第24話 オタクに優しいギャル?
園長の配信に見入ってしまい、さらに眠るタイミングを見失った俺は、別の配信を探し始めた。
さすがに、園長みたいな強烈なキャラクターはなかなかいないが……
みすずたちの、1年先輩である星田ヒカルの配信に行きついた。
星田ヒカル。登録者数23万人。登録者こそ後輩よりも少ないが、鉄の結束を誇る「いつも眠い」組というファンを抱えている。マスチャ額は、少数グループながら上位に位置し、記念配信の盛り上がり方はすさまじい。
彼女は、18歳のオタクに優しいギャルという設定だ。
健康的な日焼け、濃い目のメイク、着崩した制服、ツインテールの金髪。
まさに、ギャル。だが、彼女は非常にオタクに優しい。
そして、かなりのオタク知識を併せ持つ。
教室の隅でブックカバーマンガを読んでるオタクに対して「何読んでんのー」と本を強奪して、「やっば」とか言ってケタケタ笑う。
バカにされていると思ってヒヤヒヤな俺たちに対して、「この漫画、あーしも好きなんだよね。ねぇ、オタク君? こんど、おススメのマンガ教えてよ」みたいに気さくに言ってくれるギャルだ。
ヒカルさんの配信の魅力は、なんでも楽しそうにやることだ。ゲームも雑談も、苦手な料理配信で暗黒物質を作り出しても美味しそうに食べていた。まずかったらしいけど。
「昨日さ、あーし。友達たちと、急にギョウザ食べたくねぇってなっちゃってさ。行っちゃったんだよね、宇都宮!! まじ、最高。宇都宮餃子、神ってる」
ちなみに、本物のギャル専門家によると、口調や使う言葉がなんだか古めかしいらしい。それ以上深く突っ込んではいけない。
「なんかさ、急に歌いたくなってきちゃったな。今日、ゲームって言ってたけど、ボス強すぎて、全然勝てねぇし、歌っちゃいますか? うぇーい!!」
『うぇーい!!』とコメント欄も同調している。こんな感じで自由な配信だ。視聴者も結構ノリが良くて、ちょっと異質な空間でもあるが、不思議と居心地は悪くない。
『こいつら、うぇーいで会話してやがる』
「なになに、初見さん? ノリ悪くて、マジウケる。じゃあ、今日はオタク君たち大好きな懐アニソンメドレーでサービス、サービス!!」
たまに、ぼろを出して『きっつ』『無理するな』と言われるまでがお約束だ。まぁ、そういうことだ。本人は苦笑いしながら、有名アニソンメドレーが始まる。90年代、80年代ソングが多いな。
だが、抜群の歌唱力で見る人を魅了して、ファンにしてしまう。俺も眠ることを忘れて、歌に聞き入ってしまった。




