第71話 憧れの舞台
私が登場すると、ファンの人たちは一気に盛り上がってくれた。
私の後ろの大画面には、リアルタイムのコメントが映し出されている!
コメント:ついに、個人パートラストだ
コメント:みすずん、一番若手なのに、すごい重要なポジション任されたな!
コメント:舞台衣装、めっちゃ似合ってるじゃん
コメント:いつもより、少しだけ大胆な衣装。めっちゃ似合うよな~
コメント:世界よ、これが日本のASMRモンスターだ
今回の個人パートはすべて自分に演出を任せてもらった。もちろん、プロと相談したけど、私が考えたプログラムになっている。
そして、私は一番最初に最もポピュラーな曲を歌い始めることにした。
他社のVチューバーさんも良く歌っているあの曲だ。
ファンのみんなへの感謝とさらに自分を見てもらいたいという感情、前に突き進む不安を歌う王道の曲。
この曲を選んだのは、とても勇気がいることだった。
皆が歌っているから、比較されやすいのはもちろん、ゲームの挿入歌だから、元からのファンの人もいる。イメージを壊されたと言われたらどうしよう。一番の後輩の私が、こんな王道の曲を選んで、センパイのファンからひんしゅくを買ったらどうしよう。
最初はずっと怖かった。
でも、どんなことも最初は怖い。
Vチューバーとしてデビューした時も……
人気が出て、初めてバズった時も……
登録者10万人記念枠を取った時も……
センパイと初めてちゃんとしたデートをした時も……
彼と初めて気持ちを確認した時も……
ずっと怖かった。
だけど、その不安を乗り越えた先に、最高の未来はあった。
センパイも、その才能のせいでたくさんの不安があるんだと思う。
私ももっと重いその不安によって心は押しつぶされている。
だけど、自分がクリエイターになったから、よくわかる。その苦悩と不安を乗り越えた先に……最高の未来は待っている。
そして、乗り越えなければいけない壁が大きければ、大きいほど、その幸せは大きくなる。
センパイは天才的な創作者だった。だから、あの大きな壁を乗り越えれば……
まちがいなく……
怪物は、誕生する。
そうなったら、私は置いてかれないように必死に努力しなくちゃいけないんだろうな。
だから、どうか、神様……
届いてっ!!




