495.魔女の弟子と影に弓を引く
「それで聞きたい事とは、なんですか?」
ラエティティアは手を下腹部の辺りで合わせ手遊びするように指をトントンと動かし、目の前に立つエリスとアマルトを見据える。
エリス達もまたラエティティアの顔色を見る。今日…プロパが死体で発見された、それに関与している人間を探すべくエリス達は聞き込みを続けていた。ハーシェルが犯人であることは分かっている、だがプロパが狙われた理由が無作為に選ばれたとは思えない。
真っ直ぐホテルに帰らず何処かで何かをしていたプロパの動向も気になるし、何よりラエティティアが怪しい…そう睨んだエリス達はこうして部屋を訪れたのだ。
このまま、誰が犯人か分からず終いで明日を迎えればきっとプロパ殺しの犯人は六王…ラグナ達と言うことにされてしまう。
(早く質問しろ、そして早く満足して帰れ…)
エリス達の疑問は正しかった、ラエティティアこそがハーシェルに依頼しプロパを殺させた真の首謀者だ。事実さっきまでこの部屋にはハーシェルの影達がいたし…なんならそこの屋根裏にはハーシェルの影達が隠れている。
このまま、エリス達に首謀者であると言うことがバレれば、ラエティティアは終わりだ。だから必死に笑顔を取り繕い、ラエティティアは心を表に出さずニッコリと微笑む事に努める。
これは静かな殺し合いだ、互いの隙を探る…静かな殺し合い。
「…そうですね」
そんな中エリスは切り出すようにフッと視線を移し、周囲の戸棚に目線を這わせる。
「にしてもいい部屋ですね」
「え、ええ。まぁ…一応女王のお付きという事ですロレンツォ様から大部屋を貰っていますので」
「リングア家…でしたっけ?マレウスでは有名な貴族様なんですよね」
「ええ…そうですよ」
ラエティティアは朗らかな笑みを浮かべながら、笑顔の裏で考える。
(どう言うつもりださっきから、本題を聞きたいなら早く聞けばいいと言うのに…)
エリスの不気味な態度にラエティティアもまた恐怖する。もしかしたらバレているかもしれない…と、しかしバレるにしても早すぎる、何処にもハーシェルとラエティティアを繋ぐヒントはないはず。
「あの、それで、なんの御用で?さっきも言いましたが私にも仕事がありますので聞きたいことがあるなら早めに聞いてくれるとありがたいのですが」
「おっとすみませんでした、エリスとしたことが緊張してしまいまして」
「緊張……」
こいつ緊張なんてするのか?と密かに首を傾げた瞬間…。
「へぇ、立派なベッドだな」
「ッ……」
アマルトが部屋のベッドに注目している、そこに気がついた瞬間ラエティティアの背筋は凍る。あのベッドは先ほどまでハーシェルの影クレシダが座っていた場所だ、もしかしたらクレシダがヘマをして何かを残してしまっているかもしれない。
これ以上ベッドに注目されるのは危険だ。
「お、おい!何してる!」
「へ!?いや、ベッド見てただけだが…ダメか?なんか見られたくないもんでもあったか?」
「あ、いや…別に何もないが…」
しまったと悟る、過敏になりすぎた。これじゃあまるでベッドに何かあると言いたげじゃないか…それにそもそもベッドに何かあるかもしれないと言うのも私の勝手な妄想。
焦るな、焦るな私よ。平静だ平静…感情を表に出すな。
「すみません、少し過敏になりすぎてしまいました」
「いやこっちも悪かったよ、人の部屋に入り込んでベッドじろじろ見るって普通じゃなかったな」
「大丈夫ですよ」
努めて感情を表に出さずニッコリと微笑むとアマルトは伺うようにこちらの顔を見て。
「許してくれるのか?」
「勿論、お許しします」
許してやるから早くどっか消えろ!と心の中で唱えた瞬間、アマルトの目がスッと細くなり。
「お前、さっきはあんなに俺に対してキレたのに、今は随分寛容なんだな」
「へっ…!?」
「なんかあったのか?それとも…顔色取り繕って俺達に何か隠し事とか?」
妙だな、と詰め寄ってくるアマルトに怪しまれる。確かに今さっき喧嘩別れしたのにこの辺に優しい態度…怪しい。私とした事が感情を表に出さず丁寧に応対することばかり考えて…こんな初歩的なミスを。
「わ、私は引き摺らない主義なんだ」
「そっか、ならよかった」
「……それより本題は!」
「あはは、すみませんすみません、今聞きますから」
おほんと咳払いをするとエリスは…。
「ラエティティアさん、貴方昨日の夜…何をしていましたか?」
来た、やはりその質問。プロパが殺された時間何をしていたか…それを聞きたいんだな?だがそうか…もしかしたらこいつらは『プロパは自殺ではなく何者かに殺された』と言うところまでしか掴んでいないな?
『私がハーシェルと組んでいる』と言うことは疎か『ハーシェルが殺した』と言う所にも気がついていない?…ビビりすぎたか。
「昨晩…でしょうか。それなら夜はこの城の従者達と共に明日の仕事の準備をしていたと思いますが…」
「一晩中?」
「ええ、晩餐が終わってからずっとね。こう言うと恥ずかしいのですが…私、結構お酒が好きでして。誰かと共に酒を飲み語らいながらの方が仕事が進むんですよ。なんならその従者やその場にいた人達も連れてきましょうか?」
私が疑われた時のため、私とは全く関係ない人間数人と行動を共にしていた。ハーシェルが殺した、ハーシェルと私が組んでいる、この二点が見抜かれない限り私がプロパ殺しに関与した証拠は出せないようになっている。
そしてこいつらはまだ、それほど情報をつかんでいない。プロパが殺されたのを知ったのも恐らくはついさっき、まだ私に食ってかかれる程の材料は持ってない、なら一気に畳み込める。
「昨日は一晩中人と一緒にいて、貴方はお酒を飲みながら仕事をしていたから他のことには関与していないと?」
「ええそうですよ?それが何か?」
「いえ、なんでもありません、ただ聞いただけです」
「はぁ、それだけ…ですか」
馬鹿な奴らめ、早計なんだよ。私を怪しむまではいいが、何故私を怪しんでいるのか…怪しい私をどう籠絡するのか、そう言った作戦もなくただ話を聞き来るだけ聞きに来ても有用な情報などくれてやるわけがない。
「一応その人達の名前、聞いておいてもいいですか?」
「いいですよ」
そこ嘘だと疑っているのか、私の計画のアラを探そうとしているのか。だが無駄だ、一緒にいた従者の名前は全て言える、私が一人一人説明してやるとエリスはそれをメモし…。
「なるほど、そうでしたか…」
視線が横へと逸れる。次にどう攻めようか考えているように。だが無駄だ、何をどう聞いても私はボロを出さない。私を言い負かす事も私を騙す事も不可能、私からプロパ殺しについての情報を引き出したければもっと調査を進めてからにするんだな。
まぁ、その頃には私の計画は成就しているし、隠蔽工作も完璧になっているがね。
「ではそれだけですね、質問には答えたので帰っていただきましょうか」
そうエリス達に出ていくように促すと、アマルトはムッとした様子で口を開き。
「お前じゃねぇのか…?」
「は?」
睨むアマルトに対し、こちらも睨み返す。お前じゃねぇのか…だと?悪手だよそれは。
「そうやって誤魔化してるけど、お前じゃねぇのかよ、やったのは!」
「フッ…何を言い出すかと思えば、声を荒げるなよ下郎が…!」
低脳が…言うに事欠いてそれをここで言うか?そんなふうに激情に訴える奴が一番嫌いなんだよ私は。
強引に問い詰めてくるなら、こちらも容赦はしない。詰問であるなら丁寧に答えたが口論であるならこちらも相応の舌で答えよう。
「いきなり部屋にやってきたかと思えば、くだらない質問ばかり。程度が知れるぞ…」
「なんだと…!」
「第一怪しいと言うのなら、お前達部外者の方が怪しいだろう。魔女大国とマレウスは敵対関係、そんな国からやってきた人間とマレウスの為尽力する私とでは信用度の違いという物があるだろう」
「うっ…」
「私としては君達に色々質問したいね、昨晩何をしていたのか…と。聞いた話ではあれから何やら集まって何かしていたと言う話も聞く。大人しくしているなら何も言わないでやったが…あんまり騒がしいと私も君たちに疑いの目を向けるぞ」
「……ッ」
何も言い返せず歯を食いしばるアマルトを見て、心の中で盛大にガッツポーズを浮かべる。やはり気に食わない人間が何も言い返せず押し黙る姿を見るのは楽しい物だ。
私を怪しむ?なら何がどう怪しいのか説明してからにしてもらおうじゃないか。きちんと理論立てて、データや分析を説明して、なおかつ穴も粗もない完璧な理屈で私に言ってみせろ。話はそれからだ。
「さ、話はこれで終わりです。どうせ明日は会談なんだ…そこでたっぷり、色々聞かせてもらうよ」
「っ……」
「いきましょうアマルトさん、これ以上彼に聞いても…何も得られそうにない」
「しゃーねーぇか…」
悔しそうに肩を落としトボトボと去っていくエリス達の背に手を振って、私は彼らを追い出すように扉を閉める。
フンッ、他愛もない。あんな低脳を言いくるめて誤魔化すなんて訳はない事だ。私から情報を取ろうなんて百年早いんだよ。
(勘はいいようだが、まだまだ私には及ばないな)
私に質問しにきたまではいいが、所詮はそこまで。残念だったな…そう口の中で含みながら私は天井裏に視線を向ける。
さぁ誤魔化してやったぞハーシェルの影共、私は私で仕事をしてるんだ…お前達もきちんと仕事を、ロレンツォ殺しをやり遂げろよ…!
…………………………………………………………
「アマルトさんめっちゃ言い負かされてましたね」
「うるせーっての」
エリスとアマルトさんはラエティティアの部屋を後にしつつ。一旦情報を共有するため皆との合流を目指し歩き始める。これ以上の情報収集は必要ない。
「しかしまぁ…ラエティティアの奴。俺がつっかかったらめっちゃ言い返してきたな」
「よく回る舌ですよね」
「ほんと、俺ああ言うの嫌いだわ」
ラエティティアの部屋に行き、彼から情報を取ろうとしたが…まぁこれが完璧に言い訳を用意してあった。恐らく彼が言った『別の人と一緒にいた』は本当だろうし、彼から聞いた名前は実在の物であり、名前を聞いた人たちを探して話を聞いても実際ラエティティアの言った通りの話しか聞けないだろう。
故に、エリス達は大した情報をラエティティアから得ることができなかった…。
「よく回る舌…けど」
「ああ、ちょいと回し過ぎたかな?アイツ」
だが、情報は得られなかったが確信は得られた。
「やっぱりラエティティアがハーシェルの依頼主で間違い無いです」
ラエティティアはハーシェルの依頼主、プロパを殺した首謀者だ、間違いない。先ほど部屋で話を聞いて完全に確信した。
「アイツ、ただ質問しにきた俺達に向かって…なんで『怪しむ』だの『疑う』だの言ったんだろうな」
「ですね、エリス達はただ聞きたいことがあるとしか言ってないのに」
プロパが死んでいることが発覚したのは今さっき、その情報を持っているのはラグナ達とレギナちゃん達だけ、つまり『プロパが死んでいる、殺されたかもしれない』と言う事実を知っているのはエリス達と殺しの首謀者だけなのだ。
故にラエティティアがシロなら何も知らないはず、だったらエリス達が怪しんでいるなんて発想も浮かんでこない筈。なのに彼はアマルトさんの『やったのはお前だろ?』と言う言葉に対して『なんの話?』と言う疑問ではなく『怪しいのはお前らだろ!』と言う方向で言い負かそうとしてきた。
…プロパが死んだ事をラエティティアは知っている、だから怪しまれていると言う疑心が頭の中に生まれ、それを誤魔化すように口が動いてしまったのだ。なまじ口が達者な分やらかしたな、ラエティティア。
「怪しまれてるって思う奴は、実際怪しいんだよな」
「ですね、アマルトさんもナイスでした」
「へへへ、だろ」
エリス達は最初から彼から有益な情報が取れるとは思ってなかった。だから話を長引かせてボロが出るのを待ったり怪しい部分がないかを観察していたんだ。そこにアマルトさんのアドリブが加わって、確信を得ることが出来た。
これがエリス達が彼の部屋を訪れた理由…ああ、あともう一つ。
「ん、そうだ、ほれエリス。お前に言われた通り、探ってみたら、あったぜ?」
「おお、や…やはりベッドにありましたか」
「おうよ、ほれ」
もう一つは、ラエティティアのベッドを探る事。恐らくエリスの予測が正しければ『あれ』がある筈だ。
事実としてアマルトさんはベッドを探り、ラエティティアはそれを嫌がった。それはこれがあるからだ…。
「……やはり」
「で、それなんなん?」
アマルトさんはエリスの手に自分の手を置き、ベッドから回収したそれを手渡す…が、エリスの手には何もない、何も乗っていない。
いや正確に言うなら、キラキラの光る小さな粒子が乗っているんだ。砂と呼ぶにはあまりにも細かい粒子…それを見たアマルトさんは回収したはいいけどそれは何?と聞いてくる。
まぁ、あまり見慣れない物だから仕方ないか…。
「これは眼潰し蝶ブラインドバタフライという魔獣の鱗粉です」
眼潰し蝶ブラインドバタフライ、羽の鱗粉には周囲の魔力を吸収し波長を乱す効果があるとされ…この鱗粉の周辺は魔眼で見ることが出来なくなってしまうんだ。昔ヘットがグロリアーナさん対策に使った魔眼に対する対抗策。それがベッドに付着していた。
何故そんな物がここにあるのか?…決まってる、ハーシェルが身につけていたからだ。
「ブラインドバタフライの鱗粉を身につけている存在は魔眼じゃ見ることが出来ないんです。高等魔力技法である『魔眼殺し』を誰でも使えるようになるんです」
「そうなのか?そんなもんあったら隠れ放題じゃん」
「だから隠密は普通こう言うのをつけていて然る物なんですよ。ハーシェルの影がこの城に潜んでいるなら、この手の隠密道具は欠かさない筈…そして影があの部屋にいたなら何処かにブラインドバタフライの鱗粉が付着していると読んだんです」
「なるほど、だからシーツか」
シーツなら鱗粉が付着しても落ち難いですからね。そこを探ればきっと出ると読んだんです。そして事実出てきた…と言うことはラエティティアは間違いなくハーシェルの影と組んでおり、あの部屋にはハーシェルの影がいたことになる。
「ってかその事をその場で追求すりゃよかったんじゃね?流石に動かぬ証拠があるなら…」
「ラエティティアが組んでいるのは間違いありません…ですが、殺し屋が何処にいるか分からない」
あの場で指摘するのはあまりに危険だった。例えば戸棚の裏や天井裏に隠れていてもエリス達では見つけられない。魔力を極小に抑えれば意図的な魔力探知に引っかかりにくいし、何より魔眼で見つける事もできない。
知覚できない存在という物の恐ろしさをエリス達はこの間味わったばかりだ…だから。
「まずは、情報が必要です。メグさんに聞いてみましょう」
「合点」
そろそろメグさんも戻ってきている頃だろう。ならば聞こう、ここからどう動くべきかを、殺し屋という名の時限爆弾の所在が分かったのだから…ここからは慎重にいったって構わない筈だ。
…………………………………………………………
「えぇーっ!?メグさんどうしたんですかその怪我!」
「おや、エリス様」
と、メグさんと合流する為なんとなく集合場所になっているデティの部屋へ向かうと…既に弟子達の大半とメグさんが戻ってきていた…のはいいんだが、その肝心のメグさんが怪我だらけ、特に手なんか凄まじい勢いで出血しており絶賛包帯で止血中。
どう考えても普通じゃない、そう感じたエリスとアマルトさんは慌ててメグさんに駆け寄り。
「おいメグ!誰にやられた!」
「そいつの名前教えてください!大丈夫その人は近日中に不幸な事故に遭うだけでメグさんとは関係ありませんから!」
「お二人とも落ち着いてください、私は大丈夫ですので」
「ってかデティは?アイツが居なきゃ怪我治せねぇよ」
「デティは今、トラヴィス卿の所に行って…協力を願い出てる…」
「そっか、六王組みは忙しいんだった…」
ネレイドさんが先程からメグさんの隣に立ち背中を摩りながらメグさんを励ましている…が、当のメグさんはケロッとしている。流石はメグさん、応急処置の仕方も完璧だ…とは言え痛いことに変わりはないだろうに。
しかしと周りを見回すが、ここにはまだ六王達は帰ってきていないようだ。まぁ当然か…とんでもないことが起きたんだ、レギナちゃんと一緒にやるべきことがたくさんあるか。
「失礼しまーす…でいいんだよな?」
「ん?ステュクス…?」
「あ、姉貴…?何その怖い顔…」
ふと、誰かが部屋に入ってくる。もしかしてデティかと思ったが…残念、ステュクス達だ、仲間のカリナさんやウォルターさん、後レギナちゃんとラヴも一緒だ。
デティじゃなかったか、デティが帰ってきたら直ぐにでも治癒出来るのに。
「なんでもありません…」
「そ、そう?それよりこっちは仕事終わったぜ、ロレンツォ様に相談してプロパが死んだ事は明日…周知の物として公表するらしい」
「そうですか…」
まぁ下手に隠すと付け込まれかねないからな。それはそれで良いとして…エリス個人の感情を述べるなら、プロパは嫌な奴でしたが彼も一人の人間として…死後くらいはキチンと礼節と敬意を持って送り出してあげたい。死んでしまったら敵も味方も思想も何も無いのだから。
だから、その死を下手に隠蔽したりなかったことにして欲しくなかった。ロレンツォ様の話にはエリスも賛成だ。
「それと、うちとウォルターさんが仕事したぜ?」
「へ?仕事?」
「昨日、プロパが会議が終わってから何処に行っていたかの情報が取れた」
「えぇっ!?」
エリスがいくら聞き込みしても見つからなかったプロパの足取りがわかったんですか!?
「何処に居たんですか!」
「うん、プロパ伯爵代理は会議が終わってから直ぐにスタジアムの方に向かったそうだよ」
「スタジアム…ゴールデンスタジアムですか?」
ゴールドラッシュ城の裏手に存在する広大なスタジアム。名を『ゴールデンスタジアム』名前の通り金色に光る豪華絢爛な巨大施設だ。ロレンツォ様が主催するエルドラドリーグにて様々なスポーツを行い興行として普段使っているとされ、明日の交流競技会の会場でもある。
が…なんでそんなところに。
「何故そこに?」
「プロパ伯爵代理は大のサッカー好きだったらしくてね。あれで三日目の交流競技会を楽しみにしていたようなのだ。だから何処から見るのが一番観戦しやすいかの下見をしにきていたとマレウスのサッカーチームが言っていたよ」
そうか、サッカーチームか…そこまではエリスも情報収集してなかったな。しかし…。
「サッカー…楽しみにしてたんですね」
「ああ、…態々下見に行くくらいだから、マジで好きだったんだろうな…」
エリスとステュクス、そしてみんなの間にややしんみりした空気が流れる。別にプロパとは仲良くなかったが…一人の人間が楽しみにしていた日を迎える事なく、謂れなき死を迎えたのだ。そりゃ…あんまりだよな。
「…ともかくありがとうございました…」
「ああ、で姉貴の方は?…ってぇっ!?メグさんめっちゃ出血してるじゃないっすか!どうしたんすか!?怪我!?なんで!?」
「ああこれは少し色々ありませて…、ご心配には及びませんよステュクス様」
「そうはいかないっすよ!そうだカリナ!」
「ええ、私が治すわ。メグさんちょっと傷見せてくれない?」
そういうなり杖を手にメグさんに駆け寄るカリナさん。そう言えば少しは治癒を使えると言ってたな。ありがたい、治すのはデティである必要はない、カリナさんが治してくれるならそれでいいんだ。
「ゲッ、指がぱっくりいってる…これでよく平気な顔してられますね」
「慣れてますので」
「どういう…まぁいいわ、少し痛いかもしれないけど堪えてね。『ヒーリングオラトリオ』」
傷口に手を翳し、淡い光を当てながらしっかり治していく。その様をジーッとエリス達も覗き込む、ほう…これは。
「へぇ、大した腕じゃねぇの」
「はい、見事な治しっぷりですね。治癒術師を名乗れますよこれは」
「黙っててもらえますかね…!今集中してるんで…!」
ゆっくりとだ、かなり治癒の速度は遅い。デティなら瞬きの間に治せる程度の傷をゆっくりゆっくり治していく、だが速度は遅くとも精度はかなりのものだ。精度だけはアジメクの治癒術師にも劣らないぞ。
「カリナは冒険者だからな、治癒魔術を使う機会は多いんだ」
するとカリナさんの代わりに答えてくれるのはベテラン冒険者のウォルターさんだ。
「治癒魔術は不可逆だからね、半端に治すと身体に後遺症が残りかねない、例えば指みたいな神経の束を治す時少しでも間違えると、指の神経が損傷したまま『治った事』になってしまう。こうなるともう取り返しがつかなくなるんだ」
聞いたことがあるな。治癒とは一度その形に治してしまうとそれ以上別の形に治すことは出来なくなる。
例えば腕を失った人が居たとする、デティなら腕そのものを生やして治すことが出来るけど世間一般の治癒術師は傷口を閉じることしか出来ない。
腕を失った人に対して一般の治癒術師が傷口を閉じる処置をした後ではいくらデティが頑張っても腕は生えてこない。
何故なら腕の傷が閉じてしまったらそれは『治った』判定になり『治すべき傷』は何処にもないから。故に治癒は一度かけるともう取り返しはつかない、これと同じ理屈で自然治癒で治ってしまった傷も治せない、だから古傷となってしまったヴェルトさんの目も治せない…、だから治癒を請け負う治癒術師は責任を持って治す必要がある。
「冒険者にとって指の損傷は心臓の次に重大な傷だ。下手に治して指が動かない状態になっては引退確実だからね。故に冒険者たるカリナは指の傷を治すのには…慣れている上にその重要性も知っている」
「だからこんなにも丁寧にやってくれてるんですね」
「ああ、治す速度は遅いだろうが、それでも指の機能を失わずに治してくれるだろう」
そう思うと腕丸々失っても何事もなかったかのように腕を一個再生させてしまうデティって、とんでもない実力の持ち主なんだろうなぁ…。スピカ様を除けば世界最強の治癒術師…なんて言われるのも納得の腕だ。
「ありがとうございます、カリナ様」
「別に…いいんだけどさ…、ここにいるのは魔女の弟子様達でしょ?私なんかより…ずっとすごい魔術師達、なら…そっちで治癒したら良くない?今気がついたけどさ」
カリナさんは冷や汗を流しながらも着実にしっかりと治していく、まるで粉々に割れてしまった壺を即興で治しているかのようだ…けど。
同時に投げかけられた質問、エリス達で治癒を?いや…。
「すみません、誰も治癒使えないです」
「へ?」
「エリス達治癒魔術使えません」
「なんで…?」
「治癒魔術はスピカ様の技なので、他の魔女の技は使うわけにはいかないですよ」
「そ、そういう問題?みんなでそれぞれの魔術を教え合ったりしないの?みんながみんな古式魔術使えた方が強くない?」
みんなでお互いの顔を見合う、確かにエリスが古式治癒使えたりネレイドさんが古式付与使えたりアマルトさんが古式魔術陣使えたりしたら強そうだ…あんまり考えたことなかったな。
例えば、エリスが全員の古式魔術を同時に使えるようになったら、そりゃあもう強くなるだろう。けど…。
「いや、カリナ。そうはいかねぇよ」
「え?そうなの?ステュクス?」
「お前は師匠持ったことないからわからないだろうけど、師匠から授かった技術ってのは当人の技量を超えた位置にある。姉貴が別の弟子経由で別の古式魔術習ってもそれは劣化した技にしかならねぇ。だったら役割分けしてそれぞれが特化した地位を確立した方が強いだろう」
「そう言えばアンタも師匠持ちだったわね、よくわかったわ」
「ってか雑談してる暇あるのかよ」
「もう殆ど治ったわ」
エリスは思わず口を開けてしまう、エリスが言おうとした事を全部ステュクスに言われてしまったからだ。そうだ、師匠達は古式魔術の真髄を知っているから真髄を授けることが出来る、真髄を知らぬエリス達が古式魔術を教えても劣化した魔術にしかなり得ない。
そんな劣化した魔術は武器にはならないんだ。…と言いたかったのに、そういえばステュクスも師匠から剣を習ったと言っていたな。
「………」
「なんだよ、姉貴」
「いえ、貴方の師匠って何者なんですか?…アジメク人ですよね」
「え?言ったっけ?」
「いえ、そもそも貴方の師匠の事は何も知りません、会ったこともないです」
だがステュクスと戦った時見せた技は、どれもアジメク流の剣術だった。やや我流の匂いが強かったが恐らく彼の師匠は相当なやり手なんだろうと感じさせるくらいには一つ一つの技が洗練されていた。
だから…ちょっと気になったんだよな。最近もアジメクの剣を見たばかりですし。
「そっか、…一応聞いておくかな。俺今行方不明の師匠を探してるんだよ、それで旅に出てさ…」
「……一応名前は聞いておきます」
「ああ、名前は───」
『ただいまー、って…全員いるし』
『全員揃ってるな、なら話も早い』
『何してんだ?』
「む、話は後です」
すると、部屋の扉が再度開かれラグナ達が帰ってくる。丁度メグさんの治療も終わったみたいだし…ラグナ達が帰ってきたなら主題の方を進めたほうがいいだろう。そう思いエリスはステュクスとの話を切り上げラグナ達に向け向き直り……ん?
「あれ?デティ?誰ですか?その人」
ふと、デティが知らない男の人を引き連れていることに気がつく。金髪ロン毛、キラキラの睫毛、見るからに美形…というよりなんか神話に出てきそうなレベルのイケメンだ。誰だこの人。
「あ?イシュ君の事?この人はねぇ私のお父様の恩師トラヴィス卿の息子さんのイシュキミリ・グランシャリオさんです」
「始めまして皆々様、ご紹介に与りましたイシュキミリと申す者です。魔女の弟子の皆様とお会い出来て光栄です」
イシュキミリ・グランシャリオ…そう名乗る彼はエリス達を前に恭しく一礼して見せるのだが、その動作の流麗さと来たらこれがまた綺麗のなんのって。
礼節とはその人が受けてきた教育の上等さを物語り、上等な教育を受けて来たという事はつまり彼らの家はそれだけ高位の地位を持つという事でもある。
魔導卿トラヴィス・グランシャリオの息子か。デティはトラヴィス卿を信頼してますけど…エリスの中で王貴五芒星ってだけでちょっと信用出来ないというか、その息子なら尚更信用出来る要素なくないか?
「あの、デティ…これから大事な話をするので、その…彼は同席させない方が…」
「大丈夫、イシュ君は頼りになるし信頼もしていいよ。それにもう大体状況は話してあるしその上で彼は…」
「はい、デティ様よりお話は伺っております。己が目的の為に人命さえ軽んじるやり方…とても許容出来ない…ハーシェル一家のやり方は私としても許せません、未だ若輩ではありますが是非とも私にも協力させてくださいませ。必ずやお役に立ちましょう」
「協力を申し出てくれたんだ!イシュ君なら絶対役に立つ、私が保証する!だから連れてきましたー!」
お、おお。高潔だなこの人…。まぁデティが信頼するっていうならしますけど…。
「それよりみんな集まってるって事は話は次の段階に進んだな?何か分かったか?」
「はい、ラグナ。実はさっきアマルトさんと一緒に捜査をして来て……」
ともあれ、みんな揃ったなら情報の共有を優先した方がいい。いつも以上に大所帯になった部屋の中でエリスは先程の調査の結果。
つまり、『ハーシェルを雇ったのはラエティティアで間違いない』事と『ハーシェルは今もこの城に潜伏している事』、この二つを皆に話す。するとみんなの顔はみるみるうちに青くなり。
「つ、つまり…今この城に、世界最強の殺し屋集団が隠れてるって?」
「はい、そうです」
「マジかよ!ラエティティアの奴何考えてんだ!今すぐブッチめて…」
「待て、ステュクス」
皆深刻な顔で報告を受け止める。そんな中慌てて部屋を出ようとするステュクスを…ラグナは止める。
「なんで止めるんだよラグナ様!このままじゃ誰が殺されるか分からない!」
「王族達はみんな一級の護衛を連れてる、簡単には殺されない。ロレンツォ様やこの城に滞在する貴族達もまた大勢の護衛を連れている、それを皆殺しにして尚且つ隠密を続けるのは難しい…ハーシェルも簡単には手出しはしてこない」
「つっても殺しが仕事の殺し屋が城にいる以上誰かを狙ってるのは確かだろ!」
「ああ、それはその通りだ。恐らくは機を窺っている…、それまでハーシェルは動かない、向こうが動かない以上見つけるのは難しい」
向こうは一級品の殺し屋だ。多分ゴールドラッシュ城を逆さにして振り回しても出てこない隠れ方をしているだろう。無理に見つけるのは至難の業だ。何より…。
「何より、今俺達は一つのアドバンテージを持ってる…これを捨てるのは惜しい」
「アドバンテージ…?」
ラグナは語る、俺たちは今アドバンテージを持っていると。それを言われても意味が分からないと首を傾げるステュクスとは対照的に、デティを守るように立つイケメンことイシュキミリさんはハッと顎に指を当て。
「なるほど、『我々がハーシェルの情報を掴んでいる事を、向こうは知らない』…つまり情報の深度をハーシェルの側は認識出来ていない。これがアドバンテージになり得るという事ですね」
「お、…アンタただのお坊ちゃんかと思ったが、結構やるもんだな。その通りだ」
「光栄です、ラグナ大王」
ハーシェル達は今エリス達がハーシェルに気が付いている事に気がついていない。つまり向こうは不意打ちが出来ているつもりでいる。なんせプロパを自殺に見せかけて殺していたんだ。
雇い主のラエティティアの態度から言ってこの隠蔽は成功しているものと思われている筈だ。なら…不意を突こうとするハーシェル達の手を逆に掴み捻りあげる事もできるんだ。
そこに気がつくとはイシュキミリさん、結構頭が回る方なのか。流石はデティが信頼して連れてくるだけのことはある。
「今俺達はハーシェルにもラエティティアにも警戒されていない。何も知らないフリをしていれば少なくとも向こうが俺たちを意識して動く事はない」
「そ、そっか…でも奴等が次に誰を狙うか、いつ狙うかが分からなければどうにもならないんじゃないのか?」
「そこは、…彼女に聞こう」
そう言ってラグナは視線を向ける、誰に?決まっている…この中でハーシェルの情報を最も持つ人。…メグさんだ。
「ラグナ大王、失礼ですが…彼女は?メイドに見えます」
「この人は無双の魔女の弟子のメグ・ジャバウォック…元ハーシェルの影だ」
「なんと、それはまた…」
イシュキミリさんにそう紹介する。と共にメグさんは静かに立ち上がり指の動きを確認する、どうやら完璧に治されているようで動きに支障はないようだ。
「なぁメグ、…ハーシェルは次いつ動くと思う」
「そうですね、彼らの目的を考えるに…恐らく次の狙いは六王同席の元行われる食事会。そこでロレンツォ様の命を狙うものと」
「なっ!?ロレンツォ様の!?やっぱりロレンツォ様危ないんじゃないか!」
食事会でロレンツォ様を、その言葉に周囲に電流が走るが如く衝撃が走る。そんな中イシュキミリさんは相変わらず涼しい顔で…かつ眉間に皺を寄せて。
「確かに効果的ですね。六王が同席している場でロレンツォ様が死ねば…『プロパ殿の死』と言う疑惑のファクターは確たる物に物になり、マレウスと魔女大国の亀裂は修復不可能になる…とは言えやり方がメチャクチャ過ぎる。どうやら敵は相当切羽詰まっているか、或いは正常な判断が出来ない状態にあると見える」
「ええ、細々と連続殺人事件起こすより…一回の殺しで最大効率の不信を煽れます。悪手である事に変わりはありませんがね、普通なら取らない手なので」
「ならどう殺す?方法は」
「毒殺でしょうね、それも恐らく…食事会中に死ぬ即効性の毒物。しかも解毒不可の物を使うはずです」
「解毒不可?デティでも無理なのか?」
「無理でしょうね、だってそれ…広義的には『毒物』そのものではないので」
ラグナの問いにメグさんは目を伏せる、何かを思い出すように…或いは何かに耐えるように目を閉じて。
殺しに使われるは毒、だが実際は毒じゃない。なんかのトンチか?
「どう言う意味ですか?メグさん」
「使われるのはポーションです。飲めば胃袋を介して血中に流れ、そのまま心臓を壊す最悪の毒性ポーションです」
飲めば死に至るポーションか。確かにポーションは毒そのものではなく分類は『魔力薬物』薬にも毒にも部類されない物である以上既存の解毒魔術では解毒出来ないだろう。けど…。
それを聞いたデティとイシュキミリさんはムッと顔を顰め。
「そんなものはない」
イシュキミリさんはそう言うんだ、それに続いてデティも手を上げ。
「ごめん、私もイシュ君の意見と同じ。無いよそんな危ないポーションは」
「俺あんまり詳しく無いんですけど、無いんすか?」
「無い、少なくとも認可されてる物の中には無い。ポーションのレシピってのはそう簡単に作れる物じゃ無い、この世に無数にある素材の加熱加減から魔力を浸透させる加減、ありとあらゆる物を寸分違わず一から計算して作り上げるのは不可能に近い。だからレシピのある物しか作れないんだよ…」
まぁ確かに、解毒出来ない毒なんて物があったらもっと知られていてもいい。けどエリス達はそんな存在を知らない…つまり毒性ポーションなんて代物を作れる存在はいないのだ。認可されずレシピして共有されない物は作れない。
一から作ろうと思うとそれなりの研究機関が複数の研究者を集めて資金と時間を潤沢に使って作る必要がある…。
だがメグさんはそれを聞いても首を振り。
「存じています、ですが…もし、その計算を天賦の才能と直感だけでクリアしてしまうポーション作りの天才が向こうに居たら?」
「天才…?」
「そう、…ハーシェルの影その四番。ファイブナンバーの一角『本命殺』のオベロン、彼女は私が見て来た凡ゆる魔力薬学者の中で恐らく最高位に位置する腕と理解不能なレベルの才能を持つポーション生成士です。彼女なら治癒不可能な毒を作れます」
「嘘でしょ…その人一人でそんな簡単に存在しないポーションをホイホイ作れるわけがないよ、それこそスピカ先生クラスの力がないと…」
「はい、彼女はポーション作りの腕だけなら、魔女クラスに相当するかと」
とんでもない存在がいたもんだな。つまり師匠レベルのポーションを作れる腕と才能があるってことか。エリス達はその凄さをニュアンスでしか感じ取れない。
「そんなの…、描いた絵を紙から取り出すようなモンだよ…」
だが、本業達。つまりデティやイシュキミリさん、そしてカリナさん達魔術師は口元に手を当て信じられないとばかりに首を振っている。どうやら相当な物のようだ。…ファイブナンバーの一角『本命殺』のオベロン…か。
…うぉっ!怖っ!なんか想像したら急に物凄く怖くなって来たぞ!?相手とんでもない毒物持ってるな!?
「そうか、…だがそこまで分かってるなら」
「ええ、阻止して逆に連中を捕まえる算段も立てられます。…ですがそれはハーシェル一家、つまり世界で一番恐ろしい存在に弓を引く事を意味します。今なら逃げる選択も出来ますが…如何しましょうか」
らしくない事を言うモンだな…、ハーシェルの影に一番敵対心を持ってるのはメグさんのはずだ。なのにメグさんは先程から憂げな顔をするばかりで敵対心は垣間見えない。
あるのはただ一つ、憂慮…不安だ。彼女はハーシェルの影を恨み、誰よりもその実態を知っている…だからこそ、その恐ろしさもまた知っている。挑めば後戻りは出来ない、知らないフリして会談を取りやめ祖国に戻る選択肢もある…だが。
「……俺達は、覚悟してマレウスに来てる。メグさん、俺達だってメグさんくらい相手を恐れているし…同時に、同じくらいハーシェル一家に対して許せないって気持ちがあるんだ。だから引くことはない…全力でやろう」
ラグナは答える、全力でやると。つまり彼が見ているゴールは…。
「食事会でハーシェル達を撃破して、そのまま元締めまで引っ張り出す。ハーシェル一家を壊滅させて…マレフィカルム本部の情報を頂く」
「ッ……」
「やるぞ、メグさん…みんな!」
ハーシェル一家の壊滅、それがこの戦いのゴールとなる。メグさんがどれだけジズ・ハーシェルを恨んでいるか知っている。メグさんがどれだけジズ・ハーシェルに辛い目に遭わされたか知っている。
だからこそ、友達として一緒に戦う。これはもう会談の成功とか人命がどうのとか、そう言う領域の話じゃない。友達の敵はエリス達の敵なんだから。
「分かりました、ではやります…いえ、やりましょう!皆さん!完璧に完全に…次の食事会でハーシェルを追い詰めます!」
彼女の瞳に火が灯る。やり通す…戦い抜く、このエルドラドの街で…今こそハーシェル一家を叩き潰す。マレウスに来てから続きに続いたジズとの因縁を終わらせる時が来たのだ。




