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第69話 近づく本番

「みすずちゃん、お疲れ様! お互いにクリスマスなのに、お仕事はつらいねぇ。お姉さんなんて、ガチで婚期が削られていくからね。ねぇ、スタッフさんでもいいから、この後で誰か楽しいクリスマスディナーしませんか~! 配信でリスナーさんたち誘ったのに、「はぁ」とか「きっつ」とかしか言われないんですけど。私って大人気配信者のはずなのにぃ」


 園長はいつもの様子で、マシンガントークを繰り出してくる。この人が緊張しているところはみたことがない。むしろ、ちょっと緊張感が高まりすぎている同僚やスタッフさんたちの肩の力を抜くために、こういう自虐トークで笑いを取っている。


 園長はいつも言っている。私たちは、「裏方のスタッフさん」たちがいなければ何もできないんだから、勘違いしてはいけない。そういう目に見えないところをないがしろにすることで、チームや会社は潰れていく。歴史がそう証明しているって。


 園長は何でもかなりの歴史オタクらしい。配信では、ちょっと隠しているけど、リアルでは大学院を卒業したものの、アカデミックな人間関係に疲れてニートしている間に配信業で才能を見い出されたちょっと変わり種でもある。こう見えて、アジア系の言語が得意で、将来は悠々自適にアジアの奥地で隠居するのが夢らしい。


 リアルな園長は渋過ぎる。


 園長は最近リメイクされた「関白立志伝」の実況が話題になっている。ひたすら副業に勤しみ、金を貯めて、戦争そっちのけで隠居生活。茶の湯や各地の名所めぐりを堪能している。ディープな歴史知識のせいで、ちょっとした年配層からも支持を広げているらしい。もはや、園長ってレベルじゃなくて、組長とかそっち系。


 ちなみに、園長が好きな司〇作品は『王城の護〇者』らしい。ガチな感じしかない。今度のお正月連休は、飲酒しながら歴史オタク雑談とかしたいと言っていたけど、もはやおじさんじゃんと皆に突っ込まれていた。


「ずいぶん、覚悟を固めたね、みすずちゃん。ちょっと大人っぽくなって、園長も嬉しいよ。戦う女の顔になった。それなら、私も安心だ。やってきなさい。きっとうまくいくわ」


 本番直前になって、園長の笑顔は私の心を直接、響かせる。


「うん、がんばってくるよ、園長っ!」

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