろうと思うことにした。心はざわざわしていたが、確信が取れないうちはAちゃんには聞けなかった。
買い出しから戻って作業を再開し、夜も遅くなってきたのできりのいいところで終わらせることになった。
Aちゃんが会長に作業報告をしていたときに、私はちょうど彼女の後ろに立っていた。またLINEのトーク画面を開いているところだった。頑張って覗かなくても、その位置からばっちりと彼女のトーク画面が確認できた。それから、たった一人ピン留めされている私の好きな人まで。
うそでしょ?
数十秒くらい、私の思考は停止した。
あの二人って付き合ってるの? いや、まさか? ただの友達とか? でも、ただの友達でピン留めなんてするだろうか……。
Aちゃんはスマホを閉じて皆に片づけを呼びかける。私は悟られないように必死で片づけをしたけれど、脳内ではうそでしょ本当なのまさかあの二人が、と大混乱していた。
帰り道でも私とAちゃんは方向が同じだったため、ちんたら歩く男子たちより先に二人で歩いていた。その時に意を決して聞いてみた。
「ねえ、Aちゃんってもしかして、Oくんと付き合ってるの……?」
私の心臓はどきどきしている。どうか、付き合ってないよ、ただの友達だよって言って。
「ええ! なんで分かったの!?」
Aちゃんはかなり驚いていて、YESとは言わなかったけどその反応で私は全てを察した。
「ごめん、さっきLINEのトーク画面がたまたま見えちゃって。そこにOくんがピン留めされてあったから……」
私は自分の恋心を必死で隠しながら訳を話した。Aちゃんはあああ、と理解顔になる。
「実はそうなんだよね」
って、照れながら嬉しそうに笑う。でもそこには全く自慢がなくて彼女は純粋に嬉しそうで、Oくんがこういう子を選ぶのもよく分かった。私は圧倒的に負けてると思った。
それからAちゃんにはいつから付き合っているのかとか、どっちから告白したのかとかなど色々と質問攻めしていった。単純に興味本位だったからだが、聞くたび私の心には槍がぐさぐさ刺さっていった。
槍というか、もしかしたら刺さっていたのはピンかもしれない。大量のピンが私の心にぐさぐさ刺さってきた。Aちゃんと駅で別れる頃には心身ともにかなりぼろぼろになっていたと思う。
Aちゃんに手を振って別れる。彼女が見えなくなった途端、私は悲しくて辛くてその場にしゃがんでしまいそうになった。それに、これはいけるかもと思って浮かれてOくんとLINEをしていた自分が恥ずかしくて、穴があったらそこから一生出たくないと思った。
それからというものの、LINEのピン留めには敏感な私である。
※個人が特定されないように団体や友人などは設定を変えています
ただし自分のことはだいたい赤裸々です