710.魔女の弟子と遺跡の戦い
僕は戦える…それだけの力を得た。
魔力覚醒…それは僕にとって、念願の力であり同時に責任でもある。
今までは自分の弱さを言い訳に出来た、だけどこれからは出来ない。エリスさん達が背負っていたものを一緒に背負える喜びと共にこれからは彼女達と同じ事をしなくてはならない恐怖を感じていたんだ…。
けど、今は違う…今僕は、怒っているんだ。
「ぼぼぼぼぼきゅに近寄るなぁああ!弱虫がぁあああああ!!!」
「ッふ!」
舞台はレーヴァテイン遺跡群、シチュエーションはパラベラムとの最終決戦というクライマックスにあって僕の相手は兵器開発の本部長ベスティアス。恰幅の良い体にボサボサの髪を持ったメガネの男。彼は白衣を翻しながら…僕に襲いかかる。
彼は体内に無限の兵器を生み出せる工場がある。体を引き裂き表出した巨大な箱、そこから無数の機械の腕が生え…尚且つ腹に開いた巨大な門から次々と銃やミサイルが飛んでくる。それをアクロバティックな大立ち回りで避けているが…。
(猛攻…なんて激しい攻撃だ!)
「押し潰してやるぅうう!オプティマスレイザー!」
「ッとと!危ないですよ!」
攻撃が凄まじいのだ、奴は既に人型を捨て去り無数の攻撃手段を用いて僕をすり潰そうとひたすらに物量戦を仕掛けてくる。前回も同じ方法で苦戦させられたんだ…覚醒する暇さえ与えられずこちらから攻撃に出ることができず…情けない結果だった。
だが!再演はない…!次は華麗に決めてみせる。その方法を持ってきているんだ!
「ベスティアス!!」
「むぅ〜!」
まずは奴の隙を作る。故に僕は奴の攻撃を掻い潜りながらベスティアスの名前を叫べば奴は鉄の箱の上部にくっついた上半身を起こし…こちらを睨む。
「仲良くしましょう!僕達分かり合えるはずです!」
「はぁ〜!?いきなりなに言ってんだぁお前ェーッ!!お前みたいな明らかに恵まれて育ったような奴と仲良くなんかできるわけないだろ!」
「いいじゃないですか、凸凹コンビって感じで」
「どっちが凹だッ!!ぼきゅの事かぁぁああ!!」
「わわー!」
無数の銃弾の雨霰が降り注ぐ、奴の体から生えた数多の機銃が僕に向けて放たれるのだ。咄嗟に防壁を展開しつつ逃げ回る…やはり。
奴はかなりコンプレックスが強い…なら、そこを刺激してみるか。
「す、すみません!許してください!」
「あ?今更謝って許されると思ってるのかぁ!」
「そうですよね、僕…可愛いですし。可愛くてすみません、チュッ!」
チュッと腰を突き出して投げキッスすると…ベスティアスの顔がみるみるうちに怒りに染まり。
「そういう態度が気に入らないんだよォーッ!!!お前みたいな奴に何がわかるッッ!!どこに行っても汚物扱い!どこで何をしても病原菌扱い!低脳で無能な人間は愚図で間抜けな人間で寄り集まりぼきゅを排他する!そして…その愚鈍な人間達を扇動するのは!いつもお前みたいな顔だけがいい人間なんだァーッ!!!」
「凄いの、顔だけじゃないですよ」
「いいや顔だけだ!学園でもそうだった!一番賢いのはぼきゅなのに!女共はぼきゅをゴミクズ扱いし顔が良いだけの男に靡き一緒になって集団から追い出そうとするんだ!低脳なくせに!無能な癖に!ぼきゅよりも成績も悪く稼ぎも悪い癖にィーーー!!」
「……僕は、貴方の過去と関係ありませんよ」
「喧しいィィィーーッッって言ってんだろぉーがぁーっ!!!消し飛べッ!グレイトエクスバズーカッッ!!」
その瞬間ベスティアスの腹から這い出てきた巨大な砲塔を見た瞬間僕は……作戦の成功を確信する。
(来た!)
そう目を鋭く尖らせた瞬間放たれる砲弾、それを前に僕は大地を蹴って飛び上がりクルリと砲弾を飛び越えながら…。
「『網目陣』!」
書き残す…砲弾の進路上に網目ように張り巡らされた魔術陣を。それに砲弾が当たった瞬間…ぐぐっ〜っと魔術陣が砲弾を受け止めまるでゴムのように伸びて伸びて、ある一定の段階に行った瞬間、
弾けるように、魔術陣が砲弾を跳ね返す。
「なぁ!?か…隔壁展開!」
砲弾が跳ね返ってきた瞬間ベスティアスは真っ青になりながら自分の周囲に鉄の壁を展開し爆撃から身を守る。彼のメンタルが不安定だと見抜いた上で、挑発し…迂闊な攻撃を誘った。
そして今、視界は爆煙に飲まれ…何も見えないね。まるで閉じた幕のようだ、そしてベスティアスが隔壁を開き…告げる。
「み、見えない!どこだ…何処にいる!」
アンコールを…ならば見せよう。新たなる題目を…。
「僕はここだよ…!」
「む、隠れてなかった…ってなんだそれ」
煙を魔力で晴らし…僕は魔力で形成したハットを被り、ポーズを決める。目元を隠し…指先で鍔をあげて視線をベスティアスに届ける。
同時に体を回し…一回転すると同時に帽子を空へと投げ飛ばせば、天空で帽子は花火のように弾け……。
「魔力覚醒!」
「あぇっ!?覚醒!?」
「『ラ・マハ・デスヌーダ』!!」
弾けた花火は虹の光となって大地に降り注ぐ、光の雨は大地に落ちると共に形を作り…。
「『千人役者・莫逆のコロス』!さぁ主役の登場だ!かっこよく決めるよ!」
「ふ、増えた…人数捕捉…その数、千人!?!?」
莫逆のコロスにて生み出すのは僕の分身、その数千人…ナリア大劇団の登場だ。さぁて気分も乗ってきたぞ!やっぱり覚醒の瞬間ってかっこよく決めないとね!この演出をするためだけに隙を作ったというか…隙が欲しかっただけなんだ。
展開するだけならいつでも出来たんだ。
「勝負だベスティアス!」
『勝負だ勝負ダー!』
「か、格好つけやがって!!」
「格好いいと思ってくれたのなら、ありがとう!」
やろうと思えばいつでも出来た覚醒、でも…これも僕の確定には必要な行程だった。少なくとも…コーチはそう語っていた。
「何人に増えようとも同じだ!ミサイルシャワー!!」
「みんな!一丸になって!『流浪流離譚』!」
『ワッショーイ!』
乱れ飛ぶミサイルの雨の中を分身達の協力を得て高速で移動する、分身はミサイル程度じゃ消えない…少なくとも『今は』ね。だから僕自身が被弾しないように駆け抜けベスティアスを睨みつける。
(なるべく…主役らしく)
僕は…コーチとの修行の中で得たこの覚醒の本質を思い返す。
それは…この覚醒を最も効率よく使う方法。
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「へぇ!面白い覚醒だね!」
「はい!僕もそう思います!」
電脳世界で僕はコーチにラ・マハ・デスヌーダを披露するとコーチは手を叩いて喜んでくれた。本当は本物のコーチに見せたかったけど…まぁそれはそれでよし!これは予行練習みたいなものだ!
「たった一人で劇団を成す覚醒か…ボクもそっちがよかったなぁ」
「えへへ……」
「まさしく君が一心に演劇に打ち込んだ…その帰結とも言うべき覚醒だね。素晴らしいよ」
コーチは僕を手放しで褒めてくれる。事実…この覚醒は僕の美術的な成長に伴い目覚めた覚醒、僕の美意識が投影されていると言ってもいいし、何より覚醒とは人生の答えのようなものだと常々教えられてきた。
であるならば、僕の人生は演劇だ。僕の人生は演劇のためにあり、演劇は僕の人生のためにある!これは誰にも否定出来ない確固たる事実なんだ。
「演劇のう…」
「ややっ!シリウス!」
「おや、師匠」
すると近くを通りかかったシリウスが顎を撫でながらむむむと難しい顔をしており…。
「ふぅむ、お前面白い覚醒の仕方したみたいじゃのう」
「え?分かるんですか?」
「分かる、魔術的なアプローチではなく別方面からの魔力覚醒…そんな感じがする。どんな分野にも魔力覚醒に類する段階はあるし、どんな技術にも終着点はある、魔力覚醒は何も特別なものではなく魔術分野の一種の到達点でしかない…お前は別の方面で覚醒し、それを無理矢理魔術分野にも持ってきたんじゃ、いやいや天才というに相応しいわ」
見ただけでそこまで分かるのか…エトワールでコーチの体を乗っ取った奴で、僕も少しだけ話したことがあるけど。
あの時と感じが全く違う、本当に別人のようだ…いや、今思うと…僕らが知ってるあのシリウスは何処か…『演技』臭いようにも思えて──。
「しかしのう〜…ワシは演劇とかまるで分からん類の人間じゃから言わせてもらうが」
「え?」
「お前ら劇団なんじゃよな?じゃあ誰が主役なんじゃ?」
「へ?」
僕は分身と顔を見合わせる、劇団なら…誰が主役?いや全員僕だから全員主役ですよ、なんて言わない。主役と言うポジションがどれだけ大切が理解しているから。だから一応主役になり得るのは。
「僕です」
『本物だヨー』
「おおお前か、いや見分けつかんわ…全員同じ顔じゃもん」
「そんなことありませんよ!一番可愛いでしょ!?」
「分からんて……」
なんて失礼なことを言うんだか。どっからどう見ても違うじゃないか…いや他の人から見ると見分けがつかないのか。一応全員同じ顔だし…まぁ別にいいけど。
「まぁ見分けがつかないならそう言う使い方もありますし、それはそれでいいです」
「まぁそうじゃな」
「いや、そうでもないよ…ナリア君。これは深刻な問題かもしれないよ?」
「え?」
するとコーチが神妙な面持ちで分身達を眺め…。
「君、そのルビカンテって人と戦った時と同じように今分身を動かせるかい?」
「え?いや…出来ません」
ルビカンテと戦ってる時は正直僕の想像を超えるくらい機敏に動いてくれていた。頑丈だったし、動きも鋭かった。けどパラベラムとの戦いで使っているうちに…思ったんだよね、あの時が特別だっただけで僕の分身は言うほど万能でもないってさ。
動きもルビカンテとの時ほど鋭くないし頑丈でもない、事実馬車を支えただけで体が崩れていたし…ルビカンテと戦ってる時はあの程度じゃ壊れなかった。
けどそれは普通のことだよ、覚醒ってのは最初に行った時はいつも以上の力が出るものだから、それも同じものだろう。
「でもルビカンテと戦った時は初の覚醒だったので…」
「いや、それ以外にも要因がある…恐らくだが、君の覚醒がボクの覚醒と同じ性質を持っているのなら…君はこの群像の中で主役として立たねばならないのかもしれない」
「主役……」
「つまり、かっこよく存在感を示す演出を用いなければならないと言うことだ」
コーチは言う、コーチの覚醒もまた主役脇役の概念を基礎とした覚醒だ。なら僕もまた同じような性質を持つのだとしたら?
この群像が一つの劇団なら、それを操る僕自身が群像に埋もれてしまったら…その分僕の権限は弱まる…と言うことか。
「恐らく、ルビカンテとの戦いで君が想像以上に分身を操れたのも…」
「僕があの場で間違いなく主役だったから…」
「そう、だからもし隠れて分身だけを差し向けて戦う…なんで真似をすれば君は立ちどころに主役じゃなくなり力が弱まり、逆に前面に出て戦えば戦う程に分身は強くなるのさ」
「そう言うことだったのか…」
確かに、ルビカンテとの戦いで僕は間違いなくあの戦いの中心にいた。スポットライトが僕に当たっていた、そして他の場面では…僕にスポットライトが当たっていなかったから覚醒も弱まっていたってことか。
そうか、そう言う覚醒なのか…これは。
「主役でなければ弱くなる覚醒…それはある意味デメリットだが……」
「…ふふ、問題ないです。任せてくださいよ…目立つ演出は得意なんです」
確かにデメリットにもなり得る、だが…注目を集めればいいだけだろう?なら大丈夫。そこの分野に関してはプロだから、やりようはいくらでもある。
そういえばコーチはニタリと笑い。
「君、本当に演劇に関しては自信があるんだね」
「はい、あります」
「即答か…なら、磨き抜こうか。その唯一無二の自信を」
「はい!コーチ!お願いします!」
故に僕は磨いた…主役としてのあり方と演出、そして演劇をさらに磨き抜きこの覚醒の強化に時間を使った、そうして今僕は……。
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「キェエエエエエエ!死ね死ね死ね!タクティカルレーダーショット!!」
ベスティアスがキレて無数の光線を機械の腕から照射し僕を焼き切ろうとする…しかし僕は。
「はッ…!」
敢えて、レーザーの間をすり抜けるように飛び、くるりと一回転し膝から着地し指先をピッと払い華麗にポーズを決める。それと共に分身達が声援を上げ盛り上げる。
そうして僕は…この覚醒での戦い方を知った。姑息に分身だけを差し向けるようなやり方でも、分身を盾にするようなやり方でもなく、敢えて危険に身を晒しその上で危険の手を取って踊る。そうすることで主役としての立場を確たるものにする。
それが覚醒の強さそのものに直結するんだ。
(だから余計な手順を踏んで劇的に覚醒する必要があったんだけどね…でもおかげで、分身達の強さも引き上げられてきた)
意識してみると…僕が主役らしい言動をする度に分身達の強さもモリモリになっている。ルビカンテの時ほどじゃないけどかなりのところまで行った!
そろそろ攻めるか!
「みんな!散開し敵を撃滅しろ!『劇目・テルモピュライの剣戟』!」
『ウォーッ!』
僕が号令を発すれば分身達は鎧を装備し剣と盾を打ち鳴らし勇ましくベスティアスに突っ込んでいく。
「ひぃ!群がって来たぁ!?軍隊アリかお前ら!!させないぞ…させないぞぉおおお!!」
ベスティアスはボトボトと脂汗を流し体を改造し巨大な箱型の体から蜘蛛の足のような鋭い脚部を作り出し分身を遠ざけるように動き出し逃げ出す。けど…甘いよ。
「劇目『空絵筆・天傑』!!」
僕が指を鳴らせば周囲の分身達が一気にばら撒く…それは魔術陣の書かれたカード。そして同時に筆で書き上げる、狙うは一点!
「魔術箋『神霄雷公鳴電陣』ッッ!!」
「ままままま魔術箋!?!?イシュキミリ様の技をなんでお前がぁあ!?か…隔壁展開ィィイイイイ!!!」
広大に展開した大量の魔術箋がベスティアスを囲むように集中砲火で加えられ炸裂する。隔壁を展開するが…悪いが鉄の壁だけで防げるような威力じゃない、ベスティアスのブラックファクトリーはまるで鴉に啄まれるようにあちこちが消し飛び足が吹き飛び隔壁も融解し吹き飛んでいく。
逃げたから…分身を展開しやすかったよ突っ込んできていたらここまで集中砲火は喰らわなかっただろうに。
「悪いね、でも僕怒ってるんだ。君のせいで…友達が傷ついたんだから」
ペンを払い息を吐く…ブラックファクトリーはあちこちが爆発し崩れていく、ベスティアスもタダじゃ済まないだろ─────。
「キェエエエエエエッッ!!」
「えッ──ごぶふぅっ!?」
『ああー!本物ガー!!』
しかし、その瞬間爆煙を切り裂いて機械の足が僕目掛け飛んできて、僕は跳ね飛ばされるように壁に叩きつけられ地面を転がる。まずい…完全に不意打ちだった、防壁で防げなかった。
と言うか…なんで攻撃が、奴の体は破壊したはずで……。
「うぅぅうう…やってくれたなぁ…ぼきゅが天才じゃなければやられていたよぉお!」
「え…!?」
爆煙の中から現れたのは、破壊されたはずのブラックファクトリー…吹き飛んだはずの鉄の手足も戻っており、多手多足を巧みに動かし蟹のように動きながら僕の前に現れるのだ。
なんで…壊したはずなのに。…いや…あれは!
(壊した箇所が…一人でに直ってる!?)
ブラックファクトリーに開いた大穴が、まるで巻き戻すようにグニャグニャと金属が動き直り始めている。回復出来る機械なのか?自分で自分を直せるのか…!
「驚いているなぁ…これこそぼきゅがピスケスの遺跡から掘り出し復元した最高傑作!ナノマシンさ!」
「ナノマシン…!?」
「極小の…それこそ細胞レベルで小さな機械さ。これをブラックファクトリーに付着させれば金属部品の代わりになり、自動修復を行える」
「そんな……」
想定外、そんな言葉が頭に浮かぶ。自動で直るなんて想像すらしていなかった…これほどか、ピスケスの技術力は!
「そして!ナノマシンはぁねぇ!攻撃にも転用出来るんだよ!分解ナノマシン製造ーッ!!」
するとブラックファクトリーの大口が開かれ銀色の粒子が風に乗って空間を満たす。何が起こっているのか分からず呆然としていると…銀色の粒子に触れた分身が。
『あ、あわわ!消えル〜!』
「えッ!?」
「今、この空間に分解ナノマシンを散布した。このナノマシンは触れた物を分解させることも出来る…ふひゃひゃ!数がいたってこの密閉空間!逃げ場のないここじゃあナノマシンには勝てないのさッ!!」
「ッ…!」
銀色の風が一瞬で空間中に拡散し分身達が掻き消されていく、分解させる力を持つ風…まずい、このままじゃ分身が全滅する…。
「一旦消えて避難を…ぐっ!?」
咄嗟に分身達を魔力体に戻し分解されるのを防いだが…代わりに突き出した手に痛みが走り、視線を向けると…。
「あ…ああ!」
指先に…穴が開いていた。それはまるで燃え尽きる紙のようにじわじわと広がっていくんだ…分解されている、体が!
「ゔっ…ぐっ!」
「ぎゃまははははは!このまま分解されろ!ぼきゅに逆らう奴は骨すら残さず消えちまえぇえ!」
体のあちこちが針で刺されるような痛みが襲われる。まずい…本当に分解が始まっている、速くなんとかしないと本当に骨も残さず消されて───。
「そぉら!!」
「ぅぐっっ!?」
しかし、痛みに悶えている間もベスティアスは止まらない。その長い足を鞭のように振るい僕に叩きつけ弾き飛ばす。
「痛いか?怖いか?んん?ぼきゅを馬鹿にした罰だよ!アハハハハハハハ!」
「ッ……!」
「つーかちょっと考えれば分からないかなぁ…ぼきゅはパラベラムの工廠本部長。多くの武器と技術を主体とするパラベラムという組織の心臓部!デキマティオよりもクルレイよりもクルシフィクスよりもぼきゅは凄いんだ!!そんなぼきゅに喧嘩売ったらこうなるって分かんないかなぁ?!」
「うッ…」
蹴り飛ばされる、蜘蛛の足のような鉄の脚が僕を蹴り上げ甚振り、ベスティアスの笑いが木霊する。
「顔なんてのはただの身体構造に過ぎない!体系なんてのはただの肉体的特徴に過ぎない!それで優劣を決める人類のなんと愚かなことかぁ!ぼきゅな!お前みたいな顔だけでチヤホヤされてる奴が嫌いなんだよぉ!」
「ッ……僕は、顔だけで誰かに好かれているわけじゃない…」
「口答えするか…!」
「僕は!努力しているから!誰かに好かれる努力を!」
体のあちこちから血が出る、痛みが体中を包む、だけどそれでも立ち上がる…だって、こいつの言ってることがあんまりめちゃくちゃ過ぎて、聞くに耐えないからだ。
「お前は…して来たのか、そう言う努力を!」
「してたさ!ぼきゅは頭が良かったからね!いろいろ物を教えてやろうと話しかけたのに!無視したのは世界の方だ!」
「そう言いながら君は他者を無能だと嘲り他人を低脳だと罵倒しているじゃないか!それに何より頭がいいって言う割に…君はさっきからレーヴァテインさんの作った物の真似事しかしていない。自分の成果を他人になに一つ誇れず…ただ他の人間が挙げた成果を嫉んでいるだけだろ!!」
「グッ…言ったな、言ったなぁぁ!雑魚のくせにッッ!!」
「ッ…『ラ・マハ・ヴェスティーダ』ッ!」
突っ込んでくる、巨大な鉄の体を動かして一気に突っ込んでくる。それを魔力吸収で手に入れた力で受け止めるが…そもそもサイズが違いすぎる。両手で受け止めても止めきれず僕はそのまま壁際まで押し込まれ、背中が壁に当たる。
「このまま潰してやる!!」
「ッ君は!ただ誰かに自分の努力を認めてもらいたかっただけじゃないのか!?それなのに今!他者を罵倒し努力の成果も他人から掠め取り!なにがしたいんだ!」
「分かったような口を利くなァッ!!!古代の人間が作った技術を流用してなにが悪いッ!現代の発明品の凡そが過去の技術を流用し作られている!そしてそうやって開発された物は往々にして発明者に栄誉が渡る!ならぼきゅだって認められていいだろッッ!!これはぼきゅの発明品だ!これを作ったのは全部!ぼきゅだッッ!!」
「だったら!!」
僕は壁に足をかけて、踏ん張る。押しつぶされないようにひたすら耐える。まだやられるわけにはいかない…!
「君は…その発明品の全てを、理解しているのか。君はそれを作ったレーヴァテインさんの気持ちを理解してるのか…!それは全部…誰かを守る為に作られた、彼女の心の表れだ…!」
「はっ!心ォッ!?アホらしい〜!!兵器は兵器だ!殺す為に作る!壊す為に使う!そこになんの間違いもないだろうがァ〜〜!!」
「そうかい…なら君は、負けるよ…僕に。己の武器の本質も理解出来ない君は僕に負ける…何より」
僕は片手を上げて、ベスティアスに指を向け。精一杯…ウインクをする。
「その理屈は敵役の理屈だからだ」
「はぁ!?ここからどうやって勝つって?ぼきゅの理屈が敵役だから負けるって?これはなぁ…演劇じゃねぇんだよッッ!!」
ベスティアスの鉄の躯体がどんどん迫ってくる、このままじゃ潰される。さて…ベスティアスに対して格好つけたはいいが。さてここからどうしよう…ぶっちゃけ何にも方法は浮かんでないんだよな。
今も体は分解されてるし、体力も削られている、このままじゃ潰されて死ぬ…長期戦は出来ない、なら……ん?
「あはははは!潰されて死ぬのが先か!分解されて死ぬのが先か!選べぇえええ!」
(アイツは全く分解されてないのか…?)
ベスティアスを見ると奴は特別な処置などせずとも分解されている様子はない…いや、待て。もしかしてこれ…。
(ッ…僕自身の分解も遅くなってる)
ふと手を見ると、分解されていくスピードがさっきよりも遅いんだ…そうか、そう言う事だったのか!
(そう言うことかッ…!)
「ん?なにを…」
僕はその場で体を捻って両手でベスティアスを押さえたまま僕は息を整える。
(さて上手くいくかは一か八か、でも大丈夫…だって)
「なにを…!」
僕はそのまま手をベスティアスの腹に…奴の兵器を取り出すための巨大な穴に手をひっかけ、シャッターをこじ開け飛び込む。その中に…!
(主役の一か八かは!必ず上手くいくもんだから!)
「なッ!?馬鹿な奴!ぼきゅの製造ラインに飛び込んで助かったつもりか!その中は兵器製造のための歯車や機器でいっぱいなんだ!ズタズタに引き裂かれて死ぬがいい!!」
ベスティアスは製造ラインに飛びこんだ僕を嘲り笑いながらシャッターを固く閉じて歯車を動かし僕を殺そうとする…けど。
「ふひゃひゃひゃひゃ!!綺麗な顔もズタズタに……ん?あれ?」
ベスティアスは後になって気がつくことになる。自分のブラックファクトリーの動きが鈍くなっている事に…そして彼は考える、なにが起こっているかを、そしてやはり…すぐに気がつく。頭の良い彼は……。
「まさか!奴がこの中に飛び込んだのは…あの事に気がついて────」
『その通りですッッ!!』
瞬間、ブラックファクトリーが内側からボコボコと膨らみ、あちこちで電流が迸り、自重を支えきれなくなった足はひしゃげ、遂には動けなくなり爆発四散する。
まるで膨らんだ風船が割れるように爆裂したブラックファクトリー…その中から飛び出すベスティアス…そして。
『ワッショーイ!』
『出れター!』
『ヤッター!!』
「ッ分身!やはりブラックファクトリーの中で増殖したのか!!」
「ええその通りです!お前…自分が分解されないように自分の周囲にはナノマシンの散布を避けていたでしょう!中身ともなれば当然、ナノマシンはありません!分身だって消されません!」
そう、ベスティアスはナノマシンを完全に操れているわけじゃないんだ。奴は自分が分解ナノマシンに巻き込まれることを恐れて自分の周りには散布する量を少なくしていた。…だから僕が奴に組みついている間は分解のスピードも遅くなっていた。
なら奴の中はもっと少ないだろう?ナノマシンがないなら分身だって展開できる。だから僕は中に飛び込んだ瞬間分身を再展開し…内側から破裂させたんだ。
そう、この事態を巻き起こしたのは全て……。
「ベスティアス、ナノマシンがお前の発明品なら…こんな事にはならなかっただろう!」
「ゔっ…!」
「他人から掠め取った力は…最後の最後にはお前を守らない。自分を守れるのは一つ…自分で培った力のみ!!」
爆発するブラックファクトリーの爆炎の中から飛び出し宙を舞うベスティアスに肉薄する僕は叫ぶ。ナノマシンを細部まで操れていたならこんな弱点なんて存在しなかった、その性質をきちんと理解していればこの窮地はなかった。
これは全てレーヴァテインさんが作った物だ、彼のものじゃない、レーヴァテインさんが兵器を作った心意気すら理解しようとしないこいつでは、どれだけ兵器でも完璧に扱うことはできない!
「ッッうるせぇぇええええ!!!ナノマシンはまだ健在なんだッッ!修復ナノマシンも分解ナノマシンもぼきゅの意志で動く!!お前を分解しつつブラックファクトリーを再生させるくらい…わけないんだよぉおお!」
「させるわけないでしょう、冗長なクライマックスなど…僕が許さない!」
天に手をかかげれば全ての分身が僕を見る。さぁ集まれ、主役が決める時間だよ。主人公が血を流し、苦悩し、陰鬱としたならば、クライマックスを上回るフィナーレが必要だ!
「『最終劇目』!」
『オーー!!』
フワフワと宙を漂い僕の周りに分身達が寄り集まり、形を変えて…七つの影を作る。これこそ…エトワールに伝わる最高の演劇。
「『エイト・ソーサラーズ』!」
「なァッ!?」
分身達が重なる、分身と分身を重ね一体一体の頑強さ、魔力の量、全てを増幅させ…与える役はエイト・ソーサラーズ。カノープス様やアルクトゥルス様、コーチやスピカ様の服を着てコスプレをした僕が周囲に浮かび上がり…僕の姿がレグルス様のコートに変わる。
今最高に輝いている僕や分身は通常では引き出せない領域までたどり着くことができる。膨れ上がった力を役の固定で更に強化…そうすることで、魔女様達の力を一時的に再現する。
それが出来るのが僕なんだ、なんせ僕…エイト・ソーサラーズだからね!魔女偽証罪にならないんだなこれが!
「ベスティアス!!他者を嫉むなとは言わない!他者?妬むなとは言わない!だけど…認めるしかないんだ!どうあれ自分より凄い人はいると!どうあれ自分には出来ない事ができる人はいると!その上で…自分の力を磨くしかないと!!」
「う、うるさぁああああああああい!」
「少なくとも、僕達はそうやって…前に進んでいる」
魔術陣を書き上げれば、周囲の魔女様風の姿をした分身達もまた僕の周りに集まり…その手から魔力を放ち、完成させる…魔女様の力を今の僕で表現する、最終劇目。
「『救界八星一閃』ッッ!!」
「ぬぅぐぅっ!?ぅぎゃぁぁぁあああ!?!?」
放たれる光は膨大な力となりベスティアスを飲み込み……そして。
「貴方は僕の友達を…レーヴァテインさんを傷つけました、許せません」
爆発四散、光に押し飛ばされたベスティアスはアダマンタイトの壁に当たり、壁を砕きながら爆発し吹き飛ばされていく。そして僕が指を払えば…分身達は消えていく。
にしても…。
「うーん、魔女様達の力…上手く表現できなかった」
コーチとの特訓で作り出した魔女様達の幻影を生み出す『エイト・ソーサラーズ』…作り出すには相当僕が場を支配していないとダメな割に、これくらいのことしか出来ない…なんてことはないはずなのに。
やはり僕はまだ役者として上に登る余地があると言うことか…ならば次はモノにしよう、最高の魔女劇を作ってみせる。
「はっ!それどころじゃなかった!みんなと合流しないと…イテテ、あっちこっち穴だらけ…早くデティさんに傷を治してもらわないと」
ベスティアスは倒した、けどまだ戦いは終わらない…ラグナさんはラセツと八人で戦いたいと言っいた。なら早く合流するべきだ…まだ幕は閉じてない。
僕は僕の役割を最後まで貫くんだ。
…………………………………………………
そして、三幹部が弟子達に撃破された…丁度その頃。レーヴァテイン遺跡の第三層に当たる地点では、今も戦いが続いていた。
「カカカーッ!おもろいやんけ!もっと気ィ入れてやってくれや!!」
「チィッ!!」
「デティ!」
「うん!」
第三層にいるのはエリス、デティ、ラグナの三人。そして相対するのはパラベラム最強にしてマレフィカルム五本指の五番手『悪鬼』ラセツ。三対一という状況にありながら…ラセツという男はそれでも強かった。
「そらそらこっちや!ついて来ぃや!」
「冥王乱舞ッ!」
「加速魔術並列使用!」
ラセツがタックルでアダマンタイトの壁を粉砕し大部屋に入った瞬間エリスとデティが同時に加速し部屋の中を乱反射で飛び回りラセツを翻弄する…否。
「好きやな、そういう動き!」
「ぐっ!?」
拳を振り下ろし影も残さぬ速度で飛び回るエリスを地面に叩きつけ…。
「そっちも!」
「がぁっ!?」
そのまま腰を回し振り向きながらデティを裏拳で壁に叩きつけ──。
「で手前はノロマ過ぎんねんッ!」
「ゔっ!ごはぁ!?」
ラセツの隙をついて突っ込んできたラグナを頭突きで弾き返す。見切っているのだ…エリス達の動きを、デキマティオのような識確の力を用いずただその圧倒的な動体視力と直感でエリス達の動きを全てを把握し的確に粉砕する。
「クソッ!」
エリスは即座に飛び起き後ろに向けて飛びながら手元に魔力を集め…。
「『冥光・雷紋金剛杵』!!」
作り出すのは雷の槍、それを体を一回転させ勢いをつけながらアンダースロー気味にラセツに向けて飛ばせばそれは一瞬で音を捨て去る速度で飛翔し…。
「流体防壁!」
「あ!」
受け止められる、奴の魔力防壁に…形のない流体の防壁が電流を閉じ込めた瞬間。ラセツは拳を大きく振り上げ。
「『雲来末』ッ!!」
「危なっ!?」
そのまま拳から魔力爆発を起こし流体防壁を水滴に変え散弾のように飛ばす。その一撃一撃が鋭い砲弾となって飛び交う。受ければしばらく立ち上がれないだろう攻撃の雨の中を旋風圏跳で潜り抜け…エリスはラグナとデティの元へ飛び帰る。
「っと…どうしましょうラグナ、エリス今の所アイツに勝てる気がしません」
「弱気なこと言うなよエリス…」
「けどマジだよ、この三人で攻めて全然攻撃が入らない」
エリスとラグナとデティは並んでラセツと向かい合う、エリス達三人がかりでもラセツの強さは依然として変わらない…相変わらず圧倒的に強い。
身体能力は常軌を逸し、魔力量は人間とは思えない量を保有し、そして全ての行動が苛烈…正直弱点らしい弱点もない。これをどう崩す…どう倒す。
「なはははははは!いやぁええやんかええやんか。正直お前らがここまでやるとは最初思っとらんかった。流石はカルウェナンのおっさんを倒しただけはある…せやけど、もうちょい頑張ってほしいって気持ちもあるなぁ」
「ウルセェな…上から目線で語りやがって」
「だって上からやし……それに、こうしている間にもセラヴィは下で黒衣姫を掌握するために時間を使うてる…お前らかて悠長に遊んどる場合ちゃうやろ」
「ええ、そうですよ…だから早めに倒れてください、ラセツ」
「なはは、言うやんか……そやなぁ」
するとラセツは何もいない、誰もいない大部屋の中をグルリと一周するように歩き出し…。
「せやったら、オレもそろそろ本気出して…この戦いを終わらさなあかんかもな」
……これはエリスの推察になるが、ラセツもまたセラヴィと敵対している立場にある。セラヴィのことを恨んでいるのは本当で…エリス達を使ってセラヴィの力を削ぎ、パラベラムを自分のものにしようとしているかもしれないんだ。
となれば、こいつもまたセラヴィが黒衣姫を手に入れる前にエリス達との戦いを終わらせたいはず…だから。
「一方的で悪いな、お遊びはこれで終いや…かるーく捻ってぶっ殺したるで、それで堪忍してや」
時間がないのは奴も同じ、故にここからはマジで来る…倒すための手立てもないのに、更にギアを上げてくるか。仕方ない、全力で迎え撃つしかないか!
「行くで」
ラセツは大きく腰を落とし、全身から凄まじい量の魔力を滲ませた瞬間…使ってくる。
「『マルムラビトゥス』……」
魔術を……。
「ッハッ!?」
瞬間、エリスは気がつくと全身に激しい痛みを覚えながら吹き飛ばされていた。何が起きた!?エリスはどうした!?何をされた!?分からない、気がついた通路の奥深くまで飛ばされて一人で……。
「遅い、遅すぎるで!」
「ッ…ラセ──がはぁ!?」
そして再び、エリスは殴り飛ばされる。通路の奥から影のような速度で飛んできたラセツの拳によって。今まで見せたことの無い速度…これがラセツの魔術!?
「そらこっちや!」
「ぅぐぅ!?こ…これ、加速魔術!?」
吹き飛ばされた先で待っていたラセツに蹴り上げられ、エリスは再び地面を転がる。この速度…あり得ない勢い、これ加速魔術か!?いやちょっと違うぞ、なんだ…この魔術は。
「この…冥王乱舞!点火!」
「『明烏』!」
冥王乱舞で飛び上がるとラセツもまたまるで何かに釣り上げられるような挙動で加速しエリスについてくる。通路を飛ぶエリスの横にピッタリとつくように飛ぶラセツはそのまま体を大きく回し………。
「『抜雀』ッ!」
「させねぇぇ!」
「ラグナ!」
瞬間、通路の奥から飛んできたラグナがエリスとラセツの間に入りラセツの蹴りを防ぐ。同時に通路の向こうから光が煌めき。
「『不折不曲のヴェナンダンディ』!」
「おっと!」
光線の如き勢いで飛んで来たデティの拳を、ラセツは再び急加速で回避する。エリスの風のように何かを帯びて動いているわけじゃ無い、けどただの加速魔術で空中回避なんて出来るのか?
「エリスちゃん!大丈夫!?」
「は、はい!でもラセツの魔術が!」
「分かってる!あれ…マルムラビトゥスだよ!」
「なんですかその魔術…加速魔術ですか!?」
聞いたこともない魔術の名前…それを前デティは首を横に振り。
「いや、あれは加速魔術じゃない。あれは古代の魔術…今ある魔術殆どの加速魔術や衝撃魔術などの物を動かす魔術の原型になったとされる…『推進魔術』」
「推進…ってことは」
「奴の魔術は、モノを動かすことに特化してる…それもどうやら、速度も自由自在みたいだね」
推進魔術マルムラビトゥス…今ある現代魔術は今よりも昔の現代魔術をベースにしており、昔の魔術は更に昔の魔術をベースにしている。これもまたそれと同じ。何かを飛ばしたり、何かを動かす動体系魔術の原型になったとされる推進力を操る魔術。
魔力にて…何かを動かし、押したり飛ばしたりする非常に単純極まりない魔術。だがエリスの経験則から言わせてもらうとそう言う単純な概念を操る魔術ってのは非常に使い勝手が良く、使い手の技量が直に反映される場合が多い…。
奴が飛んだのも、加速したのも、その一環…か。でも。
「魔力でモノを動かすって…効率が悪いはずじゃ」
「悪いよ、動かす物体の質量に応じて必要となる魔力量が跳ね上がる。だから人は風や火を生み出し、それにより生まれる推進力を使ってるんだから」
師匠が言っていた、動かすものが大きくなればなるほど必要となる魔力が大きくなると。だから魔術や魔力を用いた乗り物は流行らなかったと…でもラセツはそれを使っている、つまり。
「けど…つまり奴はそのデメリット、消費魔力量の大きさを考えなくてもいいくらい…魔力がバカでかいってこと…こりゃ、ちょっと想定外だよ」
圧倒的身体能力、圧倒的魔力量に加え、それを生かして超加速…それがラセツという男の武器………。
「………マジですか」
「せっかく本気出したんやから!簡単に落ちてくれるなや?」
エリス達が今直面する壁の大きさを、エリス達は再認識する…こいつ、どうやって倒せばいいんだ。




