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孤独の魔女と独りの少女【書籍版!8月29日発売中!】  作者: 徒然ナルモ
十六章 黄金の正義とメルクリウス
604/835

551.魔女の弟子とアマルト新婚生活


「……………」


「まぁ、ご愁傷様」


呆然と天を仰ぐアマルトに、俺はただただ同情の言葉をかけることしかできなかった。


始まりはアマルトの提案からだった、性別を入れ替える変身呪術にて女性となったアマルトと俺はその変装により見事に理想街に潜入することに成功する。


しかし、さぁこれから金楽園エリアの探索をしよう…って時にアマルトは行き倒れていた逢魔ヶ時旅団幹部サイ・ベイチモをその正体を知らずに助けてしまった。助けただけならよかったのかもしれないが…祟ったのはアマルトの美貌だ。


タリアテッレさんを思わせる凛々しい顔にどこか気易い八重歯、そしてどデカい胸。これがサイにクリティカルヒットしたようでなんとベタ惚れされてしまったのだ。


その上結婚を賭けたポーカーでまさかの敗北を喫し…アマルト・アリスタルコスという男は結婚する事と相成った。


ポーカーで決めると言い出したのはアマルトだしな。今からただを捏ねてもアレだし…、ここは大人しく従うしかないと俺達全員はアマルトの結婚に賛同した。


そしてアマルトに勝ち結婚をもぎ取ったサイはにこやかに…。


『ちょっと今から家に行ってアマリリスちゃんを迎えられるようにしてくるからちょっと待っててねん!』


と目をハートにしながら俺達を金楽園エリアに置いて立ち去っていった。そして今俺達はこうして金楽園エリアの休憩所で待たされているわけだが…。


「いやいや結婚って…無理だろ…」


「別に一時的なものさ、この件が片付いたらまた男に戻ればいいし、男に戻ったらレイズだってお前の事が分からなくなるって」


「そうかもしれないが…」


結婚するのはアマルトではなくアマリリスと言う架空の人物だ。別にそれならしてもいいだろ…と俺は思ってるが、アマルトはあんまり乗り気じゃないみたいだ。いやまぁそうか…しろって言われて結婚なんかできないよな、それが例え一時的なものでも。


だが…それでも。


「悪い、割り切ってくれ…サイと結婚するメリットはあまりにも多い」


「分かってるよ、つまり俺があいつの妻になって身辺を調あげりゃいいんだろ」


サイはあんなのでも幹部の一人だ、その妻になればより一層奥深くに潜り込める。入り込めない奥深くまで容易に立ち入ることができるんだ。


それはつまり、ソニアの計画を止める手立てを探る一助になる。


「ソニアの計画は聞いたよ、実現すれば世界中がメチャクチャになる…それが俺と結婚一つで解決すんのなら安いもんか」


もしこのままソニアの好きにさせれば。ソニアの言う魔女に匹敵する兵器が生まれ魔女の優位性はなくなり魔女大国は超兵器の脅威に永遠に脅かされ続けることになる。


これはなんとしても阻止しなくてはならない。だからアマルトには悪いが割り切ってもらう、その代わり俺は絶対にこの計画を阻止する。


「けど俺…奥さんなんて出来るのかなぁ、不安だぜ。女歴数十分だぜ?それに奥さんになるってことはあれだろ?炊事洗濯掃除にあれやこれやとやらなきゃならんのだろ?いや女がやるべきとは言わんが…アイツぜってぇ出来ねぇし」


「あ、それは多分大丈夫」


「ええ、アマルト様なら大丈夫ですね」


「そこは誰も心配してない…、多分いつも通りやれば…上手く行く」


「ええ…なんで…」


アマルトは幸い魔女の弟子の中でトップクラスに家庭力が高い。いつも料理をやっているから炊事は勿論、掃除に関してもメグから太鼓判を教えてもらえるし、洗濯も進んでやるし、何より気立がいい…のは身内に対してだけだがそこさえ割り切れば多分普通に優良物件だ。


これはアマルトには言ったことがないが、俺は正直なんでこいつが未婚なのか分からない。もう少し外面が良ければ絶対こんないい男は誰も放っておかない。


「アマルト様、上手く良い奥さんを演じて…彼に取り入り、サイの周辺を探ってくださいませ」


「お前らはどうする?」


「基本は一緒にいるよ、けど動ける時は俺達も色々探ってみるつもりだ…まぁ、それでも調査の本命はアマルトになるだろうけど」


「まぁそうだよな…分かったよ。やってみる…いい奥さんだな?うん、なんか普通に楽しくなってきたぞ?中々ない経験だもんな。かるーく俺の色香でコロッと誘惑してみせるぜ」


「お、おう…!」


アマルトって本当にノリがいいよな、無理に納得してくれようとしているだけかもしれないが、今は彼のこう言う性格が有難い。と同時に彼に無理を強いるからには俺達も多少危ない橋を渡ってでも結果を出さないとな。


「よし、メグ…化粧。あと香水も」


「畏まりました」


「オホンオホン、あーあー…んんっ!あー…」


そうしてアマルトが自らを良妻に仕立て上げ…数分が経過したあと。


遂に、サイが現れるのだった。


…………………………………………………………


サイ・ベイチモは碌でなしである。そんな事態々説明されずとも自分がよく分かっている。


趣味はギャンブル、生き甲斐はギャンブル、人生もギャンブル。本職である傭兵もギャンブルをする為にやっている。そもそも傭兵を始めたのだって定職に就かず暴れて憂さ晴らしが出来るから始めたのだ。


そんな生活を十二歳の頃から始め、尊敬するオウマ団長に拾われた後も続け、そしてなんかよく分からんうちに金楽園エリアのエリアマスターなんて肩書きまでぶら下げられても…俺は変わることがなかった。


「………………」


そうさ、俺は筋金の入ったギャンブル中毒者。俺はこんな俺に辟易としている、エリアマスターになって纏った金が入るようになって、この金で美味い飯食って美味い酒飲んで贅沢をしてやろうと思ってもギャンブルが足を引っ張った。


あれだけ生き甲斐だと思っていたギャンブルはいつの間にか俺を絡め取り絶対に逃すまいと食らいついている事に…最近になってようやく気がついた。


変わりたい、今日こそ変わる…次の給料は貯金する。そう思ってもなんか上手くいかない…仲間に相談しても。


『またそれか?お前一年前も似たようなこと言ってなかったか?よく覚えてないが』


『定期的に来るよね、サイのギャンブル断ち宣言。もう無理なんだから諦めなって』


『ンゥ、我慢は毒だぜ相棒。ギャンブルで金が無くなった?いいじゃないかそんな人生も、享楽は金でしか買えないぜ?』


『ピピピ、サイ・ベイチモのギャンブル断ち宣言の成功率…0%』


なんて言いやがる!確かに俺は定期的に気の迷いでギャンブルやめるって言い出すけどさ!今回は本気なんだ!本気の本気!だからオウマ団長にも相談したのに。


『サイ…絶対に一週間後までギャンブルするなよ、絶対にな。俺お前が一週間でギャンブルを我慢出来なくなるのに賭けてんだから。なはは!』


とか言いやがる!クソ!クソクソ!どいつもこいつも!俺は本気で変わるんだ!




……と思っていたのだが、なんということだろうか…俺はまた、給料をギャンブルに捧げてしまった。ガウリイルからは呆れられ…アナスタシアからは笑われ、オウマ団長からは『一週間我慢しろって言っただろうが!』って怒鳴られて…情けない。


情けないと思いながら俺は次の給料日まで残飯を漁って生きることになった。居住エリアに捨てられているフランクフルトを貪りながら…俺はふと、近くの民家を見た。


そこには金楽園で働くスタッフ…つまり俺の部下が…。


『パパー!仕事お疲れ様ー!』


『今日も仕事で疲れたよ。…晩御飯は何かな?』


『今夜はシチューよ、あなた?モリモリ食べて明日もがんばってね』


…家族と温かいシチューを食べていた。それを窓の外から眺めて…俺はたまらなく情けない気持ちになった。今年で三十になるのに何やってんだ俺は。


仕事は出来ないから部下から爪弾きにされ、仲間達からは馬鹿にされ、一人孤独に夜は残飯を漁る日々…。寂しい…寂しくて寂しくてたまらない。


ああ…俺も変わることができたら、家族を持てるのかな。いや…俺みたいなクズと結婚してくれる人なんているわけがないよな…。




そんな風に、諦めたある日のことだった。


『貴方?大丈夫?』


行き倒れ…餓死寸前の俺に、天使が舞い降りたのは。


『私の名前はアマリリス…』


天使の名はアマリリスと言う。目も鼻も口も髪も何もかもが俺の好み…どタイプど真ん中の超絶美人ちゃん。おまけに優しくてサンドイッチを恵んでくれて…俺の心配までしてくれた。


気がついたら俺は、彼女にプロポーズをしてたんだ。結婚してくれって…断られるのは分かってた、ってか実際断られた。けど俺は子供みたいにただを捏ねて剰え申し込まれたギャンブル勝負でズルまでして…彼女を物にしてしまった。


情けない…と思う反面、こんな気持ちも湧いてきた。


『絶対に幸せにしよう』…って、ギャンブルと喧嘩で誰かを笑顔にした事なんてない俺に、そんな気持ちを抱かせてくれた彼女に…俺は人生を捧げる。もうギャンブルはやらない…そう決めて俺は急いで自宅に戻りゴミを全部袋に纏めてゴミ捨て場に走る。


すると、金楽園エリアのスタッフとばったり会って。


「あれ?サイ主任?ゴミ捨てですか?珍しいですね」


「というかもう給料日前なのに元気ですね、いつもなら死んでるのに」



なんて言いやがるんだ、確かにゴミはあんまり捨てないタイプだよ俺は。けど彼女を招くのに臭くて汚い家になんか招けない。だから俺はこう言ってやったのさ。


「俺、今日から変わるから」


ってな、するとスタッフ達は顔を見合わせ。


「プッ!またギャンブル断ち宣言ですか?」


「いつものことですよね、今回は何日持つかな…五日?」


「いや三日だな、三日後に給料が出るから」


「あ!そっか!」


「今回は本気だ!なんせ俺…結婚するから!」


「ああはいはい、取り敢えず僕は仕事があるので」


「自分も〜」


くそ…どいつもこいつも馬鹿にしやがって、絶対にアマリリスちゃんを世界一の幸せ娘にして見返してやるからな!


そして一通りの掃除と換気を物の三十分で終わらせ家を新居同然に…というかほぼ新居だな、ゴミ捨て場だったし…俺の家。


ともかく綺麗にした俺は急いでアマリリスちゃんを待たせている休憩所に走り…。


「おっと、身だしなみ身だしなみ」


近くの店のガラスでボサボサの髪を整え分隊長ジャンパーの皺を伸ばし眉に唾を塗りキリッと顔を整える。アマリリスちゃんは俺のこと嫌いかもしれないけれど…すぐに離婚を言い渡されるかもしれないけど。


俺はやるぞ、絶対にアマリリスちゃんに生まれ変わった俺を好きになってもらう。


「よし…アマリリスちゃあ〜んナッ!」


そうして俺は天使の待つ休憩所に…。


「あら、早かったですね。サイ」


「んぐぉっ…!」


顔を見せた瞬間、俺は鼻っ柱を殴られたような衝撃を受け…思わずたたらを踏む。


休憩所の壁に立ち、サラリと髪を撫で振り向く彼女に…『美』で殴られたのだ。美しい…というか、かわいい…すげぇ…。


「あ、アマリリスちゃん…」


よく育った小麦のような色の綺麗な髪とキリッとした目元、そして麗しい口と何もかもが整った美貌を持ち合わせた彼女こそが…絶賛俺が初恋中の美女アマリリスちゃん。


そのあまりの可愛さに俺はデレデレと頭を掻いてチビチビ近寄ることしか出来ない。


「え、えへ…あの、家の掃除が終わったからさ。その…案内しようかと」


「そう、ご苦労様」


なんて言って微笑むアマリリスちゃんに俺は胸を貫かれたような感覚を覚え、その場にしゃがみ込む。可愛い…可愛すぎるッ!


こんな人が、本当に俺と結婚してくれるのか!?いや納得してるかは分からないけどさ!でも…でも。


「あの、大丈夫でございますか?」


「え?ああ…すみません執事さん」


ふと、しゃがみ込んだ俺を心配してくれるのはアマリリスちゃんの執事さんだ。名前は確か…メグオ…だったか?この人もまぁ美形で驚いてしまうんだが。


何より…。


(なんかこいつ、ジズに似ててあんまり好きじゃないな…)


「あの、私の顔に何か?」


「いえ、なんでもないです、はい」


まぁなんでもいい、重要なのはこの人がアマリリスちゃんの執事ということ。つまりアマリリスちゃんの旦那である俺の執事も同然!なんて思ってはいけない。


主従の契約ってのは大切だし、大切だからこそややこしい。俺は別にこの人と主従の契約書を交わした訳ではない、例え俺がアマリリスちゃんの旦那になったとしてもこの人の主人になったわけではない。なので顎で使うような事はしてはいけない。


傭兵も執事も同じ雇われ仕える者、その辺の価値観はよく分かってるつもりだ。なのでこの人には敬意を示す。横柄なのはダメだ…これは俺なりのプロ意識という奴だ。


「それより…自宅ってのは」


「…………」


「あ、すぐに案内しますね」


そしてアマリリスちゃんの後ろにいるのは…赤髪の美少女ラグーニャちゃんとおそらく二人の護衛である巨漢ネレイデスさん。


護衛のネレイデスだが…これは純粋にびっくりだ。レベルが高い、シジキ並みの巨体とそこから発せられる威圧は間違いなく超人の物…しかも多分覚醒もしてる。俺だって本職は戦闘や荒事…経験だって並みじゃない自覚はあるからコイツの強さもまた分かる。佇まいからして隙がない…恐らく技巧派のインファイター…魔術も使うか?厄介そうだ。このレベルの奴は普通国の将軍とか国内最強とかそういう肩書きがついてるべきなんだが…。


それを護衛にしちゃうアマリリスちゃんってすごーい!


って言うのと…もう一つ。


(ラグーニャ…か、こいつ…『偽名』じゃないよな…)


アマリリスちゃんの妹ラグーニャちゃん、この子に関しては可愛いとか何とか以前に『怪しい』のだ。というのも…。


(赤髪の女…って言うとやっぱり思い浮かぶよな、アイツが…)


もしラグーニャという名前が偽名で、どういうわけかこの街に戻ってきているのだとしたら…俺はこいつを殺さなきゃいけない。一応聞いておくか?いややめとくか…。


もしこいつが『ルビー』だったなら、ちょっと品がありすぎるしな。きっと勘違いだ。


(というか、茶髪に…赤髪に…従者に…巨人?なんか…どっかで聞いた組み合わせだな…確か、今朝方オウマ団長が言ってた──)


「どうしたの?サイ」


「ひょ?」


すると、考え込む俺の思考を邪魔するように…アマリリスちゃんが近づき、俺の手をキュッと掴んで…。


「ひょぇぁぅぉっ!?」


「何をそんなに慌てているのかしら、貴方…私と結婚したいんでしょう?」


「え…え…あ…はい」


「私も自分で自分の行く末をカードに委ねた身。負けたのならその結果に殉じます…だから貴方も、勝者として胸を張っていなさい」


「ふぉ…はい…」


す…すげぇ…陶器みたいな唇が動いてる…すげー…。


「さ、私の新居に案内してちょうだい?アナタ」


「げぇう!はい!アマリリスちゃん!」


そう言いながら俺の肩に体重を乗せてくるアマリリスちゃんの、その体の柔こさに鼻の下が伸びる、ほ…本当に結婚してくれるんだ…う、嬉しい。


「こっちだよ、アマリリスちゃん!」


「ええ、ついていくわ」


「そ、それでさ…アマリリスちゃん」


「何かしら」


「その…聞いてもいいかな、アマリリスちゃんが…その、何者か」


先程俺はアマリリスちゃんから金貨を預かりダメにした、それは後々返済するとしてだ…。


俺は少し気になる点がある。それはあの大量の金貨をポンと出して、俺に預けて、そして台無しにされた割には…アマリリスちゃんの反応が薄いことだ。


ダメにした俺がいうのもなんだがあの金額は人死が出てもおかしくない金額。それをフッと出して『まぁ仕方ない』で許せる財力は…普通に考えて異常だ。それでなくとも護衛二人を雇う点も気になる…何者なんだ?


そう思っていると、アマリリスちゃんは俺の目を見て。


「実は私、さる商会の令嬢なの」


「商会の?」


「ええ、名前は出せないけどすっごい大きいヤツ」


フワフワしてんな…。アマリリスちゃんの髪みたいだ…アマリリスちゃんの髪フワフワだな…。


「けど私…実はお父様から結婚を言い渡されてて…それが嫌で逃げ出してきたの。この街なら人も多いし、簡単には見つけられないだろうって」


「そ、そうだったのか…」


「だから、はっきり言うと貴方の提案はとても嬉しいの。私が結婚してしまえばお父様も諦めると思って」


「確かに…それもそうかも」


そうか…婚約が嫌で家出して、その当てつけとして結婚か…うーん、それならまぁ分からない話でもないな。いや別に疑ってたわけじゃないけど…だってこんな可愛い子が今の今まで誰にも見つからずに生きてたなんて信じられないしさぁ!


「あれ?サイ主任?」


「ん?」


すると、先程俺を馬鹿にしたスタッフが路地から現れたバッタリ出くわす。彼は俺の顔を見ると同時に、一緒にいるアマリリスちゃんの顔を見て愕然とし。


「え…?女の人?え?え?」


「言ったろ、俺…結婚するって。ね〜アマリリスちゃん」


「どうも、アマリリスです。これからどうも宜しく」


「こ、こんな美人が!?なんで!?人生終わってる人のサイ主任に!なんでこんな可愛い恋人が!?」


「恋人じゃねぇって言ってんだろ、奥さん!妻!マイワイフ!つーか仕事してこい仕事!」


「う…信じられない…何かの、間違いだ…」


なんてことを言いながらトボトボと立ち去るスタッフの背中を見て、優越感に浸る。どーだ参ったか!…って、なんかアマリリスちゃんを優越感に浸るダシにしてるみたいであんまり気分が良く無いな。


俺はアマリリスちゃんをそういう風に扱いたいわけじゃ無いんだ。美人を侍らせてそれで満足…ってガラでもない。反省しよう…そう思いアマリリスちゃんを見てみると。


「…あの人、仕事中なのですね」


「え?ああ、まぁ」


「貴方は?」


「へ?俺?俺もまぁ…一応、勤務時間中?かな…」


「………仕事しなさい」


「うぇ…!?」


ジロリと冷めた目を向けられ思わず興奮する…じゃなくて、仕事!?


「お、俺が!?」


「他のエリアマスター達は仕事してるんでしょう?なのに私の旦那たる物が仕事をサボって部下から罵倒されるのは許せません。私も手伝いますから…仕事をしましょう」


「う…はい……」


仕事かぁ…はぁ、でもアマリリスちゃんが言うなら…。


「分かったよ、じゃあ事務所に案内するよ。こっちきてくれ」


「ええ、お願いするわね」


ニコリと微笑むアマリリスを見てると逆らえる気がしない。はぁ〜…好き。


そうして俺は一旦行き先を変え、スタッフオンリーの裏方へとアマリリスちゃん達を招き…あ、いや。ダメか?スタッフオンリーだし…何よりアソコにはレゾネイトコンデンサーが…。


まぁいいか、俺の身内な訳だし。


……………………………………………………



アマルトという男は、人を手玉に取ることに関しては一級の実力を持つ。


「ほらサイ、襟元が弛んでいるわ、直してあげる」


「あ…あぁ、ありがとう〜アマリリスちゃん」


「いいのよ、私は貴方の妻だもの」


前を歩くアマルトとサイはまるで本物の夫婦のように接し合う。あれだけ嫌がっていたのに一度その気になったらもうそこからは完全にアマルトのワンサイドゲーム。完全にサイを手玉に取って操っている。


事実、俺達は今…サイの案内で。


「ここが、カジノの裏方…ですか?」


「ああそうだよラグーニャちゃん。下手に触ると怒られるから触っちゃダメね」


金属製の廊下に薄暗い通路、そして無数の魔力機構が壁を満たしている。よく分からないがなんか凄いことは分かる。


そう、ここは金楽園エリアの裏方…スタッフオンリーエリアだ。まさかこんなに容易く堂々とここに来れるとは、アマルトの大手柄だ。


「かなり精密な魔力機構ですね…」


「全部チクシュルーブ様が作ったのさ、あの人は本当に天才だよ…あの人は俺達に多くの物を与えてくれた」


「多く物?お金とか?」


そうアマルトが…いやアマリリスが聞くと、サイは首を振り。


「んーにゃ、アマリリスちゃんはサイボーグ技術って知ってるかい?」


「え?ええ…デルセクトにある、体の中に機械を埋め込む技術でしょう」


「よく知ってるねぇ、そう。でもまぁデルセクトが本場というよりそれを作ったのは…いやまぁこれはいいか。ともかく俺達はみんな…一人の例外を除いて団長もサイボーグ技術で体を強化してんのさ」


「まぁ、貴方も?」


「おうよ、ほら」


そう言ってサイは襟を引っ張りその下を見せる、するとそれは確かに金属の体になっており…。


「気持ち悪いかい、アマリリスちゃん」


「いえ、金属の体なのにお腹が減って行き倒れるのかぁって」


「あ、それはね。内臓は人間のままだから。言っちゃえば体の外側に当たる部分を金属に変換してるだけだから、でなきゃそれはサイボーグじゃなくて人型魔力機構になっちゃうよ」


「なるほど…」


「俺達は元々体を改造して高い戦闘能力を得て戦うってスタイルだったんだ、それでも改造箇所は聴覚だったり視覚だったり一部に留まった」


(…体の改造はソニア合流以前から行われていた、なるほど。漸く分かりました…エリス様と私で倒した逢魔ヶ時旅団幹部のアテルナイ…奴の異様な聴覚は逢魔ヶ時旅団特有の改造による物でしたか)


ペラペラと喋るサイの話を聞きつつ、メグは回想する。あれはまだアルカナと戦っている時、逢魔ヶ時旅団がアルカナの援護のために送った『明の槍・アルテナイ』。耳だけで相手の思考さえ読み切るアイツの異様な耳は…逢魔ヶ時旅団が元々行っていた改造による物だったのかと…一人納得する。


「だがその改造もチクシュルーブさんの技術力により飛躍的に進歩した。色々あって人員は半分近くに減っちまったが力自体はより強化されている…正直自分自身でも怖いくらい、今の俺ってば強いんだぜ?」


「外付けの力でしょう?それを誇るのかしら」


「誇るさ、これは剣や槍と同じだしな。戦士は勝つ為に剣や槍を良いものに買い替えるだろ?なのに肉体だけ取り替えないで同じままってのもおかしな話だし、いい剣を手に入れたら誇るでしょ?」


「む……」


「いずれこの技術も世界中に蔓延することになる。体鍛えて修行して…なんて古臭い事しなくてもみんなアルクカース人より強くなれるんだ、これから必要なのは金と技術力さ」


へっへっへっと笑いながら先を歩くサイに対して、嫌な気分にならなかったといえば嘘になる。俺たちは修行して強くなった人間だからだ。


けれど、同時に理解も示してしまうのはサイという男はそもそも体の改造などなくとも強く経験のある戦士だからかもしれない。彼の言う言葉には何処か重みがあるように感じる、体を鍛えて修行して…そんな古臭い鍛錬法の果てに彼は体の改造に行き着いたのなら、それは立派な極意の一つだ。


「さて、ここが事務所だよんアマリリスちゃん」


「あれ?珍しいですねサイ主任…ってそちらの美人さんは?」


「この人?俺の嫁。アマリリスちゃんでーす!」


「どうもこんにちわ、皆様。アマリリス・ベイチモでございます」


「え……ッッ!?」


事務所の扉を開け中に入る、そこには無数の机と魔力機構、そして数多の人員がカリカリとペンで帳簿をつけているでは無いか。


…なんというか、凄まじい技術の街だと思ったが、裏側はなんともアナログなんだなあ。ここにいる人達、アストラの事務員達と同じ顔してるよ…。


「え!?サイ主任結婚したんですか!?」


「いつの間に!?というかメチャクチャ美人!?」


「す、すげ…どっからこんな美人が湧いて出たんだ」


「まぁまぁ諸君、そんなに慌てふためくなって。さーて、嫁さんの前だし軽ーく仕事でもしますかね、部下諸君!俺の仕事は?」


「無いですけど…」


「今まで仕事してなかったのに急に言われても…」


「ただでさえ忙しいのになんで主任の仕事を作る仕事までしなきゃいけないんすか」


「そ、そんな…」


と、奥に座ったサイは部下達から非難轟々。よほど普段から仕事をしてなかったのか…つーかなんで自分の事務所でアウェイになってんだアイツ。


「もうすぐ定例報告会の時期なんですよ?チクシュルーブ様に良い報告をする為にも頑張らないと」


「ま、まぁそうだけど」


「偶には俺達もチクシュルーブ様から褒章もらいたいよなー」


「無理だろー、ウチのカジノは全エリアで売上最低だし、主任があれだし」


「とほほ…」


「…………はぁ」


なんか、この分じゃ有益な情報を引き出せそうに無いな。肝心のサイがこの街の管理から締め出されている状態なんだから…。


なんて考えているとアマルトはスタスタと音を立ててこちらに歩み寄り、俺の耳元に口を寄せ。


「なぁ、ラグナ」


「ん、どうしたよ」


「俺ちょっとサイの仕事マジで手伝うわ」


「え?なんで?」


「さっきチロッとそこの机に置かれていた帳簿を見た」


そう言いながらアマルトは事務員の座る机の上に置かれた帳簿を見る。俺もそこに書かれている物を見ると…なんか。


(妙に売上が少ないな…)


利益が少ないのだ、いやかなり稼いでると思うがここまで大規模なカジノを運営している割にはあまりにも利益が少ない、これじゃあ収支的には赤字もいいところだ。


カジノなんて金使わせてナンボ。なのにこれはちょっと少な過ぎる気がする…。


「さっきメグと話してたんだ、金の流れを把握すればソニアがどこで何をしようとしているか分かるかもしれないって…。だから…」


「経営に携わる…って?」


「ああ、幸いサイはあの調子だ。上手く取り入ればかなり奥深くまで潜り込めるかもしれない…それに定例報告会ってのも気になるしな」


「でも、出来るのか?上手くやるなんて、お前経営のノウハウないだろ?」


「けどカジノのことはよく分かってる、それにちょっとメグも借りたい」


「ああメグか、…ん?借りたいって?俺は?」


「お前らは別行動しててくれ、お前らまで一緒にいる必要ないし」


まぁそうか、俺ここに突っ立ってるだけで何も出来てないし。折角ならこのスタッフオンリーエリアを捜索するのもいいかもしれない。


「分かった、じゃあ任せてもいいかな」


「ああ、任せとけ。このカジノを世界一のスーパーカジノにしてみせる」


目的そっち?…まさかこいつ、自分が遊ぶ理想的なカジノを作る為に……いや言うまい。彼の提案は良い物だ、受け入れて俺たちも別行動しよう。


「じゃ、任せた」


「ん、任せろい」


軽く俺は手を上げてアマルトの健闘を祈り…誰の視線にも映らないようにネレイドを連れて事務所から退室する。ここはアマルトとメグに任せよう…。


…………………………………………


「さてと…」


コキコキと拳を鳴らしアマルトはサイを見る。仕事もなく机に座って呆然と時が経つのを待つ…悲しい上司の典型例みたいな状態なこいつを上手く使ってカジノの運営を立て直す。そして金を生みその金の流れを調べ上げる。


メグも今の話を聞いていたのか、軽く頷きつつラグナ達が退室すると共に俺はレイズに歩み寄り。


「仕事をしろ…って言ってるのに、なんでぼーっと座ってるの?貴方は」


「あ、アマリリスちゃん…でも俺仕事無いし…」


「無いなら探す、社会人でしょ」


「うう…」


情けねぇなぁ…仕方ない。


「…サイ?この帳簿だけど、なんでこのカジノはこんなにも利益が少ないの?」


「え?ああ…そりゃまぁ…分かんない」


「………」


ヴァカかこいつは…話にならない、別の奴に聞くか。


「ねぇ、貴方?」


「え?あ、はい…なんですか?」


仕事が出来そうな事務員に声をかけ隣に座りながら帳簿に記載されている額が俺の予想より小さいことを指摘する。


「ここのカジノ、ちょっと利益が少なすぎない?賭博街アルフェラッツはもっと稼いでいるのでは?」


「え?ええまぁ、そうですね。うちのカジノはちょっと特殊なので」


「特殊?」


「入ってくる金は多いです、けれどここは凡ゆる娯楽を取り揃える…というのを売りにしてるのでその分人件費がかかるんですよ。ルーレットも数百近くあるのでその分ディーラーが必要ですし、スロットも数が多いから管理費もかかる。売上の幾らかをチクシュルーブ様に上げないといけませんし、結果的にうちの手元に残る分が少ないんですよね」


「なるほど…、じゃあ数を減らすわけには?」


「いきませんよねぇ…、なんせ台数が多いのがウリなので」


「その割には…」


俺はそれと共に近くの資料を手に取る、それはカジノ全体の利用率を示したデータの記された資料だ。これを見る限り…というかさっきカジノで遊んだ限りの感想だが。


「その数多い台数の割に、それぞれの利用率が低いんじゃありませんか?」


「う……」


「一日利用されない物もある、そこに人手を取られているのはハッキリ言って無駄かと」


「まぁ、事実ですね…一日何もしないで退勤するディーラーもいるので、そこははっきり言って人件費の無駄かと…」


「これは恐らくカジノ全体に来る利用者の絶対数が少ないから起こっているのかもしれませんね。もっと多くのお客を入れられる箱があるのに入ってくる客自体が少ないから赤字になっている…」


「それはそうですね、一理あるかと思います」


「ならもっと集客すれば…もっと利益が出るのですよね」


「簡単に言いますけど、難しいですよ」


「…フッ、大丈夫。要は人を呼べばいいってことだから…」


そして俺は立ち上がり、スタッフ達に呼びかける。まずは人を呼ぶこと、そして利用者を増やすことが前提だ。ンなこと容易いぜ…なんせこのカジノは箱だけで言えば天下一品だ、だが今はまだ『カジノに興味がある奴』しか来てない。これを更に『カジノに興味がない奴』も呼べれば間口も広がる。


「まずッ!」


「おおっ!?」


「イメージ戦略が重要だ!かつては娯楽と言えばカジノやボードゲームなどが一般的でありそれ以外の娯楽が存在していなかった、故にカジノを建てればある程度の収益が見込めたが今は違う!カジノ以外の娯楽が氾濫し世に溢れている!カジノの競争相手は別のカジノではなく既に数多ある娯楽達に切り替わっているんだ!現にこのチクシュルーブにはカジノ以外の娯楽も多くある!言ってみればライバルが同じ部屋で幅利かせてるようなもんだ!これでは現実の金を取り扱うカジノには『怖い』という印象を持たれても仕方ない!」


「確かに…」


「ウチに来るような客は大体アルフェラッツや他のカジノにも行ってるもんな」


「こう言っちゃなんだが客層自体万年貧乏のレイズ主任みたいなのばっかだ、羽振りいい客は他所のエリアに行くことが多いな…」


俺が立ち上がりながら高らかに力説すれば事務員も近くのスタッフ達も寄ってきて俺の話を傾聴する。いいぞ、初手で大声出して分かりやすい理屈を述べる…ラグナが得意とする演説術の真似だ。


これなら話を聞いてもらえる!


「だからまずは!カジノは怖くない、家族で笑顔で楽しめるファミリー向けのライトな遊び場所だと認知してもらう必要がある!お父さんが貯金を賭けて!お母さんもヘソクリを賭けて!お子さんもお小遣いを賭ける!これが今このカジノに求められる理想の姿だ!謂わば!新世代のカジノの在り方だ!」


「で、出来るんですか?」


「確かに出来れば最高だけど…」


「ウチのカジノにはあんまりいい噂がないし…」


「問題ない!アイデアはある…いくらでも、ここにな」


「おおッ!」


トントンと俺の頭を指で叩きながら笑う。常日頃から俺がカジノに求めていた物を突き詰める、カジノは好きだがだからこそ感じる不満や欲求を形にしていく…、俺は指慣らしメグに紙を用意させペンでスラスラといくつかのアイデアを書いていく。


「……なぁ、このチクシュルーブで一番人気なエリアはどこだ」


「え?そりゃやっぱ遊楽園ですよ。あそこは水楽園にも娼楽園にもぶっちぎりで差をつけるウチ一番の稼ぎ頭です」


「水楽園と娼楽園は金を払う回数が少ないですしね、その点遊楽園は金を払えば払うだけ楽しい、カジノと違って一定の楽しさは担保されているわけですし」


「つまり体験型の娯楽が人気ってことだな。ならこれなんてどうだ?」


そう言って俺がスタッフ達に突きつけたのは…。


「『ワンコインカジノ』…?」


「一回100ラールで行う小さなゲームさ、勝てば賞金300ラール或いは300ラール相当のオモチャや小道具が貰える簡易的なゲームだよ。出来る限り簡易的でワクワクする仕掛けを施して子供の興味を引くんだ、これのメインテーマは『取り敢えず楽しい』…賭けて何かが返ってくる達成感よりも楽しい体験がメイン、賞金は飽くまで目標設定にする」


「100ラールなら子供でも興味を引くかな…でもそんなのじゃ稼ぎには」


「バァカ、子供が遊んでる間大人は何するんだ?」


「え?待ってる…とかですか?」


「暇そうにしてる大人の方々には、大人のゲームを楽しんでもらう。スロットなりポーカーなり、時間のかからないゲームが理想的だな。本命はそっちだ…子供が遊んでいる間に大人が暇つぶしに遊べるようなゲームを配置するんだ、これなら普段カジノで遊ばない人達も多少はカジノで遊ぶ!」


「お…おお!確かに!」


「そしてその中からのめり込む人が出てくれれば御の字だぞ!」


その為に宣伝や如何にして子供の心を掴むかが重要だが、それは後から詰めていく。今は大まかたアイデアの骨組みが必要だ。それにこれだけじゃまだ弱いな。


「後は…そうだな、チクシュルーブに来る旅行客の平均滞在期間は?」


「え?大体七日ですね」


「ホテルもピンキリですがやっぱり値段が高いので」


「ほほう、値段が高くてね…なら、こいつを使う!」


「そ、それは…!」


カジノカード!さっき俺が作ったカード!これ見て俺…『こうすればいいんじゃね?』と思った事が一つある。それは…。


「『一回1万ラールで七日間毎日2000ポイントを付与する権利』販売!」


「え?七日間毎日2000ポイントを付与…って、一万ラールじゃ足りませんよ!それ合計1万4千ポイントになっちゃいますよ!」


「ああ、お得だろ?」


「お得ですけど…それじゃあこっちが損を…」


「お得だから、出来る限り使いたいよな?この権利…じゃあ客は毎日少なくとも一回はカジノに来なきゃいけなくなる。それでもし調子が良かったり、のめり込んだりすれば追加でポイントを買うかもしれない、これがもし十人に一人だったとしても利益はあるし…何より!人が来る!」


「あ!そうか!確かに毎日来る人が増えれば客足も多くなってカジノを怖がってる人も来てくれるかもしれない!」


「それに一回2000ポイントと定めておけば無理に金を使う必要もないと思って…カジノでの浪費を恐れる人も来てくれる!」


「要は『来て、体験して、知ってもらう』事…まずはここから始めるべきなんだ、認知度を高めれば客は増え、そして客が増えればその分利益も増える…」


「す、凄いぞ…これならカジノの利益も増えるかもしれん!」


「利益が増えれば…給料も上がる!」


「その通り〜ッ!惰性での仕事はやめるぞ!俺たちにはやれるポテンシャルがある!これを腐らせるのは勿体無い!やるぞー!このカジノを!チクシュルーブで一番の…いや世界で一番のカジノにするぞー!」


「おお!凄いやアマリリスさん!」


「サイ主任なんかより百倍頼りになる!」


「俺達に足りなかったのはリーダーだったんだ!」


「よしよし!他にもみんななんかアイデアないか!?胸の奥にしまってあった物!それが今欲しい!どんどん来い!」


「じゃあ俺!実は思ってた事があって!」


「お得なキャンペーンとかどうかな!家族共有カードの発布!」


「射倖心を刺激するようなのはどうだ!?コレクション性の高い奴!希少価値も生まれるし!」




「アマリリスちゃんすげー…あの、俺にも出来る仕事があったら…言ってね〜…うん、聞いてないか…うん、くすん…」


アマルトもといアマリリスの熱弁強弁詭弁によって金楽園エリアのスタッフ達は燃え上がる、金楽園創立以来の熱狂的な推進力…元々こういう仕事がしたかった者達の集まりが作り上げる熱の行き先は、一体どのような結果に至るのか…それをサイは机の上で呆然と見守るしかなかった。


……………………………………………………………


「なんかアマルトがスタッフを惹きつけてくれたお陰で…めっちゃ動きやすくなってるな」


「ん…今なら色んなところ見て回れるね」


そしてラグナとネレイドは人のいなくなった金楽園の裏方を歩く。鉄の廊下が延々と続く道を歩き取り敢えず何か有用な物でもないかと確認するが…現状成果はない。


まぁ少なくともアマルトがスタッフを惹きつけてくれているから、見つかって怪しい奴!名を名乗れ!と言われる心配はないのだが。


(にしてもこんな大掛かりなモン一年で作り上げるとか…そこまでしてソニアは何かしたいのか)


ラグナは腕を組みながら考えつつ廊下を歩く、正直言ってこんなどデカい規模の街を一年で作り上げるなんてのは常軌を逸している。いくらソニアに金があるからと言ってこんな見境ない街の拡大なんて…メリットが見受けられない。


そもそも街をデカくしなくてもソニアには十分すぎる資金があるし、何よりこの街はソニアの隠れ蓑じゃなかったのか?なのになんで大きくする必要が…。


(あったのか、大きくする必要が…しかもかなりの急ぎで。とするとなんだ?街を大きくしなきゃいけない理由って)


陣地の拡大、と言えば…兵力の増強による収容人数の拡充。後は敵地を奪う為の戦力的意味合い…どちらも今のソニアには合致しないし…。


うーん、わからん…というかソニアの考えは未来を行き過ぎていて今の俺がいくら脳みそ捻っても答えが出るとは思えない。


「ねぇラグナ…」


「ん?どうした?」


「あれ、見て」


「ん?」


ふと、廊下の先に…何やら厳重そうな扉を見つける。分厚い鉄の扉だ…ああいう扉の先には得てして人を立ち寄らせたくない部屋、見せたくないものがあるモンだが…。


……それってつまり俺たちにとって有用な物じゃないか?


「行ってみよう」


「でも扉閉じてるよ」


「まぁそうだけど…うーん、こじ開けるわけにもいかんしな」


俺ならこの程度の扉なら蹴り一発でぶち抜けるが、ぶち抜いた後どうするよ。…うーん、ん?


「この扉…少しだけ隙間があるな」


「うん、けどここからじゃ覗けないよ」


「いや、十分だ…」


これだけの隙間があるなら…と俺は懐から紙を取り出し、それを人型に指で切り整形する。よし、これを使えば…。


「それ、どうするの?」


「こうするの…汝は今より我が同胞となりこの意志と目を共にせよ『共魂命々授』」


紙の中心に穴を開け、そこに魔力の球を作り出し、床に置く…するとどうだ。ただの紙切れがムクリと立ち上がり人のように歩き始めるではないか。無機物である筈の紙が文字通り人になった…これは。


俺の古式魔術だ。


「まさかそれ、古式付与魔術?」


「古式…人格付与…魔術だ」


冷や汗を流しながら俺は必死に紙を動かす。これは俺の魔力を集中させ擬似的な魂として機能するように物体に注ぎ込み付与する古式付与魔術の一環だ。これを使えばこの紙は俺の手足となり、目となり耳となり動いてくれる。


故に隙間から紙を入れれば中も見る事ができる…けど。


「凄いね、こんなこともできたんだ……ラグナ?」


「悪い…メチャクチャ集中しなきゃ…だから、話しかけないで」


「あ、ごめん」


これは見た目の通り超が五、六個つくレベルの超高等付与魔術だ。特に鋼鉄などの鉱物に使うではなく紙なんて脆い物に付与するとなると紙が付与に耐えきれず自壊する恐れもある。


それを防ぐべく俺は必死に集中して魔力を安定させなきゃいけない。これを使っている間は動けないしそもそも距離が開くと機能しなくなる。使い道が極めて限定された付与魔術だ。


隠密に使えるとか師匠は言ってたけど、こういうのは…俺の趣味に合わない。


「行け…見てこい…」


だが今なら有用だ。紙を扉の隙間から侵入させ俺は目を閉じ、紙に開けた穴を目の代わりにして中を確認する。


…中は相変わらずの鉄の空間。だがその部屋の中心に巨大な管で雁字搦めにされた巨大な機器を確認する。恐らく扉はこれを隠す為の物、つまりこの機器はソニアにとって見られたくないもの、守りたい物なんだ。


(なんだこれは…巨大な柱?しかし魔力を感じない、魔力機構じゃないのか?)


俺は魔力機構の専門家でもないから見ただけでは分からないが、こうしてグルリと柱周りを一周歩いた感じ…魔力機構っぽさはない。と言うかこの管…。


(この柱から生える管…一方向に向かっているように見える)


柱から生える無数の巨大な管、それは柱を一周まわった後地面に埋め込まれ、その全てが同じ方向に向かって伸びている。それは扉の下を潜り…俺の足元も超え…ずっと向こうに。


この方角は…居住エリア?一体…、それに…この柱の名前…。


(『レゾネイトコンデンサー』…か)


柱に刻まれた稲妻の模様と共に書き記された…恐らくこの機構の名前と思われるその単語を必死に脳に刻み込む。レゾネイトコンデンサー…帰ったらメグさんに聞いてみよう。


…ん、そろそろ…。


「ふぅ…」


「終わった?ラグナ」


「ああ、活動限界だ」


紙に魔力を通して動かす…と言う荒技はどれだけ上手くやろうとも荒技であることに変わりはない、長くは持たない。俺の魔力によって紙は自壊し塵も残さず消え去った…これで俺が偵察をしたと言う証拠も残らないだろう。


「何かわかった?」


「分かったと言えば分かったが、分かったことが何かまるで分からん。後でメグさんと共有しようと思う」


「ん、わかった…早くここを離れよう」


「そうだな」


ネレイドと共に急いでその場を離れながら俺はチラリと後ろの鉄扉を見る。見たところレゾネイトコンデンサは動いている様子がなかった、がそれでも厳重に扉を閉ざしている辺り見られたくない物であることに変わりはないのだろう。


つまり、あれをあの場所に設置することがソニアにとって大切な事。理想街チクシュルーブを莫大な富を使ってでも拡大した理由…と言う奴なのだろう。


(参ったな、何か企んでいることはわかるが専門外過ぎて何も分からない…)


情報を見つけても、それを理解する知識がないから情報になり得ない…、ソニアと言う超常的な技術を持った存在の相手というのはこうも面倒な物で──。


「おい貴様ら、そこで何をしてる」


「えっ!?」


「ッ……」


ふと、正面から声をかけられ…俺たちは思わず肩を揺らす。誰か来た…いや誰かに見られた、俺達が探っているところを。


そう思い慌てて視線を前へ移すと、そこには。


「うん?見ない顔だな…お前達、何故ここに入れた」


(ガウリイル…ッ!?)


漆黒の腕と漆黒の外套、そして漆黒の髪を揺らす男…間違いない。逢魔ヶ時旅団の第一幹部…ガウリイル・セレストだ。そいつがギロリと紅の瞳を向けながらこちらに向けて歩いてくるのだ。


気がつかなかった、偵察に夢中になりすぎて…こいつの接近に。


(ってかなんでこいつがこんな所に…!)


「………女と男か」


ヤバい…とラグナは頬に冷や汗を垂らし、一歩後退る。今ここでガウリイルと戦って勝てる気がまるでしない、いつもの体で勝ち目がなかったのだ…慣れない女の体では抵抗すら出来ないだろう。


そして更に最悪なことに…ガウリイルは、俺達をかなり疑っている。


「ここは関係者以外立ち入り禁止のエリアだ、それも一般職員すらも立ち入ることは許されていない最重要区域…そこをプラプラと出歩いて、何者だ」


「あの…その…私達、迷ってしまって…」


俺は出来る限りか細い声を出して怯えたように目を潤ませ無力な少女を演じる…しかしガウリイルの目つきは変わらず、寧ろより一層俺を強く睨み。


「…迷ったか、にしても…奇遇だな」


「き、奇遇ぅ…?」


「我々は昨晩、四人の脱走者の逃亡を許した。報告ではそいつらは街を去って逃げ延びたと聞いている…が、あれほどの使い手が…そうおめおめと逃げ去るか?私はそうは思わない、奴らなら必ず我々の裏をかき不意を突いてくる」


「え、えっと…」


「そして…赤い髪と巨体、性別や見た目はまるで違うが昨晩逃げた者達と同じ特徴を持った奴等が、我々の探られたくない場所をウロついている。奇遇だな…或いは偶然か?」


……ダメだこれ、ガウリイルは完全に俺達の正体に気がついている。後ろには鉄の扉だけ、逃げ場はない。細い通路の先はガウリイルが塞いでいる。


なんとかする方法、それは…。


「偶然…ではないよな、お前達…さては───」


「……ッ」


やるしかない、俺とネレイドがダメ元で拳を握った…その時だった。



「オイッ!ガウリイルッ!テメェゴルァッ!俺のエリアで何やってんだよッ!クソボケ!」


「む…サイ」


ふと、ガウリイルの背後から現れた男…サイの声が響き、ガウリイルは剣呑な空気を消し去り、振り向きながらサイを見る。


サイのやつ…なんでここに。事務所で仕事してるはずじゃ…って追い出されたのか。


「何やってんだよ!」


「今不審な人物を見つけて尋問を…」


「尋問ぅ?…ってラグーニャちゃんとネレイデスさんじゃないか!そいつらは俺の義妹とそのツレだよ!」


「妹…?」


目を細めガウリイルは俺を見る。言いたいことは分かるよ…お前さではサイに取り入ったなって言いたいんだろ、分かってる。けどやばいこと変わりはない、だって…。


もしここでガウリイルが俺達の正体をレイズに伝えれば…それだけでアマルトの渾身の演技が全部無駄に─────。


「妹だったのか!?お前!サイの!?」


「は?」


その瞬間、ガウリイルは目をクワっと開き俺の体を確かめるように何度も見る。なんか…意外な反応だな、演技にも嘘にも思えない、ってことはガウリイルの奴、まさかマジで信じて…。


「そうだよ!義妹だ!俺のな!だから脅かすのはダメだ!」


「でもお前妹なんかいなかったろ!…多分、確か…そんな気がする」


「さっき出来た!」


「さっき!?…そうか、おめでとうサイ。お前に似て可愛い妹だな」


「それと俺結婚するから」


「結婚!?…祝辞はいるか?ご祝儀とか必要なんだろ?よく知らないが」


「それはまた今度な、それよりガウリイル!ここは金楽園エリアだぞ!お前の担当は居住エリアだろ!」


「む、そうだったな…いやすまん、地下の見回りをしてたら道に迷って…」


「お前なぁ〜、だから地図持てって言ってんだろ」


「地図を何処にしまったか忘れた」


「メモしろ!」


「メモも無くした…」


「はぁ〜〜…」


……ひょっとしてだが、ガウリイルって戦闘中以外はかなり抜けている…いや、抜けてるなんて可愛い言い方はやめよう。


こいつ、平時はかなりバカだ。


「す、すまないな。ラグーニャとか言ったか?昨日私が見かけた凶悪犯に君が似ていた物だからつい警戒してしまった」


「ガウリイ〜ル、お前は人を見る目がないんだから勝手に決めるなよ」


「そうだったな、すまん。早とちりだったよ」


「そうそう、来た道戻れよ」


「ああ…こっちだったかな…」


「そっちは事務所!」


「ああすまん」


………なんか、見たくなかったな。俺より強いかもしれない奴のあんな姿。アイツ…いつもはあんな感じなのか。なんかサイの言ったこと全部鵜呑みにしてるし。大丈夫か?あれ。


なんて思いながら俺は自分からそそくさと立ち去っていくガウリイルの背中を呆然と見つめる。するとレサイは申し訳なさそうに頭を掻いてこっちに歩み寄り。


「ごめんね〜ラグーニャちゃん、ネレイデスさん。アイツ頭の中に戦闘だの戦争だのしか入ってなくてさ。戦いの最中とか戦争関連じゃメチャクチャ頼りになるんだが…それ以外はからっきしでさ」


「い…いえ」


「本当なら自分の組織を持てるくらい強え上にストイックな奴だが、それでもアイツが組織の二番手に落ち着いてるのはああ言うところがあるからだよな…。まぁなんだ、嫌な奴じゃねぇんだ、ちょっと剣呑で危なっかしいだけでさ」


「そうでしたか…」


「そうそう、全く困ったもんだよな、バカなんだからさ」


お前も大概だろと俺は内心でサイに対して思いつつも今は感謝する、こいつが来てくれなければ俺達はあの場でガウリイルに殺されていた可能性が高い。まだ俺は奴の防御力を抜く方法を見つけてないんだから。


「それで…サイさんは何故ここに?」


「ああ、なんか二人の姿が見当たらなかったから探しに来た。アマリリスちゃんはなんかみんなと打ち解けて仕事してるしさ…。流石は大商会の一人娘だよな」


つまり仕事がなかったから俺達を探しに来たと…。まぁそのおかげで助かったのだから何も言うまい。しかし……。


(ガウリイルは確かにちょっと頭がアレな部分があるようだが、それでも直感に関してはマジで侮れないところがあった…決してバカな奴ではない。サイの語ったように戦闘に関してはあんまり侮らない方が良さそうだ)


偶にいる、戦いに関してのみ急激に直感が冴え渡り賢くなる奴が。それは単に戦い以外が出来ない不器用な奴ってわけじゃない。


常在戦場の構え…、常に戦いのことだけ考えているから日常との不和を産んでいるだけ。ガウリイルはその手のタイプだ。決して…侮っていい男ではない。


そしてそれは…。


「ああ、あとさ。ガウリイルじゃないけどここら辺はちょっと立ち入りを禁止している場所なんだ…。俺も一応このエリアの『管理』を任されている以上さ…やっぱり引かなきゃいけないラインはある、あんまりウロウロしないで貰えると嬉しいな」


サイも同じ、な?と言って笑うサイの瞳の奥に仄かに宿る選択肢が見える。それは『最悪の場合俺達を殺さなきゃいけない』という選択肢…俺達が無用に歩き回るなら、多分サイは甘さを捨てて殺しにかかってくる。


ガウリイルもサイも、油断して関わっていい相手じゃないか。


「すみません、姉様の仕事の邪魔にならないよう離れていようかと思ったら…道が分からなくなってしまって」


「ああそうだったの、なら事務所まで連れてってあげるよ。ついて来て」


そう言ってポケットに手を入れ歩き出すサイの背中を追う。にしても…サイはなんというか、甘いというか妙に優しいというか、変に義理堅いな…。


そうして俺達はサイの案内で再び事務所に戻ると…そこには。


……………………………………………………………


「あら、どこに行っていたの?ラグーニャ?サイ…もう仕事は始まっているわよ」


「あ、アマリリス…お姉様?」


事務所は先ほどまでとは様変わりしており、スタッフ全員がやる気出したように働いており…部屋の中央には『金楽園エリア大改造計画・プロジェクトアマリリス』なる看板が掲げられていた、アレ絶対メグさんが用意し奴だ。


「リーダー!機材の搬入!上手くいきそうです!」


「よろしい!」


「リーダー!新発効するカジノカードの件ですがこちら差別化を図るためのデザインは如何しましょう」


「豪華さよりも親しみやすさを重視して…緑色にしなさい!」


「リーダー!宣伝用のビラを他エリアで配る許可を他のエリアマスターに打診したところ断られました!如何しますか!」


「勿論無断で配れ!文句言われたらスッとボケながら逃げてくればヨシ!」


しかもいつの間にかアマルトがスタッフ達からリーダー呼ばわりされているし…、まさかこいつにこんな才能があったなんて。


「意外ですねお姉様、貴方にここまでの才能があったなんて」


「まぁ、いいお手本が近くにいたから?」


…あ、俺か。なんかアマルトがニヤニヤしながら俺を見て揶揄うような視線を向けているし。なるほど、スタッフ達を焚き付けて動かしているのか。確かにこれだけの大規模な組織を動かすにはまず士気をあげるのが定石だ。


アマルトめ、分かってるじゃないか。だがそれだけじゃまだ足りないな。


「ならアドバイスしてやる、俺の言うように動けよ」


「お、サンキュー、で?何すればいい?」


「まず語るのは…」


と、俺はアマルトにコソコソと耳打ちをして…。


「…よし、聞け!お前達!」


そして俺のアドバイスを受けたアマルトは、クルリと反転しながら指揮棒代わりの筆ペンを持ち堂々と胸を張り、胸のそれがドンと揺れる。


「そろそろ動きが固まって来たところで目標を立てる!今からこの一週間で!日間の売り上げを三倍にする!」


「で、出来るんですか!?そんな事!」


「出来る!絶対に!だからその為にも…ガンガン働くぞーッ!」


「おお!なんか出来る気がして来た!」


リーダーに求められるのは堅実さもそうだが、何より見果てぬ夢が必要だ。リーダーが目指す目標がその集団の限界点にもなる。どれだけの熱狂を得ようとも、リーダーの夢が低ければ到達点も低くなる。


だからこそ、リーダーは高らかに夢を語る必要がある。周りが出来るか?と怪しむならば怪しまれないだけの気概とプランを示せばいい。これが俺のリーダー論だ。


そして、その熱さを受け取ったチームはより一層。


「よーし!ビラ!さっきの三倍は用意しろ!」


「金楽園はもう店終いにしろ!閉店してから用意したんじゃエリアの改造が間に合わない!」


「忙しくなるぞ〜!俺こう言う仕事がしたかったんだ〜!」


燃え上がる、いい兆候だ。とは言えこれは戦争ではなく商売…本当ならメルクさんの領分だから上手くいくかは分からないが。まぁ…大丈夫だろ。


「よっしゃあ!ジャンジャンバリバリ稼いで稼いで稼ぎまくるぞ!」


「あいあいさー!」


だって、アマルトなんかめっちゃ馴染んでるし。そして稼げは稼ぐだけ…俺達はこの街の真実に近づける。金流れを把握し、どこに向かっているのか…そして、この街に馴染めばそれだけ行ける場所も増えるしな。


(だから今は、ここでこのカジノの成功を祈るとしよう)



そんな風に楽観的に構えていた俺は…一週間後、度肝を抜くことになる。


アマルトたちの生んだ熱の…凄まじさに。

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