第67話 親友のアシスト
「はぁー」
俺は昼休みに、焼きそばパンを食べながらため息をついた。
どうして、こうなったかわからないが、今自分はかなり複雑な場所にいる。
それだけは自覚できた。
「どうしたんだよ、親友? さっきからため息ばっかりついているぞ」
史和は、俺を心配してくれている。
「いや、なんでもない」
「なんだよ、それ。だって、古賀ちゃんとは相思相愛が確実になって、今度のクリスマスにお互いの気持ちを確かめ合うだけの勝ち確状態だろう。幸せの絶頂なのに、そこまで落ち込む必要あるのか?」
「いや、そうなんだけどさ。結構複雑なんだよ」
史和には、中学時代の活動を伝えていないので、ちょっと曖昧な風にしか答えることはできなかった。
「そうか」
「軽いな」
「だって、あんまり深入りして欲しくないんだろう?」
「そうだけどさ……なぁ、史和。お前にすごい才能とそれに関連するトラウマがあったとするじゃん?」
「えっ、なにそのマンガ脳?」
そう言われると思わず苦笑してしまう自分がいる。現実は小説より奇なりとはよく言ったものだ。
「まぁ、そこは突っ込まずに聞いてくれよ。でさ、そのトラウマを乗り越えようとして失敗している人間ってやっぱり情けないよな?」
俺は、ほとんどオブラートに包まずに聞く。親友はその方が率直に客観的な意見を伝えてくれるはずだからだ。
「はぁ。何を言っているんだ、一樹」
「だよな、バカみたいだよな」
「めっちゃ、すごいじゃん、そいつ!!」
「えっ!?」
思わず変な声をあげてしまう。予想もしない言葉だった。「才能ある癖に、甘えるなよ」とか「天才の苦悩っていうナルシスト?」とかそんな言葉が出ると思っていたからだ。
「だって、そうだろ。すごい才能を持っている奴が、その才能を捨てようとするくらい酷いトラウマなんだろう?」
「あっ、ああ」
「でも、その天才はそのトラウマを克服しようと必死にもがいている。そんなの応援しないと、罰が当たるっていうかさ。何もなくストレートで伸びた天才って、ちょっと近寄りがたいけどさ。そういう、人間臭い感じ嫌いじゃねぇよ。たぶん、そういう奴こそ、怪物になれるんだと思うな、俺は……」
その親友の笑顔に俺は少しだけ救われた。
「ありがとうな、史和」
なぜ、お礼を言われたかわからないような顔になっていたが……
俺は、やっぱりもう少しもがいてみようとそう決心した。
クリスマスは、もうすぐそこに迫ってきている。




