表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/84

第27話 センパイって

 私は教室に入ると、自分の机に座り込み、ため息をついた。どうして、最後の最後でいつも弱気になってしまうんだろう。情けない。


 日直の佐藤君が、黒板を掃除していた。もちろん、日直というのは照れ隠しの言い訳。あと少しで陥落しそうな先輩の理性は、あと一歩のところで届かない。


 焼肉屋デートの時。あのまま店員さんが来なければ、どうなっていただろう。私たちは、一生の思い出に残る恥ずかしい体験を共有したはずなのに……


 あの時の記憶がフラッシュバックして、センパイの顔を直視できなくなってしまった。だから、あんな悪ふざけのふりをしてごまかしてしまった。


「あっ、しずか!! おはよー」

 仲の良いクラスメイトのまりかさんが、話しかけてきた。


「うん、おはよ」


「どうだった、週末のデート?」

 彼女にはお仕事の話はしていないが、恋愛相談は結構している。デートプランも一緒に考えてくれた。


 ※


「へー、二人で見た思い出の映画の聖地巡礼? いいじゃん、いいじゃん。私も見たことあるけど、あの映画の風景とてもすてきだもんね」


「やっぱり、お買い物は鉄板で。あとは、食事の後に思い切ってこっちからアプローチかけちゃいなよ。オシャレな夜景が見えるところでとかさ。大丈夫、しずかメチャクチャカワイイんだから、絶対に先輩もクラっと来ちゃうよ」


 ※


 こんな感じで、気分を盛り上げてくれた。そして、あのキス未遂事件に至る。


「えっ!? キス寸前まで行っちゃったの??」

 あまりに大きな声で叫ぶせいで、皆がこっちに注目する。


「やめて、恥ずかしいよ」


「ごめん……びっくりしちゃって……しずか、たまに大胆になるよね」


「誘惑しろって言ったの、そっちじゃないぃ」


「いや、まさかキスをねだるなんて思わないし。そもそも、センパイだってまんざらじゃなかったんでしょ。じゃあ、両想い確定じゃん。何をそんなに悩むのよ? もうこっちから告っちゃっても大丈夫じゃん」


「そうなんだけどね。幼馴染ってそんなに簡単じゃないんだよ」


「うわ、なんだかめんどくさそうな話をしようとしている」


「だってさ、恋人になったら最後、もう今までの親友みたいな関係には戻れないんだよ? それに……」


「でもさ、私にも小さいころから仲が良い友達いるからわかるけど……異性の幼馴染同士って、関係維持できるだけですごいんじゃない? だってさ、周囲からはよくからかわれるし、なんか意識しちゃうし。でもさ、ふたりともそれを乗り越えて、一緒にいたいと思って努力してきたんでしょ? それってある意味、恋人同士の絆よりもてぇてぇ気がするけど?」


 私は本質を突かれて、恥ずかしくなってしまい、顔を真っ赤にして何も言うことができなくなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ