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孤独の魔女と独りの少女【書籍版!3月30日二巻発売!】  作者: 徒然ナルモ
二十二章 アド・アストラVSマレウス・マレフィカルム
902/932

831.魔女の弟子と人を呪って穴一つ


「はァッッ!!」


「クヒヒぃ〜!」


激突する我が鉄腕とホドの甲殻で覆われた拳。同時に背後から飛んできた無数の攻撃、鳥と鋼の刃が衝突し幾多の爆発を発生させ、地形を変える。

こいつ、しぶといな!!


「ホドォッッ!!」


「アハハハッ!気合い入り過ぎですよ!メルクリウスゥッ!!」


ヴィルヘルム要塞を攻めていた私達、その前に立ち塞がったホドを相手に戦う私は、いつの間にかヴィルヘルム要塞から出ており、荒涼した大地にて奴と殴り合っていたのだ。

我が機巧錬金はホドの生命錬金に引けを取らん、だが……引けを取らんだけで明確な勝ち筋にはなり得ない。


「チッ!!」


「おっと危ない、無粋ですねぇメルクリウス。あなたは本当に無粋です、銃を使うなんて」


咄嗟に離れながら作り出した銃で射撃を行うが、ホドは右手を膨張させ肉の壁でそれを受け止める。肉体を自由自在に変えられるという点ではアマルトの呪術に似ているが、根本的に違うのは奴は命を、魂を自分で作れるところにあると言えるだろうな。


「しかし、驚きましたね。前回もまぁ大した腕前でしたが、たった数日で更に腕を上げるとは。なるほど数年で八大同盟が壊滅させられるわけです、正直侮ってましたよ」


「危機感を覚えるのが、やや遅かったようだな。我らは既にお前達の喉元に牙を突き立てている」


「ふぅ〜ん、ですが貴方。なにか勘違いしていませんか?」


「なにがだ」


「私は別に、今も貴方に危機感は感じていません。これはほんの座興に過ぎないってことですよ、前回も色々やられましたし?その仕返しをしてやろうって思ってるんです。言ってみれば感情優先の戦いですねぇ」


つまりここで私を是が非でも倒さねばならない。そんな危うさは感じていないと、ナメられたものだ……奴の中で私はまだ、あの占い本を差し向けた時から危険度は変わっていないと。そう言いたいんだな。


「フッ、なら……覚えさせてやる、危機感を」


両足を開き、拳を構え、極・魔力覚醒の姿勢を見せる。するとホドは人差し指をチッチッと揺らし。


「イキり立つなよぉメルクリウスぅ、私はただお前に教えてあげたいんですよ。極・魔力覚醒初心者、第三段階到達記念に……この段階に立つ者が、この世界においてどういう存在なのかを」


「……どういう意味だ」


「単一で戦況を変える戦力、たった一人の行動で大勢が変わる、そういう人間がどう動くべきか。タイマンで決着をつけましょうなんてのは卒業した方がいいですよぉ?」


「……むっ!!」


気がつく、私は今ヴィルヘルム要塞から離れて戦っている。だがこれがもし、離れたのではなく離されたのだとしたら!そう思い要塞の方に目を向ければ……。


「やられたッ!」


「ハイ!やりましたァッ!」


膨れ上がる魔力、見れば要塞の各地に巨大な繭のようなものが張り付き、風船のように膨らんでいる。内部で非常に細かい魔力が増殖しどんどん増幅していっている。今に爆発する、それが見ただけで分かる様だった。


「グロリアーナさんが大好きなんですよね貴方、ならグロリアーナさんのような人をたくさん増やしてあげますよぉ〜!」


(まさか、内部には例の菌が……)


まずい、要塞周辺には数万の味方がいる、ナリア君がいる、デティがいる、アーデルトラウト将軍が、マリアニール団長が、クレア団長がいる!それが全てグロリアーナ総司令のように菌に冒されればどうなるか。


考えるまでもない、ましてやグロリアーナ総司令であれだったのだ、今度こそ死人が出る!!


「させるか!」


「じゃあ私もさせません!」


「ッ!」


咄嗟に要塞に向かおうとするが、ホドは私の前に回り込む。当然のように足止め、そりゃあそうだ!クソッ!デティやナリア君は動けるのか?二人は既にあれに気がついているのか?いや気がついていたとしてもあの乱戦、簡単には対応出来ん。


だが、私も動けんぞ……!!!


「言ったでしょう!これは!私の鬱憤を晴らすための戦いであると!」


「ッ……!」


「怒ってください、自分を責めてください、後悔してください、絶望してください!私を怒らせた報いを!ここで与えましょう!!」


チラリとホドの向こうに見える肥大化する眉を見る、感じから見てあと数分で爆発する。ならその間に……こいつを突破すればいい!


「受けて立つ、ホド。お前の挑戦を……!」


「逆ですよ、お前が私に挑むんです……!」


二人同時に拳を握り、魔力が渦巻き、燃え上がり、爆発する。作り出すのは己の世界、己の間合い。空間を掌握し、覚醒する!


「『オプス・ト・アンドロピー・アガトン』ッ!!」


礼賛は巡り、(ビバ・)、至高天を喰む(・ビダ)


展開される二つの極・魔力覚醒、私の背後に黄金の城砦が展開され、同時にホドの覚醒により天が赤く染まり、奴の姿が白い甲殻に覆われた化け物のようなものに変わる。その青い髪を揺らし顔半分を覆う甲殻から覗く紅蓮の目で私を睨み、笑う。


数分内にこいつを突破し、皆を救う─────。


「やっぱり、勘違いしてますね」


「なっ……ガッ!?」


しかし、私が動き始めるよりも前にホドが動く。目にも止まらぬ速度で突っ込んできたヤツの拳が私を打ち、吹き飛ばし、背後の城壁を粉砕し城砦ごと破壊する。凄まじい威力、いやスピード!


「貴方の目的は、私をどうにかこうにか突破して菌の拡散を防ぐのではなく。今、私を相手にどう生き残るか……ですよ?」


ヤツの覚醒は進化する覚醒だろ、なにも進化してない状態でこれか!!クソッ!


「砲手、構え!」


「おや?」


崩れた城塞を一瞬で立て直し、その屋根の上に着地すると同時に。壁から突き出た無数の砲台をホドに向ける。

確かにホドの言う通り、片手間でどうにか出来る相手ではないのは確か。ならば!!


「ってェーッ!!!」


「フッ!アハハハッ!上ォ〜等ォ〜〜!」


降り注ぐ爆撃の雨、それを拳で叩き落としながらこちらに向けて飛んでくるホド。対する私は屋根を叩き、壁を展開。ホドの行手を阻みつつ城砦の中へと入り込む。

しかし、ホドは展開した壁すら粉砕して城砦の中へと突入してくる。


「迎撃を!」


「面白い覚醒ですね、城を作る覚醒ですか?面白いですがユニークではない、よくある自陣で有利に働く系の覚醒でしかない!」


壁から無数の銃口が出てホドに向けて乱射されるがその全てを弾くホドの外殻により、火花の雨が飛び散るに留まる。ヤツの歩みを止められない、だが……外殻が貫けないなら、貫けるようにすればいい。


(見識、開眼!)


目を見開き、片眼鏡を錬成しヤツの体を見る。ヤツの体を覆う白い外殻、あれが問題だ。見識で見ればその構造が詳らかだ。繊維がそれぞれ別々の方向に捩れるように層を生む多重螺旋構造、それを貝の歯で形成。間を柔軟なタンパク質で覆うことでクッションにしている。


見れば見るだに呆れ返る程の技術の結晶。ヤツの力は生命の力を借りるものだろう、即ちあの構造は自然界に存在すると?全く、面白い話だよ。この戦いが終わったら、私も動物学を学んでみるか。


(なんて言っている場合じゃないか、あれを突破出来る形を……作る!)


幾度となく弾かれる弾丸、そのどれもが砕けて床に落ちていく。対するホドは余裕の表情で寄ってくる。


「無駄ですよ、弾丸程度じゃ私の体は傷つきません。まだ遍在で強化したパンチのが痛いと思いますが……ん?」


しかし、そこでホドは気がつく。


(……気のせいか、床に落ちてる弾丸。一発一発形が違う気が……まさか)


顔を見ただけで考えていることがわかるよ、ホド。ああそうだ……これは。


「まさか、試行している!?」


ホドが焦った瞬間。ヤツの側頭部に当たった弾丸が炸裂し、外殻が傷つき、体が揺れる。初めてホドの体が傷ついた。


ああそうさ、無数に放たれる弾丸、そのどれもが試行錯誤の結果。困難に直面した時、戦いの中で、技術は進化する。倒せない相手がいるなら倒せるものを作るのが人類技術というものだ。


進化過程で私が手に入れたのはただ鉛の弾丸を飛ばすのではなく、材質と形を変えた。弾丸は前面が丸みを帯びて伸び、材質は鉛からタングステンに進化。その一撃はヤツの外殻を破砕する程の威力で飛ぶようになった。


これが進化だ、ホド。貴様が生命の進化を手繰るなら、私は人類の進化を手に戦おう。


「チィッ!まさか覚醒も私と同形質!進化の覚醒か!」


「その通りだ!余裕をかましてられるのも今のうちだ!」


背後に無数の銃口を作り出し、タングステン弾を雨霰のようにぶっ放す。咄嗟にホドは防壁を展開し防ぐがそれも一時凌ぎ、即座にタングステンの表面を魔耐石で覆い対魔力性能を向上させ貫通させる。


次々と打ち据えられる弾丸にホドは肉体を貫かれながらも……。


「ああもう、面倒ですね……!」


変化が起こった、ヤツの体を貫いていたと思われた弾丸はヤツの外殻にめり込むだけで肉を傷つけるに至っていない。流体骨格……内側をゼリー状に変えて衝撃を分散させてきた。進化が早い、こっちが試行錯誤して編み出した進化を物凄いスピードで対応してくる!!!


「『紅女王に懺悔なし(ラ・レイナ・ロハ)』ッ!!」


「グッ!?」


同時に弾丸と同じ速度で踏み込んだホドの拳が赤く染まり、鋭い打撃が胸を襲う。咄嗟に体をアダマンタイトに変質させたが……コーティングが間に合わず、私は吹き飛ばされる。


「もしかして私と同じ系統の技、同じ形質の覚醒を使えるからって私と互角に戦えると思いましたか?バカですね、同じ系統の使い手なら純粋に技量が上の方が勝つに決まってるでしょうに」


吹き飛ばされながらも廊下に着地、しかし続け様に飛んでくるホドの拳をアダマンタイトでコーティングした拳で受け、跳躍で回避するが、即座に振るわれるホドの尻尾、いつのまにか生えていたそれが剣のように振り回され。私の体を傷つけながら城砦の壁を切り裂く。


同じ進化を司る覚醒、しかし進化のスピードで上回るホドは私の攻撃を難なく弾く。


「ああもうダメです、力が抑えられません!殺しちゃう!終わらせちゃう!!」


「グブフッ!?」


私の髪を掴み、そのまま引き寄せ叩き込まれる膝蹴りに、口から血を吐き倒れ伏す。ケラケラと笑うホドは私の顔を踏みつけケラケラ笑う。


「でも丁度いいですよね、向こうもそろそろ菌の散布が始まるし、これなら……」


「……ホド、お前はなんのために、戦ってる」


だが、私は倒れながらも、ホドを睨む。ヤツの顔は一瞬不機嫌に染まるが、直ぐに笑みを取り戻し。


「あのねぇ、言いましたよねぇ、鬱憤晴らしのためだと」


「そうか……浅いな」


「は?負け惜しみ?ウケる」


「なら、次は聞かせろ。お前の負け惜しみを」


「なにを……」


瞬間、私はホドの足を弾き、飛び上がると同時に腕を振るい。


「『相殺弾』!ってェーーー!!!」


「ッ!」


ホドは咄嗟に防御の姿勢を取るが、違う。ヤツに向けたわけじゃない、私が命令し撃ち放ったのは外の砲台……つまり。


ヴィルヘルム要塞に向けて砲撃を行ったのだ。


「え!?なにを!」


放たれた砲弾の雨はヴィルヘルム要塞に降り注ぐ、しかしそれは着弾の前に……爆発する。


それと全く同時に膨れ上がったホドの繭が破裂、周囲に無数の菌が散布される。しかし、私が放った砲弾、その爆発と同時に散布された『中和剤』が菌を殺し、無害な塵へと変えていく。

これにより、ヤツの狙っていた敵味方を巻き込んだ罹患は無駄となる。グロリアーナ総司令に注ぎ込まれた菌、それを中和する薬が完成したのだから、今この瞬間な。


「……何故私の菌が消されて、いつの間に抗体が完成して……いや、今か?」


ホドは怒りに満ちた表情でこちらを見る。ようやく理解したか?ホド。


「まさか、今さっきまでの戦いで、貴様は……私の外殻に対する進化よりも、私という存在自体への適応進化を進めていたと?」


「ああ、そうだよ。時間を与えてくれてありがとう、ホド」


さっきまでの戦い、私はホドという存在への適応進化を進めていた。散布される菌もホドの一部だろ?ならヤツ自身に適応するように技術を進化していけば菌そのもへの対応も可能。それを今さっき完成させた、突破する必要はない、ただ菌を無力化すればそれでな。


ホド、お前もまた勘違いしていたんだよ。


「ホド、私は正義の為に戦っている。他者を守り、誇りを守り、その為に立ち続ける。例え私がどれだけ傷つこうとも、数多を守る為ならばいくらでも戦える!」


私の進化スピードが劣っているのではない、私はただこの場での戦いを後回しにしていただけさ。あの菌への中和剤が最優先だった、私がどれだけ押されようとも、進化スピードで上回られボコボコにされようとも、ヤツ自身への適応を優先させたのは、全て!私自身の正義の、戦いのためだ。


そして今それも終わったんだ。やってやろうか。


「悪いなホド、さっきまでは片手間だったんだ。ここからは本気でお前の相手をしてやる」


「つくづく、逆撫でる……」


「雑魚が言うのだから、皮肉が効いているな」


ここからはホド、お前に勝つのが最優先だ。叩き潰してやる……栄光の名を守る為に!!


………………………………………………………………


「デモンズ!!」


叫ぶ、カーヴル平原地下施設にて走るアマルトは仲間達の後押し、そして援護を受け走る。全てはデモンズを捕縛する為に、地下施設の最奥。その奥地にて……奴はいた。


「君は……」


「やいやい!いやがったな!テメェどう見てもデモンズって感じだもんな!観念しろや!」


「…………」


黒いローブに、青白い肌をした長身の男。奴がいたのは施設の最奥、恐らく兵器を格納しておく為の倉庫だろう。その奥で壁の方を向いて佇んでいた陰気クセー野郎はヌッと俺の方を見て、また直ぐに壁の方を向いてしまう。

そうかい、俺より壁の方に興味があるってか……そうかい。


「なぁ、分かってんだろ。ここまで敵が来た、その事実を」


「然り、戦場に流るる怨嗟と憤怒の血潮は、私を殺しに来たのだろう」


「まぁな、正直ぶっ殺してやりたいくらい頭に来てるが、それ以上に……手前が操ってる連中を元に戻してもらう」


「不可能だ」


「いいや不可能じゃない、ナメんなよ」


ここに来て直ぐにメグにも言われたが、確かに俺は昔カリストを囃し立ててエリス達を操ったことがある。そう、呪術とは感情や精神に影響を与えることも出来る。即ち奴が使う術の根源は古式呪術、だから分かるのさ。


あの洗脳はデモンズの意思で解除が出来る。不可能だってのは嘘っぱちだね。


「テメェが解除すりゃ、元に戻る」


「だから断言している、不可能であると」


ローブを翻し、抵抗の姿勢を見せる。なるほど、だけど……。


「やる気か?お前、荒事が得意なようには見えないが」


「得意ではない、だが、それでも……やらなくては、ならない」


「む……」


モリモリとデモンズの体が盛り上がる、筋肉が膨れ上がり、上着を破いて一瞬でネレイド並みの巨体と筋肉を手に入れるのだ。驚いた、肉体変化系の呪術まで使えるのか?いいやそんなわけはない、こりゃあアレだな、覚醒だ。


「ふ『複合覚醒』……これで、お前を、殺す。私は、その為に、忠義の為に」


「気に食わねぇな、テメェ一人のせいで何千何万の人間が傷ついてると思ってんだ。だってのにテメェだけ被害者ツラかよ反吐が出るぜッ!!」


「イノケンティウス様ぁあああ!!!」


突っ込んでくる、ヤツの体内には今十数個の覚醒が宿っている。まぁ想定内だ、覚醒を持たないラクレス達に覚醒が宿っていた、敵は覚醒させるか、覚醒を与える力を持っている。なら既に覚醒してる奴にも与えられる。

一つ持ってる人間に複数持たせられるなら、その上限だってないはずだ。数十だろうが数百だろうが与えられる。まぁ当人の負荷を考えるなければだがな。


恐らく、激しい激痛が渦巻いているのだろう。デモンズは両目から涙を流しながらゴリラのように四つ足をついて俺に向かってくる。その突破力はもはや第二段階の領域にないと言える。


「面倒くせぇ、『呪獄天蓋』!」


剣を抜き、極・魔力覚醒を維持したまま俺は迎え撃つ。大地を呪い、一気に土台をひっくり返すように歪め、一気にデモンズを呪いの土砂崩れで覆い隠し──。


「『殺拳武狼(さっけんぶろう)』ッ!」


「うぉっ!?」


しかし、飛んでくる。デモンズが振るった拳が轟音を上げ、土砂崩れを貫通し俺の側面に向け衝撃波が駆け抜け、背後の壁が崩れる。嘘だろ、すげーパワーだなおい。


(元々肉体進化型でもない奴に、アレほどの力を与えるかよ。こんだけすげー奥の手があるなら、敵さんももっと早く使えばよかったろうに……或いは、使えない理由があったか。なら今回使った理由の方が気になるな)


「私はッ!勝つッ!!」


「そうかい、悪いが、そりゃあ戯言で終わるぜ」


向かってくるデモンズ、奴は俺がどれだけ大地を崩して撃ち放とうが構うことなく突っ込んでくる。アイツの御体にゃまるで傷がつかない、肉体保護系の覚醒でも発動してんのか、だったら呪ってやろうかと思ったが、これも弾かれる。


極・魔力覚醒の力が普通の魔力覚醒に負けるとは思えないから。恐らくそもそも魔術の影響を弾くタイプの覚醒か。こりゃあ厄介厄介。


「待てぇええ!!」


「おう、追ってこいよ」


背後に向け飛び、部屋の壁を崩し廊下に飛び出しながら、無造作に振るわれるデモンズの拳を、連撃を、ポケットに手を入れたまま回避する。

どうやって倒すか、どうやって解決するか、そういう眠たいことは考えてねーよ。今俺の頭の中にあるのは一つ。


この恨み、晴らさでおくべきか。ただそれのみ。


………………………………………………………


私は、大した強さではない。他者を操るスコルズ・ブライドル、他者の欲を操る『 十二欲因大乱照じゅうによくいんだいらんじょう』。そして他者の魂と自身の魂をリンクさせる『ソウルリンク』……所有する技全てが相手の感情や精神に由来するものばかり。


ジョバンニ様やバディスタ様のような一騎当千の強さは持ち合わせていない。だから、私がこの戦争で出来る役目は魔女大国の人間をスコルズ・ブライドルに変える事だけ。


それ……だけだった。


「デモンズさん、恐らくですがカーヴル平原の地下拠点に敵軍が押し寄せる事が予測されます。理由は分かりますね?」


「……わ、私が。不覚をとったから」


先日、『勝利』のネツァクより、お叱りを受けた。私が魔女の弟子エリスに拠点の場所を明かしてしまったから、明日ここに敵軍が攻めてくることになると。

今いる捕虜全員をスコルズ・ブライドルにしても、手勢としては二万を超えるくらいか。カロケリ族と近隣の住人全員を捕まえているが……彼ら全員を戦力にしても、アド・アストラの軍勢には太刀打ちができない。


今直ぐ逃げるか、いや。逃げたとしてもどこへ?捕虜を連れていくにしても時間がなさすぎる。そう悩んでいると、ネツァクはメガネを掛け直し。


「勿論、私としてもここで貴方を……いやスコルズ・ブライドルを失うのは惜しい。なので精一杯手助けをさせていただきます」


「手助け?」


「私の覚醒によって、貴方に覚醒を合計二十四個注ぎ込みます。まぁこれだけあれば凡その第三段階に太刀打ち出来るでしょう」


「覚醒を!?そんなバカな」


「ついでにスコルズ・ブライドルにも渡しましょう、出せるのは一万までですが、まぁ足りるでしょう」


ネツァクが覚醒を収集出来る異質なる覚醒を持っていると、噂で聞いたことはあったが、まさか本当だったのか。いやだが、他者に覚醒を与えるなどあっていいことなのか。


だが、一人につき覚醒が一つだけなのは人間に魂が一つしかないから。魂を複数持つ人間などいていいわけがない。一つの魂に複数の覚醒を注ぎ込めば、必ず肉体に皺寄せがいくはずだ。


「……私は、既に覚醒をしている」


「だから?」


「デメリットは、あるのでしょうか」


「ありますよ、体内で覚醒が重複した場合、死亡する可能性あります。と言ってもご安心を、死亡する確率は所持している覚醒一つにつき凡そ4%程度の小さな確率ですので」


ネツァクはにっこり笑うが、私は笑えなかったよ。一つにつき4%?私の覚醒と合わせて内部にある覚醒は二十五個……合わせたら100%じゃないか。死ねと言うのか、ここで。

ここで、ここでか……死ぬのか、私は。そう私が答えに迷っていると、ネツァクは私の肩を掴み。


「現在カノープス達凡その魔女はディオスクロア文明圏にいませんが、『探究の魔女』アンタレスのみコルスコルピに残っています」


「アンタレスが……」


「ええ、ここで勝てなければ魔女が来るかもしれない。いやもしかしたら戦いが長引くと途中で乱入してくるやもしれません。故にスコルズ・ブライドルで戦いを終わらせなければならない」


「…………」


「分かりますね、デモンズ・ユークリッド」


私の本名まで……そうか、あの事まで把握しているのか。分かったよ、分かった。最早道はない。


イノケンティウス様、私は……貴方に忠義を果たします────。




「ぐっ、がぁあああああああ!!」


そして今に至る、目の前にいるのはなんの皮肉かアマルト・アリスタルコス。フーシュ・アリスタルコスの息子であり、アンタレスの弟子。彼は私を知らないだろうが、私は彼を知っている。

そんな彼と、私は今戦っている。注ぎ込まれた十以上の身体能力強化系の覚醒が体内で鬩ぎ合い、内臓が潰れ、再生するのを繰り返す。激痛以上に気色悪さと嘔吐感が勝る、これではダメージを与えられる前に、心が耐えきれそうにない。


だとしても、拳を振るう。ジョバンニ様のように上手くは行かずとも、必死に振るう。この一撃は余波だけで壁を壊すが、その全てはアマルトには当たらない。彼の独特の歩法から繰り出される高速移動を捉え切る事ができない。


(強い、これが第三段階。ジョバンニ様達のような選ばれた人間だけが辿り着ける領域、私では到達出来ない、領域!)


アマルトの冷たい眼が私を睨む。恐ろしい、恐ろしくて私は地面に手を突っ込み……。


「『殺崩太安(さっぽうたあん)』!」


「お、マジか」


一気に大地をひっくり返しアマルトの足場を奪いつつ、持ち上げた鉄の床で私自身の体を隠す。視線が遮られれば奴自身私の攻撃を読めないはず、ならば。


(魔力覚醒『骨槍大螺旋 (こっそうだいらせん)』)


右腕が変形し、捻れて尖った槍へと変形する。骨そのものを硬質化し作り出した骨の螺旋槍、ギチギチと音を立てて捻れる槍を一気に突き出し私を覆う鉄の足場ごとアマルトを貫くように打ち出す。


骨の槍は内部がスプリングのようになっており、緩めると一気に前方に向けて伸びるのだ。その硬さも鋭さも鋼鉄とは比較にならないレベルのもの。これで一気にアマルトを──。


「俺から見てお前が見えなくなったってことは、つまりお前から見て俺も見えなくなってるってことだよな」


「はァッ!?」


刹那、背後から声がする。慌ててそちらの方を振り向けば……そこには拳を構えるアマルトの姿が。まさか、地面を捲り上げた時一緒に飛び上がって、私の背後を取っていたのか……!


「魔術を受け付けねーなら、直接ブチ込むまでだッ!『呪拳アプラティール』ッッ!!」


「ごぶふぅっっ!!」


私の肉体は『摩訶大身体』と言う覚醒により、降りかかる魔力干渉を防ぐ力を持っている。がしかし今回のアマルトが放ったのは直接的な物理攻撃。

呪術にて拳を魔力の入れ物に変え、思い切り詰め込んだ魔力を解き放ちながら叩き込む一撃。呪術による肉体変化を徹底して打撃特化に変えた偏在込みの一撃は、私の体を打ちつけ大きく仰け反る。


もし、私の肉体がかつてのままだったら、私は今ので死んでいた。だが数多の肉体強化を受けた今なら……。


(耐えられるッ!耐えて、カウンターを叩き込めば!)


思い切り踏み込み、仰け反る体を引き起こし、今度はこちらの番と拳を握り……。


「バァカ、剣持ってるヤツが拳骨一発で済ませるわけねーだろ」


「なッ!」


拳を振った姿勢のアマルトの左手には、黒々とした剣が握られている。今見て理解した、先程拳に込められていた魔力よりも、剣に行き届いている魔力波の方が多い。嘘だろう……つまり今の一撃は。


(さっきのは牽制の当身!?今ので!?)


バチバチと迸る魔力、無機物すら呪う彼の力が大地を歪め、黒い塵を刃に収束させる。その圧倒的な規模、圧倒的な質量、圧倒的な魔力量。侮った、これが第三段階……!


「『呪哭一刃───」


「ぐっ!防壁展開ッッ!!」


「──フイユ・ド・ブーシェ』ッッ!!」


振り上げられる、アマルトの剣。それは容易く私の防壁を切り裂き、防御のために前に出された右腕を引き裂き、貫通した斬撃が肩に直撃し、吹き飛ばされる。

あまりにも違いすぎる実力、そして凄まじい威力。それよりも目に残ったのは……あの目だ。圧倒的な魔力だ。


(に、似ている……アンタレスに、そっくりだ)


吹き飛ばされ、見るのは、走馬灯。私という人間が歩んできた道。


ああ、そうだ。私は、私はイノケンティウス様の秘密を知っている。


イノケンティウス様はかつて魔女レグルスに会った事がある。それは表沙汰にはされておらず、それはジョバンニなどの一部の精鋭しか知らない事実。本来なら私程度では明かされるわけでもない秘密。


それを何故知っているか、それは……ゴルゴネイオンという組織において私は数少ないイノケンティウス様と同じ経験をした男だから。


……私はかつて、魔女に会ったことがあるんだ。


────────────────────


デモンズ・ユークリッド。それが私の本名、かつてはディオスクロア大学園で魔術を教える魔術科の教師の一人だったんだ。と言っても、今からもう三十年以上も前の話だが。


当時の私は今と違いとても熱心だった、少しでもこの世界を良くする為魔術を研究していた。この世を生きる誰かの朝一番、踏み出す一歩が少しでも軽やかになる事。それを願ってより良い魔術を作ることを目指した。


そんな私が目的としていたのが、古式呪術の復元、即ち現代呪術の作成だ。治癒魔術と同じく問答無用で肉体と魂に影響を与えるこの魔術があれば何かが変わるかもしれない。


その為に毎日のように古文書を読み、呪術の痕跡を探した。

しかし、見つからない。噂ではコルスコルピの支配者アンタレスが自らの術を他者に使われることを嫌い、古式呪術に関する文献を消し去り、その上で自身も使い方を残さなかった為、何一つとして痕跡が残っていなかった。


それでも私が諦めなかったのは、裏社会では呪術に似た魔術を使う者が数人いるという事実。もしかしたらこの世のどこかに文献が残っているかもしれない、そう願い毎日のようにヴィスペルティリオ大図書館に通い続け、職場と図書館を行き交う日々を過ごした。


そんなある日だった。


あれと出会ったのは。


『なんだこれは』


学園の地下に空間があることを発見した。それは偶然だったんだ、生徒がふざけて壊した壁を魔術で修繕していた時、壊れた壁の向こうに明らかに人為的に作られた空間を見つけた。

私はただ好奇心でその穴に入り、なにか隠されたものがないかを探しに行った。謂わば探検だ。

あの学園は八千年前からある、もしかしたら我々の知らない古代文明の遺物が見つかるかも。そんな淡い期待と共に階段を降りて……見つけたのは。


「誰ですか貴方」


「あ」


「普通の方法じゃここには辿り着けないはずなんですけどああ答えは言わなくてもいいですなんとなく分かるので不慮の事故でこちらに来てしまったんですねですがこの場所を知られたら私としてもかなり不都合なんですよ」


ナニか居た。階段の最奥、数多の蝋燭と本の山に囲まれて、本を読む謎の女性。ボサボサの髪に大きな三角帽子を被った奇妙奇天烈な女。それが捲し立てるようにブツブツとこちらに何か言ってる。


なんだあれは、人間か?学園関係者?とてもそうとは思えない、少なくとも秩序ある人間社会の中に馴染めるタイプの存在には見えないし、社会的な立場があるとも思えない。そんな困惑故に私は気が付かなかった。


今、そこにいる存在こそ。このコルスコルピを裏から支配する魔女。アンタレスであると。


「お、お前は……誰だ」


「魔女アンタレスと言えば分かりますか?ああ覚えなくて結構思い出すことはもう二度とないと思いますから」


「な、は?えっ……あっ!いや、え?」


「混乱しているところ悪いですがお帰りいただきますよ大丈夫殺しはしないのでただ記憶を消すだけです」


ピクリとアンタレスが動いた、混乱した私はそれを敵対行動と受け取った。何故か、何故そうも短絡的に受け取ったか、そんなもん決まっている。指を動かしただけでありえない量の魔力が吹き出したからだ。

人間何人分だ、分からない、だがあれをぶつけられたら死ぬ。そう考えた私は……迎撃に出た。


「魔力覚醒!!『 十二欲因大乱照じゅうによくいんだいらんじょう』!!」


私の切り札、魔力覚醒を使った。今現在この国で魔力覚醒を使えるのは三人、うち一人として数えられる私には実力的に相応の自負があった。これで相手の欲を爆発させる。如何なる欲も限度を超えて暴走すれば……やがて自制を失い、自らの命すらも立つものとなる。


人間は、多かれ少なかれ、皆『希死念慮』を抱えているものだから。故にこれで自害させる事で私はその敵対者を倒そうとして───。


「おや珍しい覚醒ですか最近の若いのにしては気合が入ってますね」


「は!?」


私が放った欲の光、それが確かに当たっているのに。アンタレスは涼しい顔で私と覚醒を受け流しているのだ。


「ですが覚えておきなさい魔術とは覚醒とは魔法とは全て魔力による現象であり……魔道を極めた者にとってそれらは全て児戯に等しい事であると」


弾かれた、魔力波と密度が違った。先程感じた膨大な魔力が砂漠の一粒であったと実感するほど凄まじい魔力の嵐が襲う。それは彼女にとってはただの威圧だったのかもしれない。

だが私にとっては、臨死体験を覚えさせるに……十分なものだった。


(な、なんだこれは……!?)


その時私は私の中にあった全ての価値観が崩れた気がした。私の国はこんな怪物に統べられているのか、こんな恐ろしい存在がこの世にはいるのか。なによりこんな……こんな。


(こんな果てしないものなのか!?魔の道とは!!)


私が今まで心血注いで研究してきた分野。魔道という底の見渡せない大穴の最深部にいる存在を見た瞬間、私は今までなんのために頑張ってきたのか分からなくなった。こんな凄まじい存在がいるなら、別に血反吐吐いて魔術を研究する必要なんてない。


(私は……あまりにも、ちっぽけだ)


気がつくと私は全てを投げ捨てて逃げていた。教師の地位も研究者の役目も家も財産も何もかも捨てて逃げ出していた。体はズタボロ、されど襲われたわけではない。何故かアンタレスは私に対して攻撃を仕掛けることなく見逃してくれた。その理由は分からない。


だが私としてはそんな事どうでもよかった。気まぐれで助かったなら、気まぐれで殺されるかもしれない。そう思えばもうこの国にはいられなかった。


居場所を捨て、国を出て、私はマレウスへと逃げ延び、家無しの物乞いに落ちてまでひたすらにアンタレスの影から逃げ続けた。いや、どちらかというとアンタレスというよりアンタレスを前にしただけで崩れてしまうようなちっぽけなアイデンティティを持つ自分から逃げていたんだろうな。


それでも怖かったんだ、真っ当な生活を送れないくらい、怖かっんだ。目を閉じれば浮かぶの魔力の山が……怖くて怖くて。


「珍しい物乞いだ、亡国の宮廷魔術師か?」


そして、私はその日第二の出会いをした。裏路地を進み、ゴミを漁っていたら、偶然出会った……王に。


「随分酷い顔だな。話を聞こう」


豪勢な服を着ながらも、迷う事なく裏路地に踏み込み、ヘドロで裾が汚れることすら気にせず、項垂れる私の前に跪き、声をかけてくれた壮年の男。

彼の名はイノケンティウス……私の王だった。


「なに、魔女を見た。それはまた、凄まじい経験をしたな」


彼は私の話を聞いてくれた、魔女に会った。そんな荒唐無稽な話をしても彼は笑わず信じてくれたし、なにより共感してくれて。事あるごとに安心させるような口振りで励ましてくれたのだ。


「余もまた、魔女を見たことがある」


「え……魔女を」


「信じられんかもしれないが、孤独の魔女レグルスだ」


「それは……存在しないのでは?」


「だがこの目で見てしまったのでな。どこの誰が言ったかも分からない存在しないという話より、余はこの目を信じる。そして見たからこそお前の恐怖は理解しよう、魔女以上に自らの存在を肯定する手段が消え失せる感覚だろう?」


イノケンティウス様は私の隣に座り、語り始めた。


「強大な力は、ある種万能と言える。事実として魔女の存在により魔女大国は存続し、今も繁栄を続けている。そんな人間がいるのなら、彼女達よりも遥かに弱い自分達に出来ることはあるのか、やれることはあるのか、やるべきことはあるのか……そう感じたんだろう」


「はい、私は今まで心血を注いで魔術の研究をしてきた。それは私自身の名前を残したいのと同時に、よりこの世界を良くする為に、それを願っていた。けど私とは次元違いの能力を持つ彼女達が既にいるなら、我々は彼女達のもたらす恵みを享受して生きる方が、賢いのでは……と」


「かもな」


軽く笑う、イノケンティウス様は軽く笑い、私の肩を叩き。


「答えはもう出ているじゃないか、お前の居場所は魔女大国にある。真面目に考えすぎることはなく、そこそこでやっていけばいい。魔女がなんとかしてくれるなら、それでいい。他責であってもそれが賢いやり方であると社会は肯定している、今ならまだ帰れる。この国から立ち去るのだ」


彼は別に当てつけでそう言ってるわけじゃないのはここまで話して分かった。確かにやれることはあるのかなんて真面目に考える必要はない。寧ろ世界の大多数がそうやって生きている。

少しでも自分の生きている環境をよくする為、誰しもが町長や領主を目指さないように、自分より優れた魔女がいるなら魔術に人生を注ぐ必要はない。そこそこに働いて生きていけはそれでいい。


それが賢い生き方、それは分かる、分かるのだが……それでも。


「それでも、バカとして生きたい。無謀でも無粋でも自分の役割を模索したい。後ろを指を差されても自分として生きたいのであれば……余についてくるか?」


「え?」


「実は余も……いやぁお前の前では気取るのはやめよう。僕もね、色々考えてたんだ、魔女という存在を見て、その存在を認識して、己はどう生きるべきかを」


彼は立ち上がり、そして手を差し伸べる。そこに威厳はない、荘厳さもない、気取って纏っていた風格を脱ぎ捨て、歯を見せて笑う彼は私にだけ教えてくれた。


「その上で僕は思った。例え魔女が居ようとも、自分より優れた存在が居ようとも、僕はこの世界を守りたい。魔女の世ではなく人が人として生きられる世を創造したい、そう分不相応に考えたのさ。そんな無謀な道行き、同行者がいればいるだけいい」


「同行者……貴方は何をしたいんですか?」


「ふぅむ、言って信じてくれるかは分からないが、実は今、この世界はな……」


その話を聞いて、私の道は定まった。


自分は魔術師として大成出来ない。魔女以上の存在にはなれない、だとしても彼の望みの一助になりたい。


世界を救うとか、人の為の世を作るとか、そんな大それたことは出来なくていい、自分以外の誰かが笑えればそれでいい。


イノケンティウス様の歩みが、少しでも軽やかなものになればそれでいい。そうすればきっと……私のちっぽけな生にも意味が生まれるはずだ。



───────────────────


「ッハ!!」


アマルトに殴り飛ばされ、一瞬飛んでいた意識が戻る。そうだ、私はイノケンティウス様のために。


「ッぐぅうう!!がぁああああああ!!!」


「マジか!右腕切り落としてんだぜ!?痛くねぇのかよ!」


痛い、全身が痛い、膨れ上がった覚醒同士が食い合いを始めた、最早死を避ける事は出来ない。だがそれまでの間に、少しでも何かを変える!

ここで魔女の弟子を一人片づける!そうすればイノケンティウス様の仕事が一つ減る!彼の偉業を支える礎、そのうちの一つでいい。私の命はそれでいいのだ!!


「どぅぁああ!!」


「ガッ!?」


一気に突っ込み、アマルトを肩でぶっ飛ばす。そのまま彼の体は吹き飛び奥の部屋へと飛んでいく、それでも止まらない、止まればもう動けない。再び地面を蹴って加速し壁に叩きつけられたアマルトに体ごとぶつかるように蹴りを加え更に飛ばす。


「ッ!!死に物狂いかよ」


「そうだ!死に物狂いだよ!!」


崩落する天井、崩れていく地下施設、そのままアマルトを瓦礫を吹き飛ばす勢いで蹴り上げ、貫通させる……天蓋を。開いた大穴は空へと続き、私もアマルトもカーヴル平原へと飛び出す。


「私は!イノケンティウス様の作る人の為の世!新たなる世!その礎となる!!」


「なにが人の為の世だ、平穏無事に生きてるカロケリ族も、アルクカースの国民も、全員傷つけて!なにが新しい世だ!テメェの理屈は未来のことばかり!今現状起こってることから目ェ背けんじゃねぇ!!」


「背けてなどいない!だが!魔女大国があっては!なにも変わらない!!故に戦っている!」


「そういうのなんて言うか知ってるか!力による現状変更!国際社会じゃ忌避される行為だぜ!」


「忌避されても!構わない!!」


飛び上がりながら両手の指に魔力を集め、振るうと共に撃ち放つ。その魔力弾の雨は魔力覚醒『有象無象之手』により圧縮した魔力、圧力を司る覚醒により周囲の全てを吸い込みながら飛び、大地すら引き剥がす程の引力を生み出す。


「世を憂う烈士は俗世の声によって意思が移ろう事は許されない。なにを言われようとも、我が決意は揺らぐ事はないッ!」


アマルトは地面に向けて落ちながら、視線を左右に動かし飛んでくる魔力弾を確認している。周囲の岩や地面を引き剥がし飛んでくる引力の塊、対処しなければ彼は死ぬことになる。

だが対処そのものは可能だろう、彼の呪術は無機物を呪う。岩や土を伴う魔力弾だ、岩や土を呪えば対処が出来る。


それを分かって、敢えて撃った。対処せねばならず、対処出来る代物を用意したのは……囮だ。


「『呪界────」


(かかった!)


アマルトは周囲に魔力を振り撒き始める。呪いが解き放たれる、魔力弾を呪い破壊しようとする……だが。


(強力無比な覚醒だ、条件を満たせば距離や状況を問わず対象の肉体に影響を与えられる呪術。その条件を範囲内であれば無条件に変えることが出来る覚醒……)


かつては呪術の研究をしていたからこそ、彼の強さが良く分かる。だからこそ弱点も分かる、呪術成立のプロセスは他の魔術と異なりかなり難解だ。

一度放ったら後は勝手に相手に向かって進む属性魔術と異なり、呪術は直接対象に影響を与えると言う性質上、攻撃完了のその瞬間まで対象に意識を向ける必要がある。


つまり他の魔術より、発動から発動終了までの時間が長い……隙が長い!


「『十王変成塞じゅうおうへんじょうさい』ッ!!」


解き放たれたのは呪術からなる地獄。彼の保有する間合い全域を満たす黒々とした光、それはまるでアルクカースの空に浮かぶ暗黒の太陽の如き威容。周囲に人間がいないから遠慮なく全開の力を出している。


これほどか……だが、今だ。


「ぐぅううううう!魔力覚醒ッッ!!」


同時に、私もまた覚醒する。幾多の覚醒が鬩ぎ合う中、死力を尽くし全ての覚醒を解き放ち、ただ一つの覚醒を強化する。それは……。


「『 十二欲因大乱照じゅうによくいんだいらんじょう』ッ!!」


相手の欲を暴走させる覚醒『 十二欲因大乱照じゅうによくいんだいらんじょう』。これは相手が最も抑圧する欲望を表に引き出し、暴走させることが出来る覚醒だ。これを受けた者は皆、戦うどころではなくなる。


相手の力量が上がれば上がるほど暴走させるのは難しいが、それでも相手が知的生命体であるならば、必ず効く!防御も回避も不可能な絶対の覚醒!幾つの覚醒を得ようとも、それでもこれが私にとっての切り札であることに変わりはない!!


「喰らえッッ!アマルト・アリスタルコス!!」


「なッ!?」


呪いの壁を引き裂いて進む光、この光は魔力でもなんでもない純粋な意志の具現。物理的影響で防ぐ事は出来ない。それに驚いたアマルトは目を見開き……光を浴びる。


「しまッ……!!」


この時、彼は。戦闘が続行不可能になる。


彼の目が欲望に染まる。身動きが取れなくなる、終わりだ……後は。


「『スコルズ・ブライドル』」


手元に仮面を生み出し、魔力で空を飛びながらアマルトに突っ込む。この仮面を奴に貼り付ける。私はもう直ぐ死ぬが、私が死ねばスコルズ・ブライドル達の精神は破壊される、つまり道連れだ。

申し訳ない、アリスタルコス。君達には昔教師として世話になった恩義温情がある。それでも……私にはやらなくてはならないことがある。


(忘れるな、魔女の弟子。ゴルゴネイオンは確かに悪だ、この悪徳は未来永劫許される事はないのだろう、或いは……世間からは魔女大国に逆らった愚か者と嘲笑される事もあろう)


呆然とするアマルトに向け、仮面を突き出し、私は目を閉じ想う。私達は悪さ、アマルトの言う通りこの戦争を引き起こし無関係の人間を巻き込んだ時点で、未来を語る権利はないのかもしれない。


愚かだろう、愚かだ。平穏な生き方を捨て、思想と思惑に走り、自らの命を擲つ私たちは愚かだろう。だが忘れるな、忘れるな、忘れるな!


(例えどれだけ愚かでも!許されないことであっても!私達にも信じた未来があることをッ!その為に命を燃やして走り抜いた者達がいることをッッ!!)


それが私達の生き方だ、この生き方はきっと私達にしか出来ない、私達だけのいきかたなんだ。だから……お前の命、ここでもらっていく。恨み事は地獄で聞く!!


「お前もあの世について来いアマルト!!」


「…………」


欲に囚われ動かないアマルトの顔に、仮面が向かう。そしてその顔を覆う……………。




………その瞬間、チラリとアマルトの瞳孔が私に向いたのを、見逃す事は出来なかった。



「がばはぁっっ!?!?!?」


瞬間、アマルトの鉄拳が私の顔面を射抜き、地面に向けて叩きつけられる。隕石のように墜落した私は平原に大穴を開け、口から、全身から、血を吹き出す。


(え?)


困惑する、崩れる仮面を前に私は目を揺らし困惑する。何故、反撃が来た、確かにアマルトには覚醒が効いたはず。

いや、私を上回る呪術使いだ、まさか私の技を無効化することことが……いやあり得ない!それは呪術に限定した話!私の呪術『ソウルリンク』が効かない事はあっても、覚醒が効かないなんて事はないはず!


なにより!彼の魂に触れた感触は確かにあった!そして彼の魂は欲によって覆われたはず!ならなんで反撃が来た!……いや、まさか。


(これが、彼の望んだ───)


「おい、テメェ」


「ハッ!?」


一閃、地面に倒れる私に向けてアマルトの蹴りが頭上から降り注ぎ、大地がひび割れる。ミシミシとひび割れる私の体、きっと私は絶叫を上げただろう。だがそれ以上に響くのは。


「いい加減にしろよ」


「ごげぇっ!?」


そのままアマルトは私の体を掴み上げ、鋭い打撃を、拳を、鳩尾に叩き込み詠唱を封じる、鈍い苦痛が脳に突き刺さる。呪術じゃない、呪術と遍在で強化した徒手空拳……それで私を痛めつけているのだ。


「いつまで動いてんだ、虫かお前は」


(まさか、彼は……)


乱れ飛ぶ拳、蹴り、それは私を幾度となく吹き飛ばし、全身から黒い魔力を放つアマルトの目を見て……理解する。彼は確かに私の覚醒が効いているようだ。


だが、誤った。アマルトという男を誤った、彼が抑圧していた欲望、それは……恐らく。


「早く、死ねよ」


(殺意……私への殺意をなににも勝る程の勢いで押し殺し、私と戦っていたと言うのか!)


即ち彼が抑圧していたのは『殺意』。相手に死んで欲しいと言う欲が彼の中にはなににも勝るほどに膨れ上がり、それを必死に押し殺して戦っていたんだ。私を殺せばスコルズ・ブライドルが廃人になることを理解していたからか?或いは、アマルトという男が私が想像するよりもずっと理性的だったのか。


なににせよ、そのタガを外して……しまった。


「死ね」


「ギャァっ!?」


叩き込まれる斬撃、それが袈裟気味に私に繰り出され、胸から腰にかけて鋭い斬傷が入り、血が滲む。私の肉体強化を遥かに凌駕する一撃、殺さないよう配慮した彼はここまで強いのか!


「早く死ねよ、テメェのせいでダチが苦しんでんだ。戦争なんてくだらねー真似する羽目になった、ダチの大事な人間が傷ついて責任感じてんだ……テメェらがいなけりゃ、そもそもこんな事にはなってねぇ」


「だが……私達には、やるべきことが」


「極論言うぜ、どうでもいい」


「ガッ!?」


起き上がり反論しようとした瞬間、繰り出されたアッパーカットが私を押し倒し、そのまま傷口にアマルトの足が置かれ、激痛が走る。


「やりたい事とか、そう言うのはどうでもいい。分かり合えたらハナからこうなっちゃいないだろ。テメェのやりたい事にまで慮って生きていられるほど、魔女大国に余裕はねぇよ」


黒く、黒く、黒い。私を見下ろすアマルトの顔に影がかかり、殺意滲むその瞳。見下ろすその目に、私は恐怖を覚える。私を殺そうとするから怖いのか、その実力が怖いのか。


違う、似ている……似ているんだ、あの全てを瑣末な事と切り捨てるその姿が。


「だから、死ねや」


振り上げる刃に見る。私の胸目掛け振り下ろされる刃に見る、……アンタレスの影を。


「あ、アンタレスッ!」!


思わず口を突いて出る、忘れていた感情が噴き出てくる。イノケンティウス様によって和らげられた感情が湧いて出る。


魔女への根本的恐怖。イノケンティウス様をして現代世界に残った最大の未知、理解出来ないとまで語った魔女と言う存在の恐怖が彼の姿から想起される。


どれだけ傷つくとも怖くなかったのに、今私は……彼を恐怖している。そうなのか、彼もまた魔女と同じなのか。彼は第二の魔女なのか、ならば変わらないじゃないか。


例え魔女を打倒しても、我々は魔女に支配されたままじゃないか。世界はいつまで経っても変わらないじゃないか。私達はなにも変えられないじゃないか。


なにも変えられず……私は、死ぬのか?


(こ、殺される……!)


嘔吐する程の恐怖に私は身をすくめ、胸目掛け振り下ろされる刃が……今、切り裂いた。


「グッ!?」


溢れ出る血液、吹き出す鮮血、ボタボタと落ちる血が大地に落ちる。引き裂かれた肉からは痛みが迸り、……命を奪う。



……事はない。そう、その刃は私の命を奪う事はなかった。何故か、それは。


その剣は、私の胸に刺さったわけではなく。


「ッ……っぶねぇ〜〜、頭ん中、ぶっ殺す事でいっぱいになってたァ……」


突き刺さったのは、アマルト自身の腕、彼は振り下ろした剣から私を守るように腕を出して、自身の腕に剣を突き刺していたのだ。寸前で私の覚醒を自身の意思一つで振り払ったのか!?


どんな強靭な、精神性なんだ……。


「これ、テメェの覚醒か。なるほど押さえ込んでる欲を表に出すって奴だったな。じゃあバレたか?俺がテメェをどんだけぶっ殺したいか」


「ッ……私が死ねば、スコルズ・ブライドルが廃人になるからな」


「ちげぇよ、いや違くない。けどそれだけじゃねぇ……正直、ぶっ殺したくてぶっ殺したくてたまらねぇ、それでも殺さねー……それはな」


アマルトは私の体を踏みつけたまま、傷ついた腕を私の顔の前に持ってくると……。


「俺達は、魔女とは違うからだ」


「ごぼぼっ!?」


ダラダラと垂れる血を私の口に注ぎ込む。


「テメェらは俺達が魔女を受け継ぐ者だと思ってるかもしれないが、違う。俺達は魔女を超える、魔女の犯した過ちはもう犯さない」


「ぐっ、なにを……」


「魔女もまた多くを傷つけ、多くを死なせた、そしてその過ちが歪みとなり、世界が割れたんだ。だから俺達は同じ轍は踏まない、俺達は……魔女とは違う、誰も殺さねぇ」


アマルトの血に溺れるようにもがき、彼の言葉を聞く。魔女を受け継ぐ者ではなく、魔女を超える者?魔女の作った世を変革する者?それじゃあマレフィカルムと、ゴルゴネイオンと変わらないじゃないか。


いや、そうか。だからイノケンティウス様は言っていたのか……魔女の弟子達は自分と唯一道を争える者だと、だからこそここで勝負を仕掛けたのだと。


そうか、ああ、そうなのか。なら私は……。


「つーわけで、今回の一件。これで手打ちにしてやる、いくら呪術が効かなくても、内側に俺の血を入れちまえばそうも言ってられねぇだろ……と言うわけで、『解除しろ』」


「ギッ!?」


瞬間、私の肉体に染み込んだアマルトの血が無理矢理私の魂と仮面達のリンクを、切断する。スコルズ・ブライドルの束縛が解除された。私自身でしか解除出来ないから、私自身に解除させたのだ。


まさかこんな抜け道を使ってくるとは……。


「これで洗脳は解除されたかな、うーん、分からん。おい、解除されたのか?」


「か、体が動かない……」


「そりゃ麻痺させてるからな。悪いなぁ捕虜にさせてもらうよぉ〜洗脳とかしたりしないから安心しろよぉ〜」


「こ、殺さないのか」


「くどい、二度と言わせんな。それと洗脳は解除されたのかって、聞いてんだろうに」


アマルトはやや呆れながらもため息を吐く、先程までの殺意や猛威を嘘のように消して彼は笑っている、だが消えたわけはない。彼は依然として私への明確な殺意を滾らせ、許されるなら殺したいと考えている。


その上で、殺さないと言う選択肢をとっている。自らの信念に基づいて、殺さない選択をとっている。


強い、人として。自らの居場所から逃げた私では勝てないのは当然か……。


「色々やってくれたんだ、思いっきり味方の情報吐いてもらうぜ」


「無駄だ……どの道、私はもう直ぐ死ぬ」


「もう直ぐ死ぬ、ね。自害するって感じの言い方じゃねぇな、覚醒か?」


どうやら彼は理解しているようだ。そう、既にスコルズ・ブライドル達は全員解放されている。私はただ一人で死ぬ事となる。それは残念ではあるが……仕方ない事。負けたのだから、潔く死ぬとしてよう。


「チッ、折角殺さなかったんだ、死なれたら寝覚めが悪いぜ。待ってろ、メグを探してくる、なんとか延命できないか模索する。だからお前も死ぬな」


「………」


いいや無理だ、わかる。もうそんな猶予もない、私はここで死ぬ。だがそれでいいのだ。

魔女に怯えて逃げた男は、なにも成せずに死んだかもしれない。だが私は最後まで私のやれる事に殉じて死んだ、最後まで走り切ったのだ。

私の信じた未来は、この目で見る事は出来ずとも……それで満足だ。


申し訳ありません、イノケンティウス様、私はどうやら……ここまでのようです────。




「死ぬならその前に一つお願いがあります」


「は?」


そう、安らかに死のうとした、その時。アマルトの背後に影が出現する。


「渡したものを返してください」


「ッお前は───ぐぶっ!?」


そしてそいつの拳はアマルトの腹を貫通し、私の顔にアマルトの血が付着、倒れていくアマルトの後ろから、メガネを掛け直したそいつが顔を見せ……。


「マクスウェル……どうして」


「ネツァクと呼びなさい、そう言ったはずです」


そこにいたのは、今ヴィルヘルム要塞にいるはずのマクスウェル将軍だった。いや、そんなバカな、何故こいつがここに?いつの間にここに、と言うか……なにをしに。


「しかし、全て上手く行ったようですね」


「な、何もうまくいっていない。スコルズ・ブライドルは全て解放されてしまった……!」


「ああご安心を、ハナッから貴方がスコルズ・ブライドルを守り切れるとは思ってませんでしたよ、最悪死んでも道連れを作れると思っていましたが……まぁそれも難しいだろうなと」


「な、なら……」


「はい、貴方にはなにも期待をしていませんでした」


マクスウェルはゆっくりと倒れる私の首を掴み、そのまま片手で持ち上げ……締め上げる。私はこいつに、何も期待されていなかった?なら私は一体何のために死ぬ思いで戦って、自らの責任のために戦って……!


「き、貴様ぁ……!」


「私はただ、貴方の覚醒が欲しかっただけなのですよ。言ったでしょう、私の覚醒は相手の覚醒を奪うものだと、ですがこれも使いづらいものでしてね、相手を殺さないと……覚醒を奪えないのですよ」


「まさか……貴様、最初から」


「はい、貴方自身は雑魚で雑魚で仕方ありませんが、スコルズ・ブライドル。あれはとてもいい、有用だ。だから貴方のような存在が持つより私が持った方がいい」


「無駄だ、あれは私でないと使えない。私の魔術と覚醒の合わせ技で……」


「『ソウルリンク』」


「は?」


マクスウェルが指を立てて発動させたのは、相手の魂と自分の魂をリンクさせる魔術、いや現代呪術。私が必死の思いで作った魔術を……マクスウェルは片手間に使ったのだ。そんなバカな、それを使えるのはこの世に私一人のはず。


「技術模倣系魔力覚醒なら百二十ほど持っていますので、あとは覚醒さえ手に入ればまぁいつか使えるようになるでしょう」


「……じゃあ、最初から……」


「そうだと言っているはずです、お前の覚醒は私が使いますので。ここらでご退場ください」



にっこりと微笑むマクスウェルの顔を前に私の意識は薄れていく。覚醒の負荷により破壊された魂が、崩れていく。私は全てこいつにいいように利用されていただけだったのか。最初からこいつは私の覚醒を奪うつもりで……。


私の覚悟は、私の命は、私の戦いは、なんのために。


こんな奴の言うことなど、聞くんじゃなかった……ああ、イノケンティウス様─────。

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その壱 「逆ですよ、お前が私に挑むんです……!」 お前…???ホドさんや、低確率で貴方からお前呼びに変わるよねぇ。 その弐」 「実は余も……いやぁお前の前では気取るのはやめよう。僕もね、色々考えて…
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