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2話

「会場にお集まりの皆様、これより奴隷即売会を行います。即売会にご参加を希望される皆様は、この闘技場地下にある大ホールへお越しください。お帰りをご希望の皆様はあちらの出口からご退場ください。繰り返します。」




アナウンスに誘導され、ニナリーとサヴァルは地下の大ホールへと向かった。


何とも豪華絢爛な造りで地下へ降りても、煌びやかな光景が広がっていた。


前方には吹き抜けのステージがあり、カーテンで覆われている。




仮面を被ったスタッフに「アーストン様はどうぞ此方へ」と個室のVIP席に案内され、


グラスに入ったジュースを手渡された。




と、入り口でふと止められた。


「お連れ様のご入場はお断り致します、このVIPルームには、貴族の方だけのご入場をお願いいたします。」とサヴァルの入場を拒否された。




「は?こいつは私の護衛よ。私に何かあったらどうするつもりよ。」


不機嫌を隠さずにニナリーは仮面のスタッフに文句を言った。




「そうですね、困ります。お嬢様が目に見えないところに居られては。どうにか私も入場させていただけませんか?」


サヴァルも懇願する。




「申し訳ございませんが、不可能です。何故なら、VIPルームの安全確保の為にも身分の知れた方のみご入場いただく仕組みですからです。故に安全は保証致します。


お連れ様が入り口でお待ちいただくか、了承出来ないのであれば、この場でお二人ともお帰り下さい。」




「ふーーん、じゃあ、サヴァル。あなたは此処で私に危険が及ばないよう監視しておいて。」


「え!?お嬢様お待ちください!私の手の届く範囲に居てくださらないと護衛がー…




「うるさいわね。2度も言わせないで。


さっさと買って帰りたいのよ。私の言った通りにしなさい!」




そう言ってサヴァルの必死の言い分を無視してVIPルームに入った。




ガチャリ!!!と重厚な鍵の音がしてシャラシャラとチェーンの音が聞こえる。なるほど安全は保証されているようだ。




ステージの目の前の部屋で、その時少しだけワクワクしていた。まぁどうせすぐに飽きるだろうけれど、あの燃えるような赤い瞳を自分のものにしたいという、まるで幼な子が自分のおもちゃを強請るときのような気持ちが芽生えた。




「ご来場の皆様、この即売会はオークション形式になります。お手元の機会から値段を記入して一番金額が高い方が落札となります。


では、ごゆっくりお楽しみください。」




バニーガール姿の仮面を被った女がそう言い残しステージから退いた途端に幕が上がった。すると20人ほどの番号札をつけられた人間が板に縛りつけ、出てきた。




そのなかには燃えるような赤い眼をした彼もいた。






すぐさま私は私が今日持ってきた予算全てつぎ込んだ。彼のプレートナンバーである0001番に恐らくこの奴隷オークションの最高額であろう金額を。




何分かしたのち、投入額が発表された。


0001番の最高投入額は言わずもがな、私だった。カシャンと彼を縛る鎖が外れて足枷と首輪だけつけた彼がこちらへ向かって誘導される。




「0001番様、こちらはアーストン公爵令嬢のニナリー・アーストン様です。こちらがあなたの投入最高額でありますので、今日からあなた様は彼女の所有物となります。」


仮面をつけたスタッフはそう言った。




彼は無表情のままだったが、私を見るなり年齢の若さに少しだけ驚いたのか目を見開いた。だが素早く、態度を入れ替え私にお辞儀した。




「…ネスト・ハイゼルマンと申します。よろしくおねがい致します。」






「ニナリー・アーストンよ。まぁニナとでも呼んで頂戴。これからよろしく」


そう手短に挨拶を済ませ、彼を連れて帰ろうとする。




「アーストン様、せっかくお越しいただき、


こうして、最高額でお買い上げいただきありがとうございます。もし、よろしければVIPルームの最先端の設備をご堪能してから、お帰り頂ければ幸いです。」


と仮面のスタッフが私に声をかけた。






これ以上の長居はしたくなかったが、どうしてもと懇願されこっちで長引くよりはと再びVIPルームに入った。




するとこちらをチラッと見た少年が、先程仮面のスタッフから貰ったジュースを進めてきたので言われるがまま口にした。






すると少年は、ニヤリと笑い、


「まさか、俺より年下?に買われるとは意外だったけど、ホントちょろいな、お前。バーカ。」


と言った。




一瞬何が起こったのか分からず、唖然としてないると、ものすごい睡魔に襲われた。




そしてその場にふらっと倒れる私を「おっと、危ねぇな。」と言いながら彼は私を支えた。遠のく意識の中で、早速買ったことを後悔し、私に向かってバカ呼ばわりした人間は初めてだったので、どう調教してやろうかと、復讐を心に誓い、そのまま瞼を閉じた。






「ん…?」


目を覚ますと体が縛られて衣装が剥ぎ取られ、アクセサリー類も全て取られ汚い奴隷の様な服を着せられていた。何故か身体中の至る所に吸われたような注射跡のような赤い跡が付いていた。




「…?は?」


と思わず声が漏れる。




「あぁ起きた?残念、もう全部取られた後だったな」


見上げると赤い眼の少年、私が買ったはずのネストが立っていた。




「どういうつもり?」と聞こうとしたが、そんなことは想像に容易い。私ははめられていたのだ。最初から。


大方、オークションという名目で貴族を地下の目立たない場所に招待し、そこで大量のお金を取り上げ、奴隷を買わせ、そこで貴族を薬で眠らせた後に、金目のものは全部奪って、収入源となる奴隷も回収するつもりだろう。


「何で悪質なの…本当に下衆ね…。」


ポツリと独り言を呟いたつもりが聞こえていたらしい。




「はぁ?どっちがだよ。そっちだって、奴隷に命懸けで戦わせておいて、奴隷が無惨に死んでいくサマを快楽にしたり、勝敗をあちらこちらで賭けたりしてんだろ。お前らだって下衆だろ。」


少年ーーネストが信じられないほど荒々しい口調で返してきた。




「まぁ、大人しくしてればそのうち上の奴らから指令が出て、その辺の森に捨ててこい。って言われると思うから。8回目だし。過去に俺のことを買おうとした気持ち悪い変態共もそこでフラフラしてっから。生きてればだけどな。」


そう言いながらバキッと自身の足と首についていた金属の枷を外す。




「まぁ、8回目だったけどお前みたいな奴は初めてだったわ。見ぐるみ剥がしたの俺だけどシミひとつないし、まだ体は貧相だけど、


ちょっとだけ勿体ねぇなと思ったわ。」




「なっっっ!見たの?!?!」




「ははっいくら綺麗な肌でもお前みたいな貧相な体に興味ねぇよ。売ったらいくらすんだこれって思いながら脱がせただけだ。」




なるほど。こいつは死刑だ。


絶対に地の果てまで追い詰めて後悔させてから殺す。


もう腑が煮え繰り返っていたが、ぐっと堪え、この状況をどう打破するか考えることにシフトした。




「…私こそ、あんたみたいな人間は、初めてだったわ。闘うあんたのその燃えるような赤い眼を見た時、『羨ましい』って思った。


なにか絶対に成し遂げるべき強い意志があって、その目標を叶えるまでは死ねないっていう強い瞳で、見た瞬間生きる勇気が湧いてきた。一目惚れに近いと思ったわ…。」




吐き出したのは、本心だったが、こんなに素直に告げるのは自分が助かりたい為だった。




沈黙が続いたのち、


「…フン。まぁ、野望はあるさ。絶対に叶える。お前には絶対に分からないことだろうがな。お前を捉えて此処にいる奴らに従うのも目標達成のための手段だ。好きでやってるわけじゃねぇけど、お前には言いなりになってもらう。」




彼は好きでこんなことをしているわけではない。そう考えると、買った後悔が少しだけなくなった。




「ねぇ、さっきあんた、私にバカって言ったわよね?」


「なんだよ、根に持ってるのか?騙されたやつに馬鹿だと言って何が悪い。」


「その言葉そっくりそのままお返しするわ。


ねぇ、考えてみてよ。あんたの野望は、あんたがここで下衆みたいな奴らの言いなりになって達成すると本当に思ってるの?」


「……!!」


「あんたがやろうとしてることが、何であってでも社会階級の壁がある限り、達成は困難ではなくて?私、こう見えても天才公爵令嬢なの。此処にいる下衆と私の権力比べてみてよ。しかも私はあんたを買ったから、アンタは私とくれば、王家に限りなく近い環境で過ごせる。アンタは強いんだから騎士くらいにはすぐになれるわ。そこで道を切り開いていって力をつければ今より断然やれることが増えるのではないかしら。」


「……。」


「ねぇ、おバカさん?そこまで頭が回らなかったのかしら。私は生憎、あんたのような野望がずっと小さい時から一度もないの。だから、アンタの野望に付き合わせてよ。なんだかとっても面白そうだわ!!」


「……はぁ。」




ずっと眼を大きく開き私をみていたネストは


やがてため息を吐き、私の拘束具を外した。


「…たしかに、そっちの方が近道そうだ。」


「ふふ?契約成立ね…?」




解いたのちに彼は私を両手で抱え上げた。


同い年くらいの男の人に触れられるのは人生で初めてだったから、少しだけ頬を染めた私を見て、彼も気まずうに眼を逸らした。




「とりあえず、どうやって此処から出る?見つかれば射殺されるけど。」


「ふふ、もう拘束されてないから、やっと呼べたわ。」


「?!」




ドカッッッガラッッ




壁が壊れる音と共に


「大丈夫ですかお嬢様?!?!?!?!」


とサヴァルが慌てて私の元へやってきた。






「サヴァル、あんた私のこと監視してなさいっていったわよね。一体どういうことなの?」


「す、すみませッ…どうやらVIPルームのガラスは特殊加工だったようで中で起きていることと、外から見える景色は、違う様に映っていたんです!しかしどうにも時間がかかりすぎていたのでとりあえず全員気絶させてからお嬢様の救助反応があったので向かった次第です!」




サヴァルはこれでもアーストン公爵令嬢近衛騎士。騎士団の中でも、とくに特別な位置にいる部隊だ。


「まぁ、呼んでからは早かったから許してあげる。さぁ、帰るわよ。サヴァル。そして、ネス。でいいかしら?」


「なんだ、ただの時間稼ぎかよ…。仲間になってなかったら俺も気絶させられてたな、好きに呼んでくれ。」


「いいえ?あなたには帰ってから一度気絶してもらうわ!私の裸を見たでしょう?私に向かって馬鹿とも言ったわよね。到底許されることではないわ。帰ってからお仕置きしてあげる!」


「なっっ!」


サヴァルとネスは2人揃って驚いていた。


「は、はだ…?!何があったのですか?!というかお嬢様、その服は一体?!?」


と慌てるサヴァルと額に汗を浮かべたネスと共に地下から抜け出した。






家に帰った私は、まず綺麗なドレスに着替えてその後でネスに3回まわってワンを強要させた。初めは、「はぁ?!やるわけないだろ?!」と言っていたネスも騎士団最強であるサヴァルからの殺気を感じ取りぎこちなくこなしていた。サヴァルはネスが私に服を剥ぎ取るという行為をしたということをそれから一週間ほど根に持っていた。

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