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孤独の魔女と独りの少女【書籍版!8月29日発売中!】  作者: 徒然ナルモ
十七章 デティフローア=ガルドラボーク
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604.魔女の弟子と魔極の道者


「死ねェッ!!!魔術師ィィ!!」


「銃を向け、殺意を露わにしたならば…最早加減の対象ではないッ!」


「ぐぶぅっ!?」


襲撃、やや不可解な状態ではありながらも当初イシュキミリが語った形になった。抗議者達が銃を片手に襲撃を仕掛け街は一気に大パニック。やはり連中の目的は魔術師達の虐殺だったんだ。


故に入り口を死守するようにネレイドとメグとアマルトは応戦する…しかし。


(やっぱおかしいぜこれ)


「ぎゃぁああ!痛い痛い!」


手近な抗議者をノールックで張り倒しながらアマルトは周囲を見回し違和感を感じる。奴らの目的は嘆きの雨を降らせ魔術師を無力化してからの虐殺と俺たちは予測した、しかし嘆きの雨は降らず、抗議者達はそれとは関係なく襲ってきた。


メルクが上手く行ったにしても連中の動きに迷いがなさ過ぎる。…それに。


「消えろ魔術行使者!」


「おっと、テメェら!魔術師を殺したいんじゃないのか!」


「その通りだ!だから我々はここに…ぐげぇ!?」


銃をぶっ放してきた抗議者の弾丸を避け、金的を一発喰らわせ昏倒させつつ、アマルトは舌を打つ。こいつらの目的は魔術師の虐殺…だってのに。


(やっぱりだ、こいつら会場以外狙ってねぇ!)


確かに会議場には有名な魔術師が揃ってる、けどこの街は魔術師の街だぜ?魔術師がターゲットなら街の連中を襲ってもいいのに、街の人間には目もくれず会場に突っ込んできやがる。


嘆きの雨にしても、こいつらの異様な動きにしても、なんかおかしい…当初の予測が外れていたとは思えない。ってことは寸前で計画が変わった?なら…俺達の動きが奴らに見抜かれてたってことになるよな。


「お前達魔術行使者がいるから!世界は魔術依存から抜けられない!我々が世界を憂う気持ちがわからないか!」


「チッ、うるせぇ〜なぁ〜!世の中憂うなら拳銃ぶっ放すのやめやがれッ!」


「これは正義の弾が…んッ!?ごげぇ…」


弾丸を剣で弾き返し、相手の太ももに当てつつ一息つく、こいつら雑魚だ。文字通り民間人が銃を持った程度だ、けど数が多いな。


数が多いってことは、指揮してる奴がいる。指揮してる奴がいるってことはこいつらも計画に則って動いてることになる。俺達の計画が漏れていて、当初の計画を変更したとしたら…俺か?俺の潜入がバレてて偽りの情報を掴まされた?


だがならば嘆きの慈雨関連の話を克明に語るのはおかしいし…だったらどっから漏れた!考えたくねぇがこれ…。


(内通者がいるとしか思えねぇ!そしてこの話を知る人間は少ない…俺達魔女の弟子はありえねぇとして、なら…候補は一人しかいねぇよ!)


内通者…つまり俺たちの話を知る数少ない人間。それはつまりイシュキミリということになる。けど…考えたくねぇよ、あいついい奴だもん。


ナリアに覚醒を手取り足取り教えたアイツが、俺に防壁を教えてくれたアイツが、本当は俺達を騙してて…ってか?ありえねぇ、けど内通者がいないって方がありえねぇ。


だとしたら、今会議場にいる奴らが…危ないか!?


「ネレイド!悪い!任せられるか!俺今から会場のみんなに────」


知らせてくる、そう叫びたかった。けど…そうもいかないんだな、これが。


「ぐぅぅっ!」


「ネレイド!?」


すっ飛んできた、ネレイドが。吹き飛ばされた、あのネレイドが。俺の真横を横切り会場の入り口に激突して転がるのだ。


信じらねぇくらい吹っ飛ばされてやがる、ネレイドがあんなトーシロ共にやられるわけがねぇ…ってことは。


「ハーイハイハイ喧嘩の素人皆さんはお下がりお下がり〜!荒事は私に任せてくださいなぁ〜!」


「ミスター・セーフ様!」


ネレイドを吹き飛ばした奴が、人混みから現れる。やっぱり出やがった…多分こいつはメサイア・アルカンシエルの幹部クラス──────。


「ここはセーフさんにお任せを!」


「ってなんじゃお前その頭はッ!?!?」


振り向いた先にいた、幹部と思われる男の方を向けば…唖然とする。なんせそこにいたのは。


『金庫』だ、ダイヤル式の黒い金庫、それが人間の頭部に当たる場所にくっついた黒タキシード姿の紳士がそこにいたんだからびっくり仰天、まさかまさかの人外が飛び出してきやがった、あれが幹部?あれがネレイド吹っ飛ばしたのか!?


「頭…?え?私のこと言ってます?」


「お前以上に頭部が特徴的な人間この場にいるかよ!?」


「嫌だな、金庫なだけじゃないですか」


「十分それだけで勝ち抜けるぜ!?変人トーナメントを!」


「そんなに言うなら私の金庫の中身見ますか?」


「そんなに言ってないと思うけど」


「って暗証番号忘れてたんでした〜!」


「なにお前」


チャチャーン!と言って両手を広げてふざけ倒す金庫頭を相手に、早速疲れる。というかこいつ、よくこの場でチョケようと思えるな。


「何者だお前…人間か?」


「私は人間と金庫のハーフ…」


「お前の父親か母親の性癖ニッチ過ぎるだろ…」


「というのは冗談で…、私はミスター・セーフ!メサイア・アルカンシエルを守護せし『四魔開刃』が一振り、第三刃『陳腐』のミスター・セーフと申します!以後お見知り置きを!」


「四魔開刃?」


「幹部ですよ、幹部ってのを気取って言ってるんですよウチは。ウチのボスがね?そういうの好きなんで」


「いやまぁ幹部なのは分かるけどよ。テメェら民間の抗議団体と魔女排斥のメサイア・アルカンシエルは無関係なんじゃなかったのか?」


「ええ、普段は無関係ですよ。ただ民間組織の方の代表がウチの幹部の一人ってだけです」


「関係大有りじゃねぇか…!」


「そういうわけです、因みに私は今そこの会場をぶっ壊すよう言われてるのでちょっと退いてくれます?それとも暗証番号…言った方がいいですか?」


「上手いこと言った気になるなよ、何も上手くねぇぜ金庫野郎」


「金庫野郎…?誰…?」


「お前以外いるかよ!クソッ!立てよネレイド!こいつの相手疲れる!」


「ごめん…油断した」


剣を構え、ミスター・セーフと相対する。こいつふざけ倒してきやがるが構えに隙がねぇ、何より八大同盟の幹部だ、油断していい相手じゃねぇ。折角こっちには味方がいるんだ、数で押す、周りの雑魚は数合わせにもならねぇし速攻で片付ける!


「メグ!合わせろ!」


「はい!」


「おっと、三対一。こっちの手駒は正直演出以外の役には立ちませんし…こうなったら!皆さーん!出番ですよッー!」


するとミスター・セーフは口元…何処かは分からないが多分口元らしき場所に手を当て大声で叫ぶのだ。すると…。


「ぬぁうん!出番ですなぁ!」


「獣人隊!出るぞ!」


ドゴンと音を立てて地面を引き裂き、その内側から獣人がモリモリと生えてくるのだ。恐らく地下道に待機してた連中だろう…そいつらは周囲の抗議者を自ら蹴散らしつつ包囲網を強化する。やべぇなあの獣部隊!全員雑魚じゃねえ!


「グルルル…セーフ様、我々で片付けておきますので貴方様は会場の中へ」


「いえいえ、仲間は置いていけませんって。みんなでやりましょう…その方が都合がいい」


並いる抗議者達、凡そ数十人。そして一緒に槍だのハンマーだので武装した大型の獣人、キリン、ライオン、鹿、そしてなんかよく分からん犬みたいなの多数…合わせて二十人近く、そして金庫野郎。


ヤベェな、抑え切れる気がしねぇぞこれ…!


「アマルト、メグ…二人は周りをお願い、私は…金庫をやる!」


「気が合いますねぇ背ぇ高ノッポ!貴方は一番危険そうだッ!」


「フンッ!!」


瞬間、ネレイドが拳を握り腰を回すようなフォームで振り抜く…と同時に矢の如く飛んできたミスター・セーフの飛び蹴りが衝突し虚空を揺らし震動が空間に響き渡る。石畳がグラリと波打ち周りの抗議者がまとめて吹き飛ぶ。


凄まじい威力と怪力のぶつかり合い、ってか両方一歩も引いてねぇ!


「お前…超人か!」


「嬉しいですねぇ!一目で人扱いしてもらえるなんて!」


乱れ飛ぶセーフの打撃、見た目だけで言えば枯れ枝のように細く、筋肉がついているようには見えない体。されどそこから繰り出される一撃の重さはネレイドのそれに匹敵する。両者共に圧倒的身体能力を相手に押し付けるパワーファイターにしてインファイター、故にその攻防は両者の間でのみ完結するが…。


(立ち入れない…!)


アマルトはゴクリと固唾を飲む。ミスター・セーフ、あれは間違いなく肉体的超人の類、一度超人になりきったアンブリエルとやり合ったからこそ分かる、あいつらは殴り合いを挑んじゃいけない怪物達だ。


その上ミスター・セーフの実力はかなり高い、下手に手を貸すより…ここは。


「ぐるぉぉおお!!」


「オラァッ!雑魚はこっちに任せとけや!」


突っ込んでくるライオンの戦士の牙を跳躍で避け黒剣を構える。こいつらエリスが言ってた遺伝子組み換えを応用した獣人戦士だよな、魔獣の遺伝子を中に入れてるとか何とか…。


そう考えればなんてことはない、俺なら一目で分かる。こいつらガニメデが使うような不完全な呪術を体に定着させているだけ。なんにも特別なことなんかありゃしない!


「ぐわははは!小さき人間よ!お前の血肉を喰らってやるぞ!この獣人戦士隊十大隊長が一人!牙の戦士レーベが相手をしてやろう!」


「むししし!相手はレーベだけではないぞ!同じく獣人戦士隊十大隊長が一人!逆鱗の戦士ギラッフェ様がお前を叩き潰〜す」


目の前に立ち塞がるのはライオンの戦士とキリンの戦士、二人とも馬鹿デカくて筋骨隆々。ライオンの手に握られる巨大なノコギリとキリンの手に握られる鎖付きの鉄球が俺に向けられる。


こいつらが例の十大隊長、こいつらなら勝てそう…というより、俺との相性バッチリじゃん。


「さぁてどういびろうか!」


「手足をもいでくれる!」


「お前ら、ライオンとキリンでいいのか?」


「む…?」


「俺はもっと、大物で行くぜ…?」


そう言って胸元から取り出したのは、レッドランペイジの毒針だ。そっちが人外に変身してるんだ、ズルっだなんだは…言わねぇよな。


「その四肢、今こそ刃の如き爪を宿し、その口よ牙を宿し、荒々しき獣の心を胸に宿せ、その身は変じ…今人の殻を破れ『獣躰転身変化』!」


「むむぅ!!まさか!」


「変身呪術…本家本元の古式か!」


瞬間、俺の皮膚は赤く染まり、髪の毛も血のように赤くなり、牙は伸び、鋭い尻尾が大地に垂れる。超巨大なレッドランペイジの肉体と身体能力を人型に圧縮した魔獣人状態。そっちはなんの魔獣だ?ランクはいくつだ?こっちはオーバーAランクだけど…戦えそうか?


「行くぜ…!」


「むぐぐっ!ならば!」


「獣魂共───」


「遅いッッ!!」


獣人達が何かしようとする前に、アマルトは動く。大地を砕くほどの踏み込みで突っ込みレーベとギラッフェの間に潜り込むと同時に拳を握り、同時に二人を殴り飛ばす。アマルトよりも数倍大きいはずのライオンとキリンの戦士がただの一撃で鎧を砕かれ、弾かれたパチンコ弾のように空を舞い、近くの顔に突っ込み…瓦礫と共に倒れ伏す。


「どうよ!」


「な、なんだそれは…!これが…古式魔術と現代魔術の差だというのか!」


「だが我々をなめない方がいい、このくらいの攻撃では倒れやることなど出来んぞ…」


しかし、吹き飛ばされたレーベとギラッフェは鎧を砕かれながらも瓦礫を押し退け起き上がる。その姿は更に巨大になっており、魔術としての因子を覚醒させた状態に移行している。


獣人戦士は人間よりも数倍タフだ、膨れ上がった筋肉と人間の皮膚とは比べ物にもならない強靭かつ頑強な体皮は天然の鎧となり如何なる打撃も軽減する。これを一撃で殴り倒すのはいくらレッドランペイジの力でも無理だ…だが。


「グルゥゥウウ!このまま食い散らかして…て…て…ッ!?」


「な…なんだぁ…!?体が…動かなッ…!?息も…出来…な…ッ!?」


「レーベ大隊長!?ギラッフェ大隊長も!?どうされたのですか!?」


「がぼっ…ごぼぼ…」


立ち上がったレーベとギラッフェが、いきなり泡を吹いてその場に倒れ込んだのだ。今の打撃で気絶したのか?とてもそうには見えない。ならなんで倒れたか…決まってる。


「ふぅ〜、お前ら体の中に現代呪術を取り込んでんだよなぁ?お陰で古式呪術が通る通る、簡単に呪えたぜお前ら」


呪術だ、彼らを獣人戦士に仕上げている現代呪術『遺伝子組み換え魔術』…それが体内に残っていたからこそ、アマルトの古式呪術が通ったのだ。体内に呪術の痕跡があるならばそこ目掛けて呪いを放てばいい、本来なら入らないような簡単な呪術もこいつらには効く。


つまり…。


「半端な現代呪術を扱う獣人戦士諸君は、死んでも俺には勝てねぇよ」


半端な現代呪術を扱う連中では、どうあっても古式呪術を使うアマルトには敵わないのだ。


「ぐっ…怯むな!かかれ!」


「へっ!来ますか来ますか!相手してやんぜ!」


大隊長がやられ、それでも向かってくるのは獣人隊一般兵。全員が犬の頭をした犬獣人達が剣を咥え四つ足で突っ込んでくる。それに向けアマルトは尾を立てて迎え撃ち……。


「ッ…アマルト様!会場が!」


「え!?」


その時だった、隕石の如き勢いで頭上から何かが飛来し、会場の屋根を突き破り何かが突入したのだ。反応すら出来ない速度で飛翔してきたそいつが開けた大穴目掛け、何処かで待機していたメサイア・アルカンシエルの兵士達がワラワラと屋根に昇って行くのが見える。


その動きを見ていれば、否が応でも分かる…あれは。


「まさか、こいつら全員囮か!?」


正面に揃った抗議者や獣人達は囮、本命は天から飛来したアレ。俺達が玄関付近で防衛戦を繰り広げている間に一気に敵の懐に潜り込む、あまりに鮮やかな戦術に…舌を打つ。


やられた、敵が会場の中に入っちまった…というか。


(なんだあれ、会場の中から…化け物みたいな魔力を感じる。何がいるんだあそこに)


開いた大穴の奥から、凄まじい魔力を感じる。俺達魔女の弟子全員分を合わせてもまだ足りないくらい、凄まじい量の魔力奔流。恐らくアレが天を駆け抜け会場に突っ込んだ存在の正体だろう。


やばいことになった、完全に敵のペース…けど。


「こっちもこっちで手が離せねぇ!頼んだぜ会場組!」


今会場の中にいるエリス、ラグナ、デティの三人に託すより他ない、こっちもこっちで敵だらけなんだ!大丈夫…エリス達ならきっと。


………………………………………………………


それは、あっという間のことだった。


『襲撃者ですッ!』


バタンと扉を開けて、会場の守衛が叫んだ。襲撃者だと、その声と共に響いた轟音に慄く魔術師達。だがエリスは慌てない、むしろ来たかと姿勢を正す。


『襲撃者はメサイア・アルカンシエルです!』


魔術師達は混乱する、何故今ここに襲撃者が…と。そりゃあ混乱するだろう、なんせ聞かされてないんだから。だがイシュキミリさん曰く今日の襲撃のことはなるべく言わないでくれとの事だった。


無用な混乱を抑えるため、魔術師達には何も言わずに…時が来れば自分が先導すると、彼は言った。そして今魔術師達は混乱の極致にある、今こそイシュキミリさんの声が必要だ。


イシュキミリさんの…。


「ッ……」


声が、号令が、必要だ…というのに。


(動かない!?)


咄嗟にイシュキミリさんを見るが、彼はまるで動いていなかった。寧ろ手元の懐中時計で時間を確認し、落ち着き払った様子で一息整えていた…。


何をしてるんだ、彼は…!


「何してるんですか!イシュキミ─────」


そうエリスが叫んだその時だった。


「失礼……」


「え!?」


イシュキミリさんが何かを呟き、隣に座るデティの顔に手を被せたのだ。そしてその被せられた手から淡い光が放たれ…。


「あ………」


その光をモロに喰らってしまったデティの瞳からフッと光が消え、バタリと音を立てて机に突っ伏すように気を失ってしまった。そんなデティをイシュキミリさんは抱えて立ち上がり…。


え?何してるんだ…彼は、おい…号令かけるって話だったろうが、デティを率先して避難させようとしてる?もしそうだとしたらあまりにもそうは見えない。今エリスの目には…イシュキミリがデティを誘拐しようとしているようにしか…。


「イシュキミリ様!こちらです!」


その時、会議場の壁が破壊され、向こう側からこの会場に侵入したと思われるメサイア・アルカンシエルの兵士が乗り出し…デティを抱えるイシュキミリに手を伸ばしたのだ。そしてそれを受けたイシュキミリさんは…。


「ご苦労、あとは頼む」


「………は?」


そう言って手を取り、開けられた穴の向こうに飛び出し、一瞬こちらを見て……笑ったのだ。


まさか…まさか。


(まさか……イシュキミリ……)


────この時、エリスは今混乱の極致にあった。味方であるはずのイシュキミリがその役目を放棄し、デティを連れてメサイア・アルカンシエルと共に何処かへ消えようとしているのだから。その意図を察する事ができず、思わず立ち止まってしまうのは無理からぬ事。


されど、それでも、エリスという人間は…。


「イシュキミリィッ!!テメェッッ!!」


人を『敵』か『味方』かでしか見ない、そしてその認識を…彼女は一瞬にして書き換え行動に移す事ができる。それがエリスという人間の特異性であり、彼女が数多の戦いを潜り抜けて来れた理由でもある。


理由、動機、真意、謎、今多くの出来事が不明瞭でありどう行動するのが正解であるか分からない緊急事態である。されどエリスはこの瞬間を以てイシュキミリ・グランシャリオを敵として認定した。


どうしてそんなことをするのかとか、何を考えているかとか、今そんなことは関係ない…。


「デティを返せッッ!!」


「チッ、流石に行動が早い…足止めしろ」


「了解!」


飛び出す、風を纏い飛び上がりイシュキミリに飛び掛かるが開かれた穴から大量の兵士達が飛び出してきてエリスの道を阻むのだ。そしてそうやって時間を稼いでいる間にイシュキミリは気を失ったデティを連れて廊下の向こうへと消えていく。


「待てェッ!!!イシュキミリッッ!!」


「チッ!何がどうなっている!」


「皆落ち着け!敵の襲撃があったようだ!守衛は応戦を!魔術師諸君も自衛用の魔術は使えるだろう!ここで迎え撃て!」


いなくなったイシュキミリさんに代わり立ち上がったのはマティアスさんだ、彼は元冒険者としての胆力を遺憾無く発揮し魔術師達に指示を飛ばし応戦の構えを取らせる。


「レイダ!指揮任せる!私は前線に出る!」


「マティアス!分かった!エリス殿!魔術導皇とイシュキミリを頼むぞッ!」


すると席から立ち上がり指揮に向かったレイダさん。そしてエリスの方角に向けて走ってきたマティアスさんは懐から折りたたみ式の杖を取り出すと。


「『エクスフレイムノヴァ』ッ!」


「ぐぎゃぁあ!?」


放たれるのは無数の火炎弾。それが雨霰のように飛来しエリスの前に立ち塞がる兵士たちを吹き飛ばし道を作る。


凄まじい速さの動き出しと迷いのない詠唱、そして何よりこの威力の魔術を軽々と…なるほど、かつて彼が自称していた天才魔術師という肩書きは強ち偽りでもなさそうだ。


「エリス君!緊急事態だ!君の力を借りたい!イシュキミリ君が何かを企んでいるようだ!信じられないが敵と通じていると考えられる。剰え魔術導皇を攫った!連れ戻してくれるだろうか!」


「分かりました!ここは任せましたよ!マティアスさん!」


「ああ!これでも修羅場はそれなりに潜っている!」


会場にやってきていた魔術師達も杖を片手にやってくる兵士達を薙ぎ倒している。考えてみればこの会場にいる全員が魔術師、それも高名な魔術師達だ、そこらの兵士が束になってもやられることはないだろう。


だったらエリスは、迷いなくデティを助けにいけばいいんだ!


「イシュキミリ…何を考えているか、聞かせてもらいますよ!」


そしてエリスは廊下に出て、シャツの第一ボタンを外し気道を確保すると共に…集中し、魔力覚醒を行うと同時に、使う…切り札を!


「…冥王乱舞…点火ッ!」


全身から紫色の炎を放ちながら、肘から魔力を噴射する。エリスから逃げられると思うなよ…イシュキミリッ!!


「待ちなさいィッ!イシュキミリィィイイイイ!!!」


轟ッ!と音を立てて廊下を一気に飛翔するエリスの速度について来れない空気が壁を粉砕し、エリスの後を追うように崩壊が拡散する。廊下の壁を砕きながら一気にイシュキミリを追いかける。


デティを攫ってどうするつもりだ、お前は本当にメサイア・アルカンシエルと関わっているのか、だとしたら今までエリス達に述べていた言葉は全て嘘なのか、全部全部吐いてもらう…殴って蹴って関節逆方向に折り曲げて全部吐かせる!


「居たぞ!魔女の弟子エリスだ!」


「イシュキミリ様に近づけさせるな!」


「チッ」


しかし、イシュキミリよりも先に見えてくるのは無数の兵士達が、既に相当数の敵が入り込んでいるんだろう、廊下を覆い尽くす量のアルカンシエル兵の突撃にエリスは速度を緩めず体をグルリと曲げて…。


「邪魔ですよ…全員」


一々立ち止まって相手するのも面倒だと、魔力を貯めてエリスは一気に兵士達に突っ込み…。


「冥王乱舞・乱龍ッ!」


回転させた体をそのまま弾いて進行方向を無理矢理変える、そして廊下という狭い空間の中で暴れ狂うように壁を床を天井を蹴って乱反射しジグザグと何度も体を叩きつけながら超高速で進む。


ただそれだけで破壊は廊下全域に及びこちらに向かってくる兵士たち全てを蹴散らし進む。


「ぐぎゃぁっ!?」


「なんだこいつ!?」


「は、速すぎる…ごはぁっ!?」


全身を回転させながら足元に防壁を作り、防壁を蹴ることで進行方向を変える、そしてその先で防壁を作り蹴って進行方向を変える、これを繰り返し密室空間で跳ね回るゴム弾のような挙動で進む。


兵士を蹴散らし進む、速度を落とすことなく進む…そして見えてくるのは。


「イシュキミリッ!」


「速い…!もう来たか!」


兵士達の向こうで走るイシュキミリの姿。デティを小脇に抱えて会場の外目掛け走る奴の姿が!


「お前何考えてんだッッ!!」


そう述べる瞬間にも既にエリスはイシュキミリに追いつき、その手をイシュキミリの裾に掛けようとするが…。


「フッ!」


避けられる、防壁で一瞬エリスの動きを阻んだ瞬間に飛び上がりエリスの追撃を回避してきた!


「ただ魔術導皇を避難させようとしているだけですよ!」


「嘘をつけ!なら何故メサイア・アルカンシエルがお前の味方をする!」


「彼らは私が忍び込ませていたスパイです、敵じゃありませんよ」


「お前…この場でシラを切る気か…!」


立ち止まるイシュキミリとエリスは廊下で睨み合う。エリスを見るイシュキミリはいつものように微笑んでいるが…もう信用ならない、こいつは今嘘をついてエリスを煙に撒こうとしている。


「……貴方、敵だったんですか?」


「何故そう言い切れるんですか?私が今言ったこと、全部嘘とは言い切れませんよね」


「嘆きの雨はまだ降ってない、なのに敵は迷うことなく攻めてきた。メルクさんが破壊してから計画が変更になったにしては動きが早すぎる。最初から嘆きの雨が降らないことを前提として…計画が練り直されたようだった」


「…………」


「嘆きの雨に対抗したエリス達の作戦、この話を知ってるのは魔女の弟子とお前だけなんですよ。ならお前が敵に漏らしたとしか思えない」


「分かりませんよ、アマルトさん辺りがポロッと誰かに言ったのかも…」


「ナメんなよッ!あの人が簡単に敵に口を割るか!言ったとしたら…騙されたんですよ、お前に…」


「……もう私を敵として見ていますか」


「理由も、動機も、何もわかりません。お前が実際のところメサイア・アルカンシエルと関わっているのかは分かりません、けど…今この場で…デティを攫おうとしている時点で!お前はどこの誰であっても敵なんだよッッ!!」


エリスからデティを奪うのは許せない、デティはエリスの親友だ、彼女をエリスから引き剥がそうとする奴がいるなら、そいつが例えどんな理由や動機を抱えていて、本質的にエリス達の味方であったとしても許せない…許さない!


エリスはデティを守るッ!!


「最後に聞かせなさい」


「最後…ねぇ、何かな」


「貴方はメサイア・アルカンシエルの一員ですか?それともただ手を貸しているだけですか」


「…………君は結論を急ぐね、だがだからこそここであれこれ弁明しても意味はなさそうだ」


すると、イシュキミリは片手にデティを。もう片方の手に魔導書を構え…。


「なら言おう、答えよう。私はイシュキミリ…魔術解放団体メサイア・アルカンシエルの会長、魔術道王イシュキミリ…君の狙うメサイア・アルカンシエルの首魁こそ、私だ」


「なッ…!?」


精々が、協力者かと思っていた。何かを引き換えに一時的に手を貸しているものと、されどその想像を遥かに超える答えにエリスの動きが止まる。


会長…つまり、メサイア・アルカンシエルのボス?トラヴィスさんの息子たるイシュキミリさんが、エリス達と今まで一緒にいた彼が…敵のボス。それってつまり───。


「フッ……」


エリスは考えを巡らせた、彼が会長であるということの意味を。だが考えは及ばなかった、彼がここでこの情報を開示したことの意味が…。


「魔力覚醒────」


「しまっ…!?」


彼が狙ったのは、エリスの動きを止めること。超高速で動く事ができるエリスの足を確実に止める為、態とエリスが衝撃を受ける情報をぶつけてきた。今の情報は彼の攻撃だったんだ、そしてまんまとそれにかかったエリスは、晒す。


イシュキミリに…いや、八大同盟の盟主に…『一手打たせるだけの時間』を。そうなれば当然使ってくる、使ってくるよ。


魔力覚醒を…!


「『サラガドゥラ・メチカブラ』…!」


八大同盟『魔術解放団体』メサイア・アルカンシエルの会長、魔術道王イシュキミリ・グランシャリオの覚醒、その名も『サラガドゥラ・メチカブラ』。それは八大同盟の盟主達の中でも屈指の異質さを持つ分類不能型魔力覚醒。


それは無敵の覚醒とは呼べないだろう、それは最強の覚醒とは呼べないだろう、だが最も『型から外れた魔力覚醒』と人は呼ぶ。その力を解放した瞬間…エリスの視界は。


「死んでろ、魔女の弟子……『霜の王』」


「─────」


……凍る、廊下が白の氷で包まれ、エリスの体もまた純白の氷像へと変わり、全てが停止する。


イシュキミリの体から放たれた霜が全てを包んだのだ。別名『霜の王』を用いた、これを前にした者は如何なる存在であれ、凍る。


「フンッ、『霜の王』だけでこの有様、その程度で私に勝てると思うか…」


口から白い息を放ちながら、イシュキミリは背を向ける。エリスは動かない、動けない、時間経過で解凍されるだろう。だがそれでも凍傷で手足は動かず、脳に後遺症が残る。二度と魔術戦など行えない体で、歯噛みしていろ。


そんな言葉を口に含んだままイシュキミリはチラリと手元のデティフローアを見遣る。


(強制催眠魔術で意識を奪った、意識が覚醒するまで一時間…それまでに連れ出さねばならないが、問題ない。この会場の警備配置を担当したのは私、安全なルートなら既に確保してある)


デティフローアを連れて凍った通路を歩く。本来ならこの日この場所で嘆きの慈雨を落とす予定だった、だが魔女の弟子がいる以上雨雲が晴らされる可能性もあるし、何よりヴレグメノスの街に刺客が送られた以上計画の完璧なる遂行は難しいだろう。


故に計画を変更した、魔女の弟子が情報を掴んだという情報を掴んだからこそ寸前で計画を塗り替えた。嘆きの慈雨はここではなくヴレグメノスに落とす、発生場所も別の場所にする。そしてここは嘆きの慈雨を待たずに襲撃を行う。


そして、魔女の弟子達に損害を与えつつ…デティフローアを確保する。


(私は残酷でね、魔術を世から廃絶する為なら…手段は選ばないんだよデティフローア。君の身柄を利用させてもらうよ?最も残酷な方法で、魔術を消し去る)


本当はエリスを確保して識で魔術を消し去る予定だったが、それは難しいと判断した。というのもエリスは聞くところによると脱獄脱走の達人だと言う、それを捕らえておく設備は現状ない。


なら非力なデティフローアを使う。だから…。


「悪いね、彼女はもらっていくよ」


より良い計画を遂行し、より良い世を作るため、イシュキミリは凍り果て氷像となったエリスに手を振って別れを告げ────。


「……待…て…!」


「は!?」


瞬間、声がして振り向くと…そこにはパラパラと音を立てて氷の膜を引き裂き、前へ進むエリスの姿があった。


「い、いやおかしいだろう!芯まで凍らせたんだぞ!こんなすぐに解凍されるわけが…!」


「待て!イシュキミリ!」


(くそッ!どうなってんだよ!霜の王で作った冷気をそんな蛹を破るように引き裂いて動けるわけが……蛹?いやまさか!)


エリスの体は確かに凍っていたはずだ、だが今こうして氷を引き裂いて外に出てくるエリスの体は凍っていない、凍っていたのは表面だけ。つまり…。


(防壁の断層で冷気を防いだのか!?)


エリスの口からは白い息が出ていない、それはかつて魔女が行った防壁による断層で冷気を防ぐ法と同じ。エリスは咄嗟に全身を防壁で覆い霜の王の冷気を防いだのだ。故に凍り付いたのは彼女の周りに展開されていた防壁だけ、本体の方には冷気が及んでいなかった、だから凍らなかった!!


「デティは、渡さないッ!エリスの親友を!返せッッ!!イシュキミリ!!」


「チッ!」


動き出す、霜の王では止められないと判断したイシュキミリとエリスは再び動き出す。


「冥王乱舞ッ!」


「展開!魔導箋ッ!炎赫の項ッ!」


そして、エリスの手元に紫の火炎が集まり、イシュキミリの魔導書のページが宙を舞う、そして昂り隆起する二人の魔術は…。


「『冥轟火雷招』ッ!!」


「『久那土赫焉』ッ!!」


弾け、爆ぜ、衝突し、砕く。エリスの手から放たれた超高出力により強化された火雷招と、無数の紙を撒き散らしながら放ったイシュキミリの赫灼が衝突し凍り切った廊下を一瞬で融解させ、石畳が燃え滾り赤熱し形を失い弾け爆ぜる。


超高密度の魔力と魔力のぶつかり合いに音すらも弾き出され会場の一角が吹き飛び大穴が開く。


「チッ!エリスの冥王乱舞が現代魔術で相殺された…あれがメグさんが言ってた魔導箋か!」


全てが吹き飛ぶ爆心地にて飛んでくる赤く融解した石塊を避けながらエリスは舌を打つ。イシュキミリの戦い方については聞いている。エルドラドで一時的に共闘したメグさんが言っていた。


それぞれのページに魔術陣が描き込まれた本、それを引きちぎり発動と同時にページに属性系の付与魔術を掛ける、魔術陣が属性系付与魔術の負荷に耐えきれず自戒する前に魔術を発動、同時に口頭で属性魔術を放つことにより同時に三つの魔術を発動させ単独で合体魔術を発動させる絶技。


今のは炎熱系の魔術陣に炎熱系の付与魔術をかけ口で炎熱系の魔術を発動させた同時並列発動型の炎熱大魔術…。古式魔術にも引けを取らない威力を片手間に発動させるなんて、あいつは確実に魔術師としてエリスより高みにいるか!


「けど、絶対に!死んでも!デティは渡しませんからッ!!」


それでも構うものかとエリスは突っ込む、魔力を点火し急加速し黒煙を貫きイシュキミリを追う。



「ッ私が押し切られただと!?」


一方、その場で立ち尽くしていたエリスとは対照的に魔術同士のぶつかり合いに押し飛ばされたイシュキミリは黒煙を貫いて吹き飛ばされ、石畳の上を滑るように着地する。


吹き飛ばされたのだ、魔導箋と古式魔術のぶつかり合い…それは完全なる相殺に至らず衝撃波がイシュキミリの方に飛んできた。咄嗟に防壁で防がなければダメージを負っていたかもしれない。


(デタラメな威力!なんだあれは!いや当然か!向こうは覚醒している…一方私の覚醒はすでに解除されている。覚醒者と未覚醒者の魔術のぶつかり合いならこんなものか)


油断しサラガドゥラ・メチカブラを解除してしまったのが仇になった。と考えるイシュキミリは指先を噛んで考える。


(どうする、どう止める。サラガドゥラ・メチカブラをもう一度使うか?だが霜の王では止められなかった、やるなら『暁の虎口』か『黄昏の十三階段』のどちらかしかないが、発動まで持ち堪えられるか、あんまり早くすると止められなかった時無用に手札を晒す結果に終わるし…まずいな、時間が足りない)


指を噛んで考える、相性が悪いと。イシュキミリの覚醒の性質上高速戦は不向き、一方エリスはthe・高速戦型。おまけに高火力に超耐久と来た。デタラメだろアイツ、何が弱点なんだ。


『イシュキミリィィイイイイッッッ!!!』


「もう動き出した、ダメージとかないのかあれは」


今手元にあるデティフローアで片手が塞がっている。相手をしてやってもいいが下手に時間を食うと状況が悪化しかねない。そこで移動よりも思考を優先させたイシュキミリは…。


(待てよ、確か奴の冥王乱舞は父の助言で生まれていたな。無数の手札を重ね一枚の切り札にすると…つまり今の奴は切り札を使っている状態、切り札の一枚しかない状態。ならこちらも切り札を使うか!)


その瞬間イシュキミリは宙に浮かせた魔導書からページを数枚抜き取り。


「魔導箋・爆雷の項…『鍾馗天瞳』」


抜き取った十数枚のページを投げ捨てながら走る、廊下の先…エントランスホールに向けて。その時…黒煙を引き裂きてエリスが現れ────。


「待てェッ!!!イシュキミ────」


「『発』ッ!」


指をエリスに向ける…黒煙を引き裂いて牙を剥きイシュキミリに飛びかかってきたエリスに向けて、指を振るう。その瞬間投げ捨て壁や天井に張り付いたページが…炸裂する。


「ぐぅぁっ!?」


爆雷の項『鍾馗天瞳』…貼り付けたページが炸裂する設置型の爆裂魔術。当然その一発一発が現代魔術の域を大幅に超過したレベルのものとなる。その爆裂に飲まれるエリスを見て…イシュキミリは安堵……などしない。


これが時間稼ぎにしかならないのは分かっている。


「ぐぅあっ!イシュキミリ!!デティを返せ!」


事実爆発を受けても止まらないエリスはなおも飛翔を続ける、問題ない。今のは時間稼ぎ…切り札は、こっち。


「来い────」


叫ぶ、大きく開けたホール状のエントランス。天井のステンドグラスが虹色の光を差し込ませるこの空間に飛び出したイシュキミリは叫ぶ。


「─────カルウェナンッッ!!」


切り札の名を、同時にエリスは肘に紫の炎を集め噴射させ…。


「冥王乱舞・一拳ッッ!!!」


放つ、デティを攫うイシュキミリに向け流星の如き拳を…それがイシュキミリを捉え、デティを取り戻すその時だった…。


天より飛来した、雷の如き光を放つそれが…エリスとイシュキミリの間に割り込むように降り注ぎ、エリスの拳を、受け止めたのは…。


「呼んだか!小僧!」


「蹴散らせ!カルウェナン!」


「ッ…!貴方…!」


飛来したのは、白銀の鎧を着込んだ騎士。フルフェイスの兜で顔を隠した天下無双の剣騎士…『極致』のカルウェナン、メサイア・アルカンシエル最強の男にして、イシュキミリの切り札。


それが、エリスの手を掴み…イシュキミリを、デティを前にして、立ち塞がる。


「挑戦を受けたぞ魔女の弟子エリス…さあ、死合おうかッ!!」


「……いつかの…騎士ですか?!」


衝突するエリスとカルウェナン、メサイア・アルカンシエルとの戦いは…より混沌としていく。

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