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孤独の魔女と独りの少女【書籍版!8月29日発売中!】  作者: 徒然ナルモ
十七章 デティフローア=ガルドラボーク
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615.対決 第二刃『人外』のマゲイア・ワンドエース

615


「私達も、共に戦わせてほしい、ラグナ殿」


決戦の日から三日前、イシュキミリのもたらした二つの選択肢を前に頭を抱えていたラグナ達の元に現れた客人とは…マティアスであった。いやより正確に言うなれば…。


「魔術導皇が、昨晩私達を守る為に治癒魔術を行使したことは知っています…その末に攫われたことも、トラヴィス卿が亡くなられた事も知っています。だからこそ…我等ウルサマヨリ魔術師団は、マレウスの魔術師達は…悔しいのです!」


「マティアス…」


マティアスの背には、そりゃあもう凄い数の魔術師達が付き添っていた。魔術会議のために集まった魔術師達、元よりウルサマヨリに住んでいた魔術師達、総勢数千人の魔術師達が揃ってラグナ達の元へと駆けつけたのだ。


皆が皆、勇壮な顔立ちで集う。その瞳に宿る炎は怒りと決意…生半可な気持ちでここに来ている者など一人もいない。それだけの物を…彼等は味わったのだ。


それを前にラグナ達魔女の弟子は…。


「待ってくれ、トラヴィスさんが亡くなった事は状況的に分かるかもしれないが…なんでデティが拐われたことまで知っている」


「ああ、それは……」


デティが攫われた件については口外したつもりはない、細かな事だが自分達はつい先日こう言う情報漏洩で痛い目を見た、なんで知っているのか…そこを明らかにしてほしいとラグナが問いかけるとマティアスが答える…前に。


「それは、私が声をかけたからですよ」


そいつが、前に出る。それは恐らく…今回の一件で最もショックと強い怒りを持っているであろう人物、そう…そうだよ。


「アンブロシウスさん…あんたが」


アンブロシウスさんだ、姿が見えないと思っていたトラヴィスさんの従者である彼がマティアスさんの隣に立ち、静かに頷く。


「旦那様は、最後に私に命令を残しました…この街を頼むと。この街とは即ち魔術師の繁栄、マレウスに留まらず世界に安寧をもたらす技術の種たるウルサマヨリを守るよう…私に命令を残しました。私は旦那様の命を守ることが出来なかった、だからせめて…この命令だけは守りたいのです」


「アンブロシウスさんは今朝から街中を駆け回り、我々魔術師に事のあらましを教えてくれたんだ。今朝からラグナ殿達が動いているのを知って、デティフローア様が攫われた事を悟り…共に戦ってくれと」


「……なるほど」


そう言う事だったのか、姿が見えなかったのは…悲しみも、怒りも、全部飲み込んでトラヴィスさんの最後の命令を、いや頼みを実現する為に…人を集めていたから。そしてデティの治癒の光を見ていたマティアス達もそれに呼応して。


今ここに、マレウス中の優秀な魔術師達が集まった…。


「国境で考えるなら、デティフローア様は他国…それも魔女大国の人間だ。それでもあの方が我々にもたらした恩恵は大きく、何よりあの方は我々を非魔女国家の人間と蔑まなかった、だから我々も今は国の事を忘れ、ただ一人の魔術師としてデティフローア様をお助けしたいのです!」


『魔術導皇の叡智が失われるのは魔術界の損失だ!消え失せれば…魔術が停滞する。救える命が救えなくなる』


『あの神々しい光に私達は救われた!魔術の本懐は人を救うことにあると思い出させてくれた!』


『だから我々も人を助ける為に!!この叡智を使いたい!』


「お前ら………そうか」


ラグナは一人腕を組み、誇らしい気持ちを必死に抑える。デティ…お前が懸命に、そして必死に、導皇としての務めを果たしたからこそ…凡ゆる魔術師がお前の味方をしようとしているぞ。


ここに集った数千人の魔術師の大軍勢は、お前の治世の集大成さ。誇らしいだろ、友達として。


「ラグナ殿!デティフローア様を助けに行くのでしょう!我々もお供させてください!僅かながらでも戦力になる筈です!」


「いや、悪いが相手はそんな生優しい連中じゃねぇ。数を揃えてもあんまり意味はないかもしれない」


「そんな……」


「でも、代わりに頼みたいことがあるんだ…」


マティアス達は魔術師として一流だろう、だがカルウェナンやマゲイアと言った怪物と戦わせられるかと言えば戦わせられない。こいつらは魔術師であって兵士じゃない、戦場での殉職は求められない。


なら何を頼むか、それは最初から決めてある。何よりこれから頼みに行こうと思っていたところなんだ…。それは勿論。


「こいつの中和剤を作ってほしい」


「これは…?」


「嘆きの慈雨、メサイア・アルカンシエルが持つ最悪の兵器、ヴレグメノスの悲劇を巻き起こしたポーションだ」


「ッ!これが!?」


そう、中和剤の製作。デティに頼めば作ってもらえるかもしれない、だがデティがいない、だからどうしよう。それが今の悩みどころだった…けど。別にデティじゃなくてもいいんだ。


この街は魔術師の街、デティが居なくともデティを救う為の働きができる奴はいる。だから俺はメルクさんが持ってきた瓶をマティアスに渡すと…。


「見た事のないポーションだ、これの中和剤を…?期限は」


「三日だ」


「み、三日…!?」


「難しいか?」


「そ、そりゃあ難しいなんてレベルの話じゃありませんよ、実質不可能です。まずこの未知のポーションの構成式を解析し、そこに的確にハマるポーションを一から組み上げなきゃいけないんですから、普通なら一年がかりの大作業…それを三日で……」


そんな難しい話なのか、デティならパッと作ってくれそうだったが…。マティアスは俺から押し付けられない無理難題とあまりにも短い期日を前に臆しながらも…ジッと嘆きの慈雨を見て。


「ですが…これの中和剤をがないと、またヴレグメノスの悲劇のようなことが起こるのですか」


「ああ、話によるとマレウス全域で起こるらしい…」


「それは……なんとしてでも阻止しなければなりませんね。…うん、よし!」


するとマティアスはポーションを掴んだままそれを天に掲げ、背後に集った魔術師達、いや…一流の魔術研究者達の大軍勢に向けて、声を張り上げる。


「聞いたな!みんな!この中和剤がないと!人が大勢死ぬらしい!それも期日は三日!不可能とも思える無理難題だ!だが…我々魔術師は!魔術で良い世を作ると心に決めて!今ここにいる!今こうしている!なら!引けないよな!」


『おぉーっ!』


「魔術研究者なら三日の徹夜くらいわけないよなッ!やるぞ!マレウス魔術学会の威信と権威にかけて!やり遂げる!ウルサマヨリ総動員だ!我々でこの不可能を可能にするぞ!」


『ぉおおおおおおーーーーっっっ!』


気炎万丈とはまさしくこの事。マティアスの声に呼応して魔術師達が雄叫びをあげ不可能に挑む覚悟を決める。嘆きの慈雨の中和剤を作り上げこの国を守る…魔術で救う、この世を守る。その覚悟の雄叫びは魔術師達のやる気に火をつけた。


『よし!私の研究所を全面開放する!好きに使ってくれ!』


『では私は今研究中の内容を公開する!きっと役に立つ筈だ!』


『新作のポーション開発の為に私財を叩いて買い揃えた機材と材料が山とある!使い切ってくれて構わない!好きにやろう!』


『もうこの際研究内容の秘匿なんか知ったことか!ここにある全部を使うぞ!』


そう、やる気に火をつけたのだ。彼等が魔術師をやっているのは…或いは金のためかもしれない、或いは名声、或いは好きだから。様々な理由で魔術師をやっている。だがそれ以上に心にあるのは…『そもそも魔術の研究が好きだから、全てを捧げられる』と言う何より強い行動原理なのだ。


やる気に火がついたぞ、今この時ばかりは普段隠している研究内容や秘匿している研究所も全面開放だ。魔術師達の瞳に炎が宿り瞬く間に行動が開始される。


彼らなら、きっとやる。なんせここにいるのはマレウスを代表する一流達だ。例え不可能だって可能にするさ。


「ラグナ殿、我々は我々の戦いをします…」


「ああ、そうだな」


「だから、そちらは頼みますよ」


マティアスは、ただそれだけを言い残し…嘆きの慈雨を持って歩み出す。今彼等の戦いが始まった、そして…今イシュキミリの下した二つの選択肢を双方ともに解決する方法も見つかった。


なら後は…勝つだけだ。


───────────────────────



「材料ドンドン持って来い!代用品になりそうな物ならなんでもいい!とにかく絶やすな!どんどん蒸発させて嘆きの慈雨を霧散させるんだ!」


それから三日、マティアスはやり遂げた。偉業とも言える速度で嘆きの慈雨を中和しその活動を抑え霧散させるポーションを完成させた、だが完成させるだけではダメだ、運用しなくてはダメだ。


中和剤を作ってから気がついた問題、それは南部の全ての街で今…嘆きの慈雨の発生装置が稼働している。つまり数十近い場所から同時にポーションが天に昇っているんだ。中和するには天に昇ったポーションと同量こちらも蒸発させなければならない。


つまり、膨大な量のポーションが必要になる。これを三日で用意するのは流石に無理だった…が故に。


「アリスでございます!帝国よりアカネントリ草持ってまいりました!次!アジメクからクレイブダラー持って参ります!」


「マティアスさん!こっち材料出来ました!」


「ああ!どんどん持ってきてくれ!」


編み出した陣形…リアルタイム作成。中和剤の原材料を帝国から輸入、それを元にポーションを作る、そしてそれをまた別のポーションと混ぜ出来た八種類のポーションを組み合わせた物を四種類用意し、最後のこの大鍋に投入。


私が自らの手で掻き混ぜ攪拌し続ける事で蒸発を早め天に登らせ嘆きの慈雨を中和する…と言う流れになる。作り置きはなし、何処かで何かが滞れば嘆きの慈雨を止めるだけの中和剤を用意出来なくなりその時点で終わり。


私が火加減を間違えれば、誰かが工程を一つ間違えれば、失われるのは自分の命だけに留まらない。そしてその上で立ち止まることさえも許されない…まさしく今、ウルサマヨリは戦場の様相となっていた。


「負けるな!負けるなみんな!私達がここで耐える事で救われる命が山とある!気張れッッ!!」


『はいッ!』


そしてマティアスもまた気合を入れ直す、上着を脱いで腰に巻き繊細極まる作業を続ける。自前の杖で大鍋を掻き混ぜながら瞬きを忘れるほどに集中する。かき混ぜるペースは一定、鍋が沸騰する程の熱量が噴き出す中に顔を突っ込み呼吸さえ出来ない中で魔力を独特のリズムを保ちながら内部成分を変質させる。


それと並列して周りの魔術師達の作業ペースを確認する。はっきり言ってマティアス一人で担うにはあまりに重い作業と仕事量だ。


「帝国から送られてくるペースじゃ足りない…代用品を街から探してくる!」


「待てお前が行くな!この行程はお前じゃなきゃ出来ない!誰か!手の空いてる奴は!手の空いてる奴はいないか!」


「居ないよそんなもん!」


(苦しい…作業開始からたかだか十分程度で綻びが見え始めている。やはり見切り発車がすぎたか!)


嘆きの慈雨の効果時間は45分、この間効果を霧散させ続ければ嘆きの慈雨は大気中の水分と混ざり無害な雨になることが分かっている。だからその間耐え続ければ良い…が、まだ十分程度でもう先行きが怪しくなってきた。


その綻びを正すには自分が直接指示を出したほうがいいんだろう…けど、この工程で最も重要な役割を担うマティアスには細かな指示をする余裕がない、激励しかできない。


不安だ、これは上手くいかないとではないか?と…思えば思うほど、感じてしまう。


(イシュキミリがいてくれれば…!)


自分よりも才能があり、カリスマがあり、人を導く才能を持った彼がこの場にいてくれればどれだけ頼もしかったか。だが悲しいかな、そのイシュキミリがこの事態を巻き起こしているのだ…我儘は言えない。


「クソッ、イシュキミリ…!とんでもないことをやらかしてくれな!」


イシュキミリの事は昔から知っている、知っているからこそ評価していた。自分はエリスのように魔術師として大成できない、イシュキミリのように研究者としても大成出来ない。そうやって自分に道を諦めさせた張本人が今その研究を悪用し人を殺そうとしているのが許せない…許せないからこそ。


「絶対生き残ってやる!絶対生きてやる!全部が終わったら!文句をしこたま言ってやるからなイシュキミリッ!!」


絶対に生きる、彼にはたくさん文句を言わなきゃいけない。だからイシュキミリ、絶対に戻ってこいよ。


「やってやる!やってやる!だから─────」


見上げる、天を。この戦いを生き残る覚悟を決めたからこそ…マティアスは天を見上げ、この戦いを左右する存在を見つめ、飛ばす。


「勝ってください!!メルクリウス様ッ!!」


激励を、自分にはそれしか出来ないのだから─────。




「勿論だッッ!!」


「キシャァアアアアアアア!!」


一方、マティアス達のいるウルサマヨリ上空を飛び交うのは二つの影。それはこのウルサマヨリでの反抗作戦を支える、左右する二つの意志。


「マゲイアッッ!!」


「邪魔だメルクリウスゥッ!!!」


ウルサマヨリの魔術師達を守護する役目をラグナより任されたメルクリウスは銃を撃ち鳴らし火砲の光で天を彩る。


対するまイシュキミリより嘆きの慈雨の完遂を命じられた四魔開刃が第二刃、『人外』のマゲイアは魔術で空を飛びながら杖を回転させ銃撃を弾き牙を剥く。今このウルサマヨリでの反抗作戦はこの二人の戦い如何にかかっていると言ってもいい。


メルクリウスが勝てば、嘆きの慈雨は降らない。マレウスの人々は助かりイシュキミリの目的の一つは潰される。


マゲイアが勝てば、嘆きの慈雨は降る。マレウスの人々は死に絶えイシュキミリの目的の一つは達成される。


だからこそ、ここにメルクリウスがいる、ここにマゲイアがいる。両者共に両陣営屈指の強者であるが故に互いにここを任されているのだ。


両者共に、絶対に落とせない要所を担っているのだ。


「ふぅ…流石にやるな」


「私の感想は逆ですよメルクリウス、その程度ですか?」


クルリと空中で身を翻し屋根の上に着地し銃と杖を向け合うメルクリウスとマゲイア。今も空で燻る曇天の下…二人の戦いは拮抗する。


(……エリスに聞いた程度の話だったが、やはりマゲイアは強い。他組織で言えばエアリエルやガウリイル級の強者か…)


こうして戦って、メルクリウスはようやくマゲイアという女の強さを実感しつつある。


『人外』のマゲイア・ワンドエース。風体は見るからにと言った感じの魔術師。大きな杖にダルダルのローブを着込んだ壮年の女性。だがその魔術師風の姿形からは想像も出来ない程に高い身体能力と魔術の腕は卓越と呼べる域にあり、その実力は…エアリエルやガウリイルを想起させる。


メルクリウスはガウリイルともエアリエルとも戦っている。だからこそ言える、マゲイアは確実に他の八大同盟ならば第一幹部を張っていてもおかしくない程に強い。それが二番手に収まっている事が恐ろしくはあるが組織内で二番手であれども強さが変わるわけじゃない。


かつてメルクリウスは逢魔ヶ時旅団との戦いでガウリイルにボコボコにされ、エアリエルとの戦いでは手も足もでなかった経歴を持つ。もし私が昔のままなら勝ち目はない…だが。


それでもラグナは私にここを任せると言った、仲間が信じている、つまり私は…やれるという事だ。


(……………)


一方、マゲイアは別の焦りを感じていた。


(この戦い、私結構不利ですね…)


そう、マゲイアは不利なのだ。マゲイアのこの場での勝利条件はメルクリウスを倒す事ではなくマティアス達を止める事、そして敗北条件は自身の敗北にプラスして嘆きの慈雨が完全に散ってしまう45分以内に決着をつける事。既に10分程度経っていることから考えるに残り35分以内にケリをつけなければ戦いの趨勢の如何関係なしにマゲイアは敗北となる。


マティアス達を止めるにはメルクリウスを倒さねばならない、だがこのままメルクリウスが時間稼ぎに徹するだけでマゲイアは打つ手無しとなる。不利だ、超不利だ。


(癪ですね、この私があんな若造相手に本気を出さねばならないなんて…ですが致し方ありません。嘆きの慈雨の発動はイシュキミリのくだらない仕返し目的以外にもう一つ、『我々』の崇高なる目的の一部となっているのですから…是が非でも通させてもらいますよ)


クルリと杖を回し魔力を吹き出させるマゲイア、そしてそれに反応したメルクリウスもまた対応の構えを取り…一歩、戦いは上の段階へ踏み込む。


「本気で行くので、後腐れなくお願いしますよ…!」


「来るか────」


と、メルクリウスがマゲイアの攻撃に備えた…その時だった。


「え!?」


消えた、メルクリウスの視界からマゲイアの姿が…まるで露のようにサラリと消失した敵の姿にメルクリウスは目を剥き……。


「こっちですよッ!そぉら『フレイムエクスプロージョン』ッ!」


「ッ!?側面──ぐぅっ!?」


気がつくとマゲイアはメルクリウスの側面まで飛んでおり、杖を叩きつけると同時に爆裂魔術を放ちメルクリウスを吹き飛ばす。黒煙に飲まれ大通りを転がりながら必死に足を動かし受け身を取るメルクリウスは…考える。


(なんという速度…加速魔術の類じゃない!)


ただ、素早く移動しただけ、それであの速度…いやあり得ない、どう考えてもマゲイアの筋力量じゃ無理だ。という事は…。


「エリスの言っていたヤツか!」


「本気を出すと言ったでしょう!」


フワリとメルクリウスの前に浮かび上がり追いかけてくるマゲイアはローブをバッとはだけさせ、自らの肌を露出させる…するとそこには。


腕には大量の宝石が埋め込まれ、足にも色取り取りの宝石が鱗のように連なり、その全てから魔力が放たれている…そうだ、エリスが一度マゲイアと戦った時に口にしていたマゲイアの不可解な動きの正体。


奴は時折魔術を使わず不可解な挙動を繰り出してくるという。それは魔法ではなく…そう、あれは魔力機構だ。


「全身に魔力機構を埋め込んでいるのか…」


「ええ、美しい体でしょう?これが…我が名『人外』の所以。全身に数百の魔力機構を埋め込み人を超えたる存在の象徴…貴方では勝てません」


エリスがエルドラドで戦ったデズデモーナと同じ、全身に魔力機構を埋め込んでいるタイプの人間。魔術を使わず魔力を流し込むだけで魔力事象を引き起こすことができるという特性を持ち、魔術戦延いては肉弾戦に絶大なアドバンテージを及ぼす肉体改造の一つ。


ただ、エリスが戦ったデズデモーナは数個魔力機構を体内に入れているだけで人格に異常をきたしていた…というのに見たところマゲイアはその比ではない数百近くの魔力機構を携えていながら…人格にはなんの異常も出していない。


格の違いという奴か?所詮ファイブナンバーにもなれなかった敗北者と八大同盟の大幹部の…。


「本来なら、この美しさは私一人で独占しておくつもりだったんですが…貴方が悪いんですよ、私に本気を出させるからッ!」


「ッ…!」


瞬間、マゲイアの足から膨大な風が噴き出し視界から消える急加速を行う。おそらく足先に風を発生させる魔力機構を備えているんだ。そして先程から見せているあの身体能力…身体強化の機構も組み込んでいると見える。あそこまで行くともうチクシュルーブのサイボーグ兵と変わりがないな!


「『ブラストシャワー』ッ!」


「っグッ!」


目にも止まらぬ速度で飛び交い辺り一面に魔力弾を連射するマゲイアの攻撃を前に私は防戦すら出来ない、全身の魔力機構がそれぞれ全て魔術の発射口になっているんだ。さながらウニのように全身から魔術を放てるマゲイアはただ飛び回りながら魔術を放つだけで災害となる。


『うわあぁっ!?』


『魔術がこっちまで!』


「くっ…しまった、魔術師達が!」


そして何より範囲が広い、暴れ回るように戦うマゲイアの攻撃に巻き込まれ遠方でポーション制作している魔術師にまで被害が出てしまう。まずい…早く止めねば!


「燃え盛る雷は空に炎を描き、万象を焼き切りその意志にて果てを穿つ…!」


「む?」


「『熱火雷閃条』ッ!」


「おおっと!?」


銃口から放たれる無数の熱線がマゲイアの動きを止める、と同時に私は軍銃に弾を込め走り出しながらマゲイアに狙いを定め…。


「『Alchemic・electricity』ッ!」


放つは雷撃、銃弾を雷に変えマゲイアに向け一閃を放つ…しかしその場で立ち止まったマゲイアはクルリと杖を回し。


「『Alchemic・smoke』!」


「な!?」


マゲイアが放ったのは錬金術だ、杖先から放つ錬金術で向かってくる雷を無力な煙に変え攻撃の無力化と視界剥奪の両方を一気にやって見せる。


「現代錬金術くらいなら私だって使えます…?」


「グッ…!」


しまったと歯噛みしながら咄嗟に後ろに引く。そうだ、奴は魔力機構で体を強化しているだけで戦闘スタイルそのものは型にとらわれない魔術師タイプ。現代錬金術くらいなら会得しているか!


「しかし厄介ですね、錬金術使い。私のミラーリング・テイクオーバーで吸収できるのは魔術だけ…変質のみで魔術として完結する錬金術は相性が悪いんですよねぇ」


そして、その煙の中で、バチバチと炎が迸る…煙の中にいるマゲイアの元に魔力と熱が収束する。その現象は…私も何度も見たことがある、私達魔女の弟子は何度も見たことがある。彼女が…仲間を守る為に使った魔術と、同じ輝き…!


「まぁ私にはこれがあるからいいんですが…」


「ッ…貴様!」


煙が晴れたその先には、杖を向け…穂先に炎雷を纏わせるマゲイアの姿が。あの炎、あの雷…間違いない、あれはエリスの火雷招…!?


そうか、エリスが言っていた!奴は吸収した魔術をコピーし使えるようになるんだ。そしてエリスは一度火雷招を吸収されている…まずい、来る!古式魔術がッ!


「焔を纏い 迸れ俊雷 、我が号に応え飛来し眼前の敵を穿て赫炎 爆ぜよ灼炎、万火八雷 神炎顕現 抜山雷鳴、その威とその意が在る儘に、全てを灰燼とし 焼け付く魔の真髄を示せ 『火雷招』ッ!!」


「っ防壁展開ッ!!」


刹那、飛んでくるのはエリスの得意技『火雷招』。属性魔術の中でも屈指の威力を誇りエリスの特徴でもある『大規模破壊・超火力』と二つを体現するトレードマークでもある魔術がマゲイアの手によって放たれる。


一瞬で迸る炎の雷を前に咄嗟に展開した防壁で火雷招を四方に割って防ぐが…ダメだ、これは。防ぎ切れん、威力が高すぎるッ!


「ぐはぁっ!?」


「ほほほ、流石古式魔術…このじゃじゃ馬の扱いにもようやく慣れてきましたよ」


防ぎ切れず、受け止め切れず、火雷招の爆裂に巻き込まれ再び吹き飛ばされる。エリスの火雷招は組手で何度か受けたことがあるが…これはそれ以上の威力。そもそもエリスが私に本気で火雷招を撃った事がないというのもあるが、魔力機構によって強化された一撃は本家本元のエリスの火雷招にも匹敵する威力を再現しているのだ。


「ぅぐっ…貴様、我が友の魔術を…弄するな…!」


「断ります、こんな素晴らしい魔術…使わないほうが勿体無いでしょう」


両手に火傷を負いながらも、倒れ伏しながらも、それでも立つ。しかし…こいつ、さっきから聞いていれば…。


「貴様ら、魔術解放団体メサイア・アルカンシエルだろ…。何を嬉々として魔術を使っている。剰え素晴らしい魔術だと?…やはり貴様らの信念など飾りでしかないのか!」


「ふむ?ふむふむ、おほほ。好きに言いなさい」


こいつらは、普通に魔術を使う。聞いたところによるとイシュキミリは魔術そのものを嫌っているという、だから世の魔術師から魔術を奪い、それが良き世の中に繋がると信じて動いていたと言う。今は違うがな。


だがこいつは違う…抗議者達やイシュキミリのような、一本筋の通った魔術への嫌悪感のようなものを感じない。寧ろ感じるのは…。


「魔術は力ですよ?使わないなんてあり得ない」


『魔術への好意的感情』…何故アルカンシエルにいるのか理解出来ん。ここまで魔術を極めている奴が、何故メサイア・アルカンシエルなんかに…。


「お前達は、何がしたい。嘆きの慈雨を使って虐殺をして…魔術を使って人を殺し、その先にお前らの言う魔術無き世があるわけが……」


「別に私は魔術を消し去ろうなんて思ってませんよ」


「は?」


思わず顔を顰める。こいつは何を言ってるんだ?…それが、魔術を消し去る事がメサイア・アルカンシエルの目的だろう…?


「そもそも貴方は何か勘違いをしてますよ。嘆きの慈雨で行うのは虐殺?そりゃあイシュキミリはこの雨で人が死ぬことを望んでいますが…私は違います。嘆きの慈雨で人を殺したいんじゃない…寧ろ逆、その逆…生かしたいんですよ」


「何を言っている…あの地獄を作り出して、人を生かしたいと?」


「ええ、正直ヴレグメノスでの出来事は私にとって百点満点の結果でした。だって…『貴方は生き残ったでしょう』?」


「…………?」


何かがおかしいと私は悟る。そういえばこいつは…何故今必死になって嘆きの慈雨が落ちることを望んでいるんだ?だって嘆きの慈雨が落ちればみんな死ぬんだ、それはつまりここにいるマゲイアだってそう仲間だって…。


いや違う、マゲイアは平気なんだ。だって防壁で嘆きの慈雨を防げるから………。


(ッ……まさか)


私は、一つの仮説に辿り着く。それは『嘆きの慈雨は防壁で防げる』という事実と奴の言った『私が生き残ったから成功』という意味不明な言葉。この二つを組み合わせることで、生まれる一つの仮説…。


私が表情を変えマゲイアを見ると、奴もそれに気がついたのかクスクスと笑い。


「クスクス、気が付きましたか?ええ、実はメサイア・アルカンシエルも一枚岩ではなくてね。派閥は二つに二分される。一つはイシュキミリが二代目会長に就任後の新参者達で構成された連中、そしてもう一つは私のようなイシュキミリ加入前からアルカンシエルにいるような古株」


「…………」


「イシュキミリ加入後の新参はみんなイシュキミリ同様魔術無き世を望んでいる。けれど古参組は違うんですよ…私達は先代会長の提唱した『真の魔術解放』に同調した者達、つまり同じアルカンシエルでも目的が違う…」


「まさかお前…嘆きの慈雨を、殺戮の雨を降らせたい理由は…」


「ええ、先代会長が提唱したのは…『魔術の普遍性の撤廃』。くだらない人類共から魔術を解放する真の魔術解放!」


マゲイアは両手を掲げその真の目的を語る。イシュキミリは人類から魔術を取り除くことを『魔術解放』と語った。だがマゲイアのような古株はそもそもイシュキミリの目的なんてどうでもいい…。


彼女達が語る『魔術解放』はイシュキミリの人から魔術を取り除く解放とは逆。魔術を人から解放する『魔術解放』…それが意味するところは、一つ。


「嘆きの慈雨は防壁で防げる!それはつまり防壁を張れるだけの魔術師は生き残り半端な魔術しか使えない奴等やそもそも魔術も使えない癖に魔術の恩恵に与る愚民は死に絶えるということ!即ち我々の目的は『粛清』!魔術を極めた真の人類だけが生き残り魔術を使えない劣等種を切り捨てる真の魔術解放なんですよ!」


「……皆が皆、防壁を張れるわけじゃない!魔術師の中でも防壁を張れるのは二割か三割だぞ!?人類単位で見れば割合はもっと小さくなる!」


「ええそうでしょうね。この世には魔術を使えないのに魔術にしがみつく人間が多すぎる。そういう奴らははっきり言って邪魔。なので嘆きの慈雨で洗い流し有用な人間だけを残す大粛清を我々古参組みは願っている!イシュキミリの目的なんてハナっからどうでもいいんですよ!」


「……嘆きの慈雨を殺戮の雨に作り変えたのは貴様だったな」


「いいもの拾ったのでね!まぁ古式治癒を拾わなくてもこれは殺戮兵器に作り変える予定でしたが?それが何か?」


…つまり何か、こいつらは…最初から人々を殺し尽くすことを目的とし、せめて良い世を作ろうとやり方を間違えたながらも志を持っていたイシュキミリを、無理矢理捻じ曲げたということか!!


粛清を行う為に、粛清を行えるような非道な王にイシュキミリを作り変える為に、あの虐殺を行ったと、その虐殺の責任をイシュキミリに転嫁したと…そういう事か。


「人でなしが……!」


「『人外』なので!だからあの街の中で防壁を使える貴方達だけが生き残った!これはある意味私達が望む未来の縮図でもある!防壁を使えない愚民が死に!お前のように選ばれた者だけが生き残る!いいじゃないですか、素晴らしい結果です」


……奴らの好きにさせれば、ヴレグメノスでの悲劇が文字通り世界中で再現される。街の人間全員が死に、一人二人が生き残る…そんな地獄を、こいつは本気で作ろうとしているんだ。


イシュキミリを歪め、人々を殺し、それでも笑うこいつを…私はどうにも許せそうにない。ならば怒りに身を任せよう。私が望む世界に…選別は不要だ!


「貴様だけは!絶対に止める!」


「やってみなさいよ!大丈夫!きっと失敗してもこの街の人間も数割は生き残るでしょう!まぁ私に逆らえば殺しますがね!!それが我が真の主人である先代会長の望みなので!!」


「喧しい!」


外道は処する。最早出し惜しみなどしない、時間稼ぎで有耶無耶になどしない、ここでこいつを倒すことだけに全力を尽くす、故に!!使う!!


「魔力覚醒ッ!」


「ほほう、使ってきますか…」


「『マグナ・ト・アリストン』…!」


光り輝く肉体、溢れた光はメルクリウスの背後で光の帯となり頭上に光冠が浮かび上がる。錬金術の極致を一時的に再現する魔力覚醒『マグナ・ト・アリストン』…それを用いると同時に動き出す。まだ戦いは始まったばかりで相手はまだ覚醒を使っていないが…どの道今のままではマゲイアを抑え切れない、街で大暴れされてはマティアス達の邪魔になる!


「『概念錬成』…!」


「む……」


「『打破』ッ!街の外でやるぞマゲイアッ!」


「ぅぐっ!?」


叩きつけるのは打破の概念。黄金の光を纏い飛翔する巨大な拳がマゲイアを打ち抜き街の外まで吹き飛ばす。密林でやる…その方が幾分被害は抑えられる!


「『概念錬成・飛翔』!」


「痛いですねぇ!『オーラウイング』!」


打破の概念で吹き飛ばしてもマゲイアは余裕綽々とばかりにクルリと空中で光の羽を作り出し空を駆け抜ける。それを追うように私もまた足元に光の輪を作り飛翔の概念にて空を飛びウルサマヨリの外、南部の密林、その上空へ戦場を移す。


「優しいですねぇ、他の人達のために人気のない場所に私を誘導しますか!」


「貴様は人を傷つけることに罪悪感を覚えないタイプだ、これは誘導ではない…隔離だッ!」


「フゥン、人を傷つけることに…ね。反吐が出るモノ言いですこと!『ブラストシャワー・オーバーフロー』ッ!」


空を駆け抜けながら雨のような魔力弾を無数に放ち、まさに弾幕と言った光景を繰り広げるマゲイア…に対し、メルクリウスの動きは早かった。


「遅い上に鈍い…!」


「あらっ!?速い!」


弾幕の合間をすり抜ける様に飛翔するメルクリウス、その速度は魔力機構で加速したマゲイアよりも速く、それでいて的確。これは速いと感嘆した瞬間には既にマゲイアの目前にメルクリウスは迫っており…。


「『概念錬成・過重』ッ!」


「ぐぶぅっ!?」


叩きつけられる過重の拳。メルクリウス単独で出せる重さとは思えぬほどに重く硬い拳骨がマゲイアの顔面を貫く様に打ち据え空を飛ぶマゲイアの体を地面に叩きつける。


「ぐっ…速い…おかしい、速すぎる」


マゲイアは地面に落ちる直前で魔力を噴射し叩きつけられるのを防ぎつつ頬を袖で拭い考える。メルクリウスの覚醒は概念抽出型の筈…にしては身体能力が上がり過ぎている。


(イシュキミリを通じて奴らの覚醒は全て把握している。奴の覚醒は錬金術の強化と概念への干渉、概念で肉体を強化している?いや…そんな感じじゃないな、覚醒をすれば種類問わずある程度肉体が強化されるとは言え、肉体進化級の強化が付随する概念抽出型なんて聞いたこともない)


戦慄する、マゲイアは知らない。メルクリウスの覚醒は錬金術の強化…つまり彼女は覚醒を行うと同時に身体的超人と同格レベルに筋繊維と骨格、そして身体機能全てを作り替えている事に。


その上での概念錬成、ほぼ何をも可能とする覚醒。覚醒がどんな物になるかは実質運の要素も絡む…しかし。


(強い覚醒に恵まれ過ぎでしょ、なんですかあれ。全く…やはり先代会長の仰ったことは正しいですねぇ!)


「マゲイアッ!!」


「おっときましたか、ですが…」


頭上から飛んでくるメルクリウスにマゲイアは辟易としながらも杖を回し…。


「あまり直線的に飛んでくるのは、おすすめしませんよ…?」


キラリと彼女の周囲で煌めく光がある。既にこの一体の木々全てに爆裂魔術『エクスプロージョンキューブ』を配置してある、小さな衝撃一つで爆発するそれを凡そ百二十…そしてそれら全てに魔力糸を繋げてばら撒いてあるのだ。


突っ込んできた瞬間、糸に引っかかり、それが抜けてメルクリウスは爆発に巻き込まれ──。


「『概念錬成』!」


「え?」


しかし、メルクリウスは糸に突っ込む事なく寸前で停止し、その手を大きく振り上げる。


「『地返し』ッ!」


「んなっ!?」


瞬間、地面が持ち上がる。マゲイアごと持ち上がる、周囲一体が持ち上がる、視界に収め切れないほどの大地がまるでシールでも剥がすようにベリベリと持ち上がり文字通り返される。


持ち上がった大地はやがて壁の様に巨大に反り立ち、そのままひっくり返った大地は地面目掛け一回転し倒れ伏す。街一つ掬い上げるスコップで大地を抉ったように世界が返されマゲイアは混乱の中で反転する世界に飲み込まれる。


「バカが、罠を張ってることくらい見抜いている…!」


密林の一帯が、大地がひっくり返った事により木々が失せる。大災害に見舞われたような世界の中メルクリウスは腕を組みながら着地をし鼻で笑う。


見えていた、マゲイアが瞬時に罠を張る様が。いやその瞬間は見えていなかったが…メルクリウスの持つ見識が罠の存在を捉えたのだ。


「ぐっ…見識の才、話には聞いてましたけど……確か、真実を見抜く眼力に長けているんでしたか…」


そしてマゲイアはひっくり返った大地の中を掘り進み、ようやく地表に出る。罠を見破られた、話に聞いた見識の力による物だと後になって気がついた。いや…これ卑怯じゃないですか?とマゲイアは表情を変える。


(超人並の肉体、地形を変えるレベルの攻撃、そしてこちらの攻撃を事前に見抜く見識…凡ゆる面をカバーし過ぎでしょ、強過ぎますよこれ)


マゲイアとて数多くの覚醒と戦ってきたがこれは格別、当初想定していたよりも遥かに強いメルクリウスの覚醒に彼女は戦意喪失し……。


(まぁでも、『覚醒』が強いだけならなんとでもなりますが)


否、戦意喪失はしない。マゲイアは数多くの覚醒者と戦ってきた。魔力覚醒に頼った戦い方をする奴はたくさん見てきた、そういう奴に限って…覚醒がなくなるとてんで弱い。ならばと彼女は体を地面から引き抜き。


「まだやるか、マゲイア」


「ええ勿論、けど覚醒抜きでの戦いは難しそうなので…こっちも使わせてもらいますね」


「好きにしろ」


(バカですね、覚醒戦の基本を何も知らない。魔力覚醒を先に使う・後に使う、これは覚醒戦において最も重要な要素、後に使えば相手よりも持続的に戦える…先に使うならそもそも相手に覚醒を使わせないのが定石。やはり…覚醒をして日が浅いというのは本当の様ですね、なら遠慮なく)


杖を地面に突き刺し、魔力を逆流させ…一気に膨れ上がらせる。それと共に…地面から立ち上る光が次々とマゲイアの肉体へと吸い込まれていく、いやそれだけじゃない。


(……む、マゲイアに向けて風が吹いている?)


風がマゲイアに向いて吹いている…いや、マゲイアが空気を吸い込んでいるのだ、地面から立ち上る何かが、空気が、全てマゲイアに向いて向かっていく。まるで何もかもを取り込む様に…マゲイアはその手を広げていき…。


「魔力覚醒『エンドレス・コンシューマリズム』…じゃあ行きますよぉ、ゆったりと」


「……来い!」


マゲイアの体が赤く輝き、その髪が赤く染まり、炎の如く揺らめき、変貌する…が、肉体に変化は見られない。ということは肉体進化型ではない────とメルクリウスが分析を始めた瞬間だった。


「グッ…!?」


マゲイアが手をメルクリウスに向けた瞬間、まるで体が引き寄せられる感覚を味わい思わず一歩前に出る…と同時に。


「『火雷招』ッ!!」


「ちぃっ!『概念錬成・防壁』!」


放たれた火雷招を概念防壁で弾き飛ばし防ぐ…が。それでも止まない、引き寄せられる感覚、これは…。


(魔力が吸い上げられている…!)


吸い取られているのだ、微量ながら魔力が。体から抜けて魔力がマゲイアに奪われている。何が起きているとかではない…これは恐らくマゲイアの覚醒。


「うふふふふッ!力が沸いてきますねェッ!!!」


(魔力を奪う覚醒だと…!)


───分類不能型覚醒『エンドレス・コンシューマリズム』…それは凡ゆる物を接収する覚醒。それはマゲイアの半径50メートル以内に存在する物質・非物質全てをマゲイアに引き寄せそれを消費する覚醒。つまり覚醒をした時点でマゲイアは他人の魔力を勝手に使って魔術を放てる様になりということ。


覚醒者相手にこの接収の効果は薄い、だが…『それ以外』には効果覿面だ。


『ぉぉおおおおおお…』


「む…魔獣が…」


メルクリウスの地返しを生き残った魔獣が地面に這い出てくると同時に、口から大量の魔力を抜き取られ魂まで奪われたマゲイアに吸い上げられるのを見て、ゾッと背筋が凍る。この覚醒…覚醒者以外に対しては問答無用で全てを奪えるのか。


(まずい、こんな奴街には近づけさせられない!)


もしこのままメルクリウスが突破され、奴が街に踏み入ればそれだけで街の人間全員の魔力が奪われ殺される。絶対に…引けなくなった。


「チッ!マゲイアッッ!!」


「あははっ!いつまで覚醒を維持できますかね!その覚醒が解けた瞬間がお前の最後ですよッ!」


するとマゲイアは杖を捨て去り、クラウチングスタートの構えを取り…。


「『ソニックアクセラレーション』ッ!」


「なっ!?ぐぅっ!?」


音速を超える勢いで飛んできたマゲイアの飛び蹴りがメルクリウスを打ち抜き、同時にダメージと共に魔力が抜き取られる。いやそれ以上に驚きなのは…今のは。


「今のは…メルカバの?」


大いなるアルカナに所属していた音速の戦士メルカバの使った音速を超える加速魔術『ソニックアクセラレーション』だ、何故メルカバがソニックアクセラレーションを…そもそもこれは禁忌魔術の筈。


「チィッ!!」


何が起きたか分からない、だが戦わねばと両手に軍銃を作ると…。


「おっとそれやめてください?『マグネティックジフォース』」


「な!?今度はヘットの…!?」


磁力を操るマグネティックジフォース…これも戦車のヘットが使っていた禁忌魔術。それにより銃が手から奪い取られマゲイアは銃を捨てニタリと笑い、両手の指を組み合わせ…四角形を作る。


何をして…いや待て、あれは…確か!


「『コンセプトコンプレッサー』」


「ッ!圧縮魔術…!」


咄嗟に飛び退けばメルクリウスの立っていた場所が四角形に切り抜かれ圧縮され消失する。あれはデティが以前戦った…なんだっけ、名前忘れた、私戦ってないから覚えてない。節税のサメフだったか?空間を圧縮し肉体だろうがなんだろうが潰してしまう禁忌魔術…。


こいつさっきから、禁忌魔術ばかり使っている…なんだこれ。いやまさか…。


「貴様、禁忌魔術ばかり使うが…まさか」


「本当に勘がいいですね…ええ、そうですよ。私…というより私達メサイア・アルカンシエルはね、マレフィカルムの魔術再生機関も担ってるんですよ、昔の話ですが」


かつて学園時代にデティが語っていた。大いなるアルカナはやたらと禁忌魔術やかつて失われた魔術を使っていたと。もしかしたらかなり昔から魔術を屯集している奴がいるのかもしれないと…。


こいつらなんだ、ヘットにマグネティックジフォースを与えたり、メルカバにソニックアクセラレーションを与えたのは。マレフィカルムの人間が禁忌魔術を使えるのは…メサイア・アルカンシエルが魔術を他の組織に配っていたから…。


「私達組織が八大同盟にまで登り詰めることが出来たのは大量の魔術文献を保有しているから、そこから禁忌魔術や失伝魔術を再生させ配っているから、ここばかりは八大同盟にも手が出せない領域!大いなるアルカナもハーシェル一家も良い商売相手でしたよ」


「仮にも魔術を否定する一団が、魔術を使って商売か」


「言ったでしょう?私は魔術そのものは否定していない、魔術師が多い事に辟易としていると!」


瞬間、マゲイアは接収を強め、周囲の魔獣や大地、木々から魔力や生命力を奪い取り力を蓄えると。


「『アシッドアルドネーション』ッ!」


「ッ……!」


融解する、大地が形を失い液体の様に変質する。私はデティではないから詳しくは分からないが…恐らくこれはかつて禁止された『完全融解魔術』!数ある硬度変質系魔術の中でも随一の威力を持つが故に環境破壊を懸念された…感じのやつだと思う!


まずいとメルクリウスは冷や汗を流し足元を変質させ足場を作るが…同時に思う、そこまでやって…『やってしまった』と。


(しまった、ワンアクションを使ってしまった…これは牽制、次が来る)


「魔術改編、再構築、再編、再誕……『熱界灼雷招』ッ!」


「ッ……!?」


飛んできたのは火雷招…をマゲイアの手によって異常に歪められた一撃。幾多の現代魔術を用いて強化されたそれは全方位を焼き尽くす爆雷となり私を穿つ、足元を固めるのにワンアクションを使った隙だらけの私をマゲイアは容赦なく撃つのだ。


「ぅぐっ!」


貫通した電流が体の中で暴れ狂い、傷口が焼かれ…のたうち回る。


「貴方も薄々感じてませんか?魔術とは人に過ぎたる力だと、これを扱うには知識がいる、鍛錬がいる、高い意識と格式がいる。下賤でごみみたいな人間が扱っていい技術じゃない!だから私は魔術は選ばれた人間こそが使うべきだと思っている。その選ばれた人間になる権利を…私達は金で売っているだけですよ」


「外道が!その結果!どれだけの人が傷つけられたと思っている!」


「『人』じゃありません、『愚民』です。傷つけられるのが嫌なら強くなればいいでしょ?それをしない程度の意識で生きてるから…奪われる側なんでしょ?一生」


再び、マゲイアの手に周辺からかき集めた魔力が集う。つまるところ…奴の『他者から奪う覚醒』とは、奴の本音の現れ。


奴は魔術を、『支配者の資格』が何かだと思っている。魔術を使える人間は強い、使えない人間よりは強い、強いから奪っていいし、殺していい。それが奴の理屈にして理論…どこまで行っても自分勝手で下劣な理屈だ…。


「貴様らが…使っていた、抗議者達。あれも…魔術を使えない人間と聞いたが」


「アッ…ハハハ!あれいいアイデアでしょ?あれは私の妥協案だったんですよ。魔術が使えない人間の有効な活用法として思想を埋め込み傀儡として使う。本当は全員纏めて消し去ってやりたかったですけど現実問題そうも行きませんし、なら上手く使おうってんで提案したんですよ」


「……なんだと」


「魔術が使えない人間は魔術を使える人間に浅ましくも嫉妬してますからね、魔術を否定する文言を組み込めばホイホイ人が集まりました、結果命を捨てても構わない兵団の完成です……まぁ、嘆きの慈雨が完成した今、あれもパッ!と切り捨てるつもりですけどね、目障りなんで、実際」


「お前は…どれだけの人間を歪めれば気が済むんだ!」


「弱いから自分を通せないんですよォッ!!嫌ならば!強くなればいい!この世は強い人間の意見が通るように出来てるんですからねぇッ!!」


拳を握ると同時に、マゲイアがそれを叩きつける…と同時に、周囲から吸い上げた魔力を使い放たれた魔術が大地を揺らす。


「『クアドラプルアースクエイク』ッ!」


それは大地に打ち込む巨大な杭の如く地面に突き刺さり大地を揺らす…この魔術は私も知っている。第二級禁忌魔術『クアドラプルアースクエイク』…別名災害魔術。自然的な災害を魔術で再現する超凶悪魔術。通常の魔術と異なり自然環境の甚大な破壊、関係のない人間を多数巻き込んでしまう性質を持つが故に使用は絶対に禁じられているどころか誰かに伝えることさえ許されていない魔術系統。


それを放ったのだ、当然私によって耕された大地はあっという間に振動によって吹き飛ばされ地震を超えて大地の破裂と言う結果を生み出し私を吹き飛ばす。


「テシュタル教聖典曰く!地震大嵐落雷などの災害は神の怒りとの記述もある!ならばこうして災害を起こせる私は!選ばれた一部の魔術師は神なのでは!?ねぇそうでしょう!」


そして吹き飛んだ大地と共にマゲイアが飛んでくる。その間にも木々や獣から魔力を吸い上げ力を増していく、私もまた微量ながら抜き取られ消耗していく…これ以上はまずいか。


だが…まだだ、まだ『ディー・コンセンテス』は使えない…まだ。


「何が神だ!貴様が民から魔術を奪いたいのは結局自己保身だろう!『概念錬成・旋回』!」


空中でぐるりと体を回すと同時に腕を振るい飛んでくる瓦礫を回転させ弾く、マゲイアの言葉はつまり自己保身だ。魔術を使える者こそが選ばれた者で、他の誰もこの領域へと来てほしくない。自分の立場を脅かしてほしくない…そう言う本音が透けて見えるんだよ。


「魔術を真に尊ぶならば!魔術を広めればいい!金で選ばれる資格を売るくらいなら!魔術を他者に与える方が余程素晴らしいだろう!そうすれば世界はもっと良くなる!」


「金と同じなんですよ!選ばれた一割が富を持つからこそ九割の選ばれない者達が金を持つ価値が生まれる!魔術は!みんなが使ってはいけない!一部が持つから意味がある!」


「メチャクチャだろうそれは!『概念錬成・打破』ッ!」


「『ソニックアクセラレーション』ッ!」


放つ打撃の概念、しかしそれと同時に加速したマゲイアのスピードは私の対応出来る速度を超える。ソニックアクセラレーション…メルカバの天才的な動体視力と様々な制限をつけながらなんとか運用出来ていたそれを、マゲイアはまるでただの移動手段のように使う。


魔力覚醒をして、魔力機構で肉体を強化したマゲイアにはメルカバのような弱点は存在しない。そして私は…。


「ほらっ!これあげますよッ!『火雷蹴』ッ!!」


「ごはっ!?」


音速の蹴りと共に放たれた炎雷が更に私を打ち上げ天高く私の体は舞い上がる…それを、マゲイアはニタリと笑いながら目で追いかけて。


「魔術複製機構最大稼働…!『火雷招』」


手元に炎雷の玉を作り上げると、まるでそれは複写されたように次々と分裂し増え、マゲイアの周囲に数十もの火雷招が漂い、その全てがメルクリウスに突きつけられる。


「お友達の魔術で死になさい!『炎雷波濤陣槍』ッ!」


ガトリングガンのように怒涛の如く連射される火雷招の連撃が打ち上げられたメルクリウスの体を包み…天に穴を開けるような大爆発が生み出され地上にもヒビが入り砕け散る程の熱が放たれる。


「おっと、勢い余って嘆きの慈雨に穴を開けてしまいました。いけないいけない。あんまり量を減らされると目的が達成出来ない………ん?」


マゲイアは自身の一撃でメルクリウスを焼き尽くした後、天を見る。そこにはもたれかかるような巨大な暗雲が広がっているが……何かおかしい。


(気のせいか?雨雲が…想定よりも薄いように見えるが)


本来なら、もう少し辺りが暗くなるくらい雨雲が濃くなる想定だった。今ある嘆きの慈雨全てを使っての作戦だから出し惜しみなく全てを使っている。筈なのに…薄らと太陽の光が漏れるくらいには、雨雲が薄い。


(何が……いや、今はそれより)


その瞬間、マゲイアは握っていた拳を開き…同時に振り向くと共に。


「不意打ちですかぁ!?メルクリウスっ!」


「なっ!?」


掴む、背後から殴りかかってきたメルクリウスの拳を。そう…先程頭上で消しとはしたはずのメルクリウスが背後にいる、なんてことはない、爆発の直前防壁を展開しそのまま黒煙の中を突っ切って背後に回ったのだ。


が、それさえもマゲイアには見抜かれていた。彼女の持つ瞳もまた魔力機構、他者の熱や息遣いを目視で確認出来るようになっている、だからこそ背後に回ってくる事も見抜いていた。


「くっ!このまま!『概念錬成・灼光』ッッ!!」


しかし、腕を掴まれたままメルクリウスは更に押し込もうと手の中に光を灼熱の光を生み出す。このままマゲイアごと全てを焼き尽くそうと概念錬成を生み出す…が。


「甘いですね…錬金術は『変質の過程のみ』で魔術が完結する。だから私はこれを奪えない…でも、変質過程で手を加えれば!


「ッ!?」


「『ミラーリング・テイクオーバー』!」


吸い上げられる、魔力が…錬金術が、メルクリウスの手の中に宿った光がマゲイアに吸い取られる。錬金術は変質までで魔術は関係している、だから光そのものを掴んでも奪うことは出来ない…が、光を作っている過程、変質の瞬間を狙えばミラーリング・テイクオーバーは盗める。


「貰いましたよ、貴方の概念錬成…なるほど、複雑ですが、答え合わせをしながらなら…出来ない事もない…『概念錬成・灼光』」


「クッ……!?」


そして、マゲイアの手からメルクリウスの使った物と同じ光が放たれる。赤く、煌めく、熱の破壊。それは瞬く間にメルクリウスの体を焼き…吹き飛ばす。


「ぐぁぁっっ!?」


「貴方、偉そうに講釈垂れてましたが…もしかして私に勝てる前提で話してました?」


吹き飛ばされ、黒煙を漂わせながら倒れるメルクリウスを見下ろすマゲイアは笑う。まさか勝てると思っていたのかと。


「確か私はカルウェナンより弱いです、けどね。これでもかつて、カルウェナンが加入する前はメサイア・アルカンシエル最強の魔術師だったんですよ。選ばれた者の中でも更に天に選ばれし天才…それが私です」


マゲイア・ワンドエース…かつては第一幹部を任されメサイア・アルカンシエルを支えた実力者、そこからカルウェナンに最強の座を奪われながらも鍛錬を続けた彼女の実力は既に八大同盟幹部陣の中でも随一。


ガウリイルやエアリエルと同格?馬鹿馬鹿しい、あんな若造どもと同格なわけがないだろうこの私が。


「さて、終わった事ですし…そろそろ消しますか、愚民を」


歩み出しながら周囲の生命力、魔力を奪いながら街を目指して歩き──。


「ッ『概念錬成───」


しかし、その瞬間体を起こしたメルクリウスがその手に魔力を集めマゲイアを狙い…。


「だと思いました」


「なッ…!?」


がしかし、それさえも見抜いたマゲイアは音速を超える加速にて起き上がったメルクリウスの背後に回り、その手でメルクリウスの首を掴み、締め上げながら持ち上げる。


「ナメないでください、私もう四十年近く現役やってるんですよ?貴方とはね、経験が違うんですよ」


「お前…一体何歳だ…」


「レディに年齢を聞くもんじゃ…ないですよッ!」


「ぐっ!?」


メルクリウスの体を締め上げ、持ち上げ、天に捧げるように掲げる。メルクリウスの来歴についてはマゲイアも知っている、デルセクトでガウリイルに負けて、エルドラドでエアリエルに負けたと。そんな奴が…私に勝てるわけがないだろう、私はその二人よりも強いんですから。


「負け犬は!奪われる側です!悔しかったら強くなりましょう!あははは!」


「ぐっ…貴様…!」


「もう終わりにしましょう貴方しつこいので、『極限接収』ッ!」


「ぅグッ…!?」


吸い上げる、魔力覚醒の力を極限まで高め、その上で相手の体に触り、全てを吸い上げる、魔力も生命力も魂も、何もかもを吸い上げ奪う。奪うことが許される、それが私、マゲイアの特権なのだからと…笑う悪魔は奪い続ける。


「ガッ…ッ…!」


「ンフッ!あはははっ!凄い魔力ですねぇ!これなら…いいこと出来そう」


ニタリと笑いながらマゲイアはメルクリウスを投げ捨て、覚醒を解除すると同時にソニックアクセラレーションにて飛び上がる。


勝利した、勝利だ。なんとも心地が良い、そう高笑いするマゲイアは一瞬でウルサマヨリに到着し…。


「こちらは魔力を奪って終わらせる…ってのは勿体無いですしねぇ、精々…苦しんでもらいましょう」


『材料が足りないぞ!ペースを上げろ!』


街では相変わらずマティアス達がポーションを作っている、なんとも煩わしいじゃないか。選ばれない者達が、才能のない者達が、選ばれし私が選んだ方法を否定する。煩わしく邪魔くさい。


魔術は選ばれた人間が使うべき、それ以外の者は真なる魔術師に従うべき。それに逆らう奴は…。


「死になさい!『火雷招』ッ!!」


放つ、炎の雷を。それは魔術師達が動く街の中心を捉え……。


『うわぁぁああああ!!?!?』


『魔術が飛んできた!?メルクリウスさんがやられたのか!?』


『クソ!最悪だ!』


「あははははははは!今日までご苦労様でした魔術師気取りの愚民諸君!みんなここで死んでくださいませ!」


炎雷に打たれ吹き飛ぶ魔術師達は一気に混乱の極致に叩き落とされる。そりゃあそうだ、自分達を守る薄壁が粉砕されたんだ、あとはただ…嬲られるだけ。


「この!『フレイムアロー』!」


「奴を遠ざけろ!『サンダースプレッド』!」


「『ゲイルオンスロート』ッ!」


立ち上がる魔術師達はそれでも抵抗を続ける…だが。


「おっと『ミラーリング・テイクオーバー』!」


手を翳しその全てを奪う。なんのためにメルクリウスがいたか、それはメルクリウス以外ではマゲイアの相手が出来ないから、簡単な事だ。ここにいる魔術師達は一流でも…マゲイアの相手にはならない。


守らなきゃいけないから護衛がいた、その護衛がいなくなれば…後は簡単だ。


「ま、魔術が吸い取られた…!?」


「なんだあの魔術は…私も知らないぞ」


「も、もうダメなのか…」


「もう?ダメですよずっと前から今に至るまでずっとね!アハハハ!」


精々絶望しろ、それが選ばれし者に逆らった罰であるとばかりに打ちひしがれる魔術師達を嘲笑う。これが見たかった、これが見たかったから覚醒の力で一息に終わらせなかった。逆らった人間がどうなるか、それをこの目で見たかった。


愚民が絶望して死んでいく様はいつ見てもいい!ヴレグメノス以来の快楽だ!そう笑うマゲイアと、あまりの戦力差に膝をつく魔術師達……。


………しかし。


「どうした!次の材料ッ!このままじゃ中和剤がなくなる!」


「は?」


「手を止めるな!継続して中和剤を蒸発させ続けなければ嘆きの慈雨が落ちる!早くしろ!」


マティアスだ、マティアスは今も一人で鍋をかき混ぜることに集中している。この状況になってもまだ抗うことをやめていない、まさかあまりの集中に私の到来に気がついていない…?


「ま、マティアス様…そこにマゲイアが…」


「だからどうした!?材料!早く!」


「で、ですが……」


「関係ないんだよ!何処に…誰がいても、私達のやることは変わらない!」


マティアスはギロリとマゲイアを睨む。こいつ私に気がついていながら…ほほう。


「あははははっ!そうですかそうですかそういう感じですか、なるほど…なら応援してあげましょう!『ゾイレシュメルツ』ッ!」


手を翳し、天に魔力を集め…作り上げるのは硫酸の雨。肉体を溶かし、鉄さえも溶かす飛沫を広場中に飛ばし全員を甚振り殺そうとマゲイアは動く。


「うわぁああ!硫酸の雨だ!」


「こんな中じゃ、ポーションなんて作れない!」


「マティアス様逃げましょう!もう終わりです!」


「まだ…終わってない!嘆きの慈雨がそこにあるだろ!」


しかしそれでもマティアスは止まらない、全身が爛れ血が溢れようとも止まらない…その様に、マゲイアは思わず手を止める。


「やめないのですか?痛いでしょうに、苦しいでしょうに」


「…痛い程度やめるなら、魔術師になんてなってない」


かき混ぜる、中和剤を作り続ける。それは硫酸の雨などなくとも苦しい道のりだ。火傷するような蒸気の中で集中を切らさず作業するのは…苦しいしやめたい。


けどそれでもやめないのは…こんなの、初めての経験じゃないからだ。


「苦しい程度やめるなら!ここまで来ていない!私達魔術師はいつだって!苦しくて、悔しくて、辛いと口にしながらも研究を続けてきている!時に命を落とす者もいる!それでもやめないのはなんでだ!決まってる!『そうするべきだと魂が叫んだ』から!」


「ッ……」


「やめたくてもやめない、己を励まし研究を続け、いずれそれが誰かの命を救うと信じているから!そう思わずにはいられないから!魔術師は進むんだよッ!」


マティアスは叫ぶ、ここに至るまでの研究がどれだけ苦しかったか。自分以上の才能を見せられどれだけ悔しかったか。劣等感を抱えそれでも続ける研究がどれだけ辛かったか。だがそれでもやめなかったのは今やっている研究が、自分の歩みが、誰かの助けになると信じられたから。


それはここにいる魔術師も、イシュキミリだって同じだ。なんと言われても、何をされても、歩みを止めないのが魔術師なんだ。自分が良いと思ったものに邁進するから、人は何かを作り上げ成し遂げられるのだと、彼は語る。


例え血が出ようとも手は止めない、魔術師とはそういう生き物だから…そうしなければ生きられないから。こうしているんだ。


「だから…だから!」


「マティアス様!」


すると、近くの立っていた魔術師が…彼のかき混ぜる鍋に、作っておいたポーションをバケツ一杯に溜めて突っ込み…。


「中和剤の材料となるポーション、出来てます…追加分!作ります!」


「君……ああ!頼む!」


止まらない、マティアスの言葉に励まされ…一人動く、硫酸の雨の中、器具さえも溶ける中、動く。


「お、俺も!材料こっちに持ってきてくれ!」


「防護用シートで守れ!材料を!器具は後でいい!無ければ台所の鍋でもいい!」


「続けるんだ!失敗すりゃ痛いじゃ済まないんだ!」


「……………」


やがて全員が本文を思い出したように、動き出す。硫酸の雨に打たれ血を流しながら、痛みを堪えて動き出す…その様を見たマゲイアは呆然として…。


(素晴らしい……)


マティアスの言葉はマゲイアにとって分からないものでは無い、寧ろ彼女も思っている話だ。自分もかつては魔術を極める事が何かのためになると信じていたんだ、力をつける事が自分の周りを助けることに繋がると信じていたんだ。


だからこれだけ強くなれた、手段を選ばなかったがそれでもマティアスの言葉はマゲイアの原点。止まれないから止まらない…か。


(懐かしい言葉です、まさかここで聞くことになるとは…)


かつてを鑑みて、マゲイアは心が洗われるような感覚で空を見て……マティアスを見て。


「ここにいる魔術師は、私と同じ心なんですね…」


理解する、ここにいる魔術師達の心は私と同じ物だと、きっといつかは成し遂げるだろう…だから。


「フッ……」


ああ、だから…だからこそ……。


「ふ…ふっ…ふざけるなぁああああああああッッッ!!!」


絶叫、頭を掻きむしり激怒するマゲイアは怒りに満ちた目でマティアスを見る。許せない、許す事ができなくなった!


「お前が!お前風情が!愚民が私と同じ心を持ち私と同じ領域に来ようとするなァッ!!!ここは選ばれた者だけの領域ッ!誰も!私に近づこうとするんじゃねぇえええええ!」


吠える、許せないのはマティアスが自分と同じ原点を持っているということ。だってそうだろう、自分と同じ原点の心を持ち進み続ける魔術師達?このままいけばこの魔術師達はいずれ自分と同じ領域に来るかもしれないだろう。


それはダメだ、選ばれた者は少なく無くてはならない。でなけれな特別性が薄れる。自分は特別なのだ…その特別を奪おうとする者は誰であっても許せない!


「消えろ!もう甚振らない!一瞬で全員消してやるッッッ!!」


両手に魔力を集め、熱に変え、マティアス達に向ける。それでも自分を見ずに作業を続ける魔術師達にマゲイアの怒りを頂点に達し…。


「死に晒せッッッ!『火雷招』ッッッ!!」


複製した火雷招を手元に作り出し、放つ…マティアス達に、それは一瞬でマティアス達に届き、全てを消し去り────。


「マティアス殿ッッッ!!『ダイアモンドフォートレス』ッッッ!」


しかし、その瞬間横から飛んできた影が魔力の壁を作り出し火雷招を防ぐのだ…その影は。


「レイダ殿!」

 

「すまん遅くなった!」


魔術御三家の一角、軍服を着た女魔術師レイダ・カシオペイアが全力で防壁を張ってなんとか火雷招を防ぎ続ける。今の今まで姿を見せていなかったレイダがここで救援に入ったのだ。


「レイダ殿!あなた今まで何処に行っていた!」


「嘆きの慈雨を!破壊していた!」


「何!?」


「私は軍部に所属してると言ったろ!マレウス軍南方駐屯団に連絡して!南部全域にて発生している嘆きの慈雨生成装置を破壊していた!私もそれに参加していたんでな!やや遅く…っなった!」


「まさか…」


レイダの語った言葉にマゲイアは天を見る。やはり気のせいじゃ無い、嘆きの慈雨の暗雲が薄い!さっきよりもずっと薄い!見れば周りの街から上がっていた嘆きの慈雨の蒸気の柱が消えているでは無いか。


やられた、破壊された、全ての街の生成装置が。これじゃあ嘆きの慈雨の量が足りない!雨が…降らない!


「やれマティアス!嘆きの慈雨は本来のものよりずっと小さいぞ!今なら中和剤で制限時間を待たずして完全に消し去れる!」


「よくやった…よくやってくれた!レイダ殿!」


「うぐぁぁあああああ!!愚民共がぁぁあああ!」


「ぅぐぁっ!?」


怒りだ、ただただ純然たる怒りがマゲイアを包み火雷招の威力が上がり、レイダごと防壁を吹き飛ばす。やってくれた、こいつらは…嘆きの慈雨を、私の理想を!破壊した!


「絶対に許さん!愚民…いや、世に蔓延るゲロカス共がぁああああ!全員死ねぇ!」


もう何もかも消し去ってやる、この街ごと。そう吠え立てるマゲイアは更に巨大な魔力球を作り出し、マティアス達に向ける…今度こそ、今度こそこいつらを───。


「いいや、世に蔓延るゴミ…お前だよ、マゲイア」


「ッお前は────」


「『概念錬成・打開』ッッッ!!」


しかし、寸前で…背後から聞こえた声が、発せられた言葉が、飛んできた拳がまたもマゲイアを阻む。しかも聞こえたこの声は…さっき殺したはずの!


「メルクリウスゥァッ!?なんで貴様が生きているッッッ!!殺したはずだァァアア!!」


「私の生死を確認したのかと!言っているだろうッ!!」


メルクリウスの一撃により再び街の外まで殴り飛ばされたマゲイアは吠える、メルクリウスだ。何故メルクリウスが生きている、先程魔力を全て吸い上げ殺したはず…なのにメルクリウスはピンピンしてるどころか、魔力が増している。


そうやって吹き飛ばされたマゲイアを追いかけ、空を飛び駆け抜けるのだ。


「フッ…『概念錬成・無尽』…未来永劫に尽きぬ魔力を錬成するくらいわけないんでな、いくらでも持っていけ!魔力など売るほどあるわ!」


「そんなのありかッ!?」


『概念錬成・無尽』…それは自らの下限値を消し去り、魔力が絶対に失われない状態を自らに付加をする概念錬成。彼女の概念錬成は何かが尽きるという概念すらも自由に操るのだ。これでマゲイアの接収を耐え切ったんだ…。


「だが、またやっても同じです、今度は殺してあげますから!」


だが、それでも実力差は歴然。また同じように殺すとマゲイアは空中で体勢を整え空を飛びメルクリウスに飛び掛かる、今度は魂ごと吸い上げる…!


「そうか、自信があるようだな。なら『それ』はもう必要ないな」


「は?」


しかし、飛びかかってきたマゲイアの手をするりと交わしたメルクリウスはマゲイアに手を当て…。


「返してもらう…『概念錬成・接収』」


「はぁっ!?」


吸い上げる、今度はメルクウリスがマゲイアの中にあるメルクリウス自身の魔力を吸い上げ逆に取り返すのだ。これは間違いなくマゲイアのミラーリング・テイクオーバー…何故メルクリウスがこれを。


「私がただ、闇雲にお前に殴りかかり錬金術と魔力を奪われたと思うか?そんな物織り込み済みだよ…お前の接収が欲しかったんだ、私もな」


「まさか、態と受けて…私の魔術式を解析していたのか!?」


「ああ!原理が分からないものは錬金出来んのでなッ!」


とはいえこれで奪えるのはマゲイアがメルクリウスから奪った分だけ、自分の魔力を取り返すことしかできない、が…それでもマゲイアの精神には強烈なダメージを与えられる。


事実、マゲイアはこの一瞬、自分が選ばれた者であるという絶対の理論が崩れ…放心したのだから。


その隙を、メルクリウスは見逃さなかった。


「魔力が戻った、無尽の分も合わせていつもの二倍だッ!今ならいける…!」


「な、何を…!」


それはメルクリウスの切り札だった、まだ作ったばかりだから魔力消費が激しく体内で魔力を相当数編み上げなければならないから、戦闘開始時直ぐには使えなかった…だが、マゲイアから取り戻した分と無尽で増やした分。


この二つを掛け合わせれば、直ぐにでも出来る…『マグナ・ト・アリストン』の強化形態!


「神を自称する殺戮者が、見せてやる…本物をッ!神形錬成!!」


トラヴィス殿は語った、神とは何か、なんでも作れるなら…神さえも作れるのではないかと、ならば…それを可能にするまでだとメルクリウスは力を高めた。


その結果がこれ、神を形どる新たなる錬金術!


「『ディー・コンセンテス』ッ!!」


「なッ!?」


メルクリウスの姿が光り輝く、髪は白く、服も白く、瞳だけが黄金となり、神々しい姿に変わる…マゲイアは直感で理解するだろう。これは最早…手がつけられない領域だと。


「行くぞ…『コンセンテス・メルクリウス』ッ!」


「ぐっ!?」


瞬間、加速したメルクリウスはマゲイアを拳で打ち抜き地面へと叩きつける。そのスピードは…マゲイアには見えなかった、感知できなかった、というよりこれは。


「がァァアア!!魔力覚醒『エンドレスコンシューマリズム』!『ソニックアクセラレーション』ッ!」


ダメだ認められない、自分より強いなど…カルウェナン以外が自分と同じ領域に来るなど許せないとマゲイアは即座に立ち上がり音速を超える、木々を蹴ってメルクリウスの周囲を走り───。


「遅い」


「がばぁっ!?」


しかし、木々の間を飛んだマゲイアを一瞬で捉えたメルクリウスの飛び蹴りがマゲイアの頬を蹴り抜き、物理的法則に則り吹き飛ばされ始めたマゲイアよりも…更に早く。


「『概念錬成・怒涛』ッ!」


「ぶべらぁっ!?」


叩き込まれる、拳の連打。それは吹き飛ぶマゲイアよりも速く何度も何度も叩き込まれる…次第に痛みの中でマゲイアは理解し始めた、今のメルクリウスは…音速を超えている。


更に早い…光速だ。


「がぁぁっ!?」


「これが…神の力さ、マゲイア」


「ッ!喧しいわ!『火雷招』ッ!」


吹き飛ばされながらも体を回し起き上がったマゲイアは炎雷を放ちメルクリウスを焼き尽くす。これならばと…思ったが、ダメだ…メルクリウスは動かない、防御すらしない。防御しはないが…切り替える。


「『コンセンテス・ウルカヌス』」


その瞬間メルクリウスの体は赤く染まる、炎よりもなお赤く染まる。それはまるで…炎の神の如き威容を放ち、炎の中にあっても涼しげに立ち、それどころか…。


「炎を焼いている…!?」


炎がメルクリウスの体から放たれる熱気に逆に焼かれて消えている。あり得ない…炎が焼かれるなんて、古式魔術が破られるなんて!


「これは炎の神の概念錬成…なんてな、次だ!『コンセンテス・ディアーナ』ッ!」


瞬間、メルクリウスは炎を抜け出しその手に白く輝く銃を作り出し…撃ち抜く。放たれた光弾は世界に引かれた筆の一線の如くマゲイアに迫る。当然防壁やら魔術やらで防ごうとしたが…無駄。


「ぅぎあゃぁぁ!?」


腹を撃ち抜かれ大地を転げ回る。異様だあまりにも、メルクリウスの力が跳ね上がったどころの騒ぎじゃない。これは一体。


「これが、神を形どる錬金…というより『神を再現する錬金』さ」


──ディー・コンセンテス、それは合計十二個の覚醒形態を持つ新たな領域。神を説かれたメルクリウスは自ら考え…この領域に至った。


タネは簡単だ、複数の概念錬成を同時に行えるよう特訓し…その概念を自らに付与する事で擬似的に神となった。シリウスは事象そのものを神として捉え魔術にしたらしい、なら同じ事ができるはずだと。


『移動』と『速度』の概念を自らに付与し『旅の神』としての権能を擬似的に再現した『コンセンテス・メルクリウス』


『燃焼』と『炎』の概念を自らに付与し『火炎の神』としての権能を作り上げた『コンセンテス・ウルカヌス』。


そして『貫通』と『必中』の概念を付与し『射撃の神』となる『コンセンテス・ディアーナ』…このように様々な概念を複雑に絡ませ自らに付与する形態。それはさながら神の如く…。


「見ただろうマゲイア!貴様は選ばれた存在でもなんでもない!」


「ぐっ…うっ!」


「彼らは苦痛と悲哀の中で、それでも歩みを止めないただの魔術師達だ!そしてそれはお前も同じ!」


「違う!私は───」


「ああ違う、お前は少なくとも…お前個人の保身のためだけに力を使った、だから…否定されるのさ」


「ッ……」


その瞬間、メルクリウスは拳を握る。全てを終わらせるために…。


「邪魔をするなマゲイア、お前は…魔術師として彼らに負けたんだよ」


「う、うる…ウルセェええ!!」


マゲイアも拳を握る、迫る、何もかもが気に入らない、メルクリウスもマティアスも世界も何もかも、だからそれを粉砕できるように…私は力を得て、それで…それで───。


「『コンセンテス・メルクリウス』」


しかし、それよりも早く、鋭く、強く…メルクリウスの拳はマゲイアを捉え…。


「『光輝閃拳』ッッッ!!」


「ぐぶぅっ!?」


それは…光速で放たれる直拳。マゲイアの歪んだそれはと違う…真っ直ぐな在り方。それがマゲイアを、全てを粉砕しようとするものを粉砕し…。


「否定されるのが悔しいなら、強くなるんだな…マゲイア」


「ごっ…ぁ」


倒れ伏すマゲイアの前に、メルクリウスは立ち…天を見る。マゲイアが欲した世は…嘆きの慈雨、今消えようとしている。この街での戦いは終わりだと彼女は倒れ伏すマゲイアをため息混じりに見る。


とんでもない奴だったが、なんとかなった…マティアス達はきっとこの後もうまくやって、完全に嘆きの慈雨を打ち滅ぼすだろう。私のここでの戦いは終わった、だが……。


「まだ、終わりじゃないよな」


こちらは終わった、ならば…後は……と、メルクリウスは歩き出す。戦いは終わらない、まだ…まだ始まったばかりだ。エリス…そしてラグナ、必ずデティを連れ戻せ…いや、連れ戻すぞ。

再び書き溜めが尽きたので最終盤にはなりますが一旦書き溜め期間に入ります。再投稿は11/9になります。お待たせして申し訳ありません。

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