714.同盟討伐戦・第五戦『復讐鬼』ラヴィベル・セステルティウス
ラセツという男は、俺と似ているんだ。譲れない一本筋があって、その為に何もかも捨てることが出来て、それでいて自己矛盾を秘めていて。
どうしようもなく面倒臭くて、どうしようもしてもらうつもりもなくて、ただ…この怨念を一個人で完結させるつもりでいる。
だから俺達は話が合ったしさ、仲良くも出来たんだよ。ラセツは誰にも共有出来ない部分を話せて楽しかったんだと思う…だからこそ、俺は。
「極・魔力覚醒!『呵呵哄笑之涅哩底王』ッ!!」
「魔力覚醒!『殃禍呪刃の黒夜叉』ッ!!」
止める、こいつを…もうセラヴィはいない、こいつの憎しみの向かう先はなくなった。だから足を止めろ、お前まで…セラヴィを追いかけていく必要はないんだよ。
そんな制止の言葉は覚醒となって表出し、俺とラセツの最後の争奪戦が始まる。奪い合うのは全てだ、勝ったほうが全てを得るならここで勝ったほうが今までの戦いの結論を決定することが出来る。
即ち勝者の決定、ズタボロの俺とラセツはレーヴァテイン遺跡群の最奥にでぶつかり合う。
「なんやアマルトちゃん!覚醒出来たんかいな!悩んどったもんな!おめでとうっ!!」
「お前も、随分後がないみたいだな…!俺の仲間は手強かったかよッ!!」
「まぁまぁやなァッ!!!」
ラセツが大きく拳を引いた瞬間、周囲の空間も捩れ流動し…。
「『累ヶ淵』ッッ!」
「ッ…!」
叩きつけられる、推進力によって流動性を得た魔力と空間がそのまま振り押される拳と共に地面に叩きつけられ、大地を銅鑼代わりに轟音を鳴らし開戦の狼煙を上げる。
圧倒的な破壊の奔流の中俺は側面に飛び込み攻撃を回避するが…。
「見えてんで…!『牡丹灯篭』!」
「ぅぐっ!?」
ラセツの周囲に火花が迸り、紅の熱線が雨のように降り注ぎ…そのうちの幾つかが体を射抜く。既に死を超越した俺の体はどれほどの傷を受けても死に向かうことはない…が消耗は別だ。
迸るような痛みを噛み殺し、体を回しながら剣に力を込め。
「『幽刃一閃』ッッ!!」
「お?」
瞬間、剣が伸びる…というより、相手に傷を与えるために剣が自分で動く。呪術のリンクのように距離や場所に関わらず例え相手が星の裏側にいても影響を及ぼすが如く、必ず当たる斬撃。
相手に傷を与える呪術…を成立させる為に刃がその事実を確定させる為飛翔する。故にこの一撃は…どうあれ当たる。
「ッ…覚醒の力で止まらん!なんじゃこりゃ!」
ラセツは咄嗟に推進力を操り剣を止めようとするが止まらない、そもそもこれは推進力で動いていない…なんなら物理的影響で動いていない。故に不可避…であるのだがそこはラセツだ、咄嗟に剣の追尾性に気がつき敢えて手で払い弾くことで呪術を成立させながら無傷で凌ぐ。
「オモロい覚醒に目覚めたやんか…せやけど、悪いな。そんなこないだ目覚めたばっかのヨチヨチの覚醒に負けたれる程、オレぁ甘くないねんッッ!!」
「チッ!迸れ呪刃!!」
振るう、何度も振るう、剣を振り回し雨のような斬撃をラセツに加えるがラセツはその全てを両手で弾きながらこちらに向けて一気に飛び込み…。
「お前もわかっとるやろッ!」
「ごはぁっ!?」
その手で掴むと同時にラセツの腕、俺の体、双方に押し出す推進力を加えアダマンタイトの壁に叩きつける。
「オレはセラヴィを倒せる男になる為に、全部を賭けてきた!親との思い出も捨てて!名前も捨てて!人生捨てて!ただ力に固執して来たッッ!!」
更にその上からラセツの巨大な拳が叩き込まれアダマンタイトの壁が粉砕される。物陰で見ていたレーヴァテインが真っ青な顔でこちらを見ているのが分かる。
「結果がこれや、オレは…マレフィカルムでも五本の指に入れる男になった。そんじょそこらの野郎共とは次元が違う、お前が今まで勝ってきた連中とは格が違うねん!」
「グッ…ぅ……!」
「アマルトちゃんは今日までよー頑張ってきた、それは分かるし理解しとる。せやけど…相手が悪かったんや…。せやけどええやろ、そこら辺の雑魚に負けるよりかは…オレに負けられるんならなッッ!!」
ラセツの拳が赤く輝く、凄まじい勢いで魔力が圧縮され、内に向かう推進力で更に魔力を押し固め、空気があまりの圧力により轟音を鳴らし光が迸る。その光が…拳が、ラセツが俺を狙う。
確かに、ラセツは違う…格が違う。今まで戦ってきた連中が赤ちゃんに思えるくらい、レベルが違う。けど…それでも!
「『雨月』ッッ!!」
「ッと!!」
瞬間、放たれた万穿の拳が俺を捉える前に俺は剣を上に向け刃を伸ばし天井に突き刺しそのまま剣を戻すことで頭上に飛び上がり───。
「『黒雷滅華』ッッ!!」
「ッ…!?」
叩き込む、踵落としと共に俺の体で呪術を成立させ痛みと迸る黒雷により魔力を爆裂させラセツの脳天を叩き抜く…。
「グッ…!」
「確かにお前は強いさ!けどな…このくらいの差で!へこたれるくらいなら!俺はここまで走って来れてねぇんだよッッ!」
第二段階じゃあ第三段階には勝てない?そんなこともないだろ、俺…覚醒もせずに覚醒者倒してんだぜ?だったら構図は同じだ。俺が弱く、敵が強い!それだけだろうが!!
「だから!」
「う!?」
しかしそれくらいではラセツは微動だにせず、俺の足を掴むなり…。
「ここまで走ってきた過程とオレを一緒にすんなやッッ!!」
「ぁがっ!?」
叩きつけられる、地面に…全身がバラバラになりそうな衝撃波が走りこれ死んだほうがマシなんじゃないかという痛みが体の中でグルグルと周り、視界が歪む。
(こ、これ…やっぱ無理かも…いつもみたいに気合いじゃなんとも出来ん)
確かに俺が弱く、敵が強いという構図は同じだけどそれ以上にこいつが強すぎる。まだ扱い慣れてない覚醒じゃこいつを倒せるだけ他火力が出ない…。
(あれ…やばいかも)
立ちあがろうとして、足が滑り…倒れ込み、実感する。ここ日来るまでに体力を使いすぎた、覚醒の初回特典もセラヴィとの戦いで使い果たした。今ここには未熟な覚醒者が一人しかいない。
対する相手は覚醒の達人…逆転の手立ても思い浮かばない。
やばいかもしれない、いつものように気合いと根性でどうにもならないなら…もう何も───。
「ッ『超電磁衝撃砲』!」
しかし、そこに飛んでくるのは青色の閃光…それが横から飛翔しラセツに当たるが、ダメだ。奴の間合いに入った瞬間攻撃が掻き消されている。
「……なんやねん、お前」
そして、ラセツがギロリと睨む先にいるのは…レーヴァテインだ。手には黒色の銃を持ちながらラセツを睨みつけている。
「やめろ!その人に手を出すな!」
「お前…まさか自分が手出しされんと思うてるか?確かにお前は…俺とアマルトちゃんの戦いの結果得られるトロフィーのようなもんや。けどな…よう聞けやボケカス、オレは別にお前一人いなくなったところでもうどうでもええねん」
「ッ……!ピスケスの兵器は、何も渡さないぞ…!」
「オレはセラヴィの物を奪うって結果が得られたらもうどうでもええんや。仮にお前がここで死のうが、この遺跡が吹っ飛んで戦いの結果得られるものが何もなくとも…セラヴィに勝利したアマルトに勝ち、残ったクズを集めて手に出来れば…この気持ちも多少収まりがつく。それでええねん」
「なんの為に…キミは戦うんだ、誰かに勝つことだけ…それだけが、キミの望みなのか」
「せやからそう言うてるやろ、オレは…勝てばええねん!それで!!」
「そんな人生あまりにも空虚じゃないか!!」
「今更や!そんなもん!!」
ラセツが拳を握り…手元に魔力を集めていく、やばい…レーヴァテインがッ!クソッッ!
「させるか!!」
「邪魔くさいわッッ!!」
咄嗟に剣を振るいラセツに斬りかかるが、最早ラセツにとってそれは邪魔になり得ず…握った拳を俺に向けて振るい。そこから発生する壮絶な衝撃波に飲まれ…俺は剣を振るうどころかレーヴァテインを助けることすらできず…吹き飛ばされ。
「グッ…ぅ……」
そのダメージで、覚醒が解除される…ダメだ、傷つきすぎた、ダメージが超過すると強制的に解除されるのか…!
「レーヴァテインは後でどうにでも出来る、まずはお前や…ここでお前を殺し、全てを得る」
「それで…いいのかよ、ラセツ…お前は───」
「オレの道徳心に期待すんな。もう止まらんで…オレはッ!!」
そして、俺を殺し、俺に勝つ為に…ラセツは足を振り上げ俺を踏み殺そうとした。
その時立だった。
「だったら────」
煌めく、黄金の光が…部屋の入り口、その向こうに広がる暗黒を切り裂いて。
「止めますよ…エリスがッッ!!」
「ッお前!?」
一閃、黄金の煌めきを放ちながら叩き込まれる蹴りがラセツの動きを止める。両手をクロスさせその一撃を防いだラセツは…みるみるうちにその表情を怒りに染めて。
「お前まだ動くんかいなッッ!!ええ加減にせえよ!!」
「エリスはまだ…負けてませんッッ!!」
飛び込んできたのはエリスだ、全身から血を放ち、ミシミシと音を立てながらも狂気的な笑みを見せるエリスがラセツに蹴りを叩き込み…吠える。
アイツ負けたんじゃなかったか…いや、違うか。負けはした…が、エリスという女が負けた程度で止まるわけがなかった!
「エリス!!」
「アマルトさん!」
そのままラセツに弾かれたエリスは俺の隣にドサリと落ちて大の字で倒れ込みながら首だけをこちらに向けて。
「助けに来ました!」
「いやお前も倒れてんじゃねぇか!」
「すみません!エンジン起動させてピストンでラセツ潰そうとしたんですが上手くいきませんでした!全身の骨が折れて痛いです!動けません!」
「なんで来たんだよ!どうやってここまで来たんだよ!!」
「気合いです!」
動けねぇのかよ!これじゃ死体が増えるだけじゃねぇか!!実際ラセツ…今の攻撃喰らってもピンピンしてるぞ!
「アホらしい…もうええわ、二人まとめて殺したる!!」
「アマルトさん!エリス達二人まとめて殺されるみたいです!どうしましょう!」
「こっちが聞きてぇよ!!クソォーっ!!どうすんだこれ!!」
どうすんだよ!俺一人死ぬだけならいいけど…エリスまで来ちまったらお前、引けねぇだろ!これ!ダチが死ぬのを大人しく見てられるか!!
「エリスを殺させるかッ!」
「殺す!もうそこは変わら───」
瞬間、地面が揺れる。ラセツが踏み込む前に…大地が揺れ、バキバキとアダマンタイトの床が破壊され…。
「いいや、殺させねぇさ。エリスも…アマルトも!!友達は誰も!!」
「なッ!?お前!ラグナ君!?」
大地を割って内側から現れたのはラグナだ、ヒビからラセツの足に手を伸ばしがっしり掴むと同時に地面の隙間から這い出てくんだ…いや、アダマンタイトの床割ってるけど、アイツ何?
「二人とも、もう大丈夫だよ…!」
「ッデティ!」
と同時に俺達の体の傷が消え去り…ダメージが消える。動ける…デティだ、デティが入り口からタカタカと小さな体を動かして走ってきたんだ。
「デティ!ラグナ!お前ら…来てくれたのか…!」
「来るに決まってんだろ!いつもいつも…お前には苦しい立ち回りさせてんだ。偶には代われよ…その役割」
「いつも無茶しすぎだよ二人とも!私達も…二人を大事にしてんだからね!」
「お前ら……」
ラグナとデティが俺達を支えてくれる。体が動く…それは傷が治り体力が回復した以上に、心が体を動かすんだ…頼りになる友達が助けに来てくれた、その事実が俺を突き動かす。
「ごめんね、来るの遅れて…」
「いやいいさ…」
「ラセツと戦って分かった、あれは私達だけじゃ勝てない…だから、エリスちゃんが戦っている間に、連れてきてたんだよ」
「連れてきてた?…まさか」
チラリと再び入り口に目を向けると…見える。暗黒を切り裂く四つの影…部屋に踏み込んでくる、友の影。
「無事か…アマルト!」
「メルク!メグ!ナリア!ネレイド…みんな!!」
メルクだ、メグだ、ナリアにネレイドもいる…みんなデティに傷を治してもらったのか、傷だらけの衣服に無傷の体で部屋に踏み込み、俺達の横に並ぶ。
「倒してきたよ…クルレイ達を…」
「ちょっと苦戦させられましたが、後はラセツだけです」
「私さっきまで気絶してて…いいとこなしなので、頑張らせて頂きます」
揃い踏む、エリスが…ラグナが、デティが…メルクが、ナリアがメグがネレイドが…、そして俺が、全員が戦いを超えこの部屋に揃い、皆でラセツの前に立ち構えを取る。
八人の魔女の弟子が…ここに揃ったんだ。
「なんや、えらい多勢に無勢やんか…けどええで、雑魚が何人集まろうが…オレには敵わんってことを教えたるわ」
ラセツは一人…極・魔力覚醒を展開し八人の魔女を相手に両手を広げる。相変わらず強そうだ、めちゃ強そうだ…けど。
もう、ビビるやつは…一人もいない。
「フッ…よっしゃ!!全員揃った!キメに行くぞ…みんな!!」
「はい!ラグナ!」
全員が…各々、構えを取り。魔力を動かす。
心技体、全てを極限まで極め抜き魔の道を邁進し更なる段階を開く奥義…魔力覚醒。それは数多の人間の中から限られた一部しか至れない最高の領域。
そこに至る道は険しく、途中で倒れる者、諦める者、多数いる。
それでも…諦めずに進む者にだけその力は降り掛かる。
困難、患難、知ったことか。窮地、窮状、望むところだと…己を貫き通した先にある世界。
それが…それこそがッッ!!
「『魔力覚醒』ッッ!!」
全員の声が揃う…光が満ちる。魔女の弟子達の…天を目指す八連星が今真なる輝きを見せる。
「『ゼナ・デュナミス』!!」
エリスのコードが白く染まり、髪に星の輝きの如き煌めきが迸る。記憶を具象化させる覚醒を手にエリスは拳を握る。
「『拳神一如之極意』…!」
ラグナの体から真っ赤な炎のような魔力が溢れ、流れる河のように渦巻き纏う。流れを操る覚醒を支配し…腰を落とす。
「『マグナ・ト・アリストン』」
メルクの体から溢れた黄金の光が背中に集まり、光のコートとなって背後を覆う。万象を作り上げる錬金の極致に至る覚醒と共にメルクは立ち上がる。
「『デティフローア=ガルドラボーク』ッッ!!」
デティの体が輝き、背が高く…大人の姿に変わり、全身が淡い光の炎のように揺らめき魔力の塊となる。魔導の真髄を表す覚醒が…他を圧倒する。
「『ラ・マハ・デスヌーダ』!!」
ナリアが指を鳴らせば花火のように打ち上がる光から無限の分身が飛び出し部屋を覆う。劇団を作り上げる覚醒が今幕を開けた。
「『天命のカラシスタ・ストラ』ッ!」
メグの右目に濃い青色の光が灯り、全身を淡い光が覆う…次元を超越する規格外の覚醒を手にメグはその顔から笑みを消す。
「『虚構神言・星神顕現』……」
全身から蒸気を噴き出すネレイドは、大きく息を吸い…吐いて、世界すら騙す幻惑の霧を侍らせる。
そして……俺は、一歩踏み出し、みんなの列に加わり…剣を振るいラセツに向けて。
「『殃禍呪刃の黒夜叉』ァッッ!!」
髪が伸び、目も髪も黒く染まり…剣が伸びる。死すら超越する覚醒が今…友の為に振るわれる。
八人八様、全く別の覚醒全く別の人生、それが今ひとつに束ねられ…ラセツの前に立ち塞がる。
「覚醒者が…八人、こらぁ…もうそこらの八大同盟には止められんな」
「行くぜみんな…ぶっちぎるぜッッ!!」
ラグナの声に皆が雄叫びで答え…今超える、究極の覚醒を打ち倒し…更に先に進む為に。
………………………………………
「先に言っとくとエリスちゃんとラグナは無茶厳禁ね!!二人とも傷は治ってももう色々限界だか────」
「行くぞエリスッッ!!」
「はい!ラグナ!!」
「だぁー!!もうー!!」
開戦と同時に切り込むのはラグナとエリスだ、一気に二人で突っ込みラセツの領域に入ると同時にエリスは防壁を二重展開に、ラグナはなんかよく分からんがラセツの領域を無視し二人で拳を振り上げ。
「冥王乱舞ッ!『一拳』!」
「『熱焃一掌』ッッ!!」
「洒落臭いわ…!お前ら!」
叩きつけるような軌道でラセツの防御の上から殴り抜くがラセツは動かない、二人のパワーをもってしても動かない、そのまま奴の体に魔力が沸る…やばい、来る───いや!
「押し込め!ネレイド!!」
「ッッ…!」
ネレイドに向けて叫んだ瞬間…ネレイドが凄まじいスピードでラグナとエリスに突っ込み、二人の背中を押すように強烈な張り手を喰らわせるんだが…これが俺達の予測を上回る威力だった。
「ぐぼぁっ!?」
「ちょっ!?ネレイド!?」
その一撃にラセツは反応出来ず増幅されたエリスとラグナの一撃に吹き飛ばされ行くが…問題はエリスとラグナも一緒にゴムボールみたいに飛んで行ったことだ。いや…ネレイドあんなにパワーあったっけか!?
「お前急に強くなりすぎだろ!」
「ご…ごめん…力が…上手く制御出来ない…!」
ネレイドの様子がおかしい、明らかに何かあった様子だ…けど今の様子を見るに、ネレイドのパワーはラセツすら上回っているように思える、だったら。
ネレイドには悪いが主軸はこれで行くべきだろう。
「大丈夫!?ラグナ!エリスちゃん!」
「問題ない!それよりラセツは!」
「だぁああああっしゃあああああああ!」
「まだ元気!」
吹き飛ばされたラセツだがその程度では倒れないとばかり拳を大きく引いて魔力を集中させ─。、
「『累ヶ淵』ッ!!」
「ッさせるかッッ!!」
ラセツの拳から放たれる螺旋状の衝撃波をラグナは流れを操る覚醒の力で方向をズラしみんなを守る…と同時に。
「概念錬成…!」
「ッしまっ…!」
ラセツが一撃を放った瞬間を狙い手を伸ばすメルクの姿が目に入り、ラセツは咄嗟にメルクを迎撃しようとする…しかし。
「『劇目・狂騒空回り』!」
『ワーー!!』
「うげっ!?邪魔くさ!」
ナリアが動く、千体の分身が一斉にラセツの目の前で飛び回り視界を塞ぐ…そのあまりの邪魔くささにラセツの動きが止まった瞬間。
「『推進打破』!」
「なっ!?」
「お前の力については聞いている、極・覚醒は強力だが…操っているのは推進力、即ち概念だろう?なら私の力で対応可能だ」
ラセツの周囲を守っていた魔力の膜が、動きを封じる推進の支配が一瞬…ヒビ割れ消え去る。今ラセツを守る物は何もない…そこに叩き込むのは。
「メグッッ!!」
「御意に…次元砲・フルバーストッ!」
「ッッ!!うがぁっ!?」
叩き込む、光速で飛ぶ魔力の塊をメグが怒涛の勢いで放ちラセツの体に叩き込み更に押し飛ばす。その威力の高さにラセツは耐えきれず膝を突くが……まだだ。
「まだまだぁぁあ!!」
ラセツは立ち上がる、これくらいで倒れてはくれない。だがそんな事…みんな分かってる、だから…既にスタンバイしてるのさ。
「分かってる…だから、私がここにいる」
「ッ手前…!」
ラセツすら見下ろす巨体を持つネレイドが屹立しラセツの前に立ち、拳を握り──。
「友達に手出しさせない…私が守るッッ!!」
「ぐぶっッ!?」
一撃、ラセツの顔面に放たれる強烈な一撃が一瞬ラセツに白目を剥かせ口や鼻から血が噴き出る。俺達の知るネレイドを大幅に上回る怪力を発揮し続けるのは滅多打ち…ラセツの体が左右に揺さぶられネレイドの打撃が次から次へと叩き込まれ…。
「お前は…ッ!」
「ッ!?」
だが、ラセツも負けじとネレイドの頭を掴むと…。
「寝とけッッ!!」
「ぐっ!?」
叩きつけるようにネレイドの頭を下へと押しやり、ネレイドの頭で地面を叩き割りその巨体を沈める。
「領域再展開…!お前ら…いつまでも調子乗っとるなよ!!」
ラセツは周囲に推進力の膜を再形成し推進力で空へ飛び上がる…それを追いかけるのは。
「乗りますよ!友達と一緒ですから!」
「今度はさっきみたいにいかねぇぞ!!」
「ネレイドさん待っててね!」
エリス、ラグナ、デティの三人だ。エリスは風を纏いラグナは壁を蹴って空へと飛び上がりデティフローアは足から風を吹き出し空を飛ぶラセツに迫る。
「雑魚が群れてからに、アリかお前らはッッ!!」
「一匹狼よりはマシでしょう…!」
「狼言うなやッ!!クソボケがッッ!!」
防壁を二重展開し鋭い蹴りを見舞うエリスを拳で迎撃し突っ込んでくるラグナを蹴り上げ後ろから迫るデティを推進力の嵐で吹き飛ばし、更に続けて飛んできたエリスの拳を受け止めると同時に地面に投げ飛ばし負けじと迫るラグナを頭突きで撃ち落とし…。
三人を相手に凄まじい強さで迫撃するラセツの動きを見てメルクが舌を打つ。
「チッ、三人だけじゃ攻めきれん!他に空中戦が出来る者は…」
瞬間、襲いかかるエリス達三人に向け…ラセツは。
「遅いわ!全員死ねや───!」
拳を振り上げ壮絶な一撃を放とうと紅の光を天高く渦巻かせ……。
……千載一遇、ってやつかな、これは。
「ガッ…!?」
その時、ラセツの動きが止まる。エリスとラグナの間を抜いて…ラセツに突き刺さる黒い閃光を見て、ラセツは忌々しげに…俺を見る。
「アマルトォッ!手前ェッ!!!」
「バァカ…俺を忘れんなよ!」
一瞬だった、ラセツが大技を放つその一瞬を狙い呪刃を伸ばし…叩き込んだ。無限に伸びる刃は例えどれだけ高くとも真っ直ぐ伸びる。それはラセツの右腕を串刺しにし…更に。
「体が動かんッッ!?」
刹那の間ラセツの動きを縛る麻痺の呪いを蔓延させる。ラセツほどの強さの奴には一瞬体を止めるくらいのことしかできないだろう…だが、この段階において一瞬とは致命の隙となる。
「王星乱舞……!」
「あ!やば────」
「『星吼脚』ッッ!!」
叩き込む、エリスの黄金の輝きを纏う蹴りがラセツの胸を撃ち崩し、更に。
「『熱焃臨掌』!」
「『天星廻拳』ッ!!」
続くようにデティとラグナの拳が叩き込まれ、ラセツの体を完全に押し込み…地面に向け隕石の如く高速で墜落させ地面が揺れる。
「グッ…クソがぁぁ!」
「いけー!時間稼ぎー!」
叩き落とされ、よろめきながら立ちあがろうとするラセツを押さえ込むようにナリアの分身がラセツに纏わり付き始める。
「クソが!さっきから邪魔くさいねんこいつら!」
『ワー!暴れてルー!』
「退け!退けや!!」
ワラワラと群がる分身を掴んでは投げ掴んでは投げ、終いには体をグルリと回し分身達を完全に追い払うが……。
「は?」
ラセツは気がつく、自分の体に大量の魔術陣がいつのまにか書き込まれている事に…そうか。時間稼ぎに見せかけて体にまとわりつき、そこで魔術陣を書き込ませたのか!!
「ごめんなさい!爆発オチです!」
「なんじゃそりゃああああああ!!??」
爆裂、体中に書き込まれた魔術陣が大爆発を起こしラセツを豪炎の中に飲み込んでいく。さしものラセツも零距離で爆発する魔術陣はどうにもならないらしく叫び声は轟音にかき消され……。
「ぁが…はぁ…はぁ…ナメ腐りよってからに…!」
「えぇっ!?今のでも倒れないんですか!?」
「タフ過ぎるな…!」
しかしそれでもラセツは背中を地面につけない、全身から黒煙を漂わせながらも牙を剥き拳を握りながら現れる。エリス達三人の渾身の一撃をもらって…その上でダメ押しのナリアの魔術陣、それだけじゃない…ここまで蓄積されているダメージがあるはずなのにまだまだ倒れる気配がない。
それどころか、ラセツのボルテージは最高潮に達している。
「勝つのはオレや…勝つのは、オレや!!」
踏み込む…同時に推進力を得て音速に至り──。
「お前らは邪魔じゃァッ!!!」
「ゔぁっ!?」
「ナリア!」
突っ込んできたラセツに反応が遅れたのはナリアだ、まるで轢かれるように突き飛ばされ…俺達の連携に穴が開く。
「『牡丹灯篭』!」
「ッ!熱線だと…!?」
ラセツの五指から放たれたのは推進力により粒子加速を行い、純粋な運動エネルギーによる発熱を生かした熱線だ。それがメルクの両足を打ち抜き…。
「ッ…こうなったら私と陛下の特訓の成果を出すしかないようですね…!」
動く、メグが。両手を動かし足を開いて華麗なポーズを取り…。
「これぞ我が奥義!時空魔術の───」
「じゃかぁしゃあッッ!!」
「ぎゃん!?」
が、無情。ラセツに殴り飛ばされ壁に激突して地面に転がり落ちる…いやアイツ何してんだよ。
「やべぇ…!デティ!みんなを!」
「うんッ!」
「させるかいなそう何度も何度も!!」
即座にラグナとデティが動き倒れたみんなを回復させようとする、しかしデティがヒーラーであると理解しているラセツは直ぐにデティの妨害に入る。
「いやさせねぇって!!」
「チッ!」
が、俺は剣を伸ばラセツの体を弾く。そのままラセツに迫り剣を回転させ…。
「『幽花黎明』!」
剣に付着したラセツの血と俺の呪いをかき混ぜて周囲に撒き散らし、ラセツを追尾する呪いの刃として撃ち放つ…が。
「お前は、火力が足りとらんなぁ…アマルトちゃん!」
ラセツは最早俺の攻撃を無視してデティのへ向かおうとする。ダメだ、俺の動きじゃ妨害くらいにしかならねぇ…俺単独じゃ火力が出ない!もっと覚醒を最適化させないとダメか…!
「いやよくやったよ!アマルト!!」
「チッ!」
しかし、俺が稼いだ一瞬の時を使いラグナが飛んできてラセツに一撃を叩き込む。拳を振るい紅の光を軌跡として残す程の速度で飛んだラグナの一撃を顔面に受けラセツは…。
「そんで、お前は遂にスタミナが切れたわけや…!」
「ッッ…悠久神躯が…!」
ラグナの体に激っていた炎が消え、寧ろラグナのパワーが急激に下がる。ラセツに殆どダメージが入ってない。まずい、ラグナの言ってた奥義が切れた!
「終わりやッッ!!」
「ガハッ!?」
「ラグナ!」
そして返す刀で飛んできたラセツの拳を受け吹き飛ばされるラグナを咄嗟に受け止める。って熱ッ!?なんかラグナの体ありえんくらい熱いんだが!!
「ラグナ、大丈夫か!?」
「わ、悪い…十分くらい休憩もらわないと、無理かも…」
「マジかよ…」
ここでラグナに抜けられるとまずい…。
「ラセツァァアアア!!」
「お前はホンマにどうやったら倒れるねん!!」
今はエリスが一人でラセツに食ってかかってるが…倒せる気配はない。ラグナが時間切れで他のメンバーも倒れ始めている。今はエリスとデティの奮戦でなんとか保つているがいつか瓦解する。
…俺はまだ覚醒が未熟だし……こうなったら、一つしかないか。
「………ラグナ、後は俺に任せてくれって言ったら…お前はなんて言う」
「何言ってんだお前…まさかいつぞやみたいに命かけるつもりじゃねぇよな…!!」
ラグナが明確に怒りの視線を向ける。いつぞやってのはあれか…シリウスの時か、あれは確かにやばかった…けど。
「安心しろよ、死ぬ奴じゃねぇ…けどまぁ、ちょいとアレな手なんでな?」
ニッと俺が笑うと、ラグナは何か安心したのか…そんなやばい方法じゃないとわかってくれたのか。直ぐに表情を戻し。
「なんか方法があるんだな?」
「まぁな、奥の奥の手だ」
「いいぜ、お前なら任せられる」
「よし、言質とったぜ?後で…『出し抜かれた』って怒るなよ?」
「は?何を…」
「悪い、借りてくぜ!」
ラグナの傷口に手を当て指先にラグナの血を付着させ…動き出す、奥の手のために。
「悪いネレイド!ナリア!貰うぜ!」
「う…どうしたんですか」
「アマルト…?」
倒れるネレイドとナリアに触り指先に二人の血を付着させる…。
「アマルト!何か考えがあるんだな!」
「おうよ!」
「なら任せる!かませ!」
「任せな!」
メルクは俺の意図を察したのか自分の傷口から血を掬い手を掲げる。俺はそれにタッチしついでに倒れるメグに触り血をもらう…そして。
「デティ!エリス!俺に任せろ!」
「アマルト!?何を…」
「アマルトさん…分かりました!」
デティは困惑しながら、エリスは即答で答え俺は二人にハイタッチをし…手に血を集める。
今俺の手の中には…他の七人の血がある、七人の血を混ぜた…唯一無二のブレンドが出来上がる。
「ラセツ!俺が相手だ!」
「またかアマルトちゃん…せやけど、もうお前じゃ俺には…」
「そいつはどうかな?」
俺はみんなの血がついた指先をラセツに見せる。
俺は、血を元に変身する呪術を持ってる、魔獣の血を集めたビーストブレンド。天才の血を集めたブレインブレンドに戦士の血を集めたブレイヴブレンド…そして最高戦力達の血を集めた、ヒーローブレンド。
ならばこれは…友の血を借りて使うこのブレンドは、最も俺に適したブレンド。
さながら…ベストブレンド。
そいつを使う…使わせてもらう!!
「借りるぜ、みんなの力を!」
「む……」
「その四肢今こそ刃の如き爪を宿し、その口よ牙を宿し、荒々しき獣の心を胸に宿せ、その身は変じ!今人の殻を破れ『獣躰転身変化』ッ!!」
光り輝く手のひらを握りしめ、みんなの肉体情報を俺の中に投影する。みんなの髪色が俺の漆黒の長髪に投影され、混ざり…黒がより濃くなり、全身から淡い光が漏れ出し始める。
入ってくる、血の中に刻まれた経験と知識が。この変身は見た目だけじゃなくてその人物の技能まで真似ることが出来る、そしてその全てを知る俺はヒーローブレンドでは出来なかった…完全なる自己投影を行うことが出来る。
分かるんだよ、みんなが使う技の一つ一つが…その技を使っていた経緯が、どう言う風に使うかが、知識ではなく…記憶として、歴史として俺の中に刻まれている。
「全員の力を束ねたんか…お前」
「ああ、八人の魔女の弟子全員の力が…今俺の中にある」
「はっ!八人で倒せんかったのに、八人の力を組み合わせてオレに勝てるんかいな!」
「………そいつはどうかな」
師匠は言った、俺に言った。俺は真っ当な道は歩けない、みんなに今から追いつこうと思うならみんなが進もうと思わないような道を進んでいかなきゃいけない。
それがどんな邪道であれ、悪道であれ、進まなきゃいけない…そう言う道を歩いてこそ、出し抜ける…一発逆転をすることが出来る。
ラセツ…お前は強いよ、俺のずっと先にいる。ラグナもエリスもデティも俺よりずっと先にいる。俺だけが置いていかれている…それは覚醒しても変わらない。
だがいいじゃないか、諦めてない俺は…まだ進めるぜ。
「ラセツ、お前…俺に負けたら、その復讐心も…もらって行くぜ」
「はぁ?何言って────」
目を閉じれば師匠と言葉が蘇る。あの電脳世界で俺に向けられた言葉が蘇る。
『負け犬のお前は泥に塗れるのが相応しい』
あんたは言ったよ、そうやってな。俺は確かに泥に塗れるのがお似合いだって。
『落ちこぼれのお前には手段を選ぶ権利などない…権利や手段を選べるのは勝ってるやつだけだ』
俺には選ぶ権利がない、俺は負け犬さ…ラセツのように勝ちにもこだわれない負け犬さ、だから勝ち方は選べない。
『だからお前がこれから歩む道は…泥だらけで…凹凸だらけで…試練だらけで…平坦ではなく簡単ではなく容易くもない』
それでも進む俺が…歩く道は。
『普通なら誰も歩こうとしない』
誰も歩こうとしない悪路だ。
たとえその道がどれだけ苦しく険しいものであれ、俺は進むぜ。仲間の為に泥を被り、仲間の為に傷ついて、仲間の為に命をかけて、突き進む悪路を…踏み越える!
これが俺の……答えだよ、お師匠さんよ。見てな、あんたの弟子が…誰なのかを。
「極・魔力覚醒…!」
「はッ!?!?」
全身から光が満ちる、悪路を踏み越え進む俺に…仲間達の力が流れ込み、その全ての経験値を卑しくも簒奪し、己の物に変え…一気に花開く。
髪が白く染まり、半径2メートルを包むように漆黒の円が描かれ、力が満ちる。
これが俺の悪路の末、俺の道の末、俺の答え…その名も。
「『鬼門呪殺の悪路王』ッ!!」
「な…極・魔力覚醒やとォッ!?この土壇場で…オレと同じ第三段階に至ったんか!!??」
「ぇえええええええ!?!?アマルトさん!?!?」
「あ!まさか私達の力を使って!?ずるーい!!」
「ははは…そういうことかよ、アマルト…こりゃ、出し抜かれたかな」
極・魔力覚醒『鬼門呪殺の悪路王』…それが俺の答えだ。ヒーローブレンドやビーストブレンドではここまで来れなかった、仲間と言う最もよく知る者達の力だからこそ、俺はその経験の仔細まで把握することができた。
それらの経験値を一気に吸収し花開かせることで至る俺の奥の手…、これで対等だぜ?ラセツ。
「さぁ決めようぜ、ラセツ。タイマンだァッ!!!」
「面白いやないか…アマルトちゃん!!お前は本当にッッ!!」
瞬間、激突。俺とラセツの領域が衝突し虚空で火花が散る。されど…引かない、双方引かない、完全に力が拮抗している。
互角…互角だ、こいつはもう…ただ一人無敵の存在ではない!!
「アマルトォオオオオオオオオオ!!!」
「ラセツゥッッ!!」
ギリギリと迸る領域と領域の衝突、その鬩ぎ合いが空間を歪ませる…それを見守るのは、エリス達だ。
……………………………………………
「アマルトさんが極・魔力覚醒しましたよ!?凄いです!」
「ラグナ、我々も手伝った方がいいのではないか?」
「必要ないさ、アイツがタイマンだって言ったんだ…ならそこを尊重しよう」
アマルトを信頼し、そして彼ならば勝てると信用し。休息に入るラグナ達…しかし。
「私達の血を使って覚醒したってことでしょ、ずっこくない?」
むぅと唇を尖らせるデティがそう言うんだ。アマルトに対して結構対抗意識を持っているデティらしい言葉ではあるが、ラグナはそれを否定するように苦笑いし。
「そんな事ないだろ、事実アイツは兄様やグロリアーナの血を使ってもあそこまでいかなかった…それはきっと血に付属する力の完全な使い方を理解していなかったからさ」
「鳥は飛べるから、鳥に変身すれば飛べるようにはなる。だが飛び方までは知らない…と言う事だな」
「そうだ、だがアマルトが俺達の血を使ってあそこまで強くなれたのは…それだけ俺達を見ていたって事だ。俺達を見て、より強く、より確かに魔力覚醒に至ろうと…見えないところで努力し続けていた」
「努力を……、つまり血による変身はきっかけで…アマルトは既に極・魔力覚醒出来るだけの実力があったって事?」
そうだ、とラグナは首を縦に振る。そして極・覚醒出来るだけの実力があるのは俺達も変わらない。ただ壁を越えるきっかけがなかっただけでそれだけの実力はみんなあった、アマルトだけが劣っているわけじゃなかった。
そんな中、アマルトだけが貪欲にアプローチを変え覚醒への道を探し続けていた。その探究心は俺達の誰をも上回っていた。俺達は先に行っているつもりにでもなっていたのか…自分こそが極・魔力覚醒に最も近いとでも思っていたのか。誰よりも貪欲に力を求め続ける彼と言う存在に対して何の危機感も抱いていなかった。
「俺達はまんまとしてやられたんだ、アマルトが今まで積み上げてきた全てに危機感を覚えず呑気になっていた。だから…出し抜かれたのさ」
やっぱお前はすげえよアマルト、俺はお前よりいい奴を知らないしお前より真面目な奴を知らないし…お前より、すげぇ男を知らない。
(お前は誰よりも覚醒が遅れていると嘆いていたけどさ…、今お前が…魔女の弟子最強なんだぜ?マジで…あっという間に抜かれちまったよ)
ラグナは静かに、友の勇姿を見守る。そこに最早…ラセツとの戦いの勝敗など映っていない。
何故なら、微塵も考えていないからだ…今のアマルトが負けるだなんて、当たり前だろ。だってあそこにいる男の強さを誰もが知っているからだ。
「これ以上…俺のダチを傷つけさせねェッ!!!」
「ぅぐぅっ!?」
押し返す。アマルトの魔力がラセツを押し返し…今、この戦いを終わらせる最後の競り合いが始まる。
………………………………………
極・魔力覚醒に目覚めた…シリウスは言っていた、覚醒すると基礎スペックの限界値が外れ更に強靭な肉体へと成長出来ると。極・覚醒も同じだ…覚醒者がぶち当たる限界を破壊し更に先へと進むことが出来るようになる。
ラセツが強かったのはその限界を超えた先の更なる限界を超えたところにいるから強かったんだ。そして今俺も極・覚醒したことにより…ちょっと前からじゃ考えられないくらい力が漲ってきている。
状況は対等、ラセツと同じ段階に今俺はいる…そして。
「『呪界』ッッ!!」
両手を合わせた瞬間黒色の瘴気が空間を包み何もかもを飲み込んでいく…それは当然ラセツにも届き奴の領域を無視してその身を包んでいく。
「な、なんやこの霧!推進力で干渉できんッ!?」
「そいつは俺の魂の残滓さ。俺の覚醒『殃禍呪刃の黒夜叉』は生と死を超越しそのどちらでもない状態に移行する覚醒…、その特性は今も引き継がれてるのさ」
今の俺は死んでもないし生きてもいない、故に魂は肉体に縛られず形にも囚われず凡ゆる形状に変化する『虚魂』と言う状態に移行する。これを自在に操ることで俺は空間を制圧出来る。
魂に直接干渉する術がない限りこの霧は風だろうが爆発だろうが推進力だろうが、干渉し晴らすことはできない。
「見せてやるよ、俺の極・魔力覚醒の力を」
手を握り、力を激らせれば黒い霧が紫光を放ち鳴動を始める。俺の覚醒が生死を超え肉体そのものを魂のみの状態にすることで行動全てを呪術と同義に扱える覚醒…なのだとしたら。
これはさながらその範囲拡大版、俺の領域内にある全てを呪える…そう、つまり。
「今の俺は、世界も呪える」
魂を空間に散布することにより空間そのものが一個の生命であると定義する事により、俺は今世界を呪う力を手に入れた。呪術ってのは肉体に凡ゆる変化を与える力だ…つまり、これを世界に適用するなら。
「『陀羅尼・炎戒詛喰』ッッ!!」
「ヴッ…!?」
燃え上がる、圧倒的高温を生み出しラセツを中心に爆裂が巻き起こりラセツの苦悶の声が響き渡る。しかしこれはただの炎ではない…人を鳥に変えるように、生を死に変えるように、世界を呪いで炎に変えたのさ。いつもの変身呪術の応用だな。
俺は今、自然現象を俺の意思一つで発生させることが出来る。世界が呪われている以上世界は俺の思うがままにに動くしかないのさ。
「いきなり炎が湧き出よった!どう言う覚醒やねん!このッッ!!」
瞬間、ラセツがこちらに迫ってくる…されど、俺は手を前に出し…。
「『陀羅尼・空肥大』」
「おっ!?」
ラセツの拳が空を切る。ラセツは気がつく、俺に接近したはずなのにいつの間にか自分が遠ざかっている事に…。
「今度は…何したねん」
「別に、空間を太らせただけだぜ?人間みたいに…」
「神様かお前は…!」
「神様じゃねぇよ、俺は…俺はッ…!」
世界を呪う術。それが俺の極・魔力覚醒『鬼門呪殺の悪路王』…!それを手繰る俺は神ではなく…。
「俺は俺だッ!探求の魔女にして最強の魔女!アンタレスのお弟子様だこの野郎ッッ!!」
拳を握り大きく引けば、この身の魔力が溢れ出し迸り紫光が霧を掴み…。
「『陀羅尼・呪界拳』ッッ!!」
「グッッ!?」
領域を呪い、形を変え、物理的な影響力を持たせた上でラセツを殴り抜く…と同時に。
「こっち来い!」
「ヴッ!?」
ラセツの体が空中で停止し一気に俺に引き寄せられる。
「な!?なんでオレの体が!?」
「言っただろ、こいつは呪いだ…空間が呪われている以上その内側のお前も無条件で呪殺適用内なんだよっ!!」
空間を呪って形を変えたりなんだりはあくまでオマケというか応用の範囲だ、その本質は範囲内の相手を無条件で呪う事。通常の覚醒でさえ相手に触れていなければ発動出来なかった呪いが今は手を触れていなくても霧の中に居れば確定で呪術が発動する。
呪術の『条件を達成すれば無敵』の条件を外すのがこの覚醒の真の使い道。つまり今は無条件で無敵なんだよ。
そして、今俺は…。
「『熱焃一掌』ッッ!!」
「ぅぶぐぅっ!!」
みんなの血を飲んでんだぜ?仲間の技だって使えるさ…!負ける要因が見つからねぇよ!
「ガハッ…このッッ!!」
「『時界門』!」
ラセツが動き出した瞬間時界門を開きその中に飛び込む事で反撃を回避して…。
「『陀羅尼……!」
「ッ後ろかッ!?」
ラセツの背後に転移、同時に両手を添えて…放つ。
「『地獄釘』!!」
「ぃギィっっ!?!?」
ラセツの体にビリビリと電流が走る。今俺はラセツを呪い奴の神経全てに刺激を与えた…さながら歯を砕かれ内側の神経に五寸釘を打ち込まれたが如き激痛が全身を駆け巡る。それはいくら体が頑強でも耐え難き物であり…ラセツは遂に動きを止める。
「うッ…ぐっ……なんやねんお前…!」
「なんだって言われてもな、自己紹介は済んでんだろ…」
「なんでやねん…ここまで来て、ずっと耐えて…耐えて耐えて…我慢してここまで来てんのに!なんで最後に立ちはだかるんがよりにもよってお前やねん!!」
「…お前の憎しみは理解してる、だから…清算はこっちで済ませといた」
「ふざけんなや納得出来るか!オレぁ…オレぁアイツをぶっ殺す為だけに…生きてきたんや。他人に成敗されたからって…納得なんか出来るわけないやろうが」
「ラセツ……」
「止まれへんわ、絶対止まれんわ…こんなところで…!」
ラセツは目からポロポロと涙を流し、激昂と哀切に満ちた瞳でこちらを睨む。そりゃあ納得は出来ないだろうよ…けどだからこそやらせるわけにはいかねぇんだよ。
「止まってもらうぜ、ラセツ。お前はここから先には行かせない」
「なんでやねん!!なんでお前が…オレを理解出来る唯一の人間のお前が!そこで立ちはだかるねん!お前なら…分かってくれると思うてたのに!」
「分かるからこそさ、俺もお前みたいに親父への怨念で狂ってた人間の一人なんだ…あと一歩でクソ親父の為にこの人生使い切るところだった、それを止めてくれたのが…あそこにいる大親友達だ」
首で指し示すのはラグナやエリス達だ、もしアイツらがいなきゃ俺は親父諸共盛大に自爆して死ぬつもりのままだっただろうよ。今考えればなんてバカバカしい事なんだと言える、嫌いな人間のために一番可愛い命を使わなきゃいけないなんてな。
今ラセツはそれをしようとしている。親父が嫌いなのは分かる…目の前で大切な人を殺されるのは苦しいだろうし、耐え難いだろうよ。だが…だが……。
「ラセツ!嫌いな人間なのは分かる!だけどセラヴィの為になんか生きるなよ!」
「うるさいわボケェッ!!!何が止めくれた大親友や…オレにはそんなのおらへんわッ…!」
「ならそれに俺がなる…お前を理解出来る俺が、俺を理解出来るお前を止める友になる」
「っざけんないらんわッッ!!オレは勝つんや!セラヴィに!お前に!!」
「ッッラセツ!!」
ラセツは魔力を更に引き出す、こいつまだ力を隠して…いや違う!隠してなんかない!使っちゃいけない領域まで使おうとしてる!!ダメだそれは!絶対に!
「やめろラセツ!!」
「うっさい…黙っとれッッ!!」
ラセツは腕を振るい、その瞬間熱エネルギーの収束による熱線が放たれ俺の体を切り裂き拒絶する…。
「ぐっ…!」
「ドルァッッ!!」
「ガッ!?」
そして続け様にラセツの鉄拳が俺の腹を撃ち抜き衝撃波が背後にまで飛び出す。
「お前のそれ、全部魔術の領域やろ!なら任意発動なはずや!反応出来ん速度でやられたら反撃も出来んやろ!!」
「ゔっ!ぐっ…!」
呪術発動も許さない連撃を前に、一歩…また一歩後ろに引き下がる。ラセツの動きは止まらない、それは最早こいつのタフさを超えた執念の領域だ。
「勝つのはオレや!勝ったら全部や!ウィナー・テイク・オールッッ!!オレが全部を奪い全てを得てアイツを貶めるッッ!!」
妄念、執念、怨念、そして諦念…それらがぐちゃぐちゃになってラセツから敗北の選択肢を奪っている。それらがある限り…こいつは止まれない、だから…!
「ッッだったら!!」
「なッ!?」
止める…口元から血を溢れさせながら、腕一本でラセツの拳を受け止め…睨む。
俺がやらなきゃいけないことはいつだって変わらない、迷える者を教え導くのが…俺の在り方だ。
「ラセツ…!だったら、セラヴィの理屈なんか捨てろよ…!ウィナー・テイク・オールって…セラヴィの理屈だろ!」
「ッ……」
「奴の全てを奪う!?アイツの信条まで受け取ったら…お前は新たなセラヴィ・セステルティウスになるぞ!お前が消し去りたがっていた存在にテメェ自身でなってどうすんだよ!!」
「そ、それは……!ええい!うるさいわ!」
「直ぐに相手を黙らせて逃げようとするな!ラセツ!」
ラセツは俺を追い払い、吹き飛ばそうと腕を振るうがそれをしゃがんで回避し同時に足を伸ばしてラグナの拳を叩き込む。
「ぐっ!」
「継承するな、ラセツ!継承するな!セラヴィの心を継承するなッッ!お前はお前だろ!なぁ!」
「オレは…オレはァァッッ!!!!」
暴れるラセツの拳を防壁で弾き、飛び込むようにその胸ぐらを掴みながら…。
「冥王乱舞ッッ!点火ッッ!!」
背中から炎を吹き出しラセツを掴みながら空へと飛び上がり天井に叩きつけ、そのままラセツの額に頭突きをしながら叫ぶ。
「ラセツ!なぁ…俺達はどうやったって親父の子なんだよ!どんだけ否定したってこの体にはその血が流れてんだ!」
「そんなもん…何度抜こうとしたか、分からんわ…!」
「その血を継ぐ以上…お前の在り方は、簡単にセラヴィに染まっちまう!ウィナー・テイク・オール?そんなもんお前が掲げるんじゃねぇよ!!お前それでいいのかよ!!」
更に冥王乱舞でラセツを奥へ奥へと突き込んでいく…。こいつは囚われてんだ、俺みたいに…過去に。過去なんか見るなとは言わない…言いたくない、けどこいつの場合は。
「後ろばかり見るな!過去ばかりに囚われるな!!お前はお前だ!ラセツ…!」
「ッッ………!」
「お前は今のお前の在り方を誇れるのかよ!」
「説教を垂れるなッッッッッ!!」
ラセツの体が壮絶な熱に覆われ俺は軽々吹き飛ばされる。同時に領域を広げ、渦巻く推進力で大気を一点に集める。
「オレはオレや、オレの生き方に…口出しすんなや!これがオレの人生や、それを邪魔する奴…全員消す!!」
ラセツが突き出す手の中に溢れる光は熱だ。だがただ熱エネルギーを生み出しているんじゃない。
粒子加速の要領で自らの領域内の粒子を超高速で動かし手の中で衝突させる事で原子崩壊を巻き起こすことで…生み出しているのはクォークグルーオンプラズマ。超新星爆発の際に生み出される天地開闢の光…それがラセツの手から溢れ出しバチバチと燃え上がっている。
「アイツ…!」
咄嗟に俺は下を見る。ラセツは今見下ろすように手を突き出している、向かう先は下だ、そして俺の下には今ラグナ達がいる…レーヴァテインがいる、何よりあんなもん地上に向けてぶっ放したら遺跡どころか東部が吹っ飛ぶぞ…!マレウスに穴でも開けるつもりかアイツは!!
(避けられねぇ、受け止めるしかねぇ…!!)
俺は冥王乱舞を展開したまま剣を構え、大きく息を吸う…頼むぜみんな、力を貸してくれ。
「『莫逆の友コロス』!!」
『行くゼー!』
背後に千体の俺を生み出す、同時にネレイドの霧を展開し付与魔術を使いデティが持つ万の魔術を融合させ…。
「『陀羅尼真咒』…!」
束ねる、分身達から呪いを掻き集める刃に乗せる。イメージは星を叩き割る様、天を引き裂き、全部何もかもぶっ飛ばすように…!!
「全部消えろやッ!!『真景累ヶ淵』ッッ!!」
「ッ…!『是大明呪・界裂一刃』ッッ!!」
放たれた開闢の光と界裂の一撃が衝突する…、渦巻くように激突した両者の渾身は鬩ぎ合い、辺りを照らし…世界がヒビ割れる。
「消えろや消えろや!!勝つんは俺や…俺やぁああああッッ!!」
(ッ…想像してたより、エネルギー量が多い…行けるか?届くか!?これ!!)
分身達に背を押させながらも踏ん張る、いや届かせる!ここで退いたら仲間が死ぬんだ!だったら退けるかよ!!何よりッッ。
ここで負けたら、ラセツが前を向けねぇ!アイツは…過去から抜け出るべきなんだ…!
「ラセツゥゥウゥッッッ!!」
「ッ…まだ!」
両手で剣を支え放たれる無量の光を真っ向から受け止めながら…届かせる、言葉を。
「お前、胸張って生きれんのかよッッ!!それで!勝って!お前は胸張れんのかよ!」
「だから言うてるやろッ!オレの生き方はこれで───」
「これからに!これまでに!胸張れんのかって聞いてんだッ!お前がお前に!胸張って言えるような人生じゃないのなら!自分に恥じるような生き方はするんじゃねぇよッッ!!」
「ッ自分の…人生に……」
さぁ頑張れアマルト、気ぃ入れろアマルト!お前の肩に…何人もの人生が乗ってるぞ!!
「テメェが前向いて生きられねぇなら!髪引っ張って肩引いて!無理矢理にでも向かせてやるぅぁぁぁああああああッッ!!!」
肩を入れ、腰を落とし、切り裂く、真っ二つに切り裂き。この呪いは世界にかける呪い、真っ二つに引き裂ける呪いにて世界を一刀両断しラセツの一撃ごと切り裂いて霧散させ道を作る。
されどこの呪いはラセツは関係ない、終わらせるのは剣じゃねぇ…この拳だ。
「言いたい事は言ったッ!後はテメェで考えやがれぇッッッッッ!!!」
「ッアマルト!お前はッ!!」
咄嗟にラセツは領域を生み出し俺を遠ざけようとするが、瞬間飛び出した俺の勢いに押し負けた領域が粉砕され…握られた拳が、光を放つ。
さながら光芒、天へ向かう流星は脇を見ず、ブレる事なく、ただ真っ直ぐと…空を覆う悪鬼の怨讐へと向かい──。
「ッ『陀羅尼・真言鉄輪釘打』ァァァッッ!!」
「ぅグッッッ!?!?!?」
打ち砕く。釘を打つように叩き込まれた拳がラセツの顔面を叩き抜き…世界すら呪う至上の呪術がラセツの体を突き抜け全身の魔力を燃焼させ、爆発させ、粉砕する。
あれだけ荒れ狂っていたラセツの力が遂に…消え去るように、霧散し消滅して…。
「ぅ…ガッ……」
「俺の勝ちなら、…もらってくぜ」
落ちるラセツを見下ろし…俺は鼻から垂れる血を親指で拭い、歯を見せる。
「ウィナー・テイク・オール…そんなくだらねぇやり方を、な……」
これで終わりだ、ラセツ。何もかも…終わりなんだよ。
……………………………………………
自分の人生に恥じる生き方。そう言われた時…咄嗟に手から力が抜けたのを感じた。
オレはオレの生き方を誇りに思えるか、セラヴィへの怨讐に囚われ生き続けるその人生は素晴らしい物なのか。
そう考えた時、自然と否定の言葉が浮かんだのは…きっと光の中に母の顔を見たからだろう。
もう顔も思い出せない程に遠くに過ぎ去った母は…今のオレを見たらなんて言うか。
少なくとも褒めはしない、だが…罵りもしない。
きっと母なら…お前の好きなように生きろと、そう言うだろう。
(バカは…オレか)
アマルトの一撃を受け、体から力が抜けていく。それは体力を使い果たしたのと同時に…もう、意味を感じなくなったから。
そうだよ、オレはオレに恥じる生き方なんぞ出来ないんだ、オレは死ぬその時に素晴らしい人生だったと言える、そんな生き方をするべきなんだ。
それはもう居ないセラヴィの影に支配されて、奴のように振るう生き方ではなく。奴のことなんぞ忘れ最後の最後まで笑ってる人生こそを求めるべきだった。
でなきゃ…あんまりだろ、オレを必死に育ててくれた母ちゃんが…あんまりだろ。
あの人が毎日怒鳴られながら、仕事で疲れてんのにオレを育ててくれたのは、銃で撃たれて死ぬその寸前までオレを守ろうとしたのは…こんなオレを作るためじゃねぇ。
全部オレの幸せ願っての事だったんだ…そんな事も忘れて、バカや…ホンマに。
(ありがとよ、アマルトちゃん…お前は……)
薄れていく、恨みが…憎しみが、もうセラヴィなんてどうでもええわ…勝ち負けも、勝者総取りも…もうええわ。
これを教えてくれたアマルトちゃんはさながら…。
(お前は…オレの…センセーや)
もっと早くお前に出会いたかった。
そんな叶わない願いを抱えながら…オレは、静かに…目を閉じた。




