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孤独の魔女と独りの少女【書籍版!8月29日発売中!】  作者: 徒然ナルモ
十八章 ナリア・ザ・ハード 〜サイディリアルより愛をこめて〜
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626.魔女の弟子と不滅の友情


「ここだな、デティ」


「うん、この屋敷……」


突如魔女の弟子達を襲った記憶消しのポーションによる記憶喪失事件、既にエリスもメグもネレイドもやられた俺達のことを忘れちまった。そして恐らく記憶を消されているであろうラグナとメルクを探す為デティの魔力探知で…やってきたのは街で一番の大御屋敷。


なんというか…これは。


「覚悟した方がいいかもよ、アマルト」


「だよなぁ……」


俺達は危惧していた、記憶を失ったラグナ達が先に敵に確保され…ありもしないことを吹き込まれ敵対してしまう事態を。だってもし俺達の事を敵だって教えられたら記憶を失ったラグナ達はそれを疑うことすらできないんだ。


だから早めにラグナ達を確保したかったんだが…、デティ曰くラグナ達はこの館の中にいるそうだ。これはまず間違いなく敵に先に確保されてしまったと見ていいだろう。


敵対…してるのかなぁ、いやだなぁ…ラグナ達と戦いたくねぇな。


「こうなっちゃった以上仕方ないよアマルト。こうなったら敵の記憶消しのポーションを確保して中和剤を作るしかない…」


「だな、もしここが敵のアジトなら…記憶消しもあるだろうしな。…はぁ〜…やるか」


コキコキと肩の関節を鳴らしながら俺は一歩、屋敷の敷地に踏み込む。チラリと視線だけ動かし玄関口に目を向ければそこにはやっぱりデナリウス商会の硬貨マーク。なんだってデナリウス商会がこんなことしてるんだ?なんで俺達を狙うんだ?何が狙いなんだ。


その辺も含めて、全部とっちめるなら…正面から行って捕まえるしかねぇよ、敵の首魁を。


「ん、鍵が空いている…」


ふと、ドアノブに手をかければ…玄関があっさりと開く、不用心…というより、俺達がここに来ることを想定してるのか?


音を立てて扉をゆっくり開ければ、中は灯りのない真っ暗闇…健全な生活してるようには見えないな。


「お邪魔しまーす…って誰もいねぇよ、本当にここにラグナ達がいるのか?」


「うん、魔力はこの中から感じるよ…気をつけて、アマルト」


「おう、………待てよ?」


扉を開けて中に入ってからふと気がつく。これデナリウス商会が全くの無関係だったら、この屋敷が全くの無関係だったら、俺達普通に不法侵入じゃん。もっと調べてからの方が良かったか?例えば他のデナリウス商会の人間を捕まえてそれからでも……。


「キャーーーーー!!!」


「うぉっ!?」


その瞬間響いた悲鳴、まずったと直感で悟る。もしこの屋敷の人間が完全に無関係で…ラグナ達がただここに立ち寄っているだけなのだとしたら、強行侵入は早まり過ぎたと。俺は慌てて悲鳴の出所を探す、取り敢えず謝罪してから一旦外に出よう…。


そう俺は悲鳴をあげた張本人を探すと、そいつは部屋の奥にいた。紫髪のつり眼鏡の女…そいつがこっちを見て指差している。あれか!


「あ、あのー!俺達怪しいもんじゃなくてですね!いやぁここに友達がいるかなって探しに来ただけで……」


「こいつらです!ラグナさん達の記憶を奪った犯人は!」


「……は?」


取り繕おうとする間もなく、女は俺を指差してそう言うんだ…『ラグナの記憶を奪った犯人だ』と。こいつなんでラグナの名前知ってるんだ、なんでラグナの記憶が奪われていることを知ってるんだ、いやそもそもなんでそれが俺のせいになって…。


「……こいつか」


「聞いていた特徴に一致するな」


「ッ……ああクソ、予想的中かよ」


どうやら取り繕う必要はなかったようで、女の言葉に従うように部屋の奥から現れたのは…さっきまで友達だった奴ら。ラグナとメルクリウスが…女を守るように現れて、立ち塞がる。


二人の目は、敵意に満ちている。俺のことが分からない…と言った様子は今日何度も見たから聞かずとも分かる。やはりラグナ達も記憶を消されている…そして今度は最悪なことに。


「彼等が例の極悪非道の犯罪者です!助けてくださいラグナさんメルクリウスさん!」


「ああ、アサリオンさんは後ろに隠れてろよ」


「ええ、よろしくお願いしますよ…二人とも」


…完全に敵対してる。アサリオンと呼ばれた女は俺達を見るなりニタリと笑いラグナ達に向けありもしないことを言いふらし…嗾ける。やはり俺の予想は正しかったようで、ラグナ達の記憶を消したのはデナリウス商会、そして奴らは記憶を失った仲間を使って同士討ちをさせるつもりだったんだ。


やってくれたよなぁ、クソがぁ……!


「ラグナ!メルクリウス!違う!そいつの言ってることは嘘だ!」


「何?我々のことを知っているのか?」


「惑わされないでくださいメルクリウスさん!行ったでしょ?彼等は記憶を失った貴方達に嘘を吹き込んで仲間にしようとしてるんです!」


「ああ、そうだったな…」


「テメェカスゴルァボケオイッ!デタラメ吐かしてんじゃねぇぞドクソアマァッ!」


「アマルト口悪すぎー!」


ダメだ、ラグナ達完全に騙されてやがる…がしかし、騙されていることを証明する物も何もない、やっぱこうなるよな!…だが。


「テメェ!アサリオンとか言ったな!テメェデナリウス商会の人間だろッ!テメェ俺の仲間の記憶奪って何がしてぇんだ!ただの商会風情がッ!」


「さぁて、なんのことでしょうか…それよりささ、ラグナさん…メルクリウスさん」


「ああ…彼の言っている事もやや気になるが、今は藁にも縋る思いだ。まずは彼等を倒してからにしよう」


「だな、よーし…メルクリウスさんは退いてな。俺一人で片付けてやるぜ」


「はぁ、そう言う紳士的なのはいらないと…言ったはずだッ!」


「うッ!?」


向かってくる、ラグナとメルクリウスが向かってくる。敵意と魔力を溢れさせ…俺に。いつもの組手とは違う、本気の攻撃…くそッ!分かってても精神的に来るぜ!これ!


「思い出せよラグナ!メルク!あんな奴の言いなりになってるんじゃねぇよ!」


「むっ!」


「避けたか…!」


突っ込んできた二人の攻撃を跳躍で回避しつつ叫ぶ。けど…。


「逃さん!羽ばたく斜陽 飛び交う炎熱、意思を持つ火炎 敵を穿つ焔火、黒羽は今炎光滾らせ迸る、焼き付けせ 穿ち抜け、我が敵を撃滅せよ『錬成・乱鴉八咫御明灯』!」


「やめろ!メルクッ!…ぐぅっ!?」


届かない、俺の言葉は…。メルクリウスが跳躍した俺に向け炎の鳥を銃口から放てば、そもそも防御する余裕すらなく俺は吹き飛ばされ…。


「ぐっ!熱ッ…」


「…なんだ?抵抗しないのか?」


「動きから見て相当な達人に見えるんだが…拍子抜けだな、ほら…腰に差してる短剣は飾りかよ、抜けよそれを」


「ックソがァッ!!斬れるわけねぇだろうがッ!ダチをッ!!」


抵抗?するわけねぇだろ!俺はこいつらのダチなんだ…いくらこいつらが忘れても俺は忘れねぇ!斬れるわけがない、攻撃出来るわけがない…呼びかけることしか、俺には…。


そんな俺の姿を見たアサリオンはやや戦慄しながら親指を噛み…。


「アイツ…まさか記憶を失ってないのか?なんでだ、報告ではキチンと…」


「ん?どうした?アサリオン殿」


「あ、いえ…なんでも…、それより早くやっけないと増援が来てしまいます!」


「ふむ、それもそうか…暫く眠っていてもらうぞ」


「ッ……」


向けられる銃口…、満ちる敵意。どうする…こうなることはわかっていたがぶっちゃけ対抗策とかは全く考えていない。頭に血が上りすぎていたか…エリスの事悪く言えねぇ。けどこのままじゃ…俺は。


「ではな…」


「ッ待てよ、メルクリウスッ!」


そう叫ぶが、メルクリウスには届かず…その引き金に、指がかけられ……。


「『デティフローア=ガルドラボーク』ッッ!!」


「ッ!?何ッ!?ぐぅっ!?」


「うぉっ!?」


しかし、その瞬間俺の背後から飛んできた閃光が真っ直ぐに飛翔し、目の前のラグナとメルクリウスを殴り飛ばし…壁に叩きつけ粉砕する。これは…。


「何迷ってんの!アマルト!」


「デティ…お前」


そこには、全身を煌めく黄金の炎のような体に変え…魔力の化身と化したデティが立っていた。拳を振り抜き二人を殴り飛ばしたんだ…しかも魔力覚醒を使って。


「デティ!ラグナ達を殴って!お前こそ何考えてんだ!」


「体の傷なら私が治す!けどね!この一件片付いてみんなの記憶が戻った後!あんたを傷つけてしまったメルクさんがどんな顔するか!あんた分かってんの!体の傷は治せても!心の傷までは治せないんだから!」


「ッ……」


「私が二人の相手をする!あんたその間にアサリオンぶっ殺してきて!」


「……殺さねぇ、ただ報いは受けさせる!」


「ヒィッ!」


デティの言う通りだ、迷いはいらない…例え仲間を傷つけることになろうとも、仲間を守る為なら戦うんだ。ここはデティに任せる…その間に俺はアサリオンを捕まえる。


そう決意し俺は走り出し悲鳴をあげて扉を開けて屋敷の奥へ逃げるアサリオンを追う。


「ッ…やらせるか!アサリオンは!」


しかし殴り飛ばされても即座に動き出すのはラグナだ、持ち前のタフネスを活かし瞬速で起き上がると同時にアサリオンを追うアマルトの歩みを阻止する為拳を構えて飛びかかり──。


「違う!ラグナ…あんたの相手は私だよ、間違えないで…」


「っ!?俺の拳を受け止めた!?」


されどそれをさせないのがデティの役目だ、光の如き速度で移動しラグナの前に立ち塞がると同時に拳を受け止める。普段の非力な彼女では到底出来ない芸当…しかし魔力覚醒『デティフローア=ガルドラボーク』を使った彼女は、或いはラグナにさえ匹敵する膂力を持つ。


真っ向から拳を受け止め…睨みつけるデティの眼光に、ラグナは笑う。


「へぇ、お前は面白そうだな…」


「姿が変わった…魔力覚醒か?どうやら相当な手練のようだな」


「……二人とも、本気で来ていいよ…」


アサリオンを追いかけるアマルトを見送り、デティは拳を握りラグナとメルクリウスの前に立ち塞がる。少し前ならこんな場面でもきっとデティは魔力覚醒を使わなかった…だが今は違う。


仲間達のために、未来の為に、覚醒を使うことを決断したデティは…この場において全力で戦う決断をすることが出来た。それもこれも全部仲間のおかげなんだ。


「……みんなは、私を命懸けで助けてくれた。ウルサマヨリでの出来事は…私にとって生涯の恩義です。故にここで私は貴方達と戦います…何よりも友として!」


「………どうにも敵に見えないなぁ、けどなんか面白そうだ…全力でやれってんならやるぜ俺はさ」


「ふむ、…多少の疑問は残るが。そうも言ってられる状況ではないか…」


どーせここでいくら言葉を尽くそうとも真に彼等を止めることは敵わないのだ、ならばここで実力行使で黙らせる。


………………………………………………


「待てやカスゴルァボケカスゴルァオイ!」


「ひぃいぃい!!なんで貴方記憶消えてないんですか!」


「やっぱりお前がラグナ達の記憶を消した張本人か!よくもやってくれたなボケゴルァ!」


「こわいいぃいいいい!」


全力疾走、屋敷の中を慣れた足取りで走るアサリオンとそれに追従するように走り全力でチェイスを繰り広げるアマルト。既にアサリオンを守るラグナ達は遠く引き剥がされ後はアサリオン一人をなんとかするだけ…。


そしてこの場に至ってアサリオンは抵抗する素振りすら見せない…ってことはやっぱりこいつ戦えないのか!だよな!戦えたらテメェの腕っ節で挑むもんなぁ!こんな卑劣なことするってことはそれだけこいつ自身は弱いってことだ!


「膾斬りにしたるわこのカスアマァッ!」


「ひぃぃいいい!せ…戦闘員の皆さん!出番です!」


「何?戦闘員…!?」


走るながらアサリオンが叫ぶ、すると廊下の扉が次々と開き…。


「キェエエ!」


「かかったな魔女の弟子!お引き寄せられているとも知らず!」


「ッ…!武装した兵士!?」


飛び出してきたのは最新鋭の鎧に身を包み光り輝く刃を持ったなんとも豪華な兵士達だ。そこらの憲兵とか護衛とか…そんなレベルじゃねぇ!一国の正規兵レベルの武装の質だ。と言うかこいつら…。


「テメェ!マジで何者だ!ただの商人じゃねぇな!」


切り結ぶ、向かってくる兵士たちを相手に呪術で作り出した黒剣で火花を散らす剣劇を演じながら叫ぶ。


こいつらどう考えても普通の商人達じゃない。そもそも記憶消しのポーションはデティでさえ製法を知らない程やばい代物、そこに来て俺達の敵意にプラスしてこの戦力…これで私達はただの商人ですなんて言ったら俺ぁびっくりしちゃうぜ。


けど、まぁ聞いてみたが…ぶっちゃけ答えは出てるんだよな。多分こいつら…。


「フンッ!お前ら…マレウス・マレフィカルムだろ」


剣の一撃で鎧の兵士を一人吹き飛ばしつつ、廊下の奥に避難しているアサリオンを見遣る。こんな事してくる連中なんてマレウス見渡してもマレフィカルムしかありえない。魔女の弟子の俺達を始末しようとする奴らなんてな!


そしてそれを指摘されたアサリオンは…ゆっくりとこちらに視線を向けて。


「なんだ、バレていましたか…いや、気づくのが遅かったとも言えますかね」


「流石にここまで答え合わせされたらな…」


「そうですよねぇ、ハァ〜〜一人一人記憶を消して混乱しているところを操って同士討ちさせる作戦だったのですが、なぁ〜んで貴方は記憶を失ってないんですかね…」


周囲を武装した兵士達に守られ、アサリオンは調子を取り戻したのかニタニタと笑いながら両手を広げ…告白する。自らがマレウス・マレフィカルムの一員だと。


「まぁいいです、結局どの道貴方達全員を捕らえれば良いのですから」


「捕える?ここからお前…逆転できるつもりかよ。言っとくがその程度の雑魚並べたって俺には勝てねぇぜ?」


「甘いですねぇ、言ったでしょう貴方はここに誘導されたと。貴方達魔女の弟子全員で来られたらどうにもなりませんでしたが…一人くらいならなんとかなってしまうんですよ、そう…これを使えば」


その瞬間、アサリオンは廊下の壁際に立て掛けられていた巨大な額縁を蹴り上げ取り外すと…その向こうから現れた黒い水晶板に手を当て。


「『起動せよ』!」


「ッ…何を」


何かされる、そう直感で感じるよりも早く事態は一変する。アサリオンの言葉により黒い水晶板は光り輝き…蠢き出し、アサリオンの体を包み込み始めたのだ。魔術じゃない…ってことはまさか。


「魔装か!」


「然り!これぞデナリウス商会戦術兵器開発部門謹製…『魔女黒鎧・零式』!魔装の力で魔女の力を再現する為開発された魔女黒鎧のプロトタイプの量産型の廉価版の劣化型の旧式の改良型の複製品!!」


「原型ねぇだろそれ」


「うるさい!これ一つでいくらすると思ってるんだ!」


黒い水晶は液体のようにアサリオンの体に張り付きまるでボディスーツのように全身を覆い込む。メグが似たような感じの魔装を持っていた気がするが…そうか。そう言えばこいつら路傍でも自分達で開発した魔装を売っていたな。


あれは恐らく、奴らの魔道具開発部門が作り上げた戦闘型の魔道具…魔装なのだろう。確かにアサリオン自身からは相変わらず大した魔力は感じないが着込んでいるあのボディスーツから凄まじい存在感と魔力を感じる。


「さぁ皆さんお退きなさい!こいつは私がぶっ飛ばします!」


「ッ!?」


刹那、軽く足を曲げたアサリオンは一気にこちらに向けて飛んできて…、それこそ俺でも反応出来ないくらいの速度で体当たりをかましてきたのだ。あまりの威力に俺は地面を転がり廊下の端まで追いやられる。


おいおい、いきなり強くなりすぎだろ…なんだあれ。マジで魔装か?メグの持ってるやつより随分高性能だぞ!?


「ぐっ!なんだそれ!」


「フッフッフッ!魔力を用いない武装の開発練度ではチクシュルーブには劣りますが、その点我々デナリウス大商会は魔装の開発に特化しているのです。こんな事もあろうかと本部に法外な値段を支払って譲ってもらっておいてよかったですよ!」


「ッふざけんな…記憶消しのポーションと言いその魔装と言い、なんなんだよお前ら!」


明らかに一介の商会が持っていていい戦力を超えている。それどころか瑣末な組織が抱えるにはあまりにも強大すぎる技術力…まさかこいつ単体がマレフィカルムの人間じゃなくて、デナリウス商会そのものが魔女排斥組織なのか…!?


「さぁ!ボコボコにして差し上げます!」


「チッ!なめ腐るんじゃねぇ!」


向かってくるアサリオンに向け剣を振るう。服着ただけで人が強くなるかよ、見てみろアイツを…隙だらけだ。攻撃だって典型的なテレフォンパンチ、そいつを軽く潜るように回避し一気に袈裟気味に剣を斬り上げ───。


「あたっ!?」


がしかし、俺の剣はアサリオンの体に触れるなり火花を散らし弾かれる。


なんだこいつ、バカ硬い…いやこの感触。覚えがある…まさか。


「アダマンタイト!?嘘だろ…!」


「正解!と言えたなら良いのですが残念違います。これは我々デナリウス商会で独自に再現したアダマンタイト…謂わばイミテーション・アダマンタイト。新時代を切り拓く新物質!アダマンタイトの『壊れない』要素を限定的に再現するため圧力に対して急激な硬化を行うこの液体鎧は如何なる刃さえも通さない!」


デナリウス商会はレーヴァテイン遺跡群を掌握している。レーヴァテイン遺跡群には大量にアダマンタイトがあると言われているが…レナトゥスでさえその切り出しは出来なかった。ソニアだってその構成物質を分析して新たに作ることしかできなかった。


そんな代物を…デナリウス商会は再現しようって?どこまでこいつらは…。


「そして我々は作り上げるのです!史上最強の兵団!決して朽ちない体を持ち永遠に絶対の武力を行使し続ける『魔女兵団』を!」


「ぅぐっ!?」


「その為には貴方達魔女の弟子が邪魔なんですよぉ!!」


そして剣を弾かれた俺はそのままアサリオンに殴り飛ばされ地面を転がり倒れ伏す。その様を見たアサリオンは高らかに大笑いし。


「あはははっ!まさかこれほどのパワーがあるとは!プロトタイプだからと侮っていましたがこれなら私の手で魔女の弟子を全滅させられましたねぇ!」


「ぐっ…テメェ……魔女兵団を作るだと、んな事…出来るわけないだろ…」


「んふふふ、出来るんですねぇ。我々はレーヴァテイン遺跡群で見つけたのです、その手段を」


「手段……?」


血を吐き膝を突いて息を荒く吐くアマルトを見て勝ちを確信したアサリオンは片眉を上げて腕を組み。


「ええ、レーヴァテイン遺跡群…あれはかつて『碩学姫』と呼ばれた史上最高の科学者レーヴァテインが対魔女用の最終拠点として用いた要塞だったのですよ。未だ我々でさえ全容を解明出来ていないあの要塞には古代の兵器の設計図が山程眠っていました。それも魔女と戦う為の兵器のね!それを長い年月かけて解読し、我々はついに見つけたのです!」


かつて碩学姫レーヴァテインは魔女と争った存在だと聞いている。この世に残すべきは魔術か科学技術か…そんな後世の在り方を定める戦いに於いて彼女は魔女と戦い…敗北した。そうして彼女残した技術は消え失せ…もう一人のシリウスになり得た存在ごと歴史の奥深くに闇の消えた。


そんな彼女が作り上げた…対魔女兵器、魔女様達をして苦戦を強いられたと言わしめた古の強敵の技術を、こいつらは…。


「それこそが誰もが魔女になれる史上最高の魔装『ファントムシリーズ』!かつて碩学姫レーヴァテインもこれを着込み魔女と戦ったと記されたそれこそがこの魔女黒鎧!量産が間に合わずレーヴァテインは敗れたが我々は違う!我々パラベラムはレーヴァテインの意思を受け継ぎ!新たな世を作り上げるんですよ!」


「ファントムシリーズ…!?……ん?いや待て、お前今なんて言った?」


「え?」


そのファントムシリーズってのも気になるが、それよりも…なんて言った?我々…『パラベラム』?お前デナリウス商会じゃねぇの?いや、それとも…。


「パラベラムってあれだよな、八大同盟の一角…『世の見る悪夢』パラベラム。お前デナリウス商会じゃねぇのか?いや違うな、お前…もしかして、デナリウス商会の裏にパラベラムがいるんじゃねぇのか?」


「ギクッ……」


「この間戦ったイシュキミリってのも似たようなことやってたんだよ。表ヅラには世を忍ぶ姿を纏い、その裏では魔女排斥組織をやってるってぇ奴をさ…お前八大同盟の手先か!」


「ギクギク……」


これで全て合点が入った、俺達を狙うのはこいつが八大同盟の一角だから。マレウス一の大商会デナリウスの正体は…八大同盟『世の見る悪夢』パラベラム。


聞いた事がある、パラベラムってのはあれだよな。裏社会を相手に商売をする超巨大ブラックマーケットの大元締め。武器でもなんでも売る死の商人って噂の闇の商業組織にして、八大同盟。その表の顔こそがデナリウス商会ってか…そうかそうか、そう言うことか!全部繋がった!


レナトゥスが態々デナリウス商会にレーヴァテイン遺跡群を売ったのは同じマレフィカルムの人間だから!デナリウス商会がソニアに遺跡の遺産を譲ったのは同じマレフィカルムの人間だから!!


デナリウス商会が八大同盟だと分かれば全てが繋がる。そう言うことかよ…!


「ま、まずい…この事が本部に…パラベラムにバレたら私はクビ。いや賠償責任が発生するかも!ちょ…懲戒解雇になるぅ…いやいや、落ち着け。大丈夫、こいつが私達がパラベラムであることを忘れればいいんです」


そう言うなりアサリオンは自分を落ち着かせるようにブツブツ言いながら懐から取り出したのは…小さな小瓶だ。あれはなんだ!?なんて言う必要はないだろう、ここまで来ればそれが何かすぐに分かる。


「これ何かわかりますか?記憶消しのポーションですよ、それも原液。我々パラベラムはね、裏社会に通じる全ての製品を取り扱っているんです…故にこう言う違法なブツとかも普通に手に入れられちゃうんですね」


「………」


「その効き目はバッチリでしてね。貴方の記憶くらい全部全部消し去れちゃうんですねぇ!」


「くそっ!」


記憶消しのポーションをチラつかせながら寄ってくるアサリオン、それに対して膝を突くアマルトは咄嗟に剣を突き上げるが…やはり弾かれる。


「おっと無駄ですよ、幾ら模倣品とは言えアダマンタイトの模倣品、簡単には壊れませんつまり私に傷はつきません。大人しく記憶を消されてくださいよぉ…大丈夫、貴方の記憶は何一つ残しません、友達どころか自分が誰かさえ分からないようになりますから!」


ゲタゲタと笑いアマルトの剣を笑うアサリオン。もうアマルトの抵抗を抵抗として受け取る事もないだろう。絶対の力を手に入れた以上主導権は常にアサリオンにある、それこそが魔女兵団…魔女黒鎧、これを作ればデナリウス商会は…いや八大同盟パラベラムはあらゆる八大同盟すら超え、セフィラすら凌駕し、魔女大国さえ支配下に置けるだろうとアサリオンは確信する。


「あはははは!貴方達の身柄を差し出せば私はパラベラムの本部からそりゃあもう大量の報奨金が出るんです!覚えも良くなる!こんな表の販売部門でチマチマしてる人間じゃあないんですよ私は!だから私の出世の糧になりなさい魔女の弟子!」


「金……出世…それが目的かよ」


「ええ、私!戦士ではなく商人なので!お金大好きです!というわけで私の臨時収入になりなさい!」


アサリオンは確信する…確信する。勝利を…そう、勝利を確信している……だから。


負けるんだぜ?アサリオン。


「…ヘッ、そうかい。なぁアサリオンよぉ、一つ言っていいか?」


「なんですか?命乞いですか?ならどうぞ笑うので」


「…魔女兵団…だっけ?それ、上手くいかないぜきっと」


「は?バカですね、技術とは日夜進歩するもの。それにこれはプロトタイプの旧式!今はもっと凄いものが出来て────」


「魔女が強えのは、圧倒的な力を持つからでも、誰にも傷つけられないからでもねぇ…『幾千幾万の戦いを勝ってきたから強い』のさ、この意味…分かる?」


「は?……ん?」


ふと、アサリオンは自分の指先に違和感を覚え視線を向ける。アマルトの不可思議な物言いに眉を顰めつつ、違和感のある指先を見る…すると。震えている、指先が、アサリオンの意思に反してガタガタ震えるのだ。


「な、何が…」


「いい鎧持ってるなあんた、そいつ着たら身体能力が上がっておまけに攻撃も効かなくなるのか。いい鎧だ、俺なんかそんなの着たら自分を無敵だと勘違いしちまうよ…。そういう勘違いは怖えよな、だって自分を必要以上に大きく感じちまうしな…あんたは大丈夫かい?そういう勘違い、してないか?」


「ッ……か、体が動かない…」


「だろうよ、だって俺…あんたを呪ったから」


「は?」


「さっき俺がお前を斬ったあの瞬間。俺の剣を弾いていい気になってたみたいだけどさ…悪いけどそれ、本命は刺突じゃあねぇんだわ。本命は…こっち」


ピッ!とアマルトが立てるのは人差し指。そこには一文字の切り傷が刻まれ…内側から血が溢れている。血だ、血というのは呪術において重要な要素でこいつを相手に付着させる事で相手の肉体に直接魔術を叩き込む事ができる。呪術というのはそういう条件を満たしただけで防御不可能な攻撃が直接飛んでくるものなのさ。


「ところであんたの鎧は圧力に対して硬化する液体鎧らしいけど、ただ付着した血はどうなる?」


「ッ……混ざり合う」


硬化は飽くまで圧力に対してだけ。ならただ付着しただけの血は…液体のままの鎧と混ざり合う。そのことに気がついたアサリオンは顔色を変える。


「だよなぁ、よかったぁここに関しては賭けだったんだ。……俺の血は既にお前の鎧と混ざり合いお前の肉体そのものに直接付着している状態に等しい、なら後は簡単お前の肉体そのものを呪うだけ。お前は鎧を着てるだけで内側はただの人間だろ?なら楽勝だね…お前の肉体を今膨張させている、風船のようにな…そいつが内側から膨らんで圧力を生み、お前の鎧がお前の体を締めつけてんのさ」


斬りつけ弾かれると同時に指先の血をアサリオンに擦りつけ、そのまま付着した血を通じてアサリオンの体に直接呪いを叩き込んだ。かけた呪いは肥満の呪い、俺が『ここら辺でいいかな』と思うところまで体が膨らみ続けるおっそろしい呪術さ。


けどそれより恐ろしいのはこいつの体は今絶対に壊れない籠の中にいるに等しい事。このまま行けばアサリオン君は自分の肉に押し潰されて死んじゃうかもしれないね。


「う…ぐっ!?そんな事が…!?というかお前!いつの間にこんなことを…!」


「バァカ、お前な…俺が本気でお前に苦戦してると思ったかよ。こちとら…覚醒なしで覚醒者倒してんだぜ?それをたかだか斬れない鎧一つ着ただけの奴に負けますかっての。俺が苦戦してるフリをしてたのは…こいつが欲しかったからでーす」


肉に締め付けられ動けなくなったアサリオンの手からひょいと記憶消しのポーションを取り上げる。バカな奴だなこいつ、俺がマジで苦戦してると思い込みやがって…全部演技に決まってんだろ。


そりゃあ倒そうと思えばすぐに倒せたぜ、けどそれじゃ意味がない。こいつから記憶消しの在り方を聞き出さなきゃならん。けど答えてくれる風にも思えない…だから、こいつ自身から出させた。


「お前から失言を引き出せば、お前はそれをなかったことにするために絶対に記憶消しを使う…確信してたぜ。お前みたいな卑怯者は直ぐに過去を無かったことにするからな」


「ぐっ!返せ!」


「え、やだ。つーかお前商人だろ?なら売れよ」


「それは非売品だ!」


「そっか、じゃあ盗むわ、ごめんな?あと早くその鎧脱がねーと死ぬけど」


「ぅぐっっ!!」


肥満の呪いで膨らむ体。しかし圧力に反応し硬化する鎧はアサリオン自身の体が膨らんでも反応し硬くなる。このまま膨らみ続ければ膨らんだ肉が内臓を圧迫して死ぬ…ほらほら早く脱がないと。そうアマルトが囃し立てると限界を迎えたのか…。


「ぅぅう!『解除』!」


脱ぐ、脱いでしまう。形を失った液体が弾け飛びブクブクに太ったアサリオンが中から這い出てくる。余程辛かったのだろう…或いは、死を前にして怯えたか?まぁどちらにせよ…似合いの姿になったな。欲に肥えた、クソアマに相応しい姿によ。


「だから言ったろ、魔女兵団なんか無理なんだよ。強え奴ってのは…ただ力が強いだけじゃない。手前の覚悟通すために命さえ顧みない大馬鹿を!今の世じゃ強えっていうのさ!」


「っグヒ!?」


そして…逃がさない。鎧を失い無防備になったアサリオンに向け俺は拳を握る。咄嗟に逃げ出そうと走り出すアサリオンに向け飛びかかり…俺は。


「まだ返してなかったよな!俺のダチを弄んだ分を!」


「ひぃいいいいいい!?!?」


許さない、俺は許さない。俺のダチを傷つけたやつを、悲しませた奴を、踏み躙った奴を!だからここからは記憶消しを奪うとか、こいつから情報を抜くとか、そういうの関係なしの俺の私怨。私怨だからこそ…容赦なくやらせてもらう!


「『ビーストブレンド』…!『魔獣壊掌』ッ!」


全身を魔獣の体に変え叩き込む拳はアサリオンの顔面に突き刺さり…吹き飛ばす、アサリオンの背後にいた兵士ごと吹き飛ばし、拳の一撃で廊下の奥まで吹き飛ばし…壁を突き破り、ぶっ飛ばす。言ったろ、倒すだけなら訳ないってな。


「こいつはテメェのやったことへの『清算』だ、釣りはいらねぇからとっとけやクソ商人」


「ぁ…がぁ……」


変身を解除し、口元の血を拭いながら倒れ伏すアサリオンに唾を吐きかける。ったく…面倒な奴に絡まれたもんだぜ。


「だがそれも終わりだ、待ってろよデティ」


記憶消しのポーションは奪った、後はこいつを元に中和剤を作れば…。よし!戻るか!


そうして俺はクルリと踵を返して反転し来た道を戻る。今も戦っているデティの元へ…。


…………………………………………………


「『蒼拳天泣激打』ッ!」


「『不弛不撓のヴェナンダンディ』!」


衝突するは蒼の煌めきを放つ拳の連打と魔力体を押し固めた無数の拳。それが屋敷の大広間で激突し壁やら床やらが弾け飛び押し固められた大気が一気に爆裂し轟音を鳴らす。


「チッ、これにも対応してくるか…なんつー反射神経と反応速度…!」


「…………」


激突しているのはラグナとデティ、双方共に魔力覚醒を用いての戦闘へと移行しその戦いの険しさはより一層凄まじいものになっている…が。


「『動くな』」


「んなっ!?体が動かな────」


「退いていて、ラグナ」


大人の姿になり、その上で全身を魔力体へ変換し魔力の化身となったデティが腕を軽く振るうと、その瞬間数百近い拘束魔術が発動しラグナの体を縛る。そして動けなくなったラグナに向け拳を握り。


「『不壊不朽のトーリア』ッ!」


「ごはぁっ!?」


右拳に一奥近い現代付与魔術を乗せ、膨張した右腕で殴り飛ばしラグナの体を壁に叩きつけ、それを貫通させさらに向こうへと吹き飛ばす。


確かに戦いは激しいものになっているが、それは互角の戦いではない。どちらかと言うとデティが押している…ラグナとメルクリウスを相手にして、彼女は常にイニシアチブを取り続けているのだ。


「ッ…奴の覚醒、現代魔術を無限に発動させられる物か?だとしても火力がおかしすぎる」


「クソッ、おまけになんだこれ。こっちの手の内が全部バレてる…」


「ごめんね二人とも、怪我は後で治すから。君達にはこれくらいしないと止められる気しないし…本気でやるから」


デティは腕を組みながら内心胸を撫で下ろす…なんとかなりそうだと。いやなんとかなるのは分かっていた、それは自分が二人よりも明確に強いから…ではない。そもそも魔女の弟子と言う存在の強みが現状のラグナとメルクリウスにはない。


「チッ、埒が明かん…『コンセンテス・メルクリウス』!」


「こっちも!」


(二人とも、全く連携してこないな…)


ラグナとメルクリウスは強い、既に二人の実力は八大同盟の盟主級。つまり世界トップクラスの域に入っている、だがそれでも魔女の弟子と言う存在は『仲間と協力している時にこそ真価が発揮される』存在だ。


あのカルウェナンさえも追い詰めた魔女の弟子同士の連携、そこが魔女の弟子の一番の武器なのだがラグナもメルクリウスも今それを見せていない。当然だ、共にお互いのことを忘れているんだから。だから攻める時も独力で攻めてくる。


なら二人の戦い方を良く知る私の方が有利なのは当たり前だ。


「フッ!」


「な…消ッ…!?」


「こっちだよ!『炎熱属性フルバースト』!!」


「ごはぁっ!?」


速度の概念を織り交ぜ肉体を再構成したメルクリウスの速度は凄まじい。だが…全身から数百近い加速魔術を放ち一瞬にして最高速度に至ったデティはなお速い。一瞬でメルクリウスの背後に周り拳を叩き込み、まるでポップコーンのようにデティの拳が爆裂し内側から炎が爆ぜ飛びメルクリウスを吹き飛ばす。


「拳が炸裂した!?どう言う体だよお前!」


「魔力だよ、そして魔力は何にでもなる」


そんなデティに向けて突っ込んできたラグナの拳を前にデティは体を水へ変換し打撃を受け流す。そして…。


「君の戦い方は熟知してる。こっちばかりごめんね…ラグナ」


「ぐぅっ!?」


軽くラグナに手を翳し、掌から無数の爆裂する魔力弾を放ち吹き飛ばす。これがもしラグナとメルクリウスの連携だったならデティはもっと苦戦していた、いつもの調子ならデティは危なかった…だが、今は違う。


「チッ…痛てぇな…」


「流石にタフだねラグナ、今のは結構本気でやったつもりだったんだけど…」


ラグナはデティの攻撃を受けながらも即座に起き上がり、コキコキと首の関節を鳴らしながらデティを見て…。


(強えな、こんなに強い奴がまだこの世にいたのかってレベルだよ。しかもアイツ俺みたいな覚醒の強化形態を温存してやがる…。こりゃあ闇雲に戦っても意味がないか)


考察する、一旦落ち着いて考えを巡らせる…その様を見たデティもまた顔色を変え。


(まずい、ラグナが本気になり始めた。さっきまで闇雲に戦ってくれてたら良かったんだけど…早くしてよアマルト、戦いが洒落にならないレベルになったら流石に私でも抑えきれなくなるよ)


ラグナが勝ち筋を探し始めた。こうなったラグナは恐ろしい、たとえ格上だろうが史上最強だろうがどうにかこうにか戦いを決着させる方法を見つけてくる。そしてデティのそんな焦りを実現させるようにラグナが動き出し。


「……なぁアンタ名前はなんてぇの?」


「デティフローアだよ、ラグナ」


「あんまり気安く呼ばないでほしいが…デティフローアは記憶を失う前の俺を知ってるのか?」


「良くね」


「そっか、その時の俺はお前に勝てたか?」


「さぁ、本気でやってないから…なんとも。負ける気はないけどね」


「そっか、じゃあ記憶を失う前の俺にはちょっと悪いことをしちまうかもな」


「え?」


その瞬間、ラグナが体を屈め、バネのように一気にデティに向けて飛んできた。咄嗟にデティも応戦するように拳を握り…。


「何が言いたいのかな!ラグナッ!」


「ッ!」


向かってくるラグナに向けて握る拳に乗せる魔術は無数の付与魔術。これにより肉体を強化し一気に迎撃の為に拳を振るい────。


「きっと記憶を失う前の俺も、こうやってお前を攻略したはずだ…だから、先に俺がそれを取っちまって悪いことしなってさ」


「あぇっ!?」


しかし、殴った筈のデティはいつの間にか宙を舞っていた…。否、投げ飛ばされていたのだ。殴りかかったその腕をラグナが掴み、一気に足を払いデティを背負い投げの形で持ち上げ地面に叩きつけた。


「ッ!?」


「お前、さっきから近接主体で戦ってるが…それ本職じゃねぇだろ、慣れてない感がめちゃくちゃするぜ」


「ゔっ…もうバレた?」


「武闘家なめんなよ」


地面に叩きつけられた瞬間その場で転がり起き上がるデティはムッと表情を歪める。確かに自分の身体能力はラグナ並みに向上しているが…だからって殴り合いに対する経験値が少ないことに変わりはない。


デティは根っからの魔術師タイプ。近接戦になれば如何に肉体の性能があがろうとも素人臭さは抜けない。それこそこの道のプロには明確に映るだろう。


ラグナめ、まさかこの弱点を分かって黙ってたな。まさか私と模擬戦をするまで隠しておくつもりだったのか?意外に性格悪いな。いやまぁ彼ならそう言うこともするだろうな…地味に一番負けず嫌いだし。


しかし参ったな、そこを突かれると弱い。じゃあ遠距離戦に切り替えようか…と思って距離を取れば多分そこからは泥沼。魔術乱射して逃げる私をラグナが全力で追いかけ周りをぶっ壊しまくる未来しか見えない。そうなったら終わりだ。 


被害を最小限に押し留めるには…私はここでラグナと近接戦をしないといけない。まぁ…やりようはいくらでもあるからいいが。


「いいよ、やる?殴り合い…」


「上等ォ…」


ラグナは完全に頭に血が昇ってる。強敵を前に昂っているんだ…こうなったラグナは怖い、さて…どこまで通用するか。


「んじゃまぁ…『熱拳───!」


「ッ…『不折不曲の───」


瞬間、拳を握り互いに地面を踏み締め思考を敵の打破の一点に絞り、真っ向からの殴り合いへと挑みかかろうとした…その時だった。


「待て!デティ!」


「ッ!?アマルト!?おっと…!」


「あら!?」


突如として響くアマルトの声に反応し私は体を魔力に変えスルリとラグナの拳を回避し、私に避けられたことでつんのめるラグナを置き去りにして私は飛ぶ。見ればアマルトが奥の扉を蹴り上げて拳を掲げている…どうやら。


「取ってきたぞ!記憶消しのポーション!」


「有能有能有能!大好きアマルト!」


取って来たようだ、記憶消しのポーションを!アマルトは拳を掲げつつポーション瓶を握ってこちらに向けている。よしよし最高の結末になった!


「よしっ!これ使えデティ!直ぐに中和剤作れ!」


「え!?ここで!?無理だよ道具ないもん!?」


「じゃあこれ使え!いいから今直ぐ作れ!」


そう言うなりアマルトは瓶と一緒に鞄を投げ渡され、キャッチするなり鞄の中を見ると…そこには簡易調理キットが。そういえばアマルト普段からこう言う簡易的な調理セットを持ち歩いてるんだった…。


いや、まぁ…鍋と火があれば作れるけどさぁ。無茶言ってくれるよね、ポーションの中和剤を作るのってめちゃくちゃ過酷な作業なんだよ?本来なら相応の研究所で数ヶ月規模でやらなきゃいけない作業なんだから。


それをこの場で、こんな簡易的な…しかもお料理セットで作れって?…まぁ、出来るけどさ。


「分かった!直ぐ作るから待ってて!」


「何しようとしてるか分からねぇがさせるわけねぇだろ!」


「ッ……!」


しかし、鞄を開いて中和剤を作ろうとするなりラグナが突っ込んできて…。


「待て!ラグナ!」


「ッ!お前はさっきの」


…だが、それを阻止する為アマルトはデティとラグナの間に割って入る。デティがポーションを完成させるまで間、デティは戦えなくなる。アマルトだけで…ラグナを押し留めなくてはならない。


いけるのか、アマルトの事を軽んじるわけじゃないが…本気になったラグナをアマルト一人で止められるのか!?…でも。


(信じるしかない!)


ここは、アマルトに任せるしかない。


………………………………………………………


「そこを退けよ、俺はそいつを倒す」


「なに熱くなってんだよラグナ、落ち着けって…」


「気安く呼ぶなよ、俺の名を!」


立ち塞がるアマルトはラグナの名を呼びデティを守る、俺の事も忘れ戦いの熱にやられ完全に頭に血が昇ったラグナを前に…俺は思う。


こいつは普段、こんな奴じゃない。もっと色々な事を考え…いろんな可能性を模索して、努めて冷静でいるよう心がける男なんだ。だがそれが今…こうも身勝手に戦いに身を投じようとしている。


この期に及んで俺はようやく気がつく。ラグナという男が努めて冷静でいようと、いろんな考えをクレバーに模索しようとしてくれていたのは…八人の魔女の弟子の纏め役としての自覚があったからなのだと。八人の魔女の弟子の記憶を失い、一人で生きてきた事になっている今のラグナは…こんなにもアルクカース人らしいのか。


だがそうだとしても、俺はもうこれ以上お前に友達を傷つけさせるわけにゃあいかねぇんだ。


「なぁ、お前は賢い奴だよラグナ。薄々気がついてんだろ…今この場で行われている戦いに意味はないと」


「だが、アサリオンはお前を悪人だと言ったぜ…俺たちの記憶を奪った張本人だとな」


「それが嘘だと疑わないのか」


「それを言い出したら、お前が嘘をついている可能性だってあるだろ」


「可能性の話はしてねぇ疑うか疑わねぇのかって話してんだ、盲目的にアサリオンの言葉だけ信じてその先になにがあるか。見据えてないお前じゃない筈だ!」


「ッ……けど、今更引けるかよ」


ラグナは苦しそうな顔をしながらも決意に満ちた目でこちらを見据える。今更引けるかって…今更もなにもないだろ、引けるだろ全然今でも。そう思ったのだが…ラグナは倒れているメルクリウスを見て。


「俺は…恋人を傷つけられてんだろ!」


「は?恋人?エリスか?」


「エリス?誰だそれは、メルクリウスだよ。俺の恋人だ」


「は!?」


ゾゾっとなんか冷たいものが背中を駆け巡る。なんでそんなことになってんだ。メルクとラグナが恋人?有り得なさすぎて鳥肌が出ちゃったよ、え?なに?恋人なの?んなわけねぇだろ。


「なに言ってんだお前…」


「いや、アサリオンがそう言ってたし。俺は俺の女を傷つける奴は許さねぇ…」


「そう言うところは変わらんのな。…じゃあ聞くがな!ラグナ!お前実際今メルクリウスを見てなんかそう言う愛情とか湧いてくんのか!?」


「…………」


「いい加減にしろよお前、ラグナ!お前な…!」


俺はそのまま前に出て、迷うラグナの胸ぐらを掴み上げ…睨みつける。


「俺の知ってるラグナ・アルクカースって男はな!そんな半端な理由で戦わねぇし!誰かに言われた事だけを妄信的に信じていいように使われるような男でもない!」


「お前……」


「お前は誰よりもお前自身の心を信じてる、迷わないからこそ俺達はお前を信じてる。そんなお前に俺は惚れ込んで!お前をダチだと思ってる!」


「…………」


「もう一回聞くぞラグナ!お前はこの戦いをどう思ってる!お前の頭で考えろ!記憶がなくともなにも思い出せずともお前はお前だろ!ラグナ・アルクカースとして考えろ…俺とアサリオン、どっちを信じられるかを!」


「………」


ラグナは俺から目を逸らさず、ただ…黙って考える。その間に俺は倒れたメルクの方にも目を向ける。


「メルク…起きてんだろ、テメェにも言いたいことがあんだよ」


「………なんだ」


「テメェこの戦い、どっちに正義があると思ってる」


「………正義か」


「ああそうだ、お前は誰かに与えられた正義で動く女だったか?違うよな。メルクリウス・ヒュドラルギュルムは完璧に正しいわけじゃない、だが正しくあろうとする高潔な女だ…それがお前、なに情けねぇところ見せてんだよ!」


「……………」


「なにも思い出せなくても、お前がお前である以上根っこは変わらない。流されるな!自分で見定めろ!…ラグナもメルクリウスも、俺のダチなら…自分で見極めるさ」


「………そうか」


記憶を失ってもそいつはそいつだ、根本は変わらない。そして根本が変わらないなら俺もまたこいつらに対する態度は変えない。俺は友達が好きなんじゃなくてもラグナとメルクリウスが好きなんだ、好きだから友達やってんだ。だからいくら記憶を失って友達じゃなくなっても…変わらないんだよ、俺の気持ちは。


「…………」


ラグナは何かを考えるようにメルクリウスと俺を交互に見る。その目は厳しく、険しく、真実を見極めようとしているように見え────。


「アマルト!」


「ッ…デティ!?」


しかし、その時響いた声に俺は咄嗟に後ろへ視線を向ける。デティの悲鳴が聞こえたからだ…そしてそちらを見ると。


「動くな!お前!」


「ッ…アサリオン、テメェまだ動けたのか!?」


そこにはアサリオンが立ち、覚醒を解除し中和剤作成作業に取り掛かっていたデティを掴み上げ…拳銃をグリグリとその小さな頭に突きつけていたのだ。


アサリオン、まだ動けたのか。と言うか…やられた、デティを人質に取られた…いやあいつならなんとかするか?


「うっ!魔力が使えない…!」


「フッフッフッ、デナリウス商会謹製『魔封じグローブ』…お値段たったの金貨四枚。抵抗は出来ませんよ」


「ッ…魔封じか」


いやだめだ、あいつのつけている手袋…魔封じの布と同じ材質で作られている。アサリオン自身は魔力を使えないからああ言うのも身につけられるのか。参ったな…こりゃ完全に参った。


「さぁラグナさん!メルクリウスさん!私が動きを縛っているので今のうちに!」


「……………」


「なにを黙っているんですか!盟友である私を助けてくださいよ!ねぇ!」


「………アサリオン」


するとラグナは人質を取って俺を殺せと命ずるアサリオンに視線を向けると、大きく大きく息を吸い、落胆するようにため息を吐く…。


「…俺は、ここにいるアマルトの言葉を聞いて…色々考えた。あんたは俺を盟友と呼びアマルトもまた俺を友達と呼んだ、こりゃどっちかが嘘をついていて、どっちかが本当のことを言ってるんだよな…」


「なに言ってるんですか!私が本当のことを言っているんですよ!」


「……それを判断する記憶を俺は持ってない。けど記憶を失っても俺は俺のままだ。だから考えた」


そう言いながらラグナは俺の顔を見て…フッと小さく笑う。そうして俺と肩を並べ…。


「友達を守る為に前に出て戦う男と友達の後ろに隠れて友達に手を汚させるよう叫ぶ女なら、俺はきっと友達を守る男をこそ真の友達と呼ぶと思う。アサリオン、嘘を言ってるのはお前だよ」


「ッ…なにを惑わされて…!」


「私もだ…」


すると、メルクリウスもまた立ち上がり…アサリオンを睨み。


「抵抗出来ん女の子に銃を突きつけるような女を、私が友にするわけがない。信念なき暴力は…記憶があろうがなかろうが、私は肯定せん!」


「メルクリウス…ラグナ…!」


「お前を信じるぜアマルト」


まぁさ、分かってたけどさ。信じてたし、こいつらなら分かってくれるし信じてくれるってさ、分かってたけど…いざこう言われると嬉しいねぇ…本当に、俺はいい友達を持ったよ。


「さぁアサリオン!後はテメェだけだ!今デティを返したら地獄を見せるだけで済ませてやる…」


「ッ…いい気になるな!どの道動けないことに変わりはあるまい!もういい!このまま全員ここで殺してやる!者共!」


「ッ……」


すると屋敷の入り口を跳ね開け突っ込んでくるのは大量の兵士達。どうやらアサリオンはデナリウスの…いや、八大同盟パラベラムの構成員を呼んでいたようで。そいつらが二十人三十人規模で屋敷に乗り込み、手に持った銃をこちらに向けて俺達を取り囲む。


「こいつら…!」


「おっと!動いたらこの子を殺しますよ…それとも、見殺しにしますか?」


「………テメェ…」


しぶといアサリオンにいい加減腹が立ってくる。しかし今この場で動けばデティが危ない…どうするか、ラグナ達が味方についてくれたとは言え…このままじゃ。


……いや、待てよ。


「ふふふふふ!お前達を献上すれば!私は出世できるんです!もうデナリウスで馬車馬のように働くのはごめんだ!私は本部に戻る!お前達の…首を使って!」


「ッ…アマルト……」


アサリオンの絶叫が響く、デティが申し訳なさそうに目を伏せる。こんな場面…前にもあった、俺は居合わせなかったが確かにあった。デティが囚われ、そんなデティを助ける為に動いた奴がいた。


記憶を失えど、そいつはそいつ。根っこは変わらない…だと言うのなら。


……きっと来る、アイツがアイツである以上…必ずここに───。


「さぁ全員死───」


『冥王乱舞……』


「──ね…え?」


瞬間、アサリオンは目を見開き周囲を見回す。俺でも、ラグナでも、メルクリウスでもない声が…この場に響いたから。故ひ周りを見る…と、同時に。


そいつは、現れる。


「───『流彗』ッ!!」


「んなぁっ!?」


「エリスちゃん!?!?」


飛来した閃光が屋敷の壁を消滅させるが勢いで吹き飛ばし、光の矢となったそれが姿を表す。


エリス、…馬車で待機しているはずのエリスが光と共に現れ、そのまま呆気を取られるアサリオンに反応を許す間も無く神速の蹴りを見舞い───。


「エリスの友達から汚い手を退けろやッ!クソゴミがッ!!」


「ごぼはぁっ!?」


「エリスちゃん!?どうしてここに!?」


エリスだ、俺達がここにいる事も…ましてやデナリウス商会の正体さえ知らないはずのエリスが壁を突き破りアサリオンを吹き飛ばし、その手からデティを強奪し…着地する。


やはり来た、何故ここにとかどうやってここにいることが分かったとか聞きたいことは山ほどあるが、それでもエリスがここに来てくれることは…なんとなく、予想出来てた。


だってアイツは…エリスなんだぜ?友達の危機には、絶対に現れる。


「よっと、エリスだけじゃありません!」


デティをキャッチしたエリスはそのまま周囲を囲む兵士達の方を見る…すると。


「『魔術箋・久那土赫焉』ッ!!」


「ぅぎゃぁぁあああ!?!?!?」


赤い煌めきが屋敷の入り口から入り込み一気に津波の如く溢れ一気に兵士達を吹き飛ばし爆裂する。紅の如く焼き尽くす炎は敵対者の存在を許さず、悠然と歩く術者の道を開き消え失せる。


「皆さん!大丈夫ですか!」


「ナリア、お前も来たのか!」


「はいっ!と言うよりエリスさんが勝手に出て行っちゃって…」


エリスが来たってことはそりゃナリアも来るよな、来てくれるよな。お前は友達を見捨てて置けない男だから。


エリスもナリアも、友達の危機に黙ってられない奴らだ、きっと来てくれると思ってたよ。


「無事ですか、アマルトさん」


「ああ、ありがとよエリス…にしてもお前、なんでここに」


「……匂ったからです」


「匂った?」


するとエリスはデティを連れてこちらにやってくるなり、アサリオンの方を見て…。


「エリス達のいる馬車にサンドイッチ屋のおばさんが来ました」


「おばさん?……デナリウス商会か!?」


「ええ、で…そいつが差し入れとして持ってきたドリンクの匂いに、覚えがなかったんです。サンドイッチの方には覚えがあるのにドリンクの記憶だけ綺麗にない。もしかしてこのドリンクがエリスの記憶が消えたポーションじゃないかって思って軽くおばさんを絞めたんですよ」


「絞めたのかよ、確証ないのに」


「で、そいつがゲロった情報を頼りに来たのですが、どうやら来て正解だったようですね」


こいつは相変わらずメチャクチャだな。しかしエリスが機転を効かせてくれなければナリアの記憶まで消されてた可能性もあったのか…いやはや、本当に助かったぜ。


「確証はありましたよ、僕がそのおばさんと少し話した結果…おばさんが何かを隠しているのはわかりましたしね、だから僕がゴーサイン出しました」


「ナリア…まぁお前が言うなら間違いないからいいか」


「はい、ところでラグナさん達もここに来てたんですね」


「……?誰だお前は、お前も俺のこと知ってるのか?」


「ええ!?ラグナさんまで僕の事忘れてるんですか!?え!?メルクさんも!?」


「そうだった!デティ!直ぐに記憶消しの中和剤を!」


「う、うん!」


アサリオンもデナリウス商会もぶっ飛ばしたんだしもう障害はない。急いでデティに中和剤を作ってもらおう、俺的には…一刻も早くみんなに元に戻ってもらいたいしな。


そうしてデティが中和剤を作る作業に戻り…俺達は再び肩を並べる。


「……なんか不思議な感覚だな、お前らみんな俺の友達なんだろ?」


「おや?ラグナさんもエリスの事忘れてしまったんですか?」


「君もか?ふむ、どうやらアサリオンが我々の記憶を消したと言うのは本当らしい」


「うう、なんかいつものみんなが他人行儀で話してるの見ると悲しいですよ…」


「そう言うなよ、他人行儀でも…記憶がなくても、エリスはエリスだし、ラグナはラグナだ。そこは変わらねえよ」


友情とは、今までの積み重ねにより生まれる。友達とは、確かな友情がある者同士を指す。記憶がなくなった以上…友達とは呼べない状態になるのかもしれない。


だが、俺は思ったんだ…例え記憶がなくなっても、友情がなくなっても、それで今までの全てが消えるわけじゃないってことに。俺達の関係は…過去や記憶には囚われない、俺達が俺達だから友達なのさ。


「やっぱ俺、お前らの事大好きだわ」


そう呟くと…エリスもラグナもメルクリウスも、こちらを見て。


「ええ、エリスも…いい友達を持てたと確信しております」


「かもな、記憶はないけど…なんとなくそんな気がする」


「友か、その記憶がないのを…今は悲しく思うぞ」


なんていつもの調子で微笑むみんなの顔を見ていたら…なんだか痛感する。やっぱり俺はこいつらの事が好きなんだなと。そしてそう言う奴等を守る為に俺の力はあるんだと。


今後、如何なる敵が現れようが、俺が如何なる力を手に入れようが、きっと俺の戦う理由は変わらないんだろう。俺は…友達の為に戦うのだ。


「よっしゃー!中和剤出来たよ!アマルト!」


「おう、んじゃ…こんな笑えねぇ騒ぎは、とっとと終わりにしますかね」


「もっと褒めてくんない!?これ結構な偉業よ!?」


ようやく、いつものみんなに戻れそうだ。そう俺は何処か含むような笑いながら…ポケットに手を突っ込みながらデティの元へ向かうのだった。


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