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孤独の魔女と独りの少女【書籍版!8月29日発売中!】  作者: 徒然ナルモ
四章 栄光の魔女フォーマルハウト
71/840

63.孤独の魔女と麗人執事ディスコルディア


「フンフン フフーン」


調子良く、鼻歌交じりで夕食作る…朝なのか はたまた夜なのか、それさえ分からぬ地下世界『落魔窟』、今エリスはそこにいます…正確に言えば落魔窟の中のさらに一角 デルセクト軍人のメルクリウスさんの居宅に奴隷として居候している状態になります


なぜこんなことになったのか、それはメルクさん曰くレグルス師匠がフォーマルハウト様の策略に嵌り 石に変えられ連れていかれてしまったところから話は始まります


デルセクトの…グロリアーナさんの策略によりエリス達はピンチに陥ったのですがそこを助けてくれたのがメルクさんだったのです、メルクさんが助けてくれなければエリスはあのまま二度と目覚めることはなかったでしょう


メルクさんに助けられたエリスは、メルクさんの『このような非道を二度と魔女様にさせないため フォーマルハウト様をかつての栄光溢れる姿に戻す』という目的に協力することとなりました、フォーマルハウト様が元に戻れば 石にされた師匠も戻ってくるでしょうしね、うんうん






「よし、…昨日多めに食材を手に入れておいた甲斐がありましたね」


鍋の中でくつくつと泡立てるそれを見て頷く、昨日使った野菜の皮で作ったブイヨンを用いて 作った具なしの野菜スープ…少々侘しいが幸い塩と胡椒は家にあるみたいだし 味付けにはあまり困らない


昨日からじっくりとお酒につけておいたお肉を焼いて メインディッシュにする、限られた食材しかないから自然と品数は限られるが仕方ない


エリスはあまり外に出ないほうがいいらしい、というのも一応メルクさんが軍にエリスは死んだとの虚偽の報告をしてくれているらしいのだが、そんなもの エリス自身が見つかれば一発でアウトだ


この落魔街にも一応デルセクトの兵士はいるし、何より地上はあのグロリアーナさんが見張っているらしいのだ、…アルクカースまで見通せる遠視の魔眼の使い手であるグロリアーナさんの目を逃れることは難しい、もし見つかればグロリアーナさん直々にエリスを殺しにくるだろう


グロリアーナさんは強い、師匠曰くその実力は指先が魔女の領域に引っかかる程に強いと言う…そんな化け物相手に逃げ回るなんてことエリスには出来ない


なのでエリスは外に出られない、デルセクトに居る限り エリスは師匠を助けるため動くどころか、身動き一つできない状態にある


だが、今日の朝 メルクさんが『せっかく組んだ相手が身動きできないんじゃしょうがない、今日 お前が動けるように何か案を考えてくる』と言いながら出勤していった


だから待つ、メルクさんを信じてエリスは一日この家で待つ、とは言えじっとしているのもアレなので 昨日やり残した掃除とかメルクさんが開けた天井の穴を直したりとか 、色々やる


お陰で廃屋寸前だったメルク邸はまるで新築同然にまで綺麗にすることができた、むふふ 満足満足 きゅっきゅっと音を立てる床を感じて思わずニマニマ笑ってしまう


さてと、晩御飯の準備も出来ましたし…エリスの記憶が正しければ、そろそろメルクさんが帰ってくる時間だと思うのですが、ここでは太陽が見えない為 時間が正確に把握することが難しいのだ…まぁエリスの体内時計は太陽よりも正確なのであまり困らないが


…なんて、考えていると


「おーいエリス、帰ったぞ」


「あ、メルクさん お帰りなさい」


メルクさんが紙袋を抱えて帰ってくる、今日もお疲れの様子だが 心なしか昨日よりは元気そうだ


「フッ、帰った…か 出迎えてくれる人間が家にいるというのはいいな」


「何感傷に浸ってるんですか?、晩御飯出来てますよ」


「ああ、いや…長らく一人で生きてきたからどうしてもな、…うう 帰ったら出迎えてくれる人と温かいご飯が待っているなんて、幸せだな」


なんか、幸せそうだ…このくらいでよければ幾らでもしよう、何せメルクさんは命の恩人なのだから、野菜スープと焼いたお肉 あとカリカリに表面を焼いたパンをテーブルに並べてメルクさんを出迎える支度をする


「今日は…また豪勢だな」


「元手はほぼゼロですけどね、使ったのは昨日同様野菜の皮と素材加工場の端材なので」


「このデルセクトで金を殆ど使わずこれだけの飯を用意するのはすごいことだよ、さ 早速食べてもいいかな」


なんていってる間にもうメルクさんはテーブルに着きウズウズと体を揺らしている、そうやって目に見えて楽しみにしてもらえると作ったエリスとしてもとても嬉しい


「はい、では 上着は預かるのでお先にどうぞ」


「あ…そうか、仕事着を汚すのは軍人失格だものな、ありがとうエリス」


そういうとデルセクト軍の軍服を預かる、そういえばこの家 洗濯用の石鹸が置いてあったな、アジメクでもアルクカースでも石鹸は高級品だが、デルセクトでは逆にそんなことないのだろうか…


軍服のシワを伸ばして壁にかける間にもうメルクさんはエリスの作ったスープを口に運んでおり


「美味しいなぁ…」


美味しい美味しいと食べてくれる、野菜の皮と臭み消しの酒だけで作った為 美味しいかといえばそこまで美味しいとはエリスは思わないが、それでも普段から不味いパンだけで生きてきたかメルクさんにとってはご馳走なんだろう


気持ちはわかる、エリスも奴隷時代の頃は腐りかけのパンしか貰えなかったからな…師匠の元で初めて口にした豆のスープは涙が出るほど美味しかった……師匠ぅ…


ダメだ!、今は落ち込んでる場合じゃない!、両頬を叩き 椅子に座る


「美味ぁ…エリス、君は普段から料理をしているのか?」


「ええ、料理だけではありませんよ 一応師匠の身の回りのことを全てやらせていただいてます」


「な なんて羨まし…じゃなかった、毎日仕事をさせるなんて 大変じゃないか?」


「こんなの屁でもありませんよ、それに普段からやっているからこういう事態に陥っても問題なく動けるんです」


毎日やっているから どんな緊急事態でも卒なく仕事ができる、積み重ねがいざという時にエリスを生かすのだ


「しかし毎日こういうことをやっているなら、問題はなさそうだな」


「え?、何がですか?」


「ほら、君を外に出ても問題ないようにするといったろう?…、君の働きに免じて奴隷から昇進してもらおうかと思ってね」


とウインクをしながらパンを齧るメルクさん、いやエリスまだ二日しか奴隷やってないんだけど というか奴隷らしいことまだ何一つとしてできてないし、こんなの拍子抜けだ…エリスの奴隷根性が不完全燃焼だ…いや別に奴隷の身分を楽しんでたわけじゃないよ?


けどこう…あの頃の無力な奴隷だったエリスと今のなんでもできる奴隷のエリスを比べて、成長を感じられて楽しかっただけで…


というか


「昇進?奴隷に上も下もないのでは?」


「や 野暮なことを言うな、ノリで言っただけだ ほら…こいつを用意してきた、飯を食い終わったらこれに着替えてきてくれ」


「これ…?この紙袋ですか」


そういえば帰ってきたときに何か紙袋を抱えていたが、なんだろうこれ 着替えると言うことは服なのだろうが、服を着ただけで外に出れるんだろうか…まぁいい ともかく中を確認する前にエリスも慌てて食事を済ませる


お肉を食べる、アルクカースのものに比べればかなり劣悪な肉質だがしかたない


パンを食べる、やはり安っぽさは抜けないが エリスは好きだ


野菜スープを飲む、少々えぐいが改善の余地はある…よし終わり!


「おいおい、せっかくのご馳走なのに…もっと味わって食べたらどうだ」


「外に出れるようになったら 明日からはもっとすごいご馳走食べさせてあげますよ」


「本当か!」


ああ本当だとも、自由に動けるようになればいくらでも食材を確保できる 食事レベルも格段に上がるだろう、その為にも外に出れるようにならないと 、紙袋を持って別の部屋へ向かう


「あ、覗かないでくださいね」


「…誰に言ってるんだ、早く着替えてこい」


ならいい、スルスルと服を脱いで紙袋の中を開ける…ってこれ、ええ…これを着るのか?、いやまぁ嫌ではないけれどさ、ど どうやって着るのが正しいんだろう、確かアジメクに居たあの人はこう言う風に…


紙袋の中に入って居たその服を少し手間取りながらも身につけていく、きっちりかっちり身につける、姿見がないので窓で身嗜みを整えて着替えていき…そして





「着替え終わりましたよ、どうでしょうか、似合って居ますか?」


扉を開けメルクさんの前に、着替え終わったその姿を晒す、それは宵闇の良いに漆黒の上着のうちから清純さを醸し出すような白が覗き見えるスーツだ、いやただのスーツじゃないな 特定の職種の人間が身につける仕事着…これを着ていれば誰もがその人間が何者か理解できるシンボル的な衣装


名前を…執事服


「おお、思った通り よく似合う、お前は歳の割に目鼻立ちが凛々しいからな、なんの違和感もないぞ」


「それはそれで複雑ですね」


チラリと振り返り、窓に映った自分の姿を見る


執事だ 、黒い服白いシャツと白い手袋、見てくれだけだが完全に執事になっている…まぁ似合ってなくはないと思う、エリスの凛々しい目つきは男装をしても違和感を感じさせない、でもエリスとしては複雑だ 男の格好をしても似合うと言うのは


「なんで…執事服なんか着させられたんですか?エリスは」


「お前もデルセクトの町並みは見たことがあるだろう、地上は使用人で溢れている、普通の格好をするより従者に変装した方が動きやすかろう、軍人である私が雇った執事 といえばある程度の身分も保証されるしな」


まぁ確かに、地上は執事やメイドが闊歩している、木を隠すなら森の中 執事を隠すなら執事の中、衆生に紛れ込むというのは大胆なようで居て一番見つかりにくい隠密法でもある


オマケに軍人であるメルクさんの使用人として動けば 普通に動くよりも活動の幅はより一層広がる


分かる、分かるさ 従者に変装するのが有効だってのは、けどさ!


「だからなんで執事何ですか、メイドじゃダメなんですか?」


「変装するなら性別ごと偽ったほうが効率的だろう、ほら 今のままではまだ不十分だ これもつけろ 頭に乗せるだけでいい」


と言いながらモサモサ黒い毛玉を渡される、何だこれ 髪の塊?…まぁいい そう思いながら頭の上に乗せれば毛玉がうぞうぞと動き…うおぉっ!?気持ち悪いぃっ!?なんだなんだ!勝手に動いてるぞこれぇ!?


「ぎゃーっ!なんですかこれぇーっ!動いてるんですけどーっ!」


「錬金術を応用して作られた魔術ウィッグ、頭に乗せれば地毛と同化し 髪色も変わる、ハゲ散らかした富豪が金にモノを言わせて作らせた代物だが 髪色を偽るのには都合がいい」


髪色?そう思ってまた窓を鏡代わりに見れば、確かに髪色が変わっている…エリスの金色の髪が毛玉同様真っ黒に染まっている、ウィッグ分の毛量も追加されているので若干髪が伸びているが、縛れば問題ないくらいだ…凄い もうエリスの原型が殆どない


「トドメに度の入ってない伊達眼鏡をかければ…よし!完全に別人だ」


銀縁のメガネをかけてピシリと背筋を伸ばせば、うん…エリスは完全に別人になれた、今のエリスを見てエリスだと気づける人はいないだろう、この格好のままラグナの前に出ても気づかれないと思う それくらい別人だ


「凄いですね、まるで別人です!」


「だろ?、この一式を一日で揃えた私の敏腕具合に驚いてくれ、私も驚いてるんだ」


「…こほん、感謝致します ご主人様、なんちゃって」


「むぐっ!、思いの外似合うなそれ!、よし!エリス!お前は今日から私の執事として振る舞うように!」


胸に手を当て深く一例する、幸いアジメクで熟練執事のハーマンさんを見ていたこともありある程度執事の所作については知識はある、とはいえまだまだ勉強不足なのでどこかで勉強しておかないと…


よし、この姿でなら外に出られる ようやくデルセクトで自由に動けるぞ


「ありがとうございます、エリスもこれで自由に活動できますね」


「ああ、明日から美味い飯を……いや、そのエリスもって一人称は変えておけ、というか 名前も出来れば偽ったほうがいいな、偽名…というかなんというか、なんかないのか?偽名」


名前も変えろというのだ、まるで犯罪者だな…だがそうだな ここまでやってエリスって名乗ってたら台無しだ、しかし名前かぁ デルセクトで活動する名前だから変な名前は嫌だし、ううーん としばらく悶々と考えていると、ふと 眼に映る


裾から覗く黄金の輝き、ラグナからもらった籠手 『宝天輪ディスコルディア』だ、…ディスコルディア うん、名前としては違和感がないな、ならこれで行くか


「なら、これからは外ではエリ…じゃなくて私はディスコルディアと名乗らせて頂きます」


「ディスコルディア?、物々しい名前だがいいんじゃないか?、素性不明の謎の麗人執事 ディスコルディアか、…むふふ なんかいいな小説みたいだ」


何がいいんだ、さては執事云々はこの人の趣味だな…まぁいいか、実際この姿は実用性も高い 不自由なく動けるならいいじゃないか


「それでは、…これからどういう風に活動するか考えましょうか、エリスもこれで自由に動けますし あとは活動方針を決めるだけですね」


外で自由に動けても、目的がなければ動けない…エリス達には『フォーマルハウト様を暴走から救う』という大願はあるがそのために何をすればいいか、なんてことは何も決まってない、どう動き 何を成し 何を目指し歩くべきか、予め決めておかねば


「その件に関してだが、実は今日 一人協力者に声をかけた、その人に話を聞いておきたい」


「協力者って ここに来るんですか?、大丈夫ですか?信用できるんですか?」


「ああ、出来る…この国には信用できる人間は殆どいないが、全くいないわけじゃない…子供だった私を一廉の軍人に育ててくれた人だ、金銭欲に塗れた汚い軍人とは違う…まぁ、別の欲に溺れてはいるが」


なんだそれ、大丈夫なのか?…もしその人がエリスの事を密告すれば、エリスもメルクさんも終わりだ、まぁそんなことメルクさんとて理解しているだろうから、本当に信頼できる人を呼んでいる筈だ…が


「出来ればそういうのは事前に相談が欲しかったです」


「あ、いやすまん…これからは気をつけるよ」


片方だけが何かを知っている状態 もしくは片方だけが何かを知らない状態というのは望ましくない、もしくはまだメルクさんの中でエリスは守るべき民間人として認識されているのかもしれない、こればかりは口で信用を勝ち取っても仕方ないので 働きを見せる必要がありそうだな


「それで、呼んだのってどういう人なんですか?」


「ああ、我が軍部でも実力だけなら有数の存在だ 国中に顔も効くし、はっきり言って最優先で味方に引き入れておきたい頼りになる人物だ…が、まぁ少々問題がある人でな…問題はあるが害はないから安心してほしい」


安心出来ない、さっきからちょくちょく安心出来ない情報が挟まってくる なんなの?その別の欲に溢れてるとか 少々問題があるとか…そう考えていると


軽いノックと共に玄関が開けられた、誰か入ってきたみたいだ…


「お、ニコラスさんが来たみたいだ」


ニコラスさん?、それがエリス達の協力者?何にせよ出迎えねば そう思いこちらから玄関に向かえば…、そう そこには立っていた、玄関先にヌルリと彼が…


「…………」


男だ、身長は高く スラリとした印象は華奢なようにも見え 服の隙間から垣間見える筋肉は確かな強さも感じさせる、着ている軍服はメルクさんと同じものだが少し着崩しており 所々素肌が垣間見えていて だらしなくも艶やかだ


黒い髪とその隙間に光る淡い赤の目…よく見れば口元には八重歯が覗き少し焼けた小麦色の肌にアクセントを加えている


…何より、そう 何よりこの男が異質であると理解できる要因は 彼があまりにも美しいという点に限るだろう


美しいんだ、イケメンとかそんなレベルじゃない…今までエリスが見てきた美形 メイナードさんやラクレスさんも顔は良かったが、この男の前ではその輝きは失せるだろう…、まさしく絶世の美貌 エリスでさえ瞳を見ただけで胸が高鳴るのを感じるほどに綺麗だ…


イケメンというより色っぽい感じだ…


「…………」


「ッ…!」


なんて男の顔に見とれていると、彼はカツカツ音を立ててこちらに歩いてくる その宝石のような瞳がエリスの顔をじっと捉えて、…目の前まで来ると ズイと腰を折りエリスと視線を合わせ顔を近づけてくる


「君が、…例のエリス?」


「え?、ああ はい」


思わず答えてしまった、ディスコルディアと名乗ると決めたばかりなのに、この人のあまりの美しさに気圧され口が勝手に喋ってしまった、あまりにかっこいい 彼の前で黙っていられる女の人はいないだろう


「フッ なるほど、…そういう」


彼はエリスの名を聞くと 何か納得したのか軽く笑うと顔を上げ、顎先に指を当て何か考えている、笑う顔もまたかっこいい


「ああ、ニコラスさん来てくれたんですね、紹介します 彼女が昼間話した孤独の魔女の弟子 エリスです、そしてエリス?この人が私の恩師…」


「自己紹介くらい自分でするって」


そう駆けつけてきたメルクさんの言葉を手で制すると、エリスの前に立ち…そして



ものっすごいにこやかな顔で微笑むとエリスの両手を取り


「アタシ ニコラス・パパラチアっていうの!よろしくねぇエリスちゃん!、噂に聞いてた通り可愛い子ねぇ!将来は美人さんかしらぁ?」


……………え?


え?今この人が喋ったの?え?、おかしい とてつもない男前からなんか凄い柔らかいなんというか…女々しい言葉が聞こえた気がしたが、…え?ごめん理解できない


「へ?…あの、ニコラスさん?」


「ハァイ?、何かしら?」


「なんですか…その、女の人みたいな喋り方」


「あら?喋り方に男らしいも女らしいもないでしょう?言いたいように言う自分らしいが一番なのよ?エリスちゃん!」


うふっ とウインクしながらそう言ってくれるニコラスさん、びっくりするくらいの正論だ…


「ああ…、その ニコラスさんのこの口調に最初は面食らうかもしれないが、すぐになれるから」


「まぁ、確かにびっくりはしますけど 、この口調が最初言っていた問題 って点ですか?」


メルクさんはニコラスさんをして少々問題があると言っていた、この独特な喋り方が問題だとするなら 何可愛いもんじゃないか


「いや、問題は別にあってな この人は男色家なんだが、かなりの節操なしでな 男と見れば抱かずにはいられない人なんだ、以前 とある王を抱いてその道に引きずり込んで妻から寝取ったことがあってな、デルセクト中を騒がせる大騒動を起こしたことがあるんだ」


とんでもない人じゃないですか、男を抱くのはいいかもしれないが 相手は選んでくれよ、挙句それで国中騒がせるんだから始末に置けない…なるほど問題とはそういう


そこでなんとなくわかった、この人の口調…女の人を寄せ付けない為にこんな口調で喋ってるんだろうな…


「アハハ、いい男がいると思ってベッドに連れ込んだら相手が王族でね?、しかも妻も子供までいてぇ?、この間男って罵られてえらいことになったの、流石のアタシも反省したわよ」


「身元も知らずに抱いたんですか」


「ついでにその息子も成人してたから抱いたわ」


「反省してないじゃないですか!」


「ふふ、だから最近はナンパは控えめにして週七で男娼に通うようにしてるの」


「もはや住んでるじゃないですか」


「イく方もイかす方も行けるわ」


「一体どこに行きたいんですか」


なんか 凄い人だな、いろんな意味で…この人がメルクさんの恩師で信用できる人なの?、まぁエリス達は男じゃないから抱かれることはないだろうけどさ、いろんな意味で信用出来ない


「安心しろエリス、この人は今でこそ末端の部隊に飛ばされてはいるが グロリアーナ総司令に次ぐ実力を持ってるとも言われた伝説の錬金術師だ」


「それってこの国で二番目に強いってことじゃないですか!」


「もう勘弁してよメルクちゃん、アタシももう若くないのよ?アーちゃんの動きにはついていけないわ」


「昔はついていけてたんですか…でもそんなに強い人なのに、末端部隊にいるんですか?」


「強い人間が偉くなれるのはアルクカースだけよ、まぁそれでもアタシも昔は少しだけ偉かったのよ?でもほら 王族を抱いたせいでその奥さんに色々と文句をつけられてね、もう崖転がり落ちるように降格降格で、別に地位になんか興味なかったからいいんだけどね?」


なるほど、でも頼りにはなりそうだ…、信用できるかはまた別の話だが…なんてエリスがニコラスさんを警戒しているとその視線を感じたのか、エリスの目を覗き見てニコリと笑い


「エリスちゃん、訳は大体メルクちゃんから聞いているわ、師匠をフォーマルハウト様から助けたいんですってね?」


「え?、あ…はい、助けたいです その為なら何でもします」


「何でも…?それは本当に 何でも?」


その時 背筋が凍る程の威圧が飛んでくる、ニコラスさんからだ 何でも…口先だけじゃ簡単だ、だがそれを口にして本当に何でもする者は少ない、だから聞いているんだ 今試されているんだ、エリスは…手を貸すに足る人間かどうか


「はい、どんなことでも…」


「…あらそう、師匠が大好きなのは分かるけれど あなたも若いんだから自分の身は大切にしなさいよ」


そういうとエリスの肩を叩き その横を通り過ぎてダイニングへと向かっていく、こっちは覚悟を決めて答えたというのに何とそっけない…


「あ あの、それで協力していただけるんですか?」


「何言ってんの?当たり前でしょ 、こんな小さな子が悲壮な覚悟決めてんだから、それを助けるのが大人の男ってもんよ、さぁ話してちょうだい?軍でも何でも喧嘩売ってあげるわ」


ニッ!と笑いながら親指を立ててくれるニコラスさん、まだ何も話していないというのに助けてくれるというのだ、なるほど メルクさんが真っ先に助けを求めに行く訳だ…


「な?エリス…この人は頼りになるし、何より信用できる 身寄りのない私を育ててくれた人でもあるんだから」


「そうなんですね、…分かりました ニコラスさん、これからよろしくお願いします」


確かにメルクさんは頼りになる味方を連れてきてくれた、この国も全部が全部敵ってわけじゃないんだ、うん なんか上手くやれる気がしてきたぞ!


…………………………………


「なるほどね、フォーマルハウト様が暴走をしていて我を失い…非道に手を染めてると、まぁ嘘とは思わないわ、最近の歴史を調べても ある時期を境にフォーマルハウト様の言動が変化しているもの、それが魔力障害によって引き起こされた人格異常だと言うなら むしろ納得できる話だわ」


エリスとメルクさんは二人でソファでくつろぐニコラスさんに今の状況と その目的を話す、魔女が暴走している なんて荒唐無稽な話信じてもらえるか不安だったが、ニコラスさんは否定もせず聞いてくれた


「それで、エリスちゃんは師匠を助けるため メルクちゃんはフォーマルハウト様に正気を取り戻してもらうため、二人で頑張ろってわけ、…メルクちゃんらしいわね」


「はい、ですが私とエリスでは何から手をつけていいかさっぱりで…」


「そうでしょうね、何せ前例がないことだもの…人間が魔女様の過ちを正すなんて有史以来一度もないこと、難しいなんてどころの騒ぎじゃないわ…いつもなら無茶なことはやめなさいって止めるところだけど、そうね…国を変えたいか…そっか メルクちゃんならいつかそう言いだすと思ってたわ」


それにこの人はそんな話を聞いても、止めるどころかエリス達の手伝いをするため本気で悩んでくれる、人がいい というより面倒見がいいのだろう 、いくら男好きとはいえ女が嫌いなわけではないみたいだな、ありがたいことだ


「ねぇ、二人とも?とりあえずのプランはあるの?」


とニコラスさんが問うてくると、するとメルクさんもまたエリスの方を見る…え?エリスに聞くの?メルクさんは完全にノープランなのか、仕方ない


「一応今考えているのは…フォーマルハウト様に何とかして魔力を大量に消費してもらい 正気を取り戻してもらってから、師匠を返してもらおうかと、結局のところ 魔力を大量に浪費すれば魔力障害は治りますし」


エリスの中にある大まかな流れを話せばメルクさんも何故か頷きながらニコラスさんの方を見る、いやニコラスさんは何も考えてないのに何でそんな自信満々なのさ


「なるほど、でも難しいんじゃない?数千年規模で蓄えられた魔力を消費しようと思えば それこそ莫大な魔力を周囲に放つことになる…そうなれば このデルセクトにどんな影響が出るか分からないし 何よりそんな魔力を使わせるのは現実的ではないわ」


たしかに、アルクトゥルス様も 師匠との戦いで魔力を大量に消費したが戦闘中に正気を取り戻すことはなかったという、つまり生半可な使用じゃダメということだ…


「そうね、エリスちゃんの師匠なら 治せるのよね?」


「はい、師匠はそう言っていました…方法は分かりませんが、師匠なら治せる それは断言できます」


エリスはアルクトゥルス様との決着を目撃しなかったので、どのようにして治したのかは知らないが、師匠は私の魔術なら治せると言っていたのを覚えている…つまり師匠は暴走を鎮める法を持つのだ


「……なら、先ずは魔女レグルスさんから助けましょうか、そしてレグルスさんにフォーマルハウト様を鎮めてもらう、これで行きましょう」


「で ですが、師匠はフォーマルハウト様によって石に変えられてしまいました、魔女の魔術を破って師匠を解放するなんてこと、エリス達には…」


「出来るわ、この国ならね」


そういうと自信満々でニコラスさんは立ち上がる、え?…師匠を助ける方法が ある?、でも魔女の魔術は絶対…それを打ち破る方法なんて…


「確かに魔術という一方面だけで魔女の力を打ち破るのは難しいわ…だけどここは産業の国デルセクト、魔術で打ち破れなくても『技術』でならいけるんじゃないかしら?」


「技術…?」


そういうとニコラスさんはメルクさんのマスケット銃を持ち出しエリスに見せつけてくる、…な 何?


「エリスちゃん アタシ達が使う魔術 錬金術って何か知ってる?」


「はい、師匠から聞いたことがあります 物質を元に別の物質に変換する魔術で、フォーマルハウト様が最も得意とする魔術体系ですよね」


師匠曰く 石を肉に 油を水に 煤を金に…様々なものを作り変える魔術だと教えてくれた、フォーマルハウト様が得意とすることからデルセクトでも錬金術が隆盛していることは容易に把握できた…何より、師匠を石に変えたのはその錬金術の力に他ならないだろう


「ええそうよ、そしてこの銃にはね?その錬金術の力を強める機構が備わっている、即ち 技術で魔術の底上げは可能なのよ」


「その銃にそんな機能が…っ!そういうことですか!」


「ええそういうこと、…つまり このデルセクトの技術を使い アタシ達の錬金術を魔女の石化を解くことが出来る段階にまで引き上げることができれば、石化の解除も夢じゃないわ、きっとね?」


なるほど!確かに魔術を強化する技術があれば!、フォーマルハウト様を正気に戻さずとも師匠の石化を解くことが出来る!、そして師匠が戻ればこっちのものだ!そのままフォーマルハウト様を元に戻せば!


「エリス待て 喜ぶのは早い…ニコラスさん?そんな凄い物、この国にあるのですか?」


「あらメルクちゃん、冷静ね?確かに少なくともそんなとんでもない代物…アタシは聞いたことがない、けど同時にそれはないとも言い切れないのよ?、それに魔女様の魔術に真っ向から対抗するんじゃなくて、魔女の石化を解くだけなら…不可能じゃないとアタシは思ってる」


「…そんなもの、我々に手に入れられるんですか?」


「大丈夫大丈夫、ちゃんとその辺も考えてあるわ…計画をねッ?」


パチクリとニコラスさんがウインクすれば、エリス達は顔を見合わせる…胡乱な話だ、確かに 石化を解除するだけなら技術を応用した魔術でも可能かもしれない、だが考えて欲しい


この場にいるのはよそ者のエリス 軍人でありながら地下で暮らすメルクリウスさん 節操なく男を食い散らかし末端まで飛ばされたニコラスさん、この三人じゃあ逆立ちしたってそんな凄い代物手に入れることが出来るとは思えない


「計画としてはフォーマルハウト様を正気に戻す為のレグルスさんを、治すための錬金機構を手に入れる為、デルセクト錬金技術局に干渉する必要がある、ただ技術局に干渉できるのは軍上層部だけ…だから 、メルクちゃん!出世なさい!技術局に干渉できるまでに!」


「出世!?私がですか!?」


「そしてエリスちゃん!、貴方はメルクちゃんが出世できるように影からサポートして迅速に出世できるように執事として暗躍なさい!」


「暗躍!?エリスがですか!?」


ニコラスさんの言葉に二人とも立ち上がり再び顔を見合わせる、メルクさんは国を変える為に出世する、そしてエリスは出世の為にメルクさんを執事として影からサポートする…で 出来るのかそんなこと


「そこッ!二人とも…やりたいことがあるんでしょう?生半可な道じゃないことはわかってるんでしょう?なんでもするんでしょう?、なら今だけは『本当にできるのか』なんて言葉は忘れなさい!、そもそも国を変えるなんて大ごとをしたいなら下っ端のままじゃ絶対に無理よメルクちゃん!」


「っ…そ それはそうですが、出世なんてそう簡単には…」


「大丈夫、大手柄あげりゃ上の連中も黙ってられないんだから、それにその辺はアタシもサポートするわ、エリスちゃんも一緒にね?」


「え?、あ…はい!やります!、ご安心を!エリスはアルクカースの王子を継承戦で勝たせて国王にした経験もあります!、メルクさんの出世や昇進くらいサポートしてみせます!」


そうだ、この国では金と権力がモノを言う なら金と権力を手に入れてやればいい、単純な話だ、地の底で這い蹲るエリス達では届かない高みに エリス達の目的があるのなら、そこまで這い上がって手にすればいいんだ、金を 権力を 栄光を…全てを!


「やりましょう!メルクさん!、エリスが…この執事ディスコルディアが貴方を必ずやデルセクトの幹部にしてみせます!」


「エリス…、ああ分かった もうゴタゴタ言うのは止すよ、そうだ…あの夜誓ったんだ もう二度と非道に屈しないと!、その非道を私達の手で断つぞ!根本から!」


決起、今ここに 二つの決意が現実味を伴い光り出す、一度エリスは罠に嵌められ 奈落の寸前まで追いやられたかもしれない、だが今 仲間が出来た 目的が出来た 道が見えた、なら後はいつもと同じだ


進む!この国のど真ん中を!魔女に続くその道を進み 必ずや目的を果たして見せる!


エリスとメルクさんは腕をがっしりと組み、誓い合う…どれだけ時間がかかるか分からないが、必ず這い上がって見せる 栄光の魔女と師匠の元まで


ようやく…エリスは動き出す、見ていてくださいね 師匠


………………………………………………………………


光射さぬ地下で、エリスとメルクが誓いを新たに立ち上がろうとしている同時刻…、豪奢な部屋の豪奢な椅子に、座り窓の外の星空に想いを馳せる男が一人


「んん、星の光ってのはいいねぇ…罪深くも欲望の光がギラギラと輝く地上と違って、澄んでいる あの空にはなんの罪も欲もない、綺麗な光だと思いやしねぇか?」


誰に言うでもなく男は一人、部屋の中 血のように赤い酒が注がれたグラスを揺らせば、

まるでその声に応えるかのように 中の氷が音を鳴らす


「それに比べて地上の輝きの下品なこと、魔女という悪辣な光が放つそれを反射し テカってるだけだ、あんなもん人間の光とは呼べねぇよ…この地上をあの星空のように輝かせるには、魔女は邪魔だよな」


なんてな と口元だけで男は笑うとテーブルに酒を置き 胸元からメモ帳を取り出すと…


「今の格言だよな、メモっとこ」


「ボス、失礼します」


メモ帳にペンを走らせる男の部屋に、ノックが響く


無粋な音だ、いつもこの音は男の幸福な時間に水を差す、しかし無視するわけにもいかないと男は返事を一つ返せば、ドアの向こうから黒い服を着た怪しげな女が一人が入ってくる


「なんだよメルカバ、今 忙しいんだけど」


「申し訳ありません、しかし計画の進捗の報告に…」


「ああはいはい、いつも通りだろう…いつも通り 万事抜かりなく進んでる、だろ?」


ボスと呼ばれた彼は 目の前に立つ黒服の女…メルカバの言葉にため息混じりに返す、報告といってもいつも同じ、万事上手く行っている その言葉を聞かされるだけだ、当たり前だろう 万事上手く行ってるんじゃなくて 行かせてんだから


「ハッ、その通りです 国内にも着々と『カエルム』が根付いております、あれと引き換えに貴族達は莫大な金をこちらに流しています」


「怖いねぇ、娯楽に飢えた富豪ってのは、いくら金と暇持て余してるかって あんな薬に手ぇ出すなんてね、俺ならぜってぇしないね」


まぁその薬を カエルムを作って売ってのは俺たちなんだけどさ、この国は金を持て余してる だが金ってのは使わなきゃただの荷物だ、その使い道を用意してやっただけでこれだ…金を得てもやることがこれじゃあ意味がないってのにな


「万事、抜かりなく…ボスのおかげです」


「やめろよ、俺だけの手柄じゃねぇ こんな夜遅くまで働いてくれてるお前ら部下のおかげさ、俺はここで一人酒飲んで 偶にちょいとこの国のお偉いさんと話すだけ、感謝してるぜブラザー」


「いえそんな…ボスの采配がなければ私達は」


「謙遜すんなよ、俺達ぁ組織だ その手柄は個人のもんじゃない みんなで頑張った成果なのさ、…今のも格言だな メモっとく」


「流石です、ボス」


今日は調子がいいな、この格言ノートも着々と埋まっていく、全部書き終えたら 世に出そう、そうしよう


男はペンを走らせながら一人思う、カエルムのおかげで金はしこたま入った、だがこれをくだらねぇことに使ってちゃこの国のバカ貴族達と同じさ…、使うならもっと有意義なことに使わねぇとな、例えば…そう 大願を成すためとか…な?


「例のアレももう完成間近です、アレさえ完成すれば…」


「油断すんな、そうやって油断したからアルクカースのジャガーノートはぶっ壊された、アレにもしこたま金と時間かけたってのによぉ、勿体無いことしてくれるぜ」


「ですがあそこを担当していたアレフとボスは違います」


「まぁな?、あのバカ 裏のフィクサー気取って最後まで姿見せねぇから失敗すんのさ、全く こんなことになるんだったらアレフなんかにゃ任せるんじゃなかったぜ」


ああ、そういやアレフのやつ死んだんだったな、あんな馬鹿でも仲間だったのに 寂しいぜ、馬鹿だったけど なんであんなに馬鹿だったのかね、いやそれ以上になんであんな馬鹿が『大いなるアルカナ』の末端に入れられてたのか…そっちの方が不思議だねぇ俺は


「ですがボスの計画の大きさには脱帽です、アジメクでオルクスを焚きつけ襲撃事件を起こし アルクカースではラクレスにジャガーノートを建造させ、そしてデルセクトでは…魔女大国三国に跨り着々と計画を進めて…今その大願を成就しようとしている」


「アジメクで活動したのは俺じゃねぇしアルクカースは事実上の失敗、褒められた点なんかねぇだろ?まぁ あっちの二つは別にどうでもいい計画だったしな、このデルセクトでの本命さえ叶えば、それでチャラさ」


アジメク襲撃事件…オルクスの奴を焚きつけ反乱を起こさせ アジメクの国力を弱らせる、オルクスが勝とうが負けようが アジメクは確実に弱る、が俺の予想に反して反乱は一日で鎮圧された


アルクカースのラクレス王子のジャガーノート建造計画、超兵器を作らせて暴れさせる計画だったが 失敗、俺の予想が正しければアルクトゥルスは関与してこない読みだったんだが、…予想が外れ 何故かあの地下施設の場所を突き止めたラグナ王子を追って現れた魔女アルクトゥルスにより計画は失敗


…このどちらにも孤独の魔女レグルスの影があった、まぁ 聞けばその魔女レグルスも今は動けねぇ状態にあるみたいだし、これで心置きなく動けるってもんだぜ


「後は 例のブツの完成と、…デルセクトの技術の結晶 究極の錬金機構と言われる、『ニグレド』と『アルベド』の奪取、これで俺たちの計画は半ば叶うことになる」


「はい、ニグレドもアルベドも… 魔女の力に匹敵する兵器と聞きますからね、それさえ手に入れれば…」


「おうよ、晴れて魔女様全員ぶっ殺す計画が叶うってわけよ…やるぜ?俺はやるぜ?」


立ち上がり くつくつ笑う、後一歩のところまで来た 機は熟し動くべき時が来た


「この俺に、大いなるアルカナ No.7…戦車のヘットについてきな?野郎ども、夢を見せてやるぜ」


クイッとテンガロンハットを指で押し上げ男は 、マレウス・マレフィカルムの大いなるアルカナが一人…戦車のヘットはニヒルに笑う、道筋は整った 後は…


進む、この国のど真ん中を…魔女に続くその道を進み 必ずや目的を果たして見せる

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