第31話 夜の散歩
コラボ配信を見て、いろいろと気分が高まってしまいなかなか眠れなくなった。ここ最近、推しの配信関係で寝不足が続いているな。
少し夜風に当たって、気持ちを落ち着けよう。21時か。コンビニに行って、飲み物でも買ってくるか。
俺は外に出た。少し歩いた後、スマホが鳴った。
しずかからのコール。
「センパイ、どこに行くんですか?」
「ああ、見てたのか。ちょっとコンビニに行こうかなって」
「え~、いいなぁ。私も一緒していい?」
「あ、ああ」
そんな感じで俺たちは夜の散歩へと向かう。
※
「ふふ、なんだかいけないことをしているみたい」
「あんまり褒められたことじゃないだろうけどさ」
「まぁ、23時を超えて、ゲームセンターとかファミレスには入れませんけどね。私も事務所の方針で20時超えたら収録からタクシー使って送ってもらいますし」
「まぁ、高校生だからな」
「一応、個人事業主扱いなんですけどね~」
ファンのストーカー化は怖いし、事務所もかなり気を使っているんだろう。SATOO社長も、登下校を一緒している俺を会社のバイト扱いとして、少しだけ給料を振り込んでてくれている。
意外にホワイトなんだよな、あの事務所。長時間労働はよくあるみたいだけど、スタッフの人員は多くとっていて、ローテーションで休みを取れるようにしているらしい。黎明期のVチューバ―事務所は、いろいろブラックで社会問題化していたが、どんどん改善されているんだな。
「私も女の子だから、この時間の一人歩きはさすがに控えてますよ。先輩がいるから今日だけは特別」
「今日のバイトもおもしろかったよ。やっぱり、先輩後輩で仲が良いんだな」
「うん。たまに、邪推されることもあるけど、やっぱり協力してものを作ったり、場を盛り上げていく仲間みたいな意識が強いかな。先輩たちはみんなすごいし、それぞれの分野で専門を持っていて、尊敬しちゃうな。私も後輩が入ってきたら、あんな風に優しく接してあげたい」
うう、箱推しの琴線に刺さる。なんか余計に楽しくなってきた。
「よし、この前の焼き肉のお礼に、アイスでも奢ってやるよ」
「え~いいのぉ? なら、私はバーゲンダッツが食べたい!!」
「ん? コンビニアイスは150円までって学校で習わなかった?」
「え~、なにそれぇ」
俺たちはちょっとだけゆっくりとコンビニに向かう。この時間が少しでも長く続けばいいなと願いながら。
しずかは、ちょっとだけ控えに俺の服の袖をつかんでいた。




