その女子高生 異世界の方々に遭遇する ④
憧れのまみの前で華々しい活躍をして自分の男らしさをアピールする。
彼のその希望を叶える機会はすぐにやってくる。
「なんじゃ。これは」
「それはもちろん異世界の魔獣でしょう」
「そんなことは見ればわかる。いったいこいつはどういう化け物なのだ?」
そう。
遂に現れたのである。
この世界の住人が。
「獅子の頭を持ち、胴体が山羊。そして尾が蛇という姿から、これはキマイラでしょう。この世界ではなんと呼ばれていたのかはわかりませんが、とりあえず今日からキマイラということにしましょうか」
恐怖におののく元男子高校生の言葉を引き取るようにそう答えたのはもちろんメガネ少女である。
「なるほどな。ところで、ヒロリン」
そして、その彼女の言葉に重ねるように声をかけたのは長い黒髪を靡かせ仁王立ちする別の少女だった。
「私はゲームというものをやったことはないが、戦闘が始まるときにはまずは相手の強さを調べるのではないのか?」
「というか、やはり異世界だな。こんなものが目の前に現れるとは……最高だ」
スマホどころかガラケーすら持たないこのグループのリーダーである長身少女の言葉に続いたのはもちろん「それがおもしろいかどうかがすべてに優先する」というおかしな行動指針を持つ美少年風少女である。
いうまでもなく、その彼女にとって今の状況は最高のエンターテイメント。
彼女にとっては恐怖などいう感情は存在しない。
一方、すぐ近くからそれとは真逆な言葉な聞こえてくる。
「でも、この魔獣は強そうですよ」
「そうそう。それから一応言っておくと私はおばさんだから美味しくないと相手に伝えてもらいたいんだけど」
そう。
ハッキリ言えば残るふたりであるまみと元創作料理研究会顧問である上村恵理子の反応こそ本来の姿ではある。
それぞれの様子を眺め終わると、リーダーである麻里奈が隣のメガネ少女に再び問う。
「それでどうなの?」
「そうですね……とりあえず私たちは防御魔法が張られているのでどんな相手でも安心ではありますが、ハッキリいえばまだ子供のようなのでそれほど強くはないと言ったところでしょうか」
「武器は?」
「炎を吐きます。それから空も飛べます」
「なるほど。わかった。では、橘。さっそく戦え」