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孤独の魔女と独りの少女【書籍版!8月29日発売中!】  作者: 徒然ナルモ
十六章 黄金の正義とメルクリウス
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555.魔女の弟子とお前の正義


『え?ルビーギャングズのアジト?知らないわよそんなの。え?日中人がよく通る道は何処って?それたら分かるけど…』


『なんだって?ルビーギャングズのアジトを探してる?知らねぇな、知ってる奴がいるとしたらあの世だけだ。は?夜間営業してる工場や店の場所?まぁ分かる限りなら教えられるけど』


『ルビーギャングズのアジト…知りません、第一知ってたとしても言えるわけないでしょうに。ん?ここらに昔使われてた施設があったかって?ああ…確かこの辺りには廃工場があったはずですけど…それが何か?』


『はい、ルビーギャングズアジト…うーん、分かりませんね。アイツらは何処からか現れて何処かへ消えるので…。なら懲罰隊の本拠地?それなら向こうの方ですよ…っていつのまにか居なくなってるし』


『はぁ?ルビーギャングズのアジトなんか関わりたくもない、あんたも関わるのはやめとけ…え?本当は知ってるって?い…いや知らない…知らないぞ。へ?もういい?そうか…』



聞き込み…なんていつ以来だったか。若い頃はこうやって犯罪者達のアジトを探し当てて仕事をしていたんだ。とは言えあの時はまだ子供だったから分からない事も多くあったし今思えば優秀とは言えなかった。


だがそれでも昔やったこととは忘れない物で、手元のメモ帳には既に多くの情報が集まっている。これだけあれば凡その位置は把握出来る。


「ここだな」


そうして…メルクリウスがやってきたのは路地と路地の間にある細い裏路地の前。この裏路地を抜けると今は使われていない工場があると言う。恐らくルビーギャングズのアジトはここだ。


(奴等のアジトは多くの者が知らない…と言うことは普日中は一通りの少ない道を使っている、そして夜間営業してる店や工場がある場所は避けたいだろう。懲罰隊のアジトからも遠い場所…となるとかなり限られる。そしてアジトに使えそうな廃工場があるのはここだけだ…、試しに近隣で聞き込みをしたら、如何にもな知ってそうな奴も居た。間違いない)


メルクリウスは義憤に満ちた目で前方を見据え息を一つ吐く。ルビーギャングズを許せない、我が正義に反する奴らを許すわけにはいかない。


我が友を傷つけ、ローン社長を傷つけ、不当に盗みを働き…その上でこの街で諍いを起こそうとする奴等の存在を私は許しておけない。故にここで奴等を潰し活動を沈静化する。


(本来なら憲兵に突き出してやりたいが、ここの憲兵は憲兵で信用出来ん。暫く活動出来ないようにすればそれでいい…そのためには、武力による鎮圧が最適か)


私は裏路地の前の壁際に立ち、持ってきたリボルバーを確かめる。安物の骨董品だ…錬金機構も付いていないし弾も一発しか入っていない、使える代物ではない。


私は錬金術で軍銃を作れるが、…必要ない。この銃と一発の弾丸で事足りるのだ。


「…………」


私は弾倉から弾を取り出しギュッと力強く握り。


「『錬金複製』」


もう片方の手には砕いた石を握り…魔力を込める。すると砕いた石が光に包まれ弾丸へと変わる。古式錬金術を用いた超高精度複製…これがあれば私は弾丸を無限に作ることが出来る。だからコピー元になる弾丸が一発あればそれで良いのだ。


「さて、突入か…しかも私一人で」


弾丸を詰め直しながら思考する、本来ならラグナかネレイドがいて欲しい、エリスやデティがいれば心強い。だがこれは私の独断専行…言ってみれば私の自己満足。


良い行いではないのかもしれない…だから仲間は巻き込めない、私一人で終わらせる。


「はぁ〜…よし」


気合を入れる、気合を入れて職務に励む。金を取り返す、資材も取り返す、ローン社長の工場を守って見せる!


「………………」


銃を構えたまま足を音を立てずに裏路地へと突入する。視界は暗くなり、暗視の魔眼を使わねば物が見えないくらい暗く暗くなっていく。


そんな闇の中を進み…奴らのアジトを探す。見張りはいない…か。いや、この匂い。


「ぷはぁー…ふぃー…ダる」


「……………」


物陰に隠れながら道の奥を伺うと、錆びた扉の前でタバコを蒸す若者の姿が見える。あれが見張り?と言うには警戒心がやや薄いな。


よし…あれなら。


「………ん?なんだこの音」


チリン…と小さな音が路地に響き、タバコを咥えた若者が音に気を取られ周りを見る、すると裏路地の真ん中に。


「お?これ100ラール通貨?ラッキー」


地面に落ちている100ラール通貨を見つけ、歩み寄りながらそれをしゃがんで拾───。


「動くな」


「ウッ…」


「声も上げるな、身動きもするな、何かあれば撃つ」


「お、お前…」


しゃがんだ若者の後頭部に銃を突きつける。通貨を投げて囮にし、拾おうとした所を銃で制圧する。しゃがんでいるから視界が制限されるし動きも制限される。私がデルセクト連合軍銃士隊所属時代に編み出した技だ。


まさか、デルセクト人以外にも通じるとはな。


「誰だ…お前」


「それを聞くのは私だ、お前はルビーギャングズの人間だな…?」


「誰が、答えるかよ…」


「そうか、悪いな…聞き方を間違えた」


その瞬間私はしゃがんだ男の首を腕で締め上げながら物陰に引き摺り込みながらこめかみに銃を突きつけ直しながら吠える。


「ぅぐっ!?」


「そこの路地を曲がった先に工場がある。鉄を溶かして加工する工場…そこには今も溶鉱炉が稼働しており、丁度今は工場も休憩時間だ」


「な、何が言いたい…」


「こんな街だ、人間一人溶鉱炉に落ちて消えても誰も気が付かん…。悪いが銃を撃ったら気付かれるんでな…生きたまま落とさせてもらうぞ?それが嫌なら、答えろ…私の質問に今すぐ」


「ヒッ…」


首を締め上げ命の危機を実感させながら脅す。死にたくないなら答えろ、さもなければ殺すと。すると男はみるみるうちに冷や汗を流し始め。


「そ、そうだ…俺はルビーギャングズのカンバーだ。お…お前は?」


「聞くのは私だけだ…ッ!」


「ぅぐぅ!分かった…何も聞かない」


「続けて答えろ、ここはお前たちのアジトか…アジトなら、盗んだ金はここに保管されているか?何処に保管されている」


「そ、そうだ…アジトだよ。盗んだ金は奥の巨大金庫に保管している。けど開け方はルビーさんしか知らない…!」


「別に構わん…」


ここがアジトで間違いないか、ならこのまま突入するか…。


「な、なぁ…答えたんだから。殺さないよな…?」


「夢の中で祈ってろ」


「ちょっ…ぐげぇ…!?」


そのまま首を捻り気絶させ、そのまま扉の脇に引きずり。上着を毛布のようにかけ昼寝している形を偽装する。見張り中にタバコ吸うようなやつだ、居眠りしてても違和感はあるまい。さて…扉だが。


(ふむ、近場に人間はいないか…このまま扉を開けても問題なさそうだ)


魔視で魔力を見るも扉の向こうには人の気配はない。ならばと扉に手をかけるが…動かない、鍵がかかっているか。


「…問題ない」


鍵穴に指を当て、内部に魔力を通す。そして内部で魔力を凝固し防壁を風船のように膨らませ鍵を破壊する。私にもこれくらいの魔力操作は出来る…まぁ錬金術で破壊してもいいんだが、これが一番効率がいいんだ。


「……………」


扉を開け、隙間から銃を差し込むように構えつつ肩でゆっくり扉を開けて周囲を探るが…誰もいない。


内部はやはりと言うかなんというか既に使われていない工場といった感じ。古さは感じない…恐らく使われなくなったのは最近のことだろう。


「さて、やるか」


金庫は奥にある、資材はまぁなんとなく分かる。問題は現状ない、例え銃撃戦になっても乗り切れる。


「………」


耳を澄ませながら奥へと進む、ここは工場の裏方…事務所などがある通路なのだろう。普通なら事務所に金庫を置いておく物だが…多分金庫は作業エリアにあるだろう。作業用の機器を全て取っ払えばそれなりのスペースができる。ここを工場ではなくアジトとして扱うなら物は作業スペースに置くはずだ。


『それでさぁ、昨日変な奴が店構えててよぉ』


『聞いたぜ、癒しマスターだっけ?』


「む…」


ふと、通路を進んだ先の扉から声が聞こえて咄嗟に隠れる。癒しマスター…って昨日デティが言っていた。


「そうそう、昨日そいつから大量に金を掻っ払ってやったんだよ。アイツルビーさんの顔を見ただけでビビりやがってさぁ」


「そりゃそうだろ、この街でルビーさんを恐れないやついないって」


「…………」


デティから金を盗んだ時の話をする二人のチンピラが扉を開けて通路を歩く。武装はしておらず警戒もしていない…だがそれ以上に私が気になったのが。


(若い…)


若いのだ、齢を大体十代前半、ステュクス君よりも更に若い…そんなのがこのアジトにいるのか?そう言えば子供にスリを叩き込んでいるという話もあったな。子供に犯罪を教え込んでそのまま自分の組織に引き摺り込んでいるのか。


だとしたら、許せんな…。まぁあの若者達は脅威ではないから態々傷つけるようなことはせんが。


「じゃあその金でなんか食いに行こうぜ」


「残念、もうルビーさんが持って行ったよ。今頃みんなで飲み食いしてんじゃないか?」


「は!?俺その話聞いてないんだけど!」


「お前寝てたからだろ…」


そうして過ぎ去っていく若者達をやり過ごして、私は更に奥の部屋の扉を開けて金庫を目指す。そうか…頭目のルビーは外出中か、なら今がチャンスだな。


「金庫は…ふむ、こっちか」


更に分かれ道を曲がり、進む。メグから昔教えてもらった足跡を見て人の流れを知る術を使い廊下を進むと…ふと、魔力を感じる。


(この先に…大量の人間の魔力を感じる、百…いやそれ以上か)


扉の向こうから喧騒が聞こえ魔力を感じる。壁に錬金術で穴を開け遠視でそちらを伺うと…どうやら扉の先は元作業用のスペースだったらしく、大きく開けた空間が広がっている。


そしてそこにはカーペットや棚などの調度品が並べられた居住スペースが作られていた。ただ物の配置などなどとっ散らかっており、棚が真ん中に置かれてたり、ベッドが其処彼処に並んでいたり、まるで持ってきたものを好き勝手置いて行ったような混沌とした様相だ。


そしてそこで、ギャング達があれこれと好き勝手飲み食いしている。


『ギャハハ!大儲けだったぜ!』


『ルビーさんに感謝だな!』


『おい酒がもうないぞ、誰か買ってこいよ』


『今レンドン達が例の強盗に出かけてるから帰りに買ってくるだろ』


『おーい、さっき南居住区でスリしたんだけどさ、あのジジイたんまり持ってやがったぜ!』


『ヒュー!なら飯も酒も追加だぜー!』


まさしく好き勝手…と言った感じか。しかもそれらは全て盗んだ物ときた…エラリーに共感するわけじゃないが、これは確かに是が非でも潰したいな。


(さて、金庫は…あった!)


そして部屋の奥に巨大な金庫を見つける。ネレイドよりもでかい金庫だ…しかもダイヤル式、まぁあんな物錬金術を使えば直ぐに破壊出来るが。


それより資材は…。…む!あれは!


「ふぅー、作業終わり…って俺の分は!?」


「ねぇよ、いつまで作業してんだよ」


「しょうがねぇだろ、例の工場からたんまり鉄材やらなんやら盗めたんだから。これで武器作って懲罰隊とセンソーするんだろ」


……どうやらもう、資材は使われてしまったようだ。作業服を着た物が部屋の一角で溶鉱炉を焚いて工場の鉄材を溶かし型に嵌めて武器を作っていた。あれを使われた以上…もうローン社長の会社は終わりだ。


彼の家族も…家も………。


「許せん…ッ!」


大立ち回りをする気はなかったが…仕方あるまい、どの道ここにいる連中には痛い目を見てもらうつもりだったのだ。戦争など起こさせん、この街には罪のない者も大量にいるのだから!


決意、覚悟、それを正義で燃やし立ち上がると共に扉に蹴りを入れ…叫ぶ。


「動くな!銃士隊だッ!」


「なっ!?」


銃を構え扉から飛び出ると共に叫ぶ。デルセクト国家連合軍ミールニア銃士隊所属メルクリウスだ…と叫びそうになり慌てて口を閉じる。まずった…昔に戻りすぎた。


周りの者達は私を見てキョトンと目を丸くして…。


「銃士隊…?そんなのいたか?」


「いや聞いた事ないけど…」


「ってかアイツどうした、カンバーは!見張りしてたろ!」


「あの野郎銃持ってるぞ!」


慌てて周りの者達が周りの鉄パイプを持ったり銃を手に取ったり…突然の敵襲に備えるが、どいつもこいつも素人ばかりだ。


「貴様らに問う!ローン社長の工場に盗みに入ったのはどいつだ!」


「ああ?テメェあの工場の人間か!一人で俺達に復讐でも来やがった」


「違う、金と資材を返してもらいにきた…今ここで全て返してローン社長に詫びを入れたら、許してやる」


私がそう語るまでに…既にギャング達は私を取り囲み始める。最初から話を聞く気はないよな、分かっている…これは私なりの通過儀礼みたいなものだから。


「悪いな、資材も溶かして使っちまったし…金ももう無い」


「なら資材を工面しろ、働いて金を返せ…」


「いやいやそもそもさぁ…俺達に銃向けて、生きて帰れると思ってんの?俺達ルビーギャングズだぜ?命令出来る立場じゃ…ねぇだろうがッ!」


瞬間、一人の若者が踏み込むと共に鉄パイプを振るい私の頭を狙い──。


「こうやって、ローン社長の頭も叩いたのか?」


「なッ!?こ…こいつ、片手で…!?」


片手でパイプを受け止め…力を込め捻じ曲げる。私はな、怒っているんだよ。力を不当に使い、罪なき人を傷つける事に躊躇しない乱暴者というのが…私は大嫌いなんだッ!


「乱暴な者には、相応のやり方で仕置きをさせてもらう…」


「こ、こいつ…強いぞ!全員でかか…げぅ…!?」


そのまま鉄パイプを引き寄せ近づいてきた体に一撃拳を叩き込み、拳一発で気絶させる…ふむ、こいつら鍛え方がなってないな。


まるで弱いぞ…。


「テメェ!よくもボーガーをッ!」


「仲間に手を出す奴は許せねぇッ!」


「それは私も同じ事だッ!」


そして全員が動き出す。パイプやナイフを持った悪漢達が次々と迫るそれを素手で捌く、振り下ろされたパイプを回避しながら体を回した蹴りで男を叩き飛ばし、掴みかかってきたその手を逆に捻り上げ体を持ち上げ投げ飛ばしナイフを突き立て突っ込んできたギャングのナイフを平手打ちで弾き顔面に拳を叩きつけ鼻血と共に打ち倒す。


「こ、こいつ懲罰隊よりも強えぞ…!?」


「何者だよ…工場の作業員じゃねぇ!」


「この…ざっけんなぁぁあ!!」


ギャング達の中で一際大きな体を持った悪感が怒りと共に突っ込んでくる…それに対し私は。


「フッ…『Alchemic・bom』」


「ごへぇぁっ!?」


そのガラ空きの胴体に掌底を叩き込むと同時に身につけたグローブの手のひらの部分だけを爆発物に変え破裂させると共に爆炎によって吹き飛ばす。


拍子抜けだ…。


「なんだお前達、街で恐れられるギャングと言う割にはてんで弱いじゃ無いか。まるで場数も踏んで無い…本当にギャングか?それともこの閉鎖空間ではこれで通用してしまうのか?」


「う、ウルセェ…俺達ぁ幾多の新参ギャング達をぶっ潰してこの街の玉座に座り続けてんだッ!テメェなんかに負けるか───がはぁっ!?」


「達者なのは口だけか…!」


数はいる、だが強いのは一人もいない。どいつもこいつも弱い…ラグナ風に言うなれば喧嘩だけ達者なチンピラだ。それでも…振るおうと思えば暴力なんて誰にでも振るうことが出来る物、力のあるなしは最早関係ない…。


「クソッ、ルビーさんさえ居れば…ルビーさんさえ来てくれればお前なんか一発なのに!」


「弱い者には強く出て、強い者には他人頼りか…つくづく呆れ返る奴等だなお前達は、その行動に信念もなければ意志もない、ただ惰性で他人から巻き上げることしか知らない奴が…のうのうと他者の成果を貪るな!」


「うるせぇ!俺達の気持ちも知らないくせに…!」


「気持ちだと…?」


こんな暴力に、如何なる気持ちがあるというのだ…。そう私が問いかけた瞬間、直ぐそこの物陰からバッと銃を構えたギャングが飛び出して…。


「死ねぇーっ!」


「フンッ!」


しかし、その銃が火を噴く前に私の拳銃が光を放ちその手の銃を撃ち抜き叩き落とす。…油断も隙もない。


「…気持ちか、理解したくもないな。お前達は所詮悪党…他者を傷つける道を選んだ悪党だ、それに向ける同情などありはしない」


「うぐっ…!」


「そこを…退けッ!!」


「グハァッ!?」


そのまま目の前のギャングを拳で殴り飛ばし道を開く、後ろにはすっかり私に怯えてしまったギャング達がいる。もう私を止める気さえないらしい…。


止める気がないなら、せめて金だけは返してもらおう。資材分の金も補填して返してもらう…どうせたんまり持っているんだろう。


「ローン社長に金を返してもらうからな」


「や、やめろっ!その金は…」


「奪った物だろう、なら…私からも奪ってみるか?」


「う……」


拳銃を突きつけながら金庫に向かう、このまま扉を砂にでも変えて中身を取ろう…そう思い金庫の扉に手を伸ばし。


「…………む?」


ふと、何かが聞こえ…視線を横に向ける。すると…そこには。


「子供…?」


子供がいた、布で仕切られたとある区画が金庫の前からは見えるんだ。その布で仕切られた区画の中に…子供達がいた、一人二人じゃない…二十人三十人…いやもっといるか?


もしかしたらギャングに攫われた子供達か、とも思ったが…その子供の手には。


「拳銃…?」


「フーッ…フーッ…!」


子供が涙を堪えながら、拳銃を手に…私を睨みつけていたんだ。そして子供は私に向かって…こう言う。


「お兄ちゃん達に手を出すな!悪者っ!」


「お兄ちゃん…達…?ギャングのことか…?」


「やめろお前達!手を出すな!奥に引っ込んでろ…殺されるぞ!」


…私の脳は、一瞬停止する。何が起こっている、なぜ子供が…いやスリを叩き込み金儲けの道具にするために、ここに集めているのか?しかしその割に子供達の身なりは良い、痩せて細っているようには見えない。


何より、その目に浮かぶ涙は…本物の涙、その目が宿す私への敵意は…本物の敵意。


「お兄ちゃん達は!僕達を守ってくれてるんだ!」


「そうだそうだ!この街の薄汚い大人から!僕達を!」


「あたし達…ルビーさんに守ってもらわないと…生きていけないの!だからお願い!そのお金は取らないで…!」


「…なんだと……」


これは一体…どう言うことなんだ。


……………………………………………………………


「はーい、お待たせしましたー。グレープエードになりまーす」


「いやっほー!ありがとうナリアちゃーん!」


一方、酒場で今日もウェイトレスとして働くナリアは可愛らしいフリフリのエプロンを着てお客さんにジュースを運ぶ。するとお客さん達はなんとも嬉しそうに飛び跳ねて喜ぶんだ。


ナリアがこの店で働いてもう十日。その間にナリアはすっかりこの酒場の名物ウェイトレスの地位を確立し、多くのお客さん達に親しまれている。この汚い酒場には懲罰隊も来ないし、安心して働ける。


いい職場だとナリアは思っている、何より常連さん達に可愛がってもらえるのがいいんだ。…今日もその常連さん達が店の中いっぱいに来て、僕を歓迎してくれる。


「いつもいつもありがとうございます」


「いいんだって、ナリアちゃんの歌が聞ければそれでさ!俺達もうすっかりナリアちゃんのファンなんだ!大ファン!」


身なりの悪いお客さん達は僕の歌を褒めてくれる。一度サービスとして歌ってからもう毎日のように来て歌を所望してくる。僕も歌が歌えて楽しいし、何より楽しんでくれるお客さんがいるのはありがたい。


ただ一つ…問題があるとするなら、その毎日来てくれる常連のお客さんというのが。


「ね!ルビーさんも聞きたいっすよね!」


「うんうん私も聞きたいや!ナリアちゃんの歌ッ!この地下は娯楽が少ねぇからさー」


ルビーギャングズなのだ、特にそのリーダーのルビーさんは毎日いろんなお客さんを連れて僕に会いに来てくれている。


赤い髪に、筋肉ムキムキの体、何より纏うリーダー気質…まるでラグナさんを想起させる彼女に僕もなんだかんだ親近感を抱いて今日まで仲良く接してきた。仲良く接してくれていたんだ…。


「ねね!ナリアちゃん!ナリアちゃんも一緒に飲もうよ!前言ってたじゃん?グレープエードが好きだってさ!奢るから!」


「ははは、まだ勤務中ですよ」


「えぇー!真面目だなぁ〜…けどその真面目さがいいんだよな、うん」


「おいおいルビーさんがなんか語ってるぞ〜!」


「うるせぇ!大ファンなんだからいいだろ!」


ギャハハハハ!と笑えば他のお客さんも笑い出し、酒場のマスターも笑い出す。ルビーさんは多くの人から恐れられると同時に、一部の人からは好かれている。特にこの街で上手くやっていけない人達には好かれている。


「よっしゃー!今日ご来店の皆皆様ー!今日はこのルビーちゃんの奢りでーす!高い酒飲め飲めーっ!」


「よっ!流石はルビーの姉御!」


「ギャングでもない俺らにも太っ腹なんて流石だね〜」


「いいってことよ!こんな街だ!たまにゃあパァーッ!とやらなきゃ干からびれちまうぜー!」


好かれている、それは彼女の気風もそうだが…何より彼女は『弱者に対して非常に優しい』のだ。故に酒場に集まる弱い者達…怪我で働けない者や老人達には好かれていると同時に、彼らに力を貸している。


「ルビーさんルビーさん!」


「おお、どうしたチビ達!」


「前教えてもらった方法で靴磨きしたらいっぱい稼げたよ!はい!ジョーノーキン!」


「がはは、ありがとよ。けど分前は二割でいい、それよりお前もなんか食おうぜ!友達呼んでこいよ!私が奢ってやる!」


「やったー!」


ルビーさんは靴磨きの少年たちに自分の名前貸してただの力ない子供達に立場と後ろ盾を与え、地位を確立させていると言っていた。事実彼女の下には多くの子供達がいる、ルビーさんが靴磨きの方法を教えて…生きる方法を教えているんだ。


「ルビーちゃん、最近足が痛くてよ…どうしたらいいかな…」


「また古傷が痛むのか?よっしゃ!うちのメンバーに薬調合出来る奴がいる、そいつを紹介するぜ」


「ありがとよぉ、こんな老いぼれにも優しくしてくれて」


「いいんだよ、ほらクソジジイ!寿命も残り少ねぇんだから酒飲んどけ」


「あぁ、ありがたい」


困っている人には手を差し伸べる…それが彼女の信条らしい。事実ルビーさんに僕の身の上を果たしたところ『金が必要ならいつでもいいな!私が用意してやる!』と言ってくれた。


そう言って渡してくれたお金のおかげでデティさんの不足分も払えたし…ありがたいんだけど。


「あの、ルビーさん…このお金って、盗んだ物なんですか?」


「ん?ああそうだよ、つっても私は貧乏人からは盗まない。工場やチクシュルーブ直轄の商業店からしか盗まないんだ。アイツら金持ってくせにそれをみんなに分け与えないからな…だから私がこうして金の通り道をつくってんのさ」


それが彼女の信条だと語る。工場やカジノみたいな店はチクシュルーブ…ソニアからの資金援助がある。だからいくら盗んでもソニアは湯水のように金を渡してくる。故にこうして盗み出し弱い人たちや酒場みたいな店に落としているのだとか。


…僕は彼女を良い人だと思っている。彼女の在り方はまさしくエトワールの冒険活劇に出てくる主人公みたいだから…。


でも…昨日、あんな話を聞いちゃったら…。


「その、このお金は誰から盗んだんですか?」


「え?ええって確か…癒しマスターとか言う馬鹿野郎からだよ。アイツうちのチビ達が職場にしてる通りを占領して客を全部奪っちまいやがった。デケェ店を構えてよ…チビ達が立ち退かざるを得ない状況だったからな、ぶっ潰してやるついでに金をもらってきた」


「そうなんですか?」


「ああ、靴磨きのチビ達にとって出勤する人間の多いあの通りは文字通り生命線だ。そんな食い扶持を潰されたらチビ達が生きていけない。だからあの子達の食い扶持を確保するためにやった、優しいナリアちゃんは容認できないかもしれないが…この街じゃこのくらい乱暴にやらなきゃ取られちまう、取られたら生きていけない」


癒しマスターってデティさんだよね…。デティさんもこの街に来たばかりでそう言う詳しいルールを知らなかったんだ…。そう言う理由があったのか…。


「あの…その癒しマスターって人、女の人でした?」


「ああ、偉そうな奴だったよ。まぁ気骨はあったがな…」


「…その人、僕の友達です。大親友って言ってもいいくらいの」


「えぇっ!?」


その瞬間ルビーさんはギョッとして立ち上がり。


「ま、マジで?ナリアちゃんの知り合い…いや親友!?マジか…す、すまねぇ。私そんなの知らなくて…」


「すみません、彼女も僕もこの街に来たばかりでルールを知らなかったんです」


「いやいや、こっちも…そっか。じゃあ悪いことしたかな」


やっちまった…と頭を抱えて机に突っ伏す彼女を見てると、やっぱりシャナさん達が言ってたような悪い人には思えない。やってることは荒っぽいけど理由もあるし…。


もしかしたら、僕達の協力者になってくれるかもしれない…。


「あの、ルビーさん。それじゃあこの件と引き換えに教えて欲しいことがあるんですけど」


「ん?なんだい!なんでも言ってくれ!力になるよ!」


「僕達居住エリアの地下に行きたいんですけど…方法ってありますか?」


「何?居住エリア?…ふむ」


するとルビーさんは腕を組みグレープエードを一飲みして。


「まずこの街から行く方法はない、この街から行ける場所は地上だけ…そこも分厚い扉で仕切られてるから落ちてきたやつは二度と外には出られないようになってるから、実質行ける場所はない…当然居住エリアにもな」


「そんな…」


「でも正規の手段じゃないならいけるかもな…例えば街の郊外に滝があるだろ」


「え?はい」


「あれは地下パイプが破損して出来た滝だ。あれの中を入っていけば何処かには着くかもだが…」


「地下パイプ…」


あ、そうか。そういえば僕達も元は居住エリア…ロクス・アモエヌスの地下を破壊しここに落ちてきた、あの水の流れに乗って…ならそれを遡っていけば、或いは居住エリアの地下に行くこともできるかも!


「まぁあんな流れの急な水の中を通っていくのは実質無理だから…うーん、ないかなー行く方法」


「いえ、僕の友達にあり得ないくらいタフな人がいるのでその人に頼んでみます」


「お?そう?にしてもなんで居住エリアの地下になんか行きたいのかね…」


「実は僕達────」


と、ルビーさんに色々説明しようとした…その瞬間だった。


「ルビーさん!ヤベェよ!アジトに襲撃だ!」


「何ッ!?」


店にギャングの人が走って突っ込んでくる。アジトに襲撃…その話を聞いた瞬間ルビーさんは立ち上がり。


「懲罰隊か!?」


「分かりません!けどやばいよ!めっちゃ強え!みんなでかかったけど手も足も出てない!」


「まずい…今アジトには子供がいるんだ!クソがッ!どこの外道だ!」


するとルビーさんは鞄からラールの入った袋を取り出しドンと置くと。


「ここに金置いてく!余ったやつはナリアちゃんの親友に返す!私は今からアジトに行ってみんなを守ってくる!」


「ルビーさん!俺達も行くぜ!」


「馬鹿野郎!アジトの奴らで勝てないならお前らがいても同じだ!いいか絶対ついてくるなよ!クソーっ!」


そしてルビーさんは一気に走って飛び上がり家屋を超えてアジトへと向かう…。


行ってしまった…出来れば彼女に協力を仰ぎたかったのだが。…いや、僕一人で決めていいのかな、みんなに相談したほうがいいかもしれない。


僕がルビーギャングズと一緒にいることは、結果的にはみんなに伝えられていない。昨日の話の感じを見るにみんなルビーギャングズに悪印象を持ってるし…。よし、今日の夜僕が説得してみよう。


…………………………………………………


「ルビーさんは!僕達みたいな子供を!ここに置いてくれているんだ!」


「あたし達…まだ靴磨き上手くできないから…、食べ物…自分で買えないから…」


「……………」


メルクリウスは愕然として動けなかった…。子供達が語る言葉が真実だとするなら、自分は今…何をしていることになるんだ?


いや、いや待て!


「君たちは…騙されてるんじゃないのか?ルビーギャングズは子供達にスリを教えていると言っていたぞ!」


「それは僕達が勝手に頼んでるだけだ!そうしなきゃ…お金を稼げないから!」


「何…?」


「この街は僕達みたいな子供には生きられない…だから、こうするしかないんだ!」


「…………」


先程まで怯えていたギャング達も子供達を守るために勇気を出して前に出る。子供達もギャング達を信頼して…任せるように身を引く。そして私は再び取り囲まれ…。


…抵抗する気が、なくなる。


(子供達を…守っていたのが、ルビーギャングズだと…ならこのお金は子供達を食わせるための…?)


ギャングにも子供にも嘘偽り見えない、つまり彼らは本当に子供達を守っていたことになる。それを相手に…私は、ロクに真実も調べず力を振るったことになる。


それはつまり、私が何よりも唾棄すべきと考えている乱暴者と同じ…。


「…ッ………」


一気に血の気が引く。私の正義は…なんだ、弱いものを助けるのが正義だ…だが今私は弱いものに味方する者を虐げている。これは…正義なのか?


分からない…分からなくなってしまう。


「子供達には手出しはさせないぞ…!」


「俺達にはこう言う生き方しかできねぇんだ…!」


「…………うるさい…!」


思わず口を割いて出た言葉はまさしく私が今まで追い詰めてきた犯罪者も同然。私が今まで抱えてきた正義が…刃になってしまった瞬間を自覚し、心が折れそうになる。


己の拳を見る。私は今…一方向だけの視点で彼らを悪として捉え、暴力を振るった、そんなのまるで…。


「…ッ…くそ…!」


「な、なんだアイツ…急に大人しくなったぞ」


「俺達を油断させる気かも…」


…どうすればいいんだ、私は…何が正しいんだ…何をすれば、正しくなるんだ…。


そう私が悩み抜いた瞬間だった、部屋の扉がこじ開けられ、跳ね飛ばされ…向こうから何かが飛んでくる。


「誰だッ!うちのアジトに襲撃かけた馬鹿野郎はッ!」


「ルビーさん!」


「やった!ルビーさんが来てくれた!」


ルビーと呼ばれる女が飛び上がり、私の前に立つ。その身から轟々と激る魔力を私に向けて…その目をこちらに向ける。あれが…ルビー・ゾディアック。まるでラグナのような気風だ…。


「テメェだな、よくもみんなをやりやがったな!弱い奴ボコって悦に入ってるとこ悪いが…もう好きにはさせねぇからな」


「………」


「黙ってないでなんとか言いやがれ!私は私のダチと子供達を傷つけるやつは、許さねぇんだよ!」


「…………」


あれがギャングのボスか、彼女はどうやら仲間と子供を守るために駆けつけたようだ。そんなとまるで…。


「ルビーさん頑張ってくれ!」


「ルビーさんだけが僕達の希望なんだ!」


「そんなやつやっつけちゃって!」


「おう!任せとけや!ぜってぇ守ってやるからな!」


…周りのみんなはルビーを信頼し、彼女に救いを求め、ルビーはそれに応じる。その様はまるでルビーに正義があるようで、私と言う悪を打ち倒すようにも思える。


いや間違いなく、この場では…私が悪だ。


「クソッ…!」


「何がクソだ…!ぶっ死ねやぁっ!」


「ぐっ!?」


飛んでくる鋭い拳が私の頬を射抜き吹き飛ばし金庫に叩きつける。痛い…なんと痛い拳なのだ…。


「ルビーさん!そいつその金を持って行こうとしてます!」


「あんだと…!この金はな!ガキどもの食費なんだよ!」


「…盗んだものだろ、工場から」


「ああ?お前しらねぇのか?」


「何がだ…」


「工場ってのはな、いくら物が盗まれても直ぐにチクシュルーブから補填が入るんだよ、あの工場のオーナーはチクシュルーブだからな」


「何!?だが社長はもう終わりだと…」


「なら今から工場行って確かめてみろや…。いくらでも補填が入るなら、ガキのために使ってもいいだろうが」


「………」


そんな、ローンさん…あの話は…嘘だったのか。いや…私がもっと調べていれば…よかったのか…!?


「それをお前!拳銃を持って!攻め込んできやがって!おかげでアジトがメチャクチャだ!ここはガキ共にとって唯一の居場所なんだぞ!」


「ぐっ!うっ!」


「この街でな!私たちみたいなのが生きていくにはな!金がいるんだ!チクシュルーブから湯水の如く金を貰ってる奴らとは違って!金のない奴らは生きていけないんだよ!」


「ゔっ!かはっ!?」


「力のないやつは!誰かが守らなきゃ!いけないんだよ!」


そのまま私はルビーの殴打の雨を受け、金庫にもたれかかるようにして座り込み…脱力する。打ちひしがれた…拳以上に言葉が痛かった…。


ルビーの言うことは最もだ。彼女には正義がある…そして私にはない。正義のない戦いは出来ない…私は、道を間違えた。


………くそ…。


「死ね!クソ野郎!私は私を頼ってくれるみんなを守るんだッッ!!」


「う……」


抵抗はできない、頭では危険だと分かっているが…もう私には、何も出来ないんだ。


間違えた…、そう後悔する私にルビーのトドメの拳が迫り……。





「ッッッここがルビーギャングズのアジトかぁあああああああッッ!!」


「んなっ!?今度はなんだ!?」


瞬間、工場の壁が吹き飛び…瓦礫と衝撃波にギャング達が吹き飛ぶ。そのいきなりの事態にルビーは静止し、壁を破壊して入り込んだ存在を見て睨む。


私もまた、力無くそちらを見る…今の声は、まさか…。


「エリス…!」


「メルクさん…!そして、ここがギャングのアジトで間違いないようですね」


そこには、何故かバニースーツを着たエリスがいた。瓦礫を踏み越え砂塵を巻き上げ全身から怒気を漂わせて歩いている。完全ブチギレモードだ、何故彼女がここに…。


「テメェ、こいつの仲間だな」


「ええそうですよ、大親友です…そして、エリスもその言葉を返します。こいつの仲間ですね?貴方」


そう言いながらエリスは手に持った二人のギャングを投げ飛ばし床に転がす。ボコボコだ、顔面が腫れ上がり歯がへし折れ、鼻血を垂らして気絶する…二人のギャングが。


「なっ!?レンドン!レイダン!」


「こいつらね、エリスの職場に強盗に入ったんですよ。だからボコボコにしました…一ヶ月は固形物が食べられません」


「テメェ…よくも私の仲間を!」


「やはり仲間ですか、なら連帯責任です…ここにいるギャング全員!地獄に叩き落とすッッ!!絶対に許さないからな!お前ら!エリスの友達までボコボコにして!死んだ方がマシだと思える地獄を見せてやるッッ!!」


戦う気だ…エリスは戦う気だ。だが…ダメだ!ルビーギャングズと戦ってはダメだ!彼女達は倒してはダメなんだ!


「エリス…やめろ、彼女達は悪くない」


「は?お前が私を庇うのか?」


「……どう言う意味ですか、メルクさん」


エリスは目を鋭くしたまま私に歩み寄る、彼女もこの事実を知れば戦う気がなくなるはずだ、なんせルビー達は子供達を守っていたんだ。エリスにとっても…そこは譲れない筈だ。


「子供達を…守っていたんだ、ルビー達は…」


「なんですって?」


「まだ働けない子供達に代わって金や居住地を与え、保護していたのは彼女達だ、だから…盗みを働き、悪事を働いていた…全ては子供達を守るために」


「……真実ですか?」


「ああそうだよ!この街には力のない奴がいっぱいいる…子供も老人もそうだ!そいつらを誰かが守ってやらなきゃいけない!それをやってるのが私達だ!」


「…そうでしたか」


そういうとエリスはフラフラとルビーに歩み寄る。力無き者を守る正義が彼女達にはある…だから私達は、戦うべきではないのだ。


間違っていたのは、私たちの方なんだから…。


「分かったかよ、兎女」


「ええ…よくわかりました」


そう言ってエリスはルビーに頭を下げ───────。



た…かに思えたその瞬間。


「お前をぶっ飛ばさなきゃいけないって事が!よくッッ!!」


「なッ!?ぐぼぁっっ!?」


そして、殴り飛ばす。ルビーの頬に拳を入れて…殴り飛ばしたのだ…エリスが。


な、何をしているんだ…正義はルビー達にあるんだぞ!?それを何を!まさか怒りで暴走してるのか!?


「エリス!やめろ!正義はルビー達にあるんだ!」


「それは!ルビー達の正義でしょう!エリス達のじゃない!」


「え…!?」


エリスは睨む、殴り飛ばされながらも頬を拭って立ち上がるルビーを。


「子供を守る…それは立派です、結構です。弱い者を守る、大いに結構です、エリスも協力したいです」


「なら…」


「だったら!いいんですか!」


「え…?」


「いいんですか!その為なら!どんな事をしてもチャラになるんですか!何をしても許されるんですか!強盗をしても!犯罪をしても!なら法なんかいらないでしょう!誰かの正義と感情的な正しさで事の善悪が決まるなら!この世に司法も国家も必要ない!!」


「う……」


「目的は手段を超越しない!目的が正しくとも手段がどうでもいいなんてことは無い!正しい目的は正しい手段にのみよってその正当性を担保されるんです!盗んだ金で子供を食わせる親が!正しいなんてことはないようにね!」


エリスは吠える、私の弱音をへし折るように…吠え続ける。


「何かを守る為に、ルビー…お前は多くの物を傷つけ過ぎた。エリスの働いてるカジノのオーナーを相手に強盗を仕掛けた…それが正義だと息巻くならエリスは例え悪だなんだと罵られようがお前を叩き潰す!」


「ヘッ、お前もしらねぇのかよ!そう言うチクシュルーブ直轄の店はな!金を奪われても補填が入るんだよ!奪われた金も壊れた店も!お前が帰る頃には元に戻ってるだろうよ!」


「なら治ってるんでしょうね、カジノのオーナー…オンタさんが負った怪我も」


「へ?」


「ここをね、銃弾が掠めてたんですよ。血が出てましたしオンタさんも真っ青になってましたよ、怖い思いをしたんでしょうね…痛い思いをしたんでしょうね。でも貴方の言う事が正しいなら怪我も治って怖い思いも痛い思いも忘れて全部元に戻ってるんでしょうねッッ!!」


「そ、そんなの…治るわけねぇよ」


「そうです!元に戻るなんてことはない!いくらチクシュルーブから補填が入ろうとも!その際追った怪我も恐怖も消えやしない!お前達は力無い者の味方をすると言いながら!結局自分達の裁量一つで奪ってもいい相手を選んで略奪してるだけじゃないですか!力があるのはチクシュルーブだけでその下で働く人間は無関係なんですよ!」


「ぐっ…」


「テメェは結局!自分の力を使って力のない奴から略奪してるに過ぎない!そんなモンこの街を牛耳ってる奴らと同じだろうが!綺麗事吐くな!」


確かに…ローン社長は私に補填のことを言わなかったかも知れない、けれど彼は怪我を負った、ともすれば死んでいたかも知れない傷を。そして彼は工場を愛していた、そこに偽りはない…そんな工場を荒らされて…。


いいわけがないんだ、確かにルビーのやってることは正しいかも知れないが…やり過ぎているんだ。何故そこに気が付かなかったんだ。


「だがな!子供達が生きていくにはなそうするしかないんだ!」


「だったら貴方達がもし懲罰隊に捕まったら!?どうなる!子供達は!」


「そりゃ…自分達で生きていくしかない。だからその為に靴磨きやスリを教えて…」


「違う!殺されるんだよ!子供達も!お前達の仲間と見做されているからな!」


「は!?違う!子供達はギャングじゃ…」


「名前貸してるんでしょう…ルビーの名前を。そりゃつまり子供達も犯罪者の一員として扱われるでしょうよ、それともエラリーはその辺…区別するんですか?」


「……………」


「子供達を思うなら、尚更セーブするべきでしたよ。貴方達は…、お前達がこの街の脅威になればなるほど!子供達はここ以外の居場所を失う!結果的に危険に晒してんだよお前達は!」


「…私は…」


「剰え犯罪を教えて…それで守る?ちゃんちゃらおかしいわッ!!守るならキチンと守れ!半端に守っていい気になるなッッ!!」


「そりゃ…お前…うっ……」


「お前達には、お前達なりの正義があるのかも知れない。その心意気は正しいですしやってる事で救われた人間もいる。そこは事実ですしエリスも認めます、けど…その正義で敵を作ってちゃ…意味ないんですよ。その敵が貴方の言う力のない者達を襲うとも限らないんですから」


エリスの言葉にルビーは完全に反論を失う。この場でエリスが100%正しいとは言えない、彼女は彼女の言う正義をどこまでも忠実に実行するわけではない。だがそれでも…揺るがない物がある。


それは彼女が築いてきた経験に基づく…『現実の非情さ』だ、これは揺るがない。それをエリスは知っているから、ルビー達のやり過ぎた正義を糾弾しているのだ。


「……例え、なんと言われようが…構わねぇ!私は私のダチを傷つけたお前を許さない!絶対に!」


「それはエリスも同じですよ、よくもまぁエリスの友達のメルクさんをここまで傷つけてくれましたね。お前…覚悟は出来てるんだろうなァッ!!」


拳を握る、両者共に拳を握り走り出し突っ込み…激突する。ルビーとエリスの正義が…いや或いは暴力が。互いにぶつかり合いお互いの主張を突き通す。


「オラァッ!」


「遅い!」


ルビーが拳を振るう、しかしそれはエリスには当たらず大振りになったルビーの胴体に向けエリスは視線を飛ばして。


「まずはメルクさんの分だッッ!!」


「ごはぁっ!?」


腹にエリスの拳が突き刺さりルビーの脚が浮き口から胃液が飛び散る。そのまま頭を上げたエリスは腹を抑え悶絶するルビーに向け再度拳を握り。


「貴様はな!暴力で物事を解決した!だからこうなる!分かるか!」


「グッ!暴力を振るいながらよく言うぜ!」


「物事を力で解決しようとすればこうなるんですよ。世の理とは張った糸と同じで力で強引に捻じ曲げればそれ以上の力で返ってくるんですよ…これが、返ってきた分だよッ!!」


「ぐぅっ!?」


エリスの拳が何度もルビーを打つ。ルビーは強いのかも知れない、だがそれ以上にエリスの勢いが凄まじい。


「クソ死ねやぁっっ!!おりゃぁっ!どりやぁっ!」


「うぐっ!げぅっ!?」


ルビーの胴体にタックルをかまして地面に突き倒すと同時に足を掴んで更に持ち上げ地面に叩きつける。エリスの勢いは留まるところを知らない、ブチギレたエリスの馬力は凄まじいと自覚させられると同時に…動き出す。


「ならこれは…」


ルビーが動く、エリスの手を蹴り飛ばし立ち上がると同時に拳に魔力を集め…。


「テメェに返ってくる分だッ!『レッドスティグマ』ッ!」


「なっ!?」


光を放つ、するとエリスの体に真っ赤な紋様が浮かび上がり…。


「な!?魔術陣!?いや違う…これは」


「爆ぜ飛べッ!クソ兎女ッ!」


「ッッげはぁっ!?」


そしてその後叩き込まれるルビーの拳。拳が激突すると同時に紋様が光を放ちエリスへのダメージを増幅させ爆裂する。あの紋様…ルビーの一撃を強化する効果があるのか!?


「ぐっ、防御できなかった…まるで拳が紋様に吸い寄せられたみたいに」


「どんどん行くぜ!『ブルースティグマ』ッ!」


「ッぜいっ!」


続けて紋様を残そうとしたルビーの手を蹴り上げ、手のひらから放たれた光が明後日のほうに向かい…。


「やはり!その光に当たらなきゃいいんですね!『煌王火雷掌』ッ!」


「ぎゃぶっ!?」


殴り飛ばす、お返しと言わんばかりにエリスと拳が爆炎を放ちルビーを向こう側の壁まで叩き飛ばす。しかし…。


「……チッ、この赤い紋様、消えない…」


赤い紋様がまだ消えていないのだ。手で拭っても体から消えない…これに不吉な予感を感じる。


「ッ…私の残す『聖痕』は私が許可するまで消えない。そして聖痕がある限りお前は私の攻撃を防壁で防ぐことも出来ないし、攻撃は…!」


「ぐっ!?」


その瞬間虚空で手を引いたルビーの手に連動してエリスの体が引き寄せられ…。


「お前自身を引き寄せるッ!」


「ぐぐっっ!?」


引き寄せられたエリスを再び殴り飛ばし、今度はエリスを壁際まで吹き飛ばす。聖痕は恐らくルビーの攻撃を強化する効果とエリス自身を逃げられなくする効果があるんだ。こんな出鱈目な魔術があるとは…。


「チッ…痛いじゃないですか。やるようですね!貴方!」


「お前こそ…、私と殴り合うなんてな…そんなバカみたいな格好してなきゃもっと乗れそうなのによ!」


「何が乗れそうだ…この状況を楽しんでんのかテメェは…!暴力の過程を楽しむ外道にかける言葉はないッ!」


(くそッ!こいつまだ魔力が大きくなるのかよ!?どうすりゃ止まるんだ…!つーかこんな強いやつが何で地下に落ちてくるんだよ!)


「…………」


怒りに滾り燃え上がるエリスの魔力、その魔力の猛風にルビーは慄くが…対するメルクは逆に、感嘆していた。


エリスの奴、あんなにも荒れ狂っているのに…その奥底にある魔力はあまりにも凪いでいる。これがデティの言う魂の揺らぎか…エリスの魔力が増幅したから私にも感じ取れるぞ。


アイツ、戦ってる時や怒っている時は…あんなにも冷静なのか。


「チッ!…にしても、厄介ですね…この魔術」


ビキビキと怒りながらも、自らの体に刻まれた聖痕を見て顔をしかめる。これがある限りエリスはルビーの攻撃から逃げる事ができない、そして聖痕もまた消す事ができない。初見殺しにも近い魔術だ…。


「ハッ、そうだろう。この魔術を使えるのは世界で私だけ!この魔術を作ったのは私の母親だからな…!これで私は全てをぶちのめす!弱い連中を虐げるを全てをだ!」


「…フッ、大層な事を言いますね。全てをですか、そんな風に息巻く割には…大した事なさそうですけど」


「な、何ィッ!!」


「今お前が守れてるのは自分の狭い視界の中にある物だけ、いやそれも確かに守れているとは言い難い。結局この状況はお前自身の至らなさと力不足が招いたんじゃないんですか?」


「お…お前ぇぇッッ!!」


「むっ…!」


エリスの言葉に激怒したルビーは再び手を引く…するとエリスの体に刻まれた聖痕がさらにエリスを引き寄せ、エリスの体を宙に浮かせルビーに強制的に接近させ───。


「何度も同じ手が効くかッッ!!」


「なっ!?ごはぁっ!?」


しかし、エリスはルビーの拳をスルリと交わしその勢いのままルビーの顔面に蹴りを入れるのだ。どうやら攻撃は必中ではないようだ。


「貴方!この引き寄せは貴方が手を引いている間だけしか起こらないようですね!なら攻撃の瞬間は解除される!違いますか!」


「たった一発見せただけで対応してくるかよ!何なんだお前は!」


挑発だ、敢えて挑発してルビーの攻撃を誘発したんだ。この状況かつ激怒した状態にありながらこの冷静なカマかけ!私に…これだけの冷静さがあれば!


「ぐぅぅ…!ナメるんじゃねぇッ!この程度で私が負けるかぁッ!!」


「ッッグ!?」


しかしルビーも譲らない、エリスに対して殴り返す。それをクロスガードで防いだエリスはぐるりと体を回し。


「ならこれでどうですかッ!」


「カハッ…ぬぐぅっっ!!」


回し蹴り…靴先がルビーのこめかみを打ち、その巨体がグラリトと揺れ…。


「足りねぇっ!!」


それでも立つルビーはさらに返す。互角だ、殴り合いの面ではエリスが若干上回っているが攻撃の回避が制限されるエリスは貰わなくてもいい攻撃をもらい始めている。総合的には互角…互角か。


(私は…何をしているんだ…)


互角なら、私が助けに入ればルビーを倒せるかも知れない。だが…私にはそれが出来そうにない、確かにエリスの言う通りルビーは全くの正義…純白の存在ではない。


だがそれ以上に、私は…今戦って立ち続ける意義が見出せない。


(私の正義は…こんなにも脆いのか)


考えたこともなかった、犯罪者にも守る物があると…正義を成す者も必ずしも正しいとは限らないと。見方を変えただけで揺らいでしまう正義に寄りかかる私は…果たして立ち続ける事ができるのか。


それが…分からなかった。


「さっさと倒れろよクソボケ兎女ァッ!!!!」


「エリスが兎ならお前は馬と鹿じゃぁあああ!!!」


(エリス…やはり君は、眩しいな…)


殴り合うエリスを見て、やはり私はエリスという人間に憧れを抱いている事を再認識する。彼女はいつだって進む事を選ぶ、迷っていても進む事を選ぶ、滅多な事じゃ立ち止まらない。結果的に間違えても直ぐに気を取り直して進むし自分が必ず正しいと驕らず進み続ける。


だからあんなにも強いんだ、私は迷い立ち止まるから弱いんだ…そして、その都度彼女に助けられているようでは。


「フーッ…フーッ!テメェ…ッ!いい加減にしろッ!」


「お前こそ早く全裸になって泣きながら『ごめんなさいメルクさん』って謝りなさいッ!」


「なんでそこまでさせられなきゃいけないんだよ!?」


そして遂に二人の殴り合いは醜い取っ組み合いになり、胸倉とエリスの髪を掴んで引き剥がそうとするルビーと、ルビーの口に指を突っ込みグリグリと引っ張り肩を掴み更に食ってかかろうとするエリスの二人は…壮絶な殴り合いを続ける体力を無くした辺りで…響く。


「ルビーさん大変です!」


「なんだミュラーっ!今こっちも大変なんだよッ!」


ミュラーと呼ばれた緑髪の眼鏡の女性が外から駆けてきて。


「懲罰隊の定期巡回の時間です!そろそろここら辺に懲罰隊が来ます!静かにしないと!」


「ああ!?…おい兎女!」


「エリスです!エリスはエリスです!」


「エリス!一旦やめにしよう…懲罰隊に見つかるとまずい。お前の言うように子供達が…お?」


「…………分かりました、子供達を危険に晒したいわけではないので」


「きゅ…急に大人しくなった、なんなんだお前…」


子供達が危険だと言われれば即座に身を引き体についた埃を払い一時休戦へと場は移行する。


「でも懲罰隊の巡回が過ぎ去ったら、その時はお前を縛り上げて逆さ吊りにして、全身の皮膚を引き剥がして塩を塗り込みますから」


「ケッ、言ってろ…クソ。こんな強え奴と戦ったのは初めてだ…」


座り込み息を整えるルビーは…エリスの姿を見て。


「なぁ、…お前…私の仲間にならないか?」


「今宙吊りになりたいんですか?仕方ない、猿轡をつけて殴りますか、そうすりゃあ悲鳴も出ないで静かでしょう」


「聞けよ、私らは今懲罰隊と戦争一歩手前まで行っている。このまま行けば確実に戦争になる…ウチのメンバーで戦える奴は少ない、武器も作ってなんとか抵抗出来るようにしてるが…このままじゃ負ける」


「知りませんよ、手前らが売った喧嘩に負けそうだからって他人を巻き込まないでください。ただ子供達はエリスが守ります」


「プライド捨てて頼んでだよ!あんたみたいに強いのがいれば…」


「貴方のプライドが何処へ捨てられようが関係ありません。それにエリスが協力したら?どうなります?懲罰隊をぶっ飛ばせる?その後フレデフォードの統治権でも手にしますか?くだらない、勢力争いは関係ないところでやってください。エリスにはやる事があるんです!」


「強情な奴だな…!」


「お前には三つ…貸しがあるんだ」


「三つ?そこの青髪女とお前の職場…それ以外になんかあるか?お前を殴った件か?」


「殴られて怒ってるわけじゃありません、別にエリスはどうでもいいので。お前は…昨日エリスの友達から金を盗んだんですよ…その件の精算がまだです、それが終わるまでお前は敵のままです」


「友達…私は昨日、癒しマスターとか言うやつからしか盗んでないぞ」


「それですよ、彼女はエリスの大親友ですよ…ッ!あの子の苦労を無駄にしやがって…!雑巾みたいに絞って出てきた血でスムージー作ってやる!」


「は?嘘だろ…まさか、お前もか…!?」


「………お前も?」


「だぁは…気がつくべきだった、お前も癒しマスターも…つい最近現れたって点で同一だった」


「何が言いたいんですか…?」


するとルビーは頭を掻きむしり、力を抜くようにため息を吐き。


「お前、ナリアちゃんの知り合い…いや親友だな」


「なッ!?ナリアさんにもなんかしたのかお前…ッ!お前の顔面をスクランブルエッグみたいにしてやる…ッ!」


「違う!私は彼のファンだ…酒場で知り合って、ここ最近はずっと一緒にいる。あの子が金に困ってるからって金を貸したこともある」


「え!?…あ、あの時のお金…そう言う事だったんですね。ナリアさん…なんでエリスに嘘を…」


「私はな、ナリアちゃんのファンだ…その友達は、殴らない。だからこの一件は…手打ちにしてやる」


「手打ちにするかどうかはお前が決める事じゃないでしょうに、ですがまぁ…少し話を聞く必要があるようですね」


そこでようやくエリスの魔力が収まり、握られた拳が解かれる。それを見たルビーはホッと息を吐き…戦いが終わる。


「一先ずここを離れよう、人の気配を気取られたら問題だ…」


「なら何処に行きますか?」


「共通の知り合いのところへ行こう、ナリアちゃんの酒場だ。あそこは懲罰隊の巡回ルートの外だからな」


「分かりました、メルクさん…立てますか」


「あ、ああ…ありがとうエリス。また君に助けられてしまった」


「別にいいんですよ、エリスはメルクさんの友達ですからね」


エリスに肩を取られて、立ち上がる。情けない話だ…こんなにも情けない事があるものかと感心するくらい情けない。


…私は、…私の正義とは…なんなんだ。

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