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孤独の魔女と独りの少女【書籍版!8月29日発売中!】  作者: 徒然ナルモ
二十章 天を裂く魔王、死を穿つ星魔剣
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744.『一』対『零』


第三段階、それは人類最強の領域。更に上の第四段階に至るには古式魔術の修得が必須と言われることもあり、事実上現代においては最高位の扱いを受けているこの段階は…至れば人の領域を超えると言われている。


身体能力は天災に匹敵し、魔術は厄災に相当し、その一挙手一投足に甚大な破壊が付きまとう。はっきり言って…人間の範疇に収まる力じゃない。


バシレウス、リューズ、オフィーリア…今俺の目の前にいる連中はみんな第三段階か第三段階相当の使い手だ。普通に生きていたら一人だって見かけることのない歩く天災が勢揃いしている。


その超常の坩堝の中で…果たしてステュクスという凡人に出来ることは何か、俺は必死に考えながら、剣を握る。


「うーふーふーふー。私ちゃんに勝てるかなぁ〜?ステュクスきゅ〜ん…」


「勝つさ、その為に来た」


「小生意気〜」


俺の前には一人、化け物がいる。名をオフィーリア・ファムファタール…セフィラ『美麗』のティファレトの名を持つマレフィカルム最強の十一人の一角。こいつのせいで姉貴は今死にかけている、なんとかしないと姉貴は死ぬ…俺は失う、また大切な人を失う。


それだけはゴメンだ、だからこそ…冷静にならないといけない。感情に任せて突っ込んで勝てる相手では絶対にない。何より…今回は絶対に失敗出来ない理由が一つある。


「バシレウス、お前はリューズに集中してくれ」


「……ああ、任せるぞ」


隣にはバシレウスがいる。俺が負ければバシレウスが二対一になる、そうなれば流石のバシレウスも死ぬ、バシレウスを死なせたくないから…俺は頑張ってんだ。だから気合い入れて…持ち堪えないと。


「あ、そうだ。これ…」


俺は本格的に戦いが始まる前にペンダントを…ユリウスの血で作られたペンダントをバシレウスに渡そうとする。これを取り返す為に来てるんだから、取り返したのならもうお前が持ってろよと差し出すが。


「……いい、お前が持ってろよ」


そう言いながら首を振るんだ。いや…流石にそれは。


「この状況になってるのは俺のせいだし、それに俺が持ってたらまた奪われるかも」


「そうなったら、全部終わって…気絶したアイツらから奪えばいい」


それまで持ってろよと突き返される。それはある種俺への信頼のような物なのだろう。オフィーリアがこれを持ってたら激怒してたもんな……。


バシレウスはユリウスに対して、思うところがあるんだ。彼を殺してしまったことを、悔いているのかもしれない。家族に対しての情があるんだ……。


(でもこいつは…俺の姉貴を、半殺しにしたんだよな)


コルロからもたらされた情報が脳裏を過ぎる。こいつはどういうわけか知らないが姉貴を傷つけた、殺しかけた。

信じられない、バシレウスがそんな事するはずがない……ってのは言えない、まぁするだろうなとは思う。なんならありありと場面が想像出来る。だから許せるかっていうと話は変わってくるが、敵対関係なんてのは当人同士の問題だ、俺が口出しすることではない。


何より今、そんな事を気にするな。俺は姉貴の味方であり、バシレウスの味方だ。魔女派も反魔女派も知ったことか、俺は真ん中に立つ、それでいいんだ。


「分かった、…ともかく勝てよ、バシレウス」


「そりゃこっちのセリフだ…よし、行くぜ」


「ああ」


俺達は二人で見遣る。リューズとオフィーリア…敵は強いが、やれる!やってやる!


「はぁ、じゃ…行こうか、リューズ」


「……ああ」


「よーし!じゃあ今回私ちゃんも張り切って────」


オフィーリアが処刑剣を回す、散布される魔力が光を歪め…オフィーリアの姿が消え始める。来た…オフィーリアの霧散防壁!防御性能を捨てた攻撃特化の防壁というわけのわからん代物!


あれを発動すると、霧のように振り撒かれた防壁が光を歪め……。


『殺しちゃうよ〜』


(消えた…!)


消える…オフィーリアの姿が全く見えなくなる。姿を眩ませながら相手を狙う…一撃必殺の『アヴローラ・メメントモリ』を持つオフィーリアが使っていい戦闘法じゃないぜ!やばい…どうしよう!


「ビビんな!ステュクス!」


「ッ!そうだった!」


バシレウスがリューズに向けて走っていく、同時に叫ぶ…ビビるなと。そうだ、ビビるな!剣を持て!振え!戦え!だってオフィーリアは!


(目の前にいる!)


「あひゃあ!?」


一閃、俺が剣を横凪に払えばオフィーリアが慌てて剣を避けたのか、霧状の防壁の隙間から咄嗟にしゃがむオフィーリアの姿が見える。確かにそこにいる…。


(バシレウスの言う通りだ!)


初見でこの透明化防壁にはビビった、けど…昨日バシレウスとの模擬戦の際、アイツが言ってたんだ。


『オフィーリアは透明になる防壁を使う。けどそれは魔術で透明になったわけでも覚醒の力で透明になったわけでもない、子供騙しの領域だ…』


『だからまず、オフィーリアが透明になったら足元を見ろ。影は消えない、走った時は砂埃が出る、香水の匂いは消えないし音も出る。ただ姿が見えないだけだ…ちょっと考えればアイツのいる場所はすぐに分かる』


そう言っていたのだ。そう言われ確かに下を見ると…影がある、なんならこちらに向けて飛んできた時の砂埃も出ていた、ただ姿が見えないだけ…ビビらなきゃ居場所は分かる!


「チッ!バシレウスが私ちゃんの攻略情報教えたなぁ!」


「さぁてな!」


もう一撃、剣を払えばオフィーリアの処刑剣に弾かれ火花が散る。バシレウスからいくつか対オフィーリア用の戦法を教えてもらえた。


例えば、奴の霧散防壁は攻撃性能はピカイチだが逆に防御面は薄弱…俺なんかの攻撃を咄嗟に回避しなきゃいけないくらいには、防壁としての機能はないに等しい。その分当人の回避能力が高いが……回避するってことは、相手のワンアクションを消費させるって事だ。


なら、攻めて攻めて攻めまくって!相手に何もさせなければ良いのだ!


「『魔衝連斬』ッ!」


「ああうざい〜!」


無数の斬撃を飛ばせばオフィーリアはその場から飛び退き、再び姿を魔力の霧の中に消す。さぁここから本番だ…バシレウス曰く。


『オフィーリアは敵を楽に殺せる相手と楽に殺せない相手に分類する。初手を潰されると十中八九後者に部類する。そうなると割とマジでなりふり構わなくなる…』


『代わりにオフィーリアの攻撃は派手さがない。奴の攻撃はどこまで強力になっても対人メイン、俺やクユーサーみたいなド派手な攻撃はしてこない。一つ一つ丁寧に捌けばお前に防げない攻撃はない』


つまり…オフィーリアの攻撃は確実に俺の命を狙ってくる、命狙いの攻撃は派手さがない分威力も控えめだ。…と言っても、比較対象がバシレウスだからな、俺からすれば十分強力…だから。


「来い!」


抜く、もう一本の剣…師匠の剣を。二刀流の構えで踵を踏み締めオフィーリアを待ち構える…。集中しろ、アイツは確実に俺のところに来る、俺の……!


「ここか!」


「おっ!?」


背後に向け剣を振るう、するとオフィーリアの処刑剣に当たりまたも火花が散る、やはり背後か!これは前回の戦いでもそうだった!こいつは相手の背後によく回る!


「お前の対策はしてきてんだよ!オフィーリア!」


「むかつく、対策した程度で私ちゃんがやられると思ってんだ…だったら」


瞬間、俺の剣撃を回避したオフィーリアはそのまま横薙ぎに処刑剣を振り回す。同時に透明化に使っていた霧散防壁が空中に散布され。


「『ハビタブルゾーン』」


放たれるのは霧散防壁による竜巻。高速回転する霧散防壁は空気を切り裂く卸金のように作用する。触れた大地が、壁が、ギャリギャリと音を立てて火花と共に消えていく。真っ向から受ければ死は確定の斬撃の雨…だが!


「『喰らえ』!星魔剣!」


「なッ!?」


それでも、これは魔力攻撃だ!だったらロアで食い裂ける!刃を通し、斬撃のヴェールに穴を開け、俺はオフィーリアに突っ込む。分かる、全て分かる!全部!バシレウスと言ってくれた情報通りだ!


ハビタブルゾーン…見た目は派手だが攻撃に重さがない!これなら突き抜けられる!


「オラァッ!!」


「グッ…!」


叩きつける、二つの剣を真上からオフィーリアに向けて。響く轟音と火花の煌めき…処刑剣に防がれはしたものの、オフィーリアの顔色が明確に変わる、いける…バシレウス特訓が効いてる!オフィーリアの動きが前見た時より速く感じない!


「今日こそ、師匠の仇取らせてもらうぞ!オフィーリア!!」


「ナメやがって…攻略情報一つで、ひっくり返せる差だと思うなよっっ!!」


これなら…全く通じず一方的にやられるってことはなさそうだ、なら…バシレウス、早いうちにリューズを倒しちまってくれ!


………………………………………………………


(ステュクスは大丈夫そうだな)


チラリとステュクスとオフィーリアの戦いを見て、安堵する。依然として力関係ではオフィーリアの方が遥か上、だがオフィーリアはあれでプライドがかなり高い…極・魔力覚醒を出せば良いものを一向に出さない。それは全てステュクスが自分より遥か格下だから。


だが!その格下のステュクスを相手にオフィーリアは確実に攻めあぐねている。あれならワンチャンもある…だったらこっちはこっちに集中するか。


「バシレウスッッッ!俺を見てくれよ!!」


「うるせぇっ!」


「ぐっ!?」


勢いよく突っ込んできたリューズの顎先を蹴り飛ばし、俺は上着を脱ぎ捨てる。乗ってきたぜ、体も温まってきたからな…もうアイツの冷気にビビる事はない。


「ッ…急に動きが良くなった…?なんでだ、バシレウス…まだ君は俺の知らない何かを持ってるのか…?」


「さぁな!テメェが弱くなったんじゃねぇのか!」


「ぐぶふっ!?」


一気に畳み掛ける。顎先を蹴られ怯んだところに更に鳩尾。一発の拳でリューズの胃液をぶちまけさせる。


「グッ…!うゔう!!この…ッ!」


「そら、さっきまでの威勢はどうしたよ」


ヨロヨロと後退りするリューズにビンタをして痛めつける。なんだこいつ…急に動きが悪くなった気がする、いや……もしかして。


(まさか…こいつ、いやまさかな……)


「この…ふざけるなァァァッッッ!!!」


「お……!」


瞬間、リューズの体が震え巨大な渦を作り出す。それにより空気も温度も魔力も周りの物をどんどん吸い込み、奴の体の中で…力に変わる。


「俺は!!」


「ゲッ!?」


そこから繰り出されるリューズの拳は先程よりも速く、俺の顔面を打ち抜き吹き飛ばす…やり返された。つーか…これキリがないな。


(チッ、さっき散々痛めつけた分のダメージも抜けてる。こいつどっからかエネルギー吸い上げてやがるな…傷つければ傷つける分、こいつが何かを欲すれば欲する分、奪う力が増幅していきやがる)


戦えば戦うほどに、こいつは奪う力を増幅させ…それを自分の力に変え、回復と強化を同時に、かつ無限に行う。故に殴り合う程にリューズは強くなる、エネルギー切れは存在しない。


厄介な奴だぜ、耐え切れないほどの一撃をぶちかますか…?


「バシレウス!!俺は!何かになりたいんだ!誰かになりたいんだ!」


「それを俺に言うな!」


リューズは再び氷の鎧を身に纏い、暴れる。そう、暴れる…だ。何かに対して攻撃を行うとか、何かを倒そうとするとか、そんな思考も感じない。ただ闇雲に力をに踊らされるように四方八方に氷の衝撃波を放ちぶち壊す、ますます見境がなくなり始めてきたな。


「みんながみんな!何かを持っている!なのにどうして俺だけが何も持っていない!俺だけがあの薄暗い砦に閉じ込められなきゃいけない!?おかしいだろ…全部全部!」


「クレプシドラに言え!」


「言って聞いてくれるものか…!」


手に霜を這わせ、白銀の籠手を作り上げる。それは鋭い爪を伸ばしギラリと先端が煌めくと共にこちらに向けて振るうリューズを前に俺は咄嗟に身を屈め回避する。


飛んできた、斬撃が。俺の背後の壁に五本の線が引かれリューズの手に装着された霜の籠手による斬撃でズタズタに切り裂かれている。


「一度、世界を知ってしまったら、普通を知ってしまったら、自分の置かれている状況が如何に不当だったかがよく分かる…何故俺は不当に閉じ込められなきゃいけなかったのか!」


「知らねぇよ」


「俺は、それを理解しつつある」


もう片方の手にも白銀の爪を装着し、両手で無数の斬撃を飛ばすリューズ。防壁を封じられた俺はその斬撃の雨を前に身を捩り、飛び上がり、近くの壁に足を引っ掛け壁を駆け抜ける事で避け続ける…すると。


「姉様は…俺を恐れていたんだ。俺の力を…己の地位を揺るがす存在として」


パキパキと音を立てて更にリューズに霜が降る。それは尻の辺りに重点的に重なり…まるで鋭い槍が伸びるように…リューズの背後に白い氷柱が出来上がる、それと同時に氷柱はまるで何かの意志を得たかのように捻じ曲がり…大地に打ち付けられる。


尻尾だ、白い尻尾が出来上がった。白銀の爪に白銀の尻尾…アイツ、悪魔にでもなる気か。


「なら俺は…なってやろうと思う。クレプシドラという女王を脅かす…魔王にッ!」


リューズの額に二本の角が生える、氷で出てきた角が生え…さながら悪魔のような氷の鎧を身に纏ったリューズは、決意を込めた目でこちらを見遣り。


「だからバシレウス!お前を倒して俺はなるよ!魔王に!だから消えてくれ!!」


口を開き、白い閃光を放つ。さながら龍の咆哮の如きそれは一瞬で俺を捉え…凍りつかせる。周囲の温度を一瞬にして奪い尽くし俺ごと壁を凍結させ、この身を氷の中に閉じ込めるのだ。


チッ、動けねぇな……。なんて思っていると、背中から氷の羽を生やしたリューズが、大きく一度羽ばたくと共にこちらに向けて突っ込んできて…拳を放つ。


「『凍崩式・雲竜白掌うんりゅうはくてい』!!!!」


「グッ…!」


「俺は…お前を超えるよ、バシレウス!」


砕く、氷ごと拳によって全てを砕き、俺の体に防御不可の一撃が叩き込まれ…口から血が溢れる。同時に吹き飛ぶよりも前にリューズは鋭い霜に覆われた腕で俺の首を掴み…。


「フンッッ!」


投げ捨てる、勢いよく地面に向け投擲し空中に投げ出される俺の体…それは地面に触れるよりも前に飛来した白銀の尻尾が叩きつけられ、あまりの衝撃に地面が割れる。


「それとも、もう超えてしまったか?バシレウス」


(……魔王になる、か)


しかし、そんな攻撃の嵐の中…俺は考えていた。


リューズの辿り着いた答えが、それか。姉を脅かす魔王になる事。何も持たないアイツが導き出した答えが、それか。


そうか……つまり、リューズはなっちまったんだな。そういう答えを出すやつに。


(残念だよ、だって………)


大地が裂け、攻撃を受けたこの体は裂け目へと落ちていく。ただただ俺は残念に思っていた。


だってそうだろ、魔王に『なる』ってさ。笑えるよ。


……………………………………………


「きゃはは!最初の勢いはどうしたの!?」


「ヴッ!」


『ステュクス!しっかり避けんかい!』


飛んでくる飛んでくる、オフィーリアの処刑剣が風のように振り回され俺に向けて次々と飛んでくる。それを二つの剣で弾きながら俺は必死にオフィーリアを見続ける。


最初こそ、俺が押していた。だがオフィーリアはすぐに持ち直した、持ち直して防壁や魔術ではなく純粋な剣技で戦うようになった。純粋な実力勝負なら俺に勝ち目がないことを理解したんだ。


だから小手先の誤魔化しではなく、ただ人類最強の段階に至ったものの技量を思いっきり前面に出して戦い出した、こうなると俺に付け入る隙はない。


「ほらここ空いてる!」


「ぐふっ…!」


オフィーリアの鋭い蹴りが斬撃と防御の隙間を縫って放たれ、俺の腹を打つ。衝撃が全身に響き渡り体が痺れる。ちょいっと蹴っただけでこのレベルかよ…!


『ステュクス!前!』


「チッ!」


痺れる体、霞む視界を振り払い咄嗟に真横に飛ぶと同時にオフィーリアが振り下ろした剣が地面に突き刺さる。あぶねー……。


「弱いねぇ相変わらずさぁ、なんでこんなところにいるの?」


「……俺から言わせりゃ、真逆だぜオフィーリア。あんたそんなに強いのに…なんでこんな事やってんだ」


「んん?」


ゆっくりと体を起こし、息を整え…聞いてみる。だってそうじゃないか?オフィーリアはこういうふざけた態度と異性に対するナンパな物言い、男を誑かし、殺し…そんな事しなくても、オフィーリアはもっと別の道があったんじゃないのか。


「あんた程の達人を…俺は見た事がない。悔しいけど…俺の師匠よりも剣の腕では上だ、なのになんで……」


「レナトゥス様がそれを望んだから」


「……レナトゥスが?」


オフィーリアは剣を地面に刺し、冷たく何も感じさせないほどに無機質な瞳でこちらを見て、そういうんだ。


「そう、レナトゥス様が私を導いてくれると言った。元老院にとって都合のいい手駒でしかなかった私に同情して、マレフィカルムにとって都合のいい掃除屋でしかなかった私に共感して、レナトゥス様は私を側に置いてくださると言った…ただ王国の邪魔者を消す為の手段でしかなかった私が、宰相を守る剣になれたから」


「レナトゥスの為に、お前は人を殺して回っていると…そう言いたいのか」


「そうだよ、レナトゥス様の為に…あの人の語る未来を実現する為に、私は使われる。それだけが私の幸せ…例え穢らわしい男に抱かれようとも、好きでもない男と結婚しようとも、私の心はレナトゥス様だけのもの…ならばこそ、あの人の邪魔者は全て消す……それは、君も同じでしょう?女王の狗クン」


「…………」


これも、こいつなりの忠誠ってのか。レナトゥスが望んだから今ここで人を殺す…今まで殺したのも、レナトゥスが望んだから。それはレギナが望んだから戦う俺と同じ…同じか?


「一緒にすんなよ、俺はレギナが間違えていたら…糺す為にレギナとも戦うぞ」


「それは君の主君が雑魚だからでしょ〜?雑魚の王様と雑魚の騎士…お誂え〜!」


「テメェはただ、レナトゥスに引っ付いてるだけじゃねぇか…後ろにくっつくだけならシラミでも出来んだよ!支えるってのは…隣に立たないといけないだろ!」


息を整え、大きく吸い…決意を新たにする。加えるんだ、師匠の仇、姉貴の為、そこに加えて…女王へと忠義の為に。


「お前と一緒にすんなよ!人殺して回る理由を他人に依存するような奴の理屈と!俺の気持ちを!同列にすんじゃねぇ!!!」


「他人に寄りかからないと叫べもしないチンカス野郎に、生意気言われちゃったよ…腹立つなァ〜〜!!」


剣を握りしめ、今度こそこいつを叩き切るつもりで俺は一歩踏み込み、オフィーリアと向かい合う。今度こそこいつを……。


「面白い話をしてるね」


「え!?」


刹那、背後から声がする。咄嗟に振り向き確認すれば…そこには白い羽やら角やらをつけたリューズがいて…え!?リューズ!?


「なっ!?バシレウスは!?」


「そこに落ちてったよ」


「は!?」


リューズが指差す先には巨大な裂け目が。その下にバシレウスが落ちたというのだ、けど落ちただけなら上がってくるよな?それがないってことは…負けたのか?バシレウスが!?


「あ〜らら、バシレウスが先にダウンか〜!ざ〜んねん!可哀想にステュクス君〜」


「う、嘘だ!バシレウスがやられるわけがない!負けるわけがないだろ!アイツが!」


「現実見ようねェッ!!」


「ウォッ!」


瞬間、オフィーリアの斬撃が俺の首を狙いながら飛んでくる。咄嗟に星魔剣でガードするが…ダメだ!来る!


「君にはお返しをするよ、ステュクス君」


「ゲェッ!」


咄嗟に飛び上がり俺の足元を狙い飛んできたリューズの尻尾の一撃を回避する。やばい前も後ろも押さえられた!二人がかりで俺を殺しにきてる!まずいまずいまずいマジで死ぬ!


「アハハハハハハッ!ほらほら早くなんとかしないとぉ〜!」


「ふふふ……!」


「うぎゃーーーー!!!」


動く、動く、動き回る。目の前のオフィーリアが放つ斬撃を必死になって二本の剣で弾き回し、同時に左右にぴょこぴょこ跳ねる事でリューズからの攻撃も回避する。


けどあれだ、こんなこと言っていいのか分からないけどこれ長く続けられないよ!実際今俺がなんで無事に生きてられてるのかも分からない!奇跡に奇跡が重なってる神回避!理屈で説明できない状態でなんとか生存してる!


「そぉら!」


「くぅ〜〜!バシレウスーーーー!!早く戻ってきてくれーーー!!!死ぬーーーー!!!」


流石に俺一人じゃオフィーリアとリューズのコンビを抑えきれない!やばいやばい徐々にオフィーリアとリューズが距離を詰めてきた!逃げられない!避けられない!マジで死ぬ!!


どうする!何をする!光で目眩し?オフィーリアに効かないだろそれ、誰か助けを呼ぶ?誰がいるんだよここに。そうだクレプシドラ!…いやアイツを呼んでも状況がややこしくなるだけ!なんならコルロも連れてくるかも!


「だから!バシレウスは負けたんだよッ!」


「ァガッ!?」


瞬間、オフィーリアの渾身の一撃が俺に叩き込まれる。咄嗟に星魔剣で防御は出来たが…いや出来たとは言わないな。俺の体はオフィーリアの怪力に弾き飛ばされ地面を大きく転がることになる。


それと同時に俺の懐から落ちたペンダントをオフィーリアはキャッチし…。


「はい回収完了〜、他愛もないね」


「グッ…か、返せよ!それ!」


「取り返してみなよ〜!」


また取られちまった…けど、まずいな…今度は取り返せる気がしない。目の前にはオフィーリアとリューズ、このコンビを相手にペンダントを取り返す作戦なんか、思いつきっこない。


なんならもう俺、殺されるんじゃないか?


「結局、世の中クレバーに動いた方が勝つの。お前みたいに感情優先で動く奴は負けるのが世の理。他人の感情に依存して生きるお前が私ちゃんに勝てる道理なんてどこにもなかったんだね〜!残念だね〜!可哀想〜〜!」


ケラケラと笑うオフィーリアは処刑剣をクルリと手元で回転させ、持ち直すと共に…その冷酷な瞳を垣間見せ、俺に向ける。


「じゃ、死のうか…」


「ッ……!」


振り上げられる処刑剣、回避不可能を告げる俺の直感。負けるのかよ…ここで?負けたのかよ…バシレウスが。


いや…いや違う、アイツは負けてない…俺も負けてない!まだ…まだだ!!!


そう強く、強く強く祈った…その時だった。


「ッッ…………!?」


……オフィーリアの体から、魔力が消えた。


「え?」


「グッ…!?」


脱力し、処刑剣を取り落とすオフィーリアは膝を突き、冷や汗をダラダラと流す。オフィーリアの中の魔力がごっそり減ったぞ…なんで、いや……違う。魔力が減ったんじゃない…。


「ッ……これは、どーいうつもり…リューズ…!!」


「……………」


奪われたんだ、リューズに。事実オフィーリアの持っていた絶大な魔力がそのままリューズに追加されている。つまりリューズがオフィーリアに対して攻撃を行ったんだ…手をかざし、一気に魔力を引っ張り出して…でもなんでだよ。


味方じゃなかったのか…!?


「リューズ!あんた私ちゃんに惚れてるんじゃなかったの!?」


「ああ…確かに、君に告白した…けどごめんね、あれ…嘘なんだ」


するとリューズは膝を突くリューズはオフィーリアに向け、チロリと舌を出しながら嘘だと言うんだ。嘘って…こいつオフィーリアに惚れてんじゃなくて……惚れてるフリをしてたのか?


「なッ…!」


「嘘だよ、嘘。君に惚れる要素なんかあるわけがない、でも強い君たちについていけば戦い方を教えてもらえると思ったし…君達がステュクス達を追っていると知ったから今まで惚れてるフリをしてただけなんだ、ごめんね」


「ふ、ふざけ……!」


「おかげで強くなれた。けどこれ以上はもう必要ない、ありがとうオフィーリア、役に立ってくれて」


「グッ………クソが」


そしてリューズはゆっくりとオフィーリアの手からペンダントを奪い、そしてこちらを見るんだ。


「それもこれも、全部君のおかげだよステュクス、君が俺に教えてくれた…嘘やハッタリ、いいねこれ、とても役に立つ」


「う……マジか」


あの時、俺がリューズにやった事。嘘やハッタリでこいつを騙眩かすやり方、それをこいつは学習して…今度はオフィーリアを騙したってのかよ。マジでなんでも吸収するなこいつ……。


「リューズ!あんた何がしたいの!私ちゃん騙して…タダで済むと思うなよ…!」


「俺がしたい事、それは一つだけさ…魔王になる事。俺は何も持ってない…今この時も俺は何もない『零』だ…けど零はもう嫌だ、俺もみんなみたいに何かが欲しい、だから…決めたんだ」


リューズは周囲の温度を奪い、この部屋を…真っ白な氷土で包み込み、野望を語る。何も持たない、本来ならば野心も欲望も持たなかった男が語る、生まれて初めての…願い。


「俺は零から一になる。この世の全てを奪い、この世の人々の全てを奪い尽くし、俺はこの地上で唯一の一人になる。全てを零へ落とし…俺だけが全てを持つ一になるんだ、クロノスタシスも、マレウスも、ディオスクロアもこの世界を!全てを手中に収めるんだ……」


「なんだそりゃ……」


「いい願いだろ?それが俺の欲しいものさ」


語るのは絶大な欲望、即ちこの世の全ての人間から何もかもを奪い…消し去る事で、この地上に立つ唯一の存在になりたいって事だろ。なんつー果てしない願いだよ…それにもっと最悪なことに。


こいつはそれが出来ちまう!このまま放っておいたらこいつはもう誰も手がつけられないくらい強くなっちまう!本当に…本当に。


「おまえ……さっきバシレウスと戦ってた時は魔王になるとか言ってたろ……」


「魔王?ああ、魔王にもなる」


なんだこいつ、唯一になりたいのか?魔王になりたいのか?どっちなんだ?


……いや、或いは…こいつ自身分かってないのか。欲と力に突き動かされてただ『やれそうだから』『手に入れられそうだから』で目的を決めてる?


そもそもこいつ自身、目的や願いというものを理解してない。危険だ、こいつは危険だ、これじゃこいつは何を達成しても止まらないぞ!とんでもない奴がとんでもない力を得ちまった!


「余計なことしてくれたな!オフィーリア!」


「なっ!?私ちゃんのせい!?」


「お前のせいだろ!けどいい気味だ!今まで散々男をいいように利用してきたお前が!最後は男にいいように扱われて捨てられんだからな!」


「なんだとォッ!!」


「ゲェッ!まだ立つの!?」


あれだけ魔力を奪われてもまだオフィーリアには立つ余力があるらしく、ガッと立ち上がり鬼の形相で周囲を見回し。


「全員殺す!私ちゃんを小馬鹿にする奴は全員な!」


「ッ…上等だ」


「ああやめてくれ、俺を置いて…喧嘩をしないでくれ、この場には…俺一人の意思だけがあれば良いのだから」


その瞬間…リューズの体から強く!強く光り始める…蒼光は空間を満たす程、いや空間を超えて…まるでこのエクレシア・ステス全域を満たす程に強く強く光り始める。


この光は…リューズが魔力を吸い上げる時の…!まさか!


………………………………………………………


「グッ……!」


「どうした!ラセツ……ゔっ…くっ、魔力が…!」


「な、なんだなんだ?この感覚…まさかリューズか!?」


エクレシア・ステスの回廊の只中で戦うラセツとタヴ、そしてクユーサーの三人が一度に膝を突く。ダメージからではない…体内の魔力が一気に抜けていったからだ。


九割以上の魔力を持っていかれ、冷や汗を流すラセツは大きく肩で息をし…必死に立ちあがろうとするが、それさえ出来ないほどに衰弱する。


「な、なんやこれ…魔力だけやない、体力までどっかに持ってかれてる…!」


「……これは、バシレウス達が言ってたリューズ・クロノスタシスの力?奴がここにいるのか?いやそれ以上に…我々に影響を及ぼせるほどに、強くなっていると言うのか」


「チッ…あの野郎、俺様の魔力が吸えないってハッタリかましてやがったな…!だが……」


全員が衰弱する中、ただ一人クユーサーだけが立ち上がり…余裕の表情を見せる。まるで魔力を奪われても問題がないかのように。


「残念、俺様は不死身だ…つまり魂に変化が起こらないってことさ。俺様の魔力は無限だ…いくら持っていかれようが、影響はねぇよ」


「チッ…嘘やろ……」


「これは……難しい革命になりそうだ」


魔力を持っていかれ満足に動けないかラセツとタヴに対して、余裕の表情を見せるラセツ。二対一で押さえ込んでいた業魔が…二人に対して牙を剥く。






一方、また別の場所で獣人軍団と戦っていたアナスタシア達も。


「な、何これ…」


「魔力が……」


膝を突く。魔力を失い立つことも出来ず青い顔で視界を揺らす。それはセーフもアナフェマも、ムスクルスも同じだ…だがもっと悪いのは。


「ぎゃ…ぎゃぁあぁ……!」


目の前で戦っていた獣人達に至ってはその魔力も体力も魂さえも奪い取られ、瞬く間に干からびて塩の柱に変わってしまったのだ。まるでこの空間には…ある一定の実力を持つ者しか、生存が許されていないかのように。


「な、なんですかこれ〜」


「うぅ…なんか急に疲れましたー…狂うぅ」


「…む、これは魔力が取られている……このままでは、ここのいる全員が……」


このままでは全員の魔力が吸い上げられ、目の前にいた獣人達のように干からびて死ぬだろう。そう予測を立てたムスクルスは…とあることに気がつく。


「む?カルウェナン殿がいない…?」


先程まですぐそこで戦っていたカルウェナンがいないのだ。だがそれを探す余力もない…これは恐らくリューズ・クロノスタシスの力故の物だろう。


もし、ここにリューズがいるなら…狙うのは恐らくバシレウス。だとするなら…。


「……あとは頼みましたぞ、我が王よ……」


祈るしかない、魔女狩りの残党を率いるに値する…唯一の王を。


……………………………………………


「研究所全体から魔力を吸い上げてるのかよ!」


俺たちだけじゃない、リューズはエクレシア・ステスにいる全員から魔力を奪っている。多分焉魔四眷も…なんなら機械の中に入っているコルロ達からも、全ての魔力を、体力を奪い…自らの力に変えているんだ。


(うっ…ヤベェ…俺も持ってかれる…!)


『踏ん張らんかいステュクス!気ぃ抜いたらお前も持っていかれるぞ!』


ロアの声で必死に意識を繋ぐ、俺はリューズの目の前にいるから…すげぇ勢いで魔力を吸われてる。本来なら全部吸われて死んでるところだったが…そこをなんとか星魔剣の魔力吸引で相殺しているから生きていられる。


けど…こんなのいつまでも続けられないぞ。


「アハハハハハハッ…!俺こそが…俺こそがこの地上で唯一の存在になるんだ、最強の存在になるんだ、なれるんだ…!唯一君臨する…魔王に!」


(リューズ……!)


アイツは、おかしくなってるんだ。何も持っていないと…アイツ自身は思っていた。だけど違う、アイツはそもそも素養を持っていた。そこにアイツ自身が気がついちまったのが問題だ。


自分の強さに、凄さに気がついたから、出来る限りの物を全て手に入れようとしてしまった…抑圧され続けたからこそ、何をも飲み込む野心を得てしまったんだ。


「ぅ…くっ…私ちゃんが…こんな!」


「アハハハハハハッ!もう俺を止められるやつなんかいやしない!姉様も!もう俺を止められない!俺は…無敵だ」


マジで…そうなるぞ、もう誰もリューズを止められなくなる、全員アイツに何もかも奪われて…この世界も、アイツのせいで氷の星になる。滅んでしまう…全てが。


もう…止められる奴は……いや、いる。


いるんだ、リューズを止められる奴が…一人。だから早く…早く────。


「お前………」


そう、俺が祈りを言葉にしようと思ったその時だった。そいつは…俺が思うよりも早く、地面を蹴り砕いて…下から現れた。


「あ……?」


リューズは口を開け、そいつを見る…今リューズを止められる、唯一にして…最後の砦。


「お前、つまらない奴になっちまったな、リューズ」


……バシレウスだ。怒りではなく、自信でもなく、ただただ憐憫の目でリューズを見るバシレウスが一人、この魔力吸引の中で立っていた。


「……どう言う意味だい、バシレウス」


「そのままの意味だ、初めてお前に会った時感じた恐ろしさ、俺に追いつくかもしれない、追い越すかもしれないって恐ろしさが…今のお前からは感じられない。やっぱりお前…まさかとは思うが、弱くなってないか?」


「は……?」


どう言うわけかバシレウスの体は魔力に満ち溢れている…なんでアイツは平気なんだ、……ッ!まさか!


アイツの魔術、血液を媒体に魔力を増幅させるって奴だったよな。それを自分の体内に使って…流れてる血を断続的に消費することで奪われたそばから魔力を補填してるのかよ。


「弱くなった?この俺が?逆だよ、強くなったんだ…唯一になれるほどに」


「いいや弱くなったさ、俗物的になったって言うのかな。クレプシドラがお前を閉じ込めてた理由がなんとなく分かったよ、欲心を持ったせいで具体的になった、現実を知って目的が言語化された。ただ無尽蔵の渇望に突き動かされていた頃の、何も持っていない時のお前の方が恐ろしかったぜ」


「何を……」


そしてバシレウスは髪を片手で掻きむしり…そのまま舌を出しながら中指を立てると。


「言い方変えてやろうか、薄っぺらい人間になっちまったなぁ!リューズ!」


「何をバカなことを…分からないのか、この絶大な魔力が!!」


リューズが拳を握れば…それだけで凄まじい魔力の奔流が荒れ狂う。このエクレシア・ステスにいる人間全員の魔力だ、バシレウスの物よりもはるかに巨大だ…そりゃそうだ、あの魔力にはバシレウスの物も含まれているんだ…けど。


「ほらな、満足してる。足を止めた時点で…お前の怖さはもうどこにもない」


けど…なんでだ、バシレウスが負けるビジョンが見えねぇ。アイツなら…マジでやるかもしれないと本気で思わされる。


この男になら、任せても良いと思えるくらい…今のバシレウスの佇まいは頼もしい。


「ッ…バシレウス!リューズがエクレシア・ステスの人間全員の魔力を吸い上げている!このままじゃみんな死ぬ!ラセツさん達もアナスタシア達も!みんなみんなリューズに食い殺される!……だから…」


俺は立ち上がることも出来ず、這いずりながら…叫ぶ。バシレウスに向けて、今…この絶望を打破出来る唯一の星に向けて。


「だから!勝ってくれ!!リューズに!!!」


叫ぶ、今…最強になったリューズに、魔力も殆ど残ってないバシレウスに言うにはあまりにも無理難題。俺だったら弱音吐いて断りそうなくらいな無茶を。


だが…バシレウスは大きく息を吸い、両拳を打ち鳴らし。


「任せとけッッ!!!」


そう言うんだ、裂帛の気合いと共にそう叫んだバシレウスの姿は…いつもと違って見える。


そうだ、いつもと違う…あれは、ラダマンテスで俺を救ってくれたバシレウスが見せた…。


王の気風…!やっぱりそうだ、バシレウスは気がついてないけど…やっぱ…お前。


お前、誰よりも人の王に向いてるよ。


見せてやれよバシレウス……何もかもを抱え込んで独占しようとするリューズに、何もかもを背負うお前の強さを!!

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― 新着の感想 ―
この章が始まった時誰が思ったでしょうか、ここまでバシレウスが主人公をするなんて、何かを背負って戦う姿が似合う漢になるなんて。 とんでもない逆境であるが、彼もまた逆境に強い魔女の弟子であった。果てのない…
バシレウスかっけえー‼︎ リューズが覚醒してしまいましたね。まさかオフィーリア達すらも騙してしまうとは。とはいえ、世界最強を証明するために強さを求め続けるバシレウスに対して、ただの魔王止まり、 一止ま…
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