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第21話 デートの帰り道

「ごめんなさい、少し調子に乗りました」


「俺もだ」

 店の人に決定的な場面を目撃されてしまい、ちょっと意気消沈しながら帰り道になってしまった。軽く注意されたくらいだが、どこから見られていたのか考えると、いろんな意味で怖くなる。そして、俺もすごいことをしそうになった。あれは、完全にキス未遂事件だ。


 どうしよう。俺たちの関係が壊れるのがすごく怖い。あと、もう少し我慢すればよかっただけなのに。そうすれば、しずかのネタ晴らしで全部平和に終わっていたはずなのに……


「気にしないでくださいね。センパイだって男の子だから……私が少し悪ふざけしすぎちゃっただけ……明日からは普通にしてください」


「俺もなんかわけがわからなくなちゃって……」


 ふたりで大きなため息をつく。月がとてもきれいな夜だ。

 あの時、しずかは俺のことを拒否しなかった。たしかに、一度はストップと言っていたが、俺が顔を近づけると、ゆっくりと目を閉じてくれた。そして、あごを少しだけあげて、受け入れるような……


 少なくとも、俺のことを異性としてみてくれていた。それがどうしようもなく嬉し恥ずかしい。


 あの時、店員さんが止めに入ってくれなかったら……

 間違いなくキスしていた。


 そして、あの時のドキドキがまだ止まらない。

 俺たちは、なぜか嬉しそうに、そして、どこかぎこちなく帰路を歩いていく。


 ※


 どうして、あんな恥ずかしいことを言ってしまったんだろう。今になって少しだけ後悔が生まれていた。


 お兄ちゃんをからかう気持ちは、たしかにあった。でも、それ以外の気持ちの方が大きかった。お兄ちゃんのことを誘惑するために、考えた渾身のASMR台本。夜景の見える個室という最高のシチュエーション。中学の時に周囲にからかわれたせいで、呼べなくなったお兄ちゃん呼び。万全を期して最高の状況を作り出したはずだったのに……


 なんで……


 たしかに、一瞬怖くなったのは本当だよ。ずっとお互いを知っているから、たぶん一線を越えてしまえば、私たちは大変なことになる。それを理解してしまったせい。


 でも、あの瞬間。生きていてよかったと思う。たぶん、センパイは私をただの年下幼馴染だけとは思っていない。それがはっきりした。目を閉じた時、センパイの呼吸を感じたあの瞬間。どうなったって構わないと本気で思った。


 今日は本当に月が綺麗な夜。もしかしたら、今回のキス未遂でギクシャクしてしまうかもしれない。でも、そんなハプニング程度で、壊れるもろい関係じゃない。私はそう信じている。


 がんばろう。皆を楽しませるために……私はもっと強くなる。そして、最高の配信になってみせる。


 私は幸せを噛みしめながら、歩幅を合わせて、ゆっくり前に進む。

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