第37話 みすずファン過激派
俺は昨日の配信を思い出す。たぶん、変な夢を見たのはこれのせいだ。
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「それでは、みんな!! 今日は愛しのマイプリンセス!! みすずちゃんの新作耳かき動画を一緒に見ようね!!」
ついに問題の配信が始まった。プリンセス・クリエイト3期生のリーダー的な存在である異世界から来たメイド・みたらし=アヤカの配信だ。いつもは知的で仕事ができるクールビューティーキャラだ。イベントを企画することが得意で、準備や調整もして、最後はイベントのMCまで全部一人でやってしまうできる女性だ。
だが、優秀な人間は常にストレスにさいなまれているというのはお約束で……
あまりにも疲れた時は、完全に暴走する。それも、幼児退行系の暴走を……
さらに、アヤカは、みすずのASMRファンガチ勢で、俺たちと同じように寝る前は、毎日聞いているらしい。
「はじまった!」
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『センパイ、なんか疲れているんじゃないですか? そうだ、耳かきしてあげますよ』
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「うひよー、愛しのマイエンジェル・みすずたん。マジ最強ぅ」
コメント:違うんです。いつもはこんな感じじゃないんです。
コメント:人は何もできずに生まれ、最後は何もできずに消えていく。
コメント:あれ、配信枠間違えた?
コメント:おい、新入りか? 肩の力抜けよ
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『ふふ、いつも頑張っていますからね。今日だけは特別に頭をなでてあげますよ』
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「ひゃっはー!! みすずたんに頭なでなで。至福っ。あー、このために配信頑張ってると言っても過言じゃない」
コメント:推しの幸せが、俺の幸せ
コメント:そうだね。アヤカは偉いよ
コメント:えっ、これいつまで続くんですか?
コメント:終わるまでだが?
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『じゃあ、いれるね。痛かったらすぐに言ってね』
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「ああ、入ってる。すごく気持ちいいです」
コメント:俺たちはいったい何を見せられているんだ?
コメント:考えるな、感じろ
コメント:健全な耳かき配信同時視聴枠で、アカウント停止になったらある意味伝説。
コメント:よく考えろ。これは健全かどうかをな?
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『ふふ、センパイ気持ちよさそう。今日はたくさんサービスしちゃいますね』
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「きちらあああぁぁぁぁああああ。ああ、生まれる。私の耳から何かが生まれるぅ。そうね、これが愛。私はママの愛に包まれているんだわ。おぎゃあ、おぎゃあ。いい、皆に言っておくわ。みすずは、私のママになってくれるかもしれない女性だ!! ジーク・ジ〇ン」
コメント:単なる耳掃除の結果を言っているだけで草
コメント:てぇてぇ?
コメント:感覚を破壊された
コメント:でも、幸せならOKです!
コメント:いろんな意味で伝説で草
コメント:根はいいやつなんです
両者のファンを完全に置き去りにして、心配した運営さんが配信を強制終了させるまでに、あと10分もかかりました。




