表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

おっさんの徒然エッセイ

鼠小僧次郎吉を語ろう




 チューと鳴くから捕まった。

 鼠小僧次郎吉は江戸中期から後期あたりの有名人ですよね。創作のイメージが強い鼠小僧ですが、実在の人物です。


 材木商の息子として産まれて、鳶人足に奉公して鳶職人になるも、博打で身を持ち崩したロクデナシですね。

 創作では義賊として、盗んだ金を貧民にばら蒔いていたとされていますが、実際には博打の種銭欲しさの犯行で、盗んだ金は博打に消えたようです。

 なぜ、彼は武家屋敷から盗みを働く大泥棒になったんでしょうか。

 それは、彼が鳶職として、武家屋敷の庭の管理などを受け持っていたからのようです。彼は武家屋敷に仕事柄、出入りして、その警備が思いの外にザルだと気付いてしまいます。

 諸国の大名が江戸に逗留するさいの家ですから、はっきり言えば、厳重な警備をする事が逆に難しかったんですね。あまり、私兵で固めて警備すれば、幕府転覆を企てていると、有らぬ疑いをかけられるかも知れないし、見栄を重視する武家社会で、防備を固めて臆病者との謗りを受けたくはない。

 そんなこんなで、警備がザル。で庭だけでなく、職人として屋敷の中にも入ることが許された次郎吉は詳細な見取り図を引き、日中の屋敷内の人間の把握に努めました。

 見栄のために無駄に広いが、その分、手薄で人の行き来が無い穴を割り出し、非番の日に見つけた穴から鳶で鍛えた身のこなしで屋根裏へと忍び込む。

 あとは夜半まで家人が寝静まるまで待つ。

 こんな風にして、本人の供述から推測されるだけでも、数十の武家屋敷に下手をすれば100回近く忍び込んでは盗みを働いた訳です。

 鼠小僧は一度捕まり入れ墨に江戸追放となり、上方へと登りますが、しれっと江戸に舞い戻ると、また博打の金欲しさに盗みを働いて、結局は捕まって、市中引き回しの末、処刑されました。

 一度目に捕まったさいに、屋根裏で鼠の鳴く声にびびって大声で悲鳴を上げて捕まったと言われており、ここから鼠小僧の通り名がついたと言われてますね。

 二度目は普通に隠れた屋根裏で寝こけてしまい、いびきをかいて捕まったとか。図太いんだか、小心者なんだか、良くわからない人物です。



 鼠小僧は博打の金欲しさという短絡的な目的のために盗みを働いたのですが、そのために、仕事で訪れた武家屋敷の詳細を調べ上げて、人間関係まで把握したそうで、その慎重さと記憶力は相当なものです。

 鼠にびびって大声だすほど臆病なのに、大名屋敷から金品を盗むという大胆なことをやってのける。

 非常にアンバランスで面白いですが、犯罪にはしる人間の心理をかなり如実にあらわしていますよね。

 捕まることや、失敗するリスクを避けるために用意周到に慎重な割にはやっていることは犯罪。普通の人間なら、ならば真面目に働けばいいとなりますが、彼らは自身の能力を最大限発揮して、その上で最も稼げる方法くらいにしか思っていないし、だから、捕まらずに犯行を重ねる内に緊張感を無くして、イージーミスをするようになる。


 人間誰しも多面性で、あらゆる側面を持っていますから、ふと魔がさして、鼠小僧のような悪循環に陥らないように気を付けていかねばなりませんね。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  なんか、捕まりる直前に、囲っていた女性たち全てを離縁していたため、連座で死ぬ人がいなかったって、故 みなもと太郎 先生の『風雲児たち』で読んだのを思い出しました。
[一言]  カンニングに全精力を傾けるようなひとは多いのでしょうね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ