第23話 クリスタル・クリエイトの怪物たち
俺は眠れなくなって、ベッドをゴロゴロと転がる。今日のしずかは、正直、刺激が強すぎた。あんなの味わったら悶々《もんもん》として眠れなくなるに決まっている。
「しょうがない誰かの配信でも見るかな」
みすずが一押しだが、クリスタル・クリエイト箱推しの俺は時間があれば、結構いろんな配信者の動画を見ている。ちなみに、箱推しとは、同じ会社に所属しているアイドルや配信者を全員推している人のことだ。
みすずは、学生業との兼ね合いで、めったに深夜配信はしないが、他の所属タレントさんたちは、むしろ深夜が主戦場だ。
「おっ、園長の放送やってるじゃん。なになに、希望のイレブンか」
園長。みすずと同期のクリスタル・クリエイトのタレントだ。ざっくばらんなさっぱりとした女性で、ゲーム配信と雑談をよくやっている人だ。登録者数は38万人。同期でもトップランナーだ。
自称・アラサーの婚活系女子。下ネタ大好きで、腐女子。トーク力抜群。
ちなみに、希望のイレブンとは、最近流行っているスポーツゲームだ。主人公は、サッカー強豪校に入学したばかりの1年生で、レギュラーを勝ち取り、高校サッカーの聖地である国立を目指すゲーム。
かなり、自由度が高く、サッカーそっちのけで勉強を頑張ったり、マネージャーとイチャイチャしたりできるので、ギャルゲー要素も強い。
そして、園長は何をやっているかというと……
「はぁ、なんで高城センパイを攻略できないんだよ、この○○ゲーっ!! あの視線、絶対に私のこと好きでしょ。司令塔で私にパスをするときのあれは、絶対に惚れてる。ねぇ、ガールズサイドもしくは腐女子要素を導入してよ、運営さん!!」
絶賛、腐っていた。さすがに自由度が高い希望のイレブンでも、腐要素は実装されていないようだ。サッカーそっちのけで、男のセンパイとの信頼度を上げているらしい。信頼関係が上がると、連携がうまくいき、チャンスメイクの精度が上がるらしいので無駄ではないが……
「はぁ!? なんで、マネージャーに告白されているわけ? お前はサッカーに集中しろよ。なんで、青春してるの? イチャイチャしてんじゃねぇよ。ひがむぞ。こっちは、華の20代を浪費しながら配信に命賭けてんだよ。遊びじゃねぇぞ」
園長は今日もキレキレだ。
「ねぇ、もうリスナーさんでもいいから、誰か私のママになってよ。年下の男の子なら大歓迎!!」
「えっ、高城センパイが女と歩いているんだけど。なに、なに、なにぃ? 高城センパイは私のママになってくれるかもしれなかった先輩だよ!?」
すさまじい熱量が配信に漂い、その日の配信で主人公は1年生ながらレギュラーに抜擢されていた。




