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第28話 もはや夫婦

「センパイ、お待たせしました」

 いつものように校門の前で待っていると、遅れて後輩がやってきた。今日は委員会で少し帰りが遅くなると連絡があった。


「もう、大丈夫なのか?」


「はい! 仕事は済ませてきましたから」


 俺たちはいつものように一緒に歩幅を合わせて帰る。まだ、はじまって1週間だが、ずっと待ち望んでいた青春を送れているような気がする。


「最近は、バイト忙しいのか?」

 なるべく、公共の場では配信という言葉は避けて、バイトと称している。そうすれば、身バレの心配も少しは低くなる。


「うん。まだ、詳細はいえないんだけどね。もうすぐ、クリスマスと年末年始だから忙しくなりそう」


「そっか。やっぱり、あの業種は、クリスマスとかがかき入れ時だもんな」


「そうなんだよね。私も結構準備があって大変かも。でもね、皆に喜んでもらえるように頑張るんだ!!」


 去年の年末も、クリスマス超大型コラボ、メンバー限定癒しASMR、冬休み特別宇宙人狼、年末年始一挙特番、お正月ゲーム対決などなど。俺もひたすら冬休みをエンジョイした思い出がある。


「それは、楽しみだ」

 あー、冬休みは、遊びに誘えないのは残念だけど楽しみだな。

 そんな俺の気持ちを察したのか、しずかは少しだけ悲しそうな顔をしていた。


「ねぇ、センパイ? たしかに年末年始は忙しいけど、少しなら時間取れるし、気軽に遊びに誘ってくれてもいいんだからね?」


「えっ、いいの?」


「うん。日中は割と時間を取りやすいし、おばあちゃんもセンパイに会いたがっているんだよ。たまには、遊びに来てよ」


 たしかに、しずかのばあちゃんは俺を本当の孫のように可愛がってくれる。料理も美味しいし、俺も会いたいな。


「じゃあ、今度お邪魔するよ」

 俺の言葉にぱっと顔を明るくする。


「うん。おばあちゃんも喜ぶから絶対だよ、約束」

 冷静に考えると、後輩の女の子(数日前にキス未遂)の家に上がり込む約束しちゃったけど、やばくない?


 フラグしかないじゃん。


「ああ、約束だ」

 だが、ここで冷静になるなんてできるわけがない。だって、後輩があんなに嬉しそうに笑うんだ。


「ねぇ、センパイ、ネクタイ曲がってるよ。直してあげる」

 そう言って、少しだけ顔が近づく。お互いに顔を真っ赤にしながら、ネクタイをなおしてもらう。


「センパイは、私がいないとなにもできないの?」

 しずかは、恥ずかしそうに笑っていた。俺たちはゆっくりと家に向かって歩き出す。


 ※


 私は親友がセンパイとイチャイチャしているところを目撃してしまった。あの距離感は完全にバグってる。男女の緊張感とか通り越して、あれじゃあもう……


「夫婦じゃん」

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