628.魔女の弟子と幕が開き、始める事
イコゲニアにて数日を過ごし、ようやくマレウスの中心部に至る為の道が開かれたエリス達。中央都市サイディリアルには後数日で到着だ。そんなある日のことだった。
「すみません、少しエトワールに帰郷してもいいでしょうか」
「え?」
ふと、ナリアさんが口を開いた。みんながリビングで寛ぎチェスをしたり読書をしたり各々の時間を楽しんでいる時のことだった。エトワールへの帰郷、それをこのタイミングで切り出されたのだ。
「魔女様曰く魔女大国へはいつでも戻って良いと言う話でしたし、少しだけいいでしょうか」
「別に構わねぇけどさ、もう少しだぜ?サイディリアル。それまでに戻ってこれるか?」
「はい、そう時間は取りません。多分一日で戻って来れるかと」
「何しに行くんだ?」
ラグナは一旦ネレイドさんとのチェスによる対局を区切り、ナリアさんの方を向いて聞く。別に大した用事でもないなら帰郷するな!って言いたいんじゃない。普通に何しに行くか気になるから聞いてるだけだろう、エリスも気になるし、いや待て?確かそろそろだったか?
「一ヶ月後にエイトソーサラーの選考会が始まるのでその準備に行きたいんです」
「エイトソーサラー……」
チラリとラグナがこちらを見る、解説を求める目だ。仕方ない…。
「エイトソーサラーとは演劇に於いて魔女の名を名乗ることを許された八人の役者の事です。彼女達は魔女の名を名乗っても魔女偽証罪に問われず活動が出来る国内最高の役者の別名です」
「なるほど、聞いたことあるな。エリスとナリアはエトワールでそれを巡って旅をしたんだっけ?」
「ええ、まぁ当時は色々あって最終選考を受けることすら出来ませんでしたが。確かにあれから五年ですね」
エイトソーサラーは五年おきに新しいエイトソーサラーを選考するための大規模なイベントを催すんだ。前回は怪盗ルナアールやレーシュ達アルカナの所為で最終選考を受けられず、嘆き姫エリスの役そのものは射止める事が出来たがエイトソーサラーにはなれなかったんだよな。
あれから五年、もう…と言うべきかようやくと言うべきかは分からないが、ナリアさんに再びエイトソーサラーに挑む為の機会がやってきたんだ。
「なので一旦エトワールに戻って取り敢えず選考会に挑む為の支度だけでも…と思いまして」
「なるほどな、分かった。頑張って来いよ、ナリア」
「ん、じゃあエリスも行きます。一応クリストキント劇団に所属していたこともあるので何かお役に立てるかもしれませんし」
「それいいですね!クンラートさん達も喜ぶと思います!」
という事でいきなりだがエリス達はエトワールに戻ることになった、とは言え今回はエイトソーサラーの選考会そのものではなくその準備だし半日もすれば戻ってこれるだろう。
半日で戻って来れる、と言って帝都に行った時はどえらい目にあったが…まぁそう何度も襲撃を受けるわけがないしな…うん、大丈夫。
エリスも久々にクンラートさんやエトワールのみんなに会いたいし、行っても大丈夫でしょう。と言うわけで。
「それでは、行ってきます」
「畏まりました、ではお昼頃になったらまた時界門を開きますね」
メグさんの力を借りてエリスとナリアさんはエトワールへと発つのであった。
…………………………………………………………
エトワール、それは僕の故郷であり芸術と美術の徒にとって楽園とされる大国。最近は興行のため世界各地を飛び回り今はマレウスを旅する身なれども心は今もエトワールを離れない。
そんな故郷へと、僕は久しく帰ることになった。マレウスも最近じゃ冬に近づき始め若干寒くなりつつあるが…それでもポルデュークの厳寒には及ばず。素肌に待針を刺すようなこの冷気は僕に懐かしさを覚えさせるに十分だった。
「帰ってきました!王都アルシャラ!」
「懐かしいですね、ここはいつ来ても綺麗です」
メグさんの助けを借りて僕とエリスさんが飛んだのはエトワールの中央都市『王都アルシャラ』。家屋の一つ一つ、通りの一つ一つ、全て計算されて作られた芸術の街。その中央広場に開かれた時界門を括って僕達は街中に降り立った。
その瞬間吹いた一陣の風に、僕は身を縮こまらせる。
「うぅーん、寒い。いい寒さだ、帰ってきたって感じがするなぁ」
空を見ればまるで小麦粉のような細かい雪がフラフラと降っている。どうやら今日は雪のようだ。この寒さはマレウスでは絶対に体感出来ないレベルの寒さ。
ポルデュークは何処へ行っても寒い寒冷地帯だ。だからカストリアの人達は僕達ポルデューク人を『寒さに強い人種』として見ている。まぁ事実である部分も多いが、だがその認識は少しだけ間違っているとも言える。
「やっぱり上着が必要ですね」
僕はモコモコの上着を着込んで寒さから身を守る。ポルデューク人は寒さに強い、だが同時に寒さの恐ろしさを何よりも知る。強いからって言って無視していいわけがないんだ、人間というのは少し冷えただけでも死んでしまうのだから。
「エリスさんも上着持ってきましたか?」
ふと、同行者たるエリスさんに目を向けると、彼女は一向に上着を着る気配がない。このままでは死んでしまう…だが。
「いえ、必要ありません」
「あ…!」
そう呟いた彼女の口からは、白い息が出ていない。それは彼女の周辺の温度が安定しており吐息が結露していない事の証拠。つまり今のエリスさんは…。
「防壁による断熱…!習得していたんですか?」
「ええ、まぁ」
防壁をミルフィーユのように重ね空気の断層を作る事で熱を逃さない法。魔女様達やある一定の実力に至った者は魔法により周辺環境の影響を受けないとは言うが…まさかエリスさんもそれを会得していたとは。
「以前師匠と来た時、師匠もこうやってポルデュークの寒さを凌いでいました。当時はそんな事出来るかー!って思いましたけど、どうやらエリスはその領域まで来てしまったようです」
「流石ですエリスさん」
エリスさんはポケットに手を突っ込みながらポルデュークには似つかわしくないコート姿で浅く笑う。僕だってまだそこまで出来ないのに、流石はエリスさんだ。
「歩きながら話しますか、クリストキント劇団の場所は変わってませんか?」
「はい、以前と同じです」
「なるほど、じゃあ行きますか」
エリスさんにとっては五年ぶりのエトワール、だと言うのに足取りに迷いはなくつい昨日までエトワールに居たくらいの感覚でクリストキント劇団を目指して歩き出す。今もクリストキント劇団の場所を覚えているんだ。エリスさんにとっては当たり前のことかもしれないけれど…やっぱり凄いよな、この記憶力は。
「防壁の腕も格段に上がってますね、エリスさん」
「トラヴィスさんの指導もありますが、やっぱり一番はアイツと戦ったからでしょうか」
「アイツ?」
「カルウェナンです、アイツはトラヴィスさんさえ褒め称える程の魔法の腕を持ってましたからね。敵ながら本当にいいお手本でした」
カルウェナン…っていうと、メサイア・アルカンシエルの第一幹部か。ラグナさんメグさんメルクさんエリスさんの四人がかりでなんとか倒せたって言う人だ。なんでも魔術や覚醒に頼らず身体能力と魔法のみで戦う達人らしくラグナさんをしてもう一回やったら勝てるかわからないと言わしめる強敵。
そんな強敵から、魔法を学んだと言うのか。
「マレウスでの旅でエリスは学びました、この世に於いて強いと言われる者は皆魔法を極めています。そして魔法を極めた者には弱点らしい弱点もなく…ストレートに強い。エリスはそう言う強さを目指していきたいんです」
「なるほど…僕もイシュキミリさんから色々魔法は教えてもらえましたが、正直これで戦える自信はありません」
「まぁ、エリス達魔女の弟子はそれぞれ得意とする分野が違いますしね。同じくカルウェナンと戦ったメルクさんはそこまでカルウェナンから学んでいないようですし、エリス以上にカルウェナンから学んだ人もいます」
「え?誰ですか?」
「ラグナですよ、エリス達の前では見せてませんが…彼、カルウェナンから色々着想を得たみたいですよ。そのうち自慢げに披露してくれるんじゃないでしょうか」
ラグナさんが…全然気が付かなかった。うーん、僕も強くなれたけどやっぱりまだまだだなぁ、ラグナさんやエリスさんはドンドン強くなっていく。デティさんも魔力覚醒を使い出してからは二人に匹敵するか、或いは上回るレベルの実力を見せているし…。
(イシュキミリさん……)
僕は今、コーチだけじゃなくてイシュキミリさんの教えも背負っているんだ。簡単に諦められないよ…もっと強くならなきゃ。
「ん、そろそろじゃないですか?」
「え?…あ!」
ふと、大通りを横に曲がり見えてくるのはクリストキント劇団の入り口だ。稼げるようになってからは改装して随分見た目の良くなった劇場の入り口、そこから出てくるのは…。
「クンラートさん!」
「ん?ナリアか!?」
出てきたのは、最近髭を生やしますます悪人ヅラに磨きがかかった我等がクリストキント劇団の団長クンラート・ボスさんだ。それが玄関口の清掃の為に道具を持って出てきたところに僕達は偶然出会したんだ。
「お前どうしたんだよ、マレウスにいるんじゃなかったのか?」
「エイト・ソーサラーの選考会が近いので、準備の為に戻ってきたんです。クンラートさんは今日も玄関の掃除ですか?」
「まぁな、劇場の玄関はただの玄関じゃない。夢想の世界への入り口なんだ、そこが汚くちゃ没入感も出ないからなぁ」
相変わらず悪人ヅラには見合わない真面目さだ。この人から多くを学び、クンラートさんならきっとこうするとこの人に倣い生きてきた結果僕は『ナリアさんは優しいね』と言う評価を得るに至っている。僕にとって役者としての、そして人としての先生のような人だ。
「ところで、そっちにいるのは…」
チラリとクンラートさんが見遣るのはエリスさんだ、あれからエリスさんも大きく凛々しくなったし…一目じゃ分からないか…。
「お久しぶりです、クンラートさん」
「まさか…エリスか?」
「え?分かるんですか?」
「そりゃお前…まぁな」
そこではたと理解する。そうか、クンラートさんには分かるんだ…だってこの人は、エリスさんのお母さんであるハーメアさんを知っているから。成長し大人になったエリスさんはさぞハーメアさんに似ているだろう。
「いやぁ久し振りだなエリスちゃん、いやエリスさんか。大人になったなぁ」
「言う程身長は伸びてないですよ」
「雰囲気の話さ、あれから旅も続けてるんだってな。色々旅の話を聞かせて欲しい、立ち話もなんだから劇場に入りな」
「ありがとうございます」
「あれからクリストキントもデカくなったんだ、元劇団員として色々見てやって欲しい。ナリアも久々の劇団だろ?くつろいでいけ」
「はい、クンラートさん」
そうして僕達は劇場の扉を開き、中に入る。エリスさんからすれば五年ぶりのクリストキント劇場…きっと変化に驚くことだろう。なんせ。
『そこーっ!やる気がないならレッスンに参加する必要ないよー!』
『す、すみません!』
『購買の商品が切れそう!?担当は何してたの!?』
『掃除用具持ってきましたー!』
「なんか、やたら騒がしいですね。と言うか…クリストキント劇団ってこんなにたくさん人がいましたっけ」
今日もクリストキントは大騒ぎだ。劇団員は厳しいレッスンに励み、毎日大盛況な購買はいつものように売り切れ続出。人が多く来るから掃除も大変、それを劇団員全員で賄うんだ。
そして、こんなに人がいましたか?と聞くエリスさん。やはり彼女の記憶力は素晴らしい。
「ああ、エリスさんがいた頃はまだまだだったが…あれからナリアが国内最高の役者の一人になったおかげでクリストキントも知名度大爆発。各地から入団希望者がやってきてな、あれから劇団員の数は三倍近くに膨れ上がったよ」
「そんなにですか?それは凄いですね。それでもやっていけてると言うことは…」
「勿論、ウチの売上は以前じゃ考えられないくらい大きくなったよ。昔の貧乏暮らしを忘れそうになる」
以前は食うのにも困って路上で劇をしたり、劇以外の清掃もやったり、色々やった。けど今や演劇一本でやっていけるようになったし蓄えも出来るようになった。全て僕のおかげ!と言うわけではないがやはり僕が悲劇の嘆き姫エリスの主演を出来るようになったおかげで名前が売れた感が凄い。
すると、劇団員に指導を行なっている一人の女性が僕達が玄関を開けて入ってきたのを見て、劇場の方から走ってくる。
「あ、クンラートさん。玄関の掃除終わりましたか?…って、ああ!ナリアさん!帰ってきたんですか!?」
彼女は綺麗な桃色の髪を揺らしまだまだ小さな背を必死に動かしこちらに走ってくる。どうやら僕が帰ってきたのが意外らしく、まぁと口を開けている。
「この子は…」
「あれ?そっちの金髪の人は…」
目が合う、桃色髪の女性とエリスさんの目が、そして桃色の彼女はエリスさんのコートを見てハッと顔色を変え。
「もしかしてエリスさん!キャーッ!会いたかった〜!」
「おっと、もしかしてユリアちゃんですか?」
「そうそう覚えてた!?っていうかエリスさん益々かっこよくなってる〜!流石私のヒーローっ!」
そう、彼女こそユリア・フェルメール…かつてマルフレッドさんに誘拐され監禁されていた少女だ。マルフレッドさんにより軟禁されている所をエリスさんが助けて以来このクリストキント劇団の一員として働いているんだ。
昔はまだまだ小さな子供だったけど、この五年で役者としての才能が開花。今やクリストキント名物とも言える天才子役役者として活躍しているんだ。
「もしかしてユリアちゃん、劇団員として働いているんですか?」
「そう、まだ小さいから子供役が多いけど!いつかエリスさんみたいなイケメン俳優として売るのが目標なの!」
「イケメンって…そうだ、ユリアちゃんがいるって事はお姉さんは…」
『エリス!?エリスがいるの!?エリスーーーっ!』
「ぎゃぶっ!?」
そして、もう一度飛んできた衝撃は控え室の扉をぶち開けてすっ飛んできた。それもまたユリアちゃんと同じ桃色の髪をたなびかせ、エリスさんに向けて弓矢のように飛んできて全身からダイブ、思わずエリスさんもぶっ飛んだ。
「っなんですか!?って!コルネリアさん!」
「ああ!覚えていてくれたのね!感激!」
そう、彼女こそ僕のいない間クリストキント劇団を支えてくれている人気No.1女優コルネリア・フェルメール。かつてマルフレッドさんのイオフィエル大劇団の看板女優だった物のマルフレッドさんとの確執からイオフィエルを離脱。その後妹のユリアちゃんと共にクリストキントに移籍し、それ以降僕とコルネリアさんの二枚看板でクリストキントを支えてきたんだ。
まぁ、今は僕がマレウスにいるからコルネリアさん一人で支えてるんだけどね。一応僕は国外に修行…と言うことにしてある。その修行が魔術師としての修行なのは伏せてね。
「二人とも立派になりましたね」
「この劇団は役者として私を重用してくれるからね。客寄せパンダとして使われていた頃に比べると天国のようだわ」
「私もここでお姉ちゃんと一緒に頑張ってるの!」
「そうでしたか、お二人が上手くやれているようで何よりです」
『お!エリスちゃんかい!エリスちゃんとナリアが帰ってきたのか!?』
『え!?あの伝説のコンビが!?』
『わ、私エリスさん初めて見ます!』
なんて言っている間にあれよあれよと言う間に周囲には人だかり、特にエリスさんは五年ぶりと言うこともあり五年前いた団員もこの五年で加入した団員も分け隔て無く彼女の元へやってくるんだ。
…クリストキントにとってエリスさんはまさしく救世主だよ。なんせ彼女が来てから全てが好転していった、何か問題があるとすぐにすっ飛んでいって解決してくれるし誰よりも積極的に色々考えてくれた。だからみんなこの人を今も慕っているんだ。
「皆さんお久しぶりです、お変わりないようで何よりです」
「え、エリスさん!僕最近クリストキント劇団に加入したテレッソって言います!是非エリスさんの演技を見てみたいのですが!」
「あはは、すみません。エリスはもう役者を引退したので演技はしないんです」
『えぇ〜〜…』
今注目は完全にエリスさんに移っている。丁度いい、今のうちにエリスさんにこの場を任せて僕は僕のやるべきことをやろう。
「もったいねぇよなぁ、エリスのあのルックスと性分、それと演技の腕ならまた直ぐにエトワール演劇界の頂点に立てるだろうによ…」
「クンラートさん、すみません…」
「ん?ああ、分かった。事務所に移るか」
クンラートさんの袖を引き僕はエイト・ソーサラーの選考会に備える為一旦クンラートさんを連れて劇団の事務所へとこっそり移動する。
「それで、今回は魔女レグルス役を狙うんだったか?」
「はい、そうします」
事務所に入り、二人きりの状況下で僕達は話し合う。エイト・ソーサラーにサトゥルナリアが参加することはまだ正式に公表していない。だがまぁ市場ではもう既に僕が参加するのが決定事項みたいな扱いになっている事は知っている。
ただ、問題なのが…僕が誰を狙うか、そこを注目している人が多い。
「はっきり言って今のエトワール演劇界の話題はお前がどの魔女を狙うか、それで持ちきりだよ。なんたって史上初めて男の身でエリス姫を演じ、尚且つエイト・ソーサラーにならず満場一致でエリス姫に選ばれた人間だ。もはやエイト・ソーサラー入りは確実視されてる」
「だから、僕に挑む為僕と同じ魔女を狙う人、僕と被らない為他の魔女を狙う人に分かれてると…」
「そうだ、どっちにしてもお前主導で演劇界は動いてると言っても過言じゃない。連日劇場に詰めかけてサトゥルナリアは何に参加するつもりだって聞きに来る奴らが山ほどいて大変だぜ。ここに来てもお前はいないのにな」
「あはは、ご迷惑おかけします」
僕は今、魔女文化圏おいては最大のスターと言ってもいい。或いは知名度で言えばエトワール最高の女優エフェリーネさんを上回る程。時代の演劇界は僕が担うと口にする人も多いし、僕もそのつもりでいる。
「で、お前は魔女レグルスを狙うと…確かここ十数年レグルスを担当した人間のいない空位のエイト・ソーサラーだったな」
「はい、レグルスさんを狙うつもりです」
僕はレグルスさんを狙う。理由は単純、前任者が居ないからだ。こういう打算的に聞こえるかもしれないが前任者が居ないと言うのはとても大きい。どうやったってエイト・ソーサラーは前任者有利に進む。五年間積み重ねてきたイメージというものがある上役の性質を使うんでいる前任者が連続で取る場合も多いんだ。
流石の僕も前任者を抑えて…というのは難しいかもしれない。という計算はしていない、僕がしているのは前任者のイメージに囚われることなく役のイメージを新たに開拓できるから、と言う密かな野望があるんだ。だから魔女レグルス様の座を狙う。一応弟子のエリスからも太鼓判は貰いましたからね。
「しかし…なんで前任者がいないんだっけ?なんで十数年も空位だったか…思い出せないんだよな、俺。毎年開催されてる筈なのに…今まで魔女レグルスを狙う人間がいなかったわけがないし」
「さぁ、エリスさんの前では言えませんが人気がなかったからでは?ほら、今まで姿を見せていない魔女でしたしどう言う存在か不透明でしたし」
「だが皇帝カノープスの演劇には魔女レグルスは必須だ。事実皇帝カノープスの演劇を見た記憶はある、だが…そこに魔女レグルスが居た覚えはない。どうやって進行していたんだ?」
「………」
確かに、冷静に考えるとなんか変だな。と言うかもっとおかしいのは僕はエイト・ソーサラーになれなかったがエリス姫を決める最後の投票でエイト・ソーサラー満場一致でエリス姫に選ばれた。
満場一致…八人の魔女役全員から信任をもらったはずなのに、居ないはずのレグルス役から指名されたことになっている。これはどう言うことなんだ?
……………───────まぁ考えても分からないからいいか。
「まぁそれは置いておきません?」
「そうだな、それより戦略はどうする?どう言うふうに宣伝する」
「僕が中央通りで演劇を行います、出来ればそれまでに選考会用の脚本を用意して欲しいです。演技の練習は僕の方で終わらせておくので選考会開始三日前に僕を合わせて通しで練習をしましょう。出来ればその時同時に僕が魔女レグルス役を狙っていることも公表します」
「なるほどな、他には?」
「僕はエイト・ソーサラーズになる為なら手段は選びません。今日までアド・アストラの興行の為に頑張ってきたのでアストラの力も存分に使います。試しにメルクさんに声をかけてみますね」
「メルクって…あのメルクリウス・ヒュドラルギュルムだよな。マーキュリーズ・ギルド総帥の…。そう言えば友達なんだっけか」
「はい、大切な親友です。メルクさんの力があれば資金面には事欠かないでしょうしそれなりの設備や道具もくれると思います。だから必要なのは僕達の腕だけです」
「ははは、なんか…五年前とは打って変わって頼もしいな」
そりゃそうだ、五年前からどれだけ成長したか。五年前のエイト・ソーサラーズ選考会が終わった頃は…今の僕がこうなっているだなんて想像もつかなかったよ。魔女の弟子として各国の魔女大国の王様と友達になって世界の裏側を牛耳る悪の組織と戦ってるなんてさ。人生一変しすぎだよなぁ。
む、そうだ。僕の半生を劇にするのも面白そうだな。でもそうなるとラグナさん役やメルクさん役を決める必要もあるから…うーん、責任重大かも。
「よし、では細かい部分の擦り合わせをしていきますか」
「ああ、やっていこう」
そうして僕はクンラートさんと共に選考会に挑むための下準備としてあれこれ会議を進めていく。選考会に挑むに当たって必要なのはサプライズ感…サプライズ感を大事にするにはスピードと綿密な計画が必要だ。矢継ぎ早に色々行って飽きさせない工夫が……。
「お?もうこんな時間か」
「え?あ、つい時間を忘れてしまいました」
それから、僕が次に時計を見た頃には既に三時間近い時間が経っていた。直ぐに戻るとみんなに言ったのに結構時間を使ってしまったな。何よりエリスさんを置いてこんなに長く色々話してしまうなんて。
「すみませんクンラートさん、クンラートさんも今日の演劇があるでしょうに…」
「いやいいさ、うちの看板役者が天下取るためだ。それにしても…随分アイデアが出たな」
そう言うなりクンラートさんは事務所の机いっぱいに広がった紙の束を見る。そこには僕が書き込んだ大量のプランと演劇に用いるアイデアが書き込まれていた。その数にして数百、更にここからブラッシュアップを重ねて数を削っていくつもりだが…。
「ちょっと多過ぎじゃ無いかな、いくつかボツにしたほうがいいかもな」
クンラートさんはそう言うのだ。いくらブラッシュアップにより数を削るにせよこの数は多すぎだと…。だからいくつかここにあるアイデアはボツにしたほうがいいと…そう言うんだ。
でも僕はその言葉に首を振り。
「いえ、僕の表現したい全てを捧げたいんです。エイト・ソーサラーズ選考会は世の役者にとって至上の舞台。だからこそ僕も究極の美を探求する必要があるとは思いませんか?」
「とは言えよ、ここまでしっちゃかめっちゃかになったら逆に収拾がつかないんじゃ無いのか?」
「収拾はつけます。ここにある物全てを合わせた上でバラけず纏まらせます、僕が培った物全てを表現するには…これじゃまだ足りないくらいです」
「ぅーん、だがこのプランを一つの演劇に落とし込むと一回の公演時間が洒落にならんことに…」
「任せてください、僕がなんとかしますから」
「そうか?…まぁ、任せるよ。今回の選考会に関してはお前が主役だ、お前のやりたいようにやりなさい」
「はい!また選考会前にこっちに来るのでそれまでにアイデアを纏めておきますね」
「ああ、頑張れよ」
取り敢えず纏めたアイデアを事務所に保管し、僕は一旦クンラートさんに別れを告げエリスさんとの合流を目指す。取り敢えず今回したい事は出来た、選考会に向けて色々準備を進めつつ選考会で披露する演劇の土台を作る。
ただ、いざ取り掛かってみると…無限にアイデアが出てきてしまうんだ。
「ふぅ、久々に演劇に打ち込むと…楽しいな」
扉を閉め、独り言を呟く。ここ最近は旅と闘いばかりだった、別にそれはいいのだが演劇にこうして関わり打ち込む時間というのは少なかったように思える。何より次の舞台は世界屈指のエイト・ソーサラーズ選考会…やる気が出るのも仕方ないというもの。
しかし…今回の旅で色々経験を得たからか、着想と言うか、発想というか、僕自身の中に累積していた芸術性が爆発して仕方ない。あれをやりたいこれをやりたいと言う欲がとめどなく溢れて来るんだ。
こんな感覚は初めてだ。僕は僕の美を追求する為に演劇をやっている…つまるところサトゥルナリアが求める究極の美、その形が薄らと見えている気がするんだ。
ならば実現させたい、形にしたい、世に残し人々に見てもらいたい、そう思うのが芸術家という物だ。
(うん、やっぱりあそこに書き出したアイデアだけじゃ物足りない、もっとたくさん表現しよう。多面的で一面的で…嗚呼、考え出したら止まらない)
無限に止まらない芸術性に頭を振り払いながら僕はエリスさんのいた場所に向かう…するとどうだ、さっきまでエリスさんを囲んでいた場所に誰もいない。エリスさんもいない、いや居なくて当然か。あれから三時間経ったんだ。
「あれ?エリスさんは?」
「ん?ナリアか?」
「へ?あ、ヴェンデルさん!」
すると、近くを通りかかったのは我が劇団きってのイケメン俳優。僕と同じく五年前から一緒に役者をやってるヴェンデルさんが次の公演に備えて準備をしていたところ、ばったりと出くわすのだ。
彼は僕を見るなり顔を綻ばせ。
「久しぶりだな、そうか。選考会のために戻ってきたんだな」
「はい、選考会の為の劇をクンラートさんと話し合ってました」
「そうか、どんな劇になるかは分からないが。俺も全力を出すよ」
ヴェンデルさんは昔はエリスさんに突っかかったり僕に突っかかったりと忙しい人でしたが、それも昔の話。成長して余裕を得た今は普通に付き合いやすい人になってくれたんだ。昔は子供だった、悪い意味で。僕も彼も。
「ところでエリスさん知りませんか?」
「エリス?そういえばさっき来てるって話を新入り達がしてたな。俺は忙しくて会えてないが…確か、王城の方へ向かったんじゃ無いか?なんかヘレナ様に挨拶をしておきたいって」
「ヘレナさんに?…わかりました、ちょっとそっちの方に行ってみますね」
「ああ、あ。待て、お前素顔のまま歩く気か?エトワール随一の役者が、変装してけよ」
そう言ってヴェンデルさんはスカーフとサングラスを僕に渡してくれる。そうだった、いつもの調子で歩いたら街がパニックになるところだった、危ない危ない。
僕はヴェンデルさんにお礼を言いつつ、王城を目指す。振り始めた雪はやや強くなり始め白い粉がカーテンのように外に差していた。
(雪のカーテン…これ演出に使えるかもしれないな、いやでも雪なんてエトワール人は見慣れているし、いや見慣れているからこそ試行錯誤の余地も……)
なんて王城を目指して歩いてい間も僕は溢れ出る芸術性に花を開かせ考える。あれやこれや、僕はこの旅で成長したからか出来ることも増えた。出来ることが増えたからこそ出来る演出も多くなっている。
(ああ、早くこれを表現したいな…出来ればコーチにも話を聞いて欲しかったけど、確かコーチ達は今旅に出てるんだったか。どこに行ってしまったんだろう)
なんて僕は寒さから身を守る為防壁を展開しつつ体を摩り、王城へと走る。そうして見えて来るこの国の王城…ヘレナ様の居城を目指し歩く。
「失礼します、通してもらってもいいですか?」
「む?何者だ?」
門の前に立ち、守衛の人に声をかける。すると守衛は僕を警戒して槍を向けるが…僕はチラリとサングラスとスカーフを少しだけ外し。
「すみません、関係者です」
「え?あ、サトゥルナリア・ルシエンテス!?大ファンなんです!サインしてもらってもいいでしょうか!?」
「構いませんよ、サラサラっと。通ってもいいですか?」
「大丈夫です!」
僕は向けられた槍にペンで軽くサインを書きつつ会釈をして門を潜ってエリスさんがいるという城の中を目指し駆け足で城内を目指す。
「ここに来るのも久しぶりだなぁ…」
「ん?おや、貴方はサトゥルナリアではありませんか?」
「あ、マリアニールさん」
すると、城に入ったところで今度はマリアニールさん…この国で最強と言われる国内最高戦力の女騎士、『悲劇の騎士』マリアニール・トラゴーディア・モリディアーニさんと出くわす。
淡い緑黄髪の短髪と蒼の鎧が特徴の女騎士さんだ、相変わらず今日も美しい…何より。
(うわぁ、前は分からなかったけど今なら分かる。マリアニールさん…凄い魔力だ)
昔はただ単に強いということしか分からなかったマリアニールさん。だけど今なら彼女がどれだけ強いか分かる、この人洒落にならないくらい強い。それこそジズやオウマと言った八大同盟の盟主級の人よりも、強いかもしれない。
そんな魔力を漂わせながら軽く微笑んだマリアニールさんは。
「どうやら、魔女の弟子としてかなり強くなったようですね」
「え?分かるんですか?」
「ええ、防壁を自然と展開している。魔力の運用もかなり練度が上がっている…僅かな期間でここまで強くなるとは、修行とやらはうまくいっているようだ」
「あはは、僕なんてまだまだですよ」
「そうでしょうか。ああ、そう言えば先程城内にエリスがやってきましたよ、それと『彼女』も」
「彼女?」
「案内しましょう、こちらです」
するとマリアニールさんは美しい所作で僕を城の中に誘う。にしても彼女って誰だ?僕に言うってことは僕の知り合い?でも僕の知り合いは大体クリストキントに居たしなぁ…それ以外に誰かいたかな?まさかヘレナさん?いやいや騎士のマリアニールさんが女王を彼女なんて言わないし、やってきたって言ったから違うよな。
なんて考えていると、僕は城内の中庭付近に通される…そこにいたのは。
「あ、エフェリーネさん?」
「おや、サトゥルナリア。久しぶりね」
そこにいたのは、既に還暦近いにも関わらず相変わらずの美貌を残すエトワール最高の大女優エフェリーネさんがいた。中庭近くの柱に寄りかかる姿さえもあまりに様になる。その場面一つ抜き取っても絵になるその姿を見て察する。
なるほど、彼女とはこの人か。マリアニールさんの演技の師匠、僕の両親の演技の師匠、そして同じく選考会に挑むライバルであるこの人こそやってきた彼女とやらだろう。
「お久しぶりです、エフェリーネさん」
「ええ、貴方も選考会の為に国内に戻ってきたの?」
「はい、エフェリーネさんも選考会に参加を?」
「勿論よ」
エフェリーネさんはもう既に六度連続で皇帝カノープス役を射止めている国内最高の大女優だ、六度と言うことは三十年間ずっとエイト・ソーサラーズで居続けているんだ…凄まじい話だよ。
「なるほど、通りで…彼女も来ているわけね」
「彼女?」
「エリスよ、ハーメアの面影を残す彼女がさっき城を訪ねてきたの…。それで何やら面白い催しをやると言うから、こうして観覧していたのよ」
あっちと言って指差す先には、雪の降り積もる中庭に立つエリスさんの姿があった。僕に背を向け誰かと相対している。
女王ヘレナ様にご挨拶に言ったはずじゃ…なんであんなところに立ってるんだろう。と言うか向かい合っているのは誰だ?
「んん?」
僕はエリスさんに重なる形で立つもう一人の女性に目を向ける。そして目を凝らし…その輪郭を捉えた瞬間、悟る。
そうだ、マリアニールさんの言った彼女とはエフェリーネさんじゃない。さっきも言ったがエフェリーネさんはマリアニールさんにとって芝居の師匠、その上年長者だ。そんな人物を彼女なんて失礼な呼び方をするだろうか。
つまり彼女とはエフェリーネさんではなく…今、エリスさんと向かい合う人物の事。
そう、彼女の名は─────────。
………………………………………………………………
「クレアさん!?」
「およ?」
ナリアさんの会議が長引きそうで、エリスには出来ることもなさそうだったのでついでだしヘレナさんに挨拶でもしようかなとエリスはクリストキントを離れつつ王城のへと向かった。
守衛の人にアド・アストラの星章を見せ関係者である事を証明しつつ城内に入ると…そこには意外な人物がいた。それこそが…クレアさんだ。
「え?なんでクレアさんがいるんですか」
「そりゃこっちのセリフよ、エリスちゃん今マレウスに居るんじゃ?」
城内の玉座の間、その前あたりの通路に立っていた後ろ姿はクレアさんの物だった。
クレア・ウィスクム…アジメク史上最強の肩書を持つ天才剣士であり師匠をして才能があると言わしめた人物。そしてエリスが魔女の弟子になってから一番最初に知り合った人であり…ある意味デティ以上に古い友人。…そうですね、エリスの姉貴分と言ってもいい人かもしれません。
そんな人がエトワールにいたんだ。アジメクのクレアさんがエトワールに、それが意外過ぎて思わず声をかけてしまった。
「エリスは友人の付き合いでここに来てたんですよ」
「付き合いって…ああ、魔女の弟子の中には転移魔術を使える子も居たわね。なるほどぉ便利〜」
「それよりクレアさん、大丈夫なんですか?」
「ん?何が?」
「何がって…聞いた話だとバシレウスにこっぴどくやられたって…」
エリスが最後に聞いたクレアさんの情報は今はもうなくなってしまった天番島にてあのバシレウスと戦い惨敗、重傷を負いその後も惨敗のショックから立ち直れていないとアリナちゃんが言っていた。だからエリスはてっきり意気消沈してるものと思ったのだが…見たところそんな様子もない。
と、思ったらバシレウスの名前を出した瞬間クレアさんの表情が険しくなり。
「ああ、バシレウスね。ええ、こっ酷くやられましたよそりゃあもう。けど同時に世の中にゃあまだまだ強い奴が居るとも思い知らされた…。だから私今お休み頂いて世界各地を巡って修行の旅をしてるの」
「修行の旅?」
「と言っても、エリスちゃんみたいに馬車を使ってではなくて転移魔力機構で各地の魔女大国に行って…魔女最高戦力と手合わせをしてる。つまりここに来たのは…アレが目的よ」
アレ…と言ってクレアさんが顎でクイっと指した先にいたのは。
「あ…ははは、困りましたね」
「マリアニールさん…もしかしてマリアニールさんと手合わせを?」
「そう!なのに受けてくれないの!」
クレアさんが口のをへの字に歪めながら見遣る先にいるのはこれまたエトワールの最高戦力マリアニールさんだ。タリアテッレさんに肉薄する剣の腕を持ち力を制限していたとは言えルナアール状態のプロキオン様を傷一つ受ける事なく難なく撃破してしまう達人…。
彼女と手合わせをする為に態々エトワールまで来ていたのか。だが…マリアニールさんは乗り気ではないようだ。まあこの人はあんまり好戦的なタイプじゃないしな。
「受けてくれないって、私は私で仕事があるんですよクレア殿。選考会も近いから陛下も私も多忙なんです」
「大丈夫、ワンパンで終わらせるから」
「あはは、だから…貴方と私じゃそれでは終わらないでしょうと言ってるんです。貴方とやれば長期戦になる、だから挑戦は受けません」
「そんなぁ…」
なるほど、確かに選考会の時はヘレナさんも忙しそうにしてたしヘレナさんを守るマリアニールさんもまた忙しそうにしていた。そんな時にクレアさんとタイマンなんか出来ないよな、やれば確実に時間を食うし、終わった後も仕事があるんじゃあなぁ……。
……あ、そうだ。
「なら、クレアさん。エリスと戦りませんか?」
「エリスちゃんと?」
「はい、どうでしょうか。不足ですか?」
エリスが代わりにクレアさんと戦う。それはクレアさんの為でもマリアニールさんの為でもない。エリスがやりたいからだ。
と言うのもエリス、まだ一度としてクレアさんに勝った事がない。明確に彼女を上回った瞬間というのが一度もない。それってなんか悔しくないですか?エリスの方が強いと断言はしませんが…いつまでも負けっぱなしってのは悔しいです。
だから、リベンジさせてくださいよとエリスは伝えると…クレアさんはジロジロエリスを見て。
「……手加減は出来ないよ、エリスちゃん」
「構いません。寧ろ…エリスが勝ったら名乗ってもいいですよね。エリスがアジメクの最高戦力だって」
「…面白い、いいよ」
その瞬間クレアさんの身から溢れる魔力と威圧が荒れ狂う。まるで突風のように吹き荒ぶ鬼神の如き圧を受け流しながらエリスも拳を握る。流石クレアさんだ、前よりもずっとずっと強くなってる。魔女大国最高戦力に相応しい段階の強さだ。
…相手には申し分ない。寧ろ…いい経験が出来そうだ。
「じゃあ…」
「はい、行きますよ…!」
「いやここでやらないでください!?エリス…私の代わりに戦ってくれるのは非常に嬉しいですが城内はダメです!中庭に行ってください!」
と、言う事でエリスはクレアさんと手合わせをすることになった。エリスの姉貴分にしてアジメク最強の使い手であるクレアさんとだ…。
ゾクゾクしてきた。以前はまだまだ子供だったけど…今はもう違うって所を見せてやる。