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第70話 舞台へ

 クリスタル・クリエイトのクリスマスライブイベントがついに始まった。

 先輩たちからライブは始まり、思い思いのパフォーマンスを発揮していった。


 歌が得意なセンパイは、圧倒的な歌唱力で、視聴者さんを魅了していく。

 ダンスが得意な先輩は、バク転を披露したり、アクロバティックな動きで、視聴ささんをくぎ付けにしていった。


 園長みたいにトークが得意な人は、歌と歌との間にフリートークをはさみ、コメントを拾いつつ、場をどんどん盛り上げていく。園長は自分は、歌もダンスもできない劣等性なんて言っているけど、それを補っても余りある才能をみんなに披露していく。同期だけど、その圧倒的なセンスに、ちょっとした嫉妬感もにじませながら、私は先輩たちや同期達のパフォーマンスを見ていた。


 今回の出演予定は、デビュー順だ。私は、一番後輩だから……本当に一番最後。

 最後に全体曲があるけど、それにつなげる一番大事な立場だ。


 こんな大事な立場は、本当だったらもっと人気がある人がやるべきだと思う。

 でも、満場一致で一番後輩の私が選ばれた。それはなぜかよくわからない。でも、社長は「みすずが、一番コンセプトがわかりやすいからね。伝えたい内容や自分の得意不得意がよくわかっているのが、キミの強みだ。そして、それがわかりやすい成長にもなる。視聴者は、キミのような女の子に共感してくれると思うんだよ」と言っていた。


 私が「共感?」と聞き返すと、「そうだよ、共感だ。ネットを使ったエンタメは、テレビや新聞みたいな昔からあるメディアよりも、相互の関係が大事なんだよ。視聴者と演者がとても近いんだ。同じものを一緒に作り出していると言ってもいいね。そして、キミはみんなから共感される特別な才能を持っている。古くからのメディアでも重宝された才能だけど、ネットメディアにおいては、最強の武器になる。良い意味で、キミはすごいんだよ」と笑っていた。


 社長が信じてくれた才能を、リスナーやメンバーが面白いと言ってくれる私の才能を、センパイが「特別」だと思ってくれた新しい私を前に進める。


 ネット配信者は、「猫を被っている」という人はたくさんいる。それは否定できない。たしかに、私たちは身バレを防ぐために、隠さなくてはいけないこともある。言ってはいけないこともある。でも、生放送を続けていけば、自分の本質は絶対に隠せない。嘘をついても、熱心な視聴者さんの目を欺くことなんて無理がある。



 私たちは、本当の自分をさらけ出さないと、放送なんてできない。

 だから、私はあの舞台にすべてを置いてくる。


 園長が私に目配せした。ついに、やってきたのだ。最高の舞台が……


 今回のイベントは無料配信だから、視聴制限なんてものはない。相手にするのは全世界。逃げも隠れもできないステージへと私はゆっくりと進んでいく。

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