第35話 飲酒配信
最近、寝不足だ。だから、今日こそは早く寝る。その決心はなぜか、布団に入る寸前に崩れてしまう。だって、この世の中には誘惑が多すぎる。なぜ、Vチューバ―さんたちは、人が寝ようとした瞬間に、なんでおもしろそうなゲーム配信や飲酒配信を始めるんだよっ!?
そう思いつつも、ついつい推しの動画を見てしまう。午前1時。明日の朝には絶望的な後悔を感じているはずだが、今は幸せだ。
今日は園長とヒカル(自称:オタクに優しいギャル)の酒盛り配信だ。
ヒカルは自称10代(笑)で、普通にお酒を飲める。何を言っているかわからないと思うが、みんなわかっていない。
園長はイメージ通りの酒豪。ふたりとも高級ウィスキー(アルコール度数43)でハイボールをバンバン作って飲んでいる。
「やっぱり、贅沢して買った"吹雪~Fubuki~21年"は最高ね」
「えんちょ、どんだけ奮発したのよ。これプレミアム化しているお酒でしょ?」
「いいの、いいの。いい、ヒカルちゃん。おぼえときなさい。女は、酒を知って大人になるの。いや、女は、酒を着飾って美しくなるのよ。ってか、もう炭酸水なくちゃった。ストレートでいっか!!」
※
『ついに、ストレートで飲み始めた!!』
『まだ、飲むの!? 肝臓が限界のはずなのに……暴走!?』
『やめなさい、園長。女に戻れなくなる』
※
「大丈夫、えんちょ? コメント欄がいろんな意味で荒れてるけど?」
「配信がどうなったっていい。でも、婚期だけは……つかみとる」
なんか寸劇モードがはじまった。ノリのいいコメント欄と配信者の組み合わせにお酒が混ざると、危険だ。
※
『飲みなさい、園長!! 誰かのためじゃない。この配信を見ている視聴者のために!!』
『なんか、すげぇヤバめのエヴ〇はじまったな』
※
そんなこんなで30分経過。
「あひゃ」
園長は完全に酔いつぶれていた。今日がオフコラボで助かったな。
「もう、えんちょ。それくらいで」
「てぃうか、みすずちゃんって、かわいいよね。なによ、あの園長がすべてを失ったものを全部、持ってる完璧エロエロ美少女。肌の質感が違い過ぎるのよ」
「でも、えんちょもすごいところいっぱいあるじゃん」
「でもね、圧倒的に足りないものがあるのよ。怖いものがないみたいな、圧倒的な若さ!! どうして、私はこんなに大人になってしまったのよぉぉぉぉおおおおおぉぉぉぉ。青春カムバック!! うっ……」
「えんちょおおおおおぉぉぉぉぉおおおおおお」
大絶叫の後に、園長が完全にフリーズした。高度数のアルコール、女。何も起こらないわけなく……




