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その女子高生 異世界の方々に遭遇する ⑧

あれから、三十分後。

恭平は誰もが想像したとおりの姿になっていた。

つまり……。


涙ながらの土下座。


しかも、体のあちらこちらに残るお仕置きの痕跡。


もちろん彼が好き好んでこの姿になったわけではない。

少しだけ時間を戻して、どのような過程で彼がこうなったかを確認しておこう。


まあ、それもある程度は想像できるのだが……。


「やらなければいけないことがある」


美少年風少女はそう言った。

そして、彼女がこう言ったときには、ほぼ百パーセント彼は謝罪に追い込まれる。

だが、恭平にはまったく覚えがない。


いつもどおり。


「なんだ?それは」

頭の隅々まで探したものの、やはり謝られることはあっても謝ることをした身に覚えがない彼がそう尋ねるのは当然のことである。


だが……。

「わからんのか。貴様は。まったく……」

テーブルの上であぐらをかくその少女は愚者を見下す賢者のごとく、わざとらしいため息をつく。

「貴様は私たちに汚い全裸をこの短時間に百回も見せただけではなく、気持ちの悪い肉塊にまでなってまみたんを気絶させたのだぞ。土下座して泣いて謝るのは当然のことだろう」


つまり、貴様は自分たちに見たくない汚物を見せた。

それが全力で謝罪しなければならない理由である。


美少年風少女はそう言っているのである。


当然この件に関しての自称被害者である恭平は納得しない。

「ふ、ふざけるな。それはすべてそこのバカメガネのせいだろう。俺は好きであんな痛い思いをしたわけではない。それに……」

いつもどおり猛烈な勢いで始まった抗議だが、なぜか美少年風少女による口封じがおこなわれる前にその抗議は尻つぼみになる。


これにはさすがに美少年風少女も拍子抜けするしかない。

「なんだ?腹でも壊したか?」

「……い、いや」

「それとも、腹が減って声が出なくなったのか」


「いや。だから、俺が言いたいのは……もなってないということで……」


ぼそぼそと言った肝心の部分は聞こえなかったが、なにかについてのクレームであることには間違いない。

もともと気が長くないうえに、自分が要らぬ心配したことに気づいた彼女の声は強く、そして大きくなるのは当然のことである。


「ハッキリ言え」


「だから、……も裸になっていないと言っているのだ」


……裸になっていない?

……言うに事欠いてそれとは。

……お仕置き確定だ。


「何を言っている。貴様はさっきも私たちに見たくもないものを見せただろうが。この変態が」

「誰もなったかどうかと言ったのではない。その……回数が」

「回数?」

「俺は百回ではなく三十七回しか全裸になっていない。それも、なりたくてなったわけではなく、服が消滅したのでなってしまっただけだ」


そう。

恭平としては、百回というのはあまりにも実際の回数とかけ離れているうえ、そもそも好きで裸になったわけではなく、復活の過程でそうなってしまっただけだということを言いたいのだ。


「そんなに回数が大事か?」


「当然だろう。言っておくが、俺は微妙なお年頃の清く正しい男子高校生だ。そんな恥ずかしいことは一回でも少ないに越したことはない。訂正は必要だ」


もちろんこれが彼の一番主張したいことであり、ここでやめておけば、彼の被害は最小限で済んだことだろう。

だが、彼の口は止まらない。


「俺はパンツを見せびらかすことを生業としている春香とは違う」


……終わった。


それは当事者を除く全員の心の声である。

そして、それはすぐに現実のものとなる。


「……ほう」

目を細め、黒い笑みを浮かべた美少年風少女が口を開く。

「今、おもしろいことを言ったな」

「何が?」

「露出狂にお年頃があるとかないとか」

「いや、俺はお年頃とは言ったが……」

慌てて微細な部分を訂正しようとする恭平の言葉を遮るように、美少年風の声が轟く。


「とにかく露出狂にあるまじきその甘ったれた根性を叩き直してやる。そこに直れ」


そして、ここからいつもどおりただただ厳しいだけのお仕置きが始まった。


……まあ、どんなルートを辿ろうが、最終的にはお仕置きされることにはなっていたのだろうが、最後のあれのおかげで厳しさは十段階ほど増したのは間違いない。


それは関係者各位の今回の茶番を見た感想だった。

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