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孤独の魔女と独りの少女【書籍版!8月29日発売中!】  作者: 徒然ナルモ
三章 争乱の魔女アルクトゥルス
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49.孤独の魔女と来襲の第二王女ホリン


第二王女がこちらに向かってきている、その報を伝える為エリスは血相変えて地上に戻る、いやいやマズいマズいもしてして居場所がバレた!?いやだとするとなんで!継承戦が始まったのは…エリス達があそこに拠点を構えたのは昨日だぞ!バレる要素が何一つとしてない筈だ!


なにはともあれみんなに伝えに行かないと!急いで対策を練らないと!


「ラグナーっ!ラグナーっ!」


「ん?おお、もう戻ったか 流石に早いなエリス」


「何をのほほんと笑ってるんですか!大変ですよ大変!」


地上に降りればエリスの帰りを待っていてくれたのか、ラグナが惚けた顔で出迎えてくれる、この一大事になんだその顔は!エリスが顔を青くしていうと、彼もまたこの重大さに気がついてくれたか その口元が引き締まる


「一体何を見たんだ…、いや待て 重要そうだ、すぐサイラスを呼んでくるからそこで話してくれ」


「は 早くしてくださいね」


「ああ、サイラス!サイラース!」


なんてラグナが呼ぶと拠点の奥からガラガラといろいろ崩れる音がしながら奥からサイラスさんが走ってくる、何をしていたのか知らないが 色々ほっぽり出してこちらにきてくれたようだ


「ど!どうされましたか若!敵襲ですか!、いや敵襲なら我輩は呼ばれませんな、我輩弱いですし」


「いや、分からん 先程エリスに斥候を任せたのだが、何やら重要そうな何かを見たらしいから、君も聞いてくれ」


「なるほどなるほど…分かりました、ではエリス君 お願いします」


そう言ってサイラスさんとラグナはエリスを前に聞く姿勢をとる、こう 改めて聞くことに集中されると緊張するが、今はそんなこと言っている場合じゃない


「先程、山の上からホーフェン地方の全域を見渡していたのですが…」


「全域を…そりゃすごい」


「そこで、第二王女陣営を発見しました、全軍を伴ってホーフェンの裂傷を進み 山岳地帯を…こちらを目指して進軍しています」


「な…!?何!、姉様の軍団がこちらに!?…何故こちらに、姉様の軍勢にバレるような要因はなかったはず、それとも俺たちが気づかないうちに姉様の斥候にも発見されていた?、にしては何もかも早すぎる」


「エリス…思うんですけれど、もしかしてなんらかの要因で予めここに来るのがバレていたのではないですか?」


「予め…?」


「はい、例えばこの場所を指定する地図を盗み見られていたとか」


思えば、このスタート地点を指定する地図 あれは要塞側から手渡されたものだ、つまりあの地図がラグナの手元に渡る前に何者かが盗み見てその内容を誰かがホリンさんに流した…とかは考えられないだろうか


もしそうだとすると、斥候もクソもない エリス達の場所はあちらに筒抜けということに…


「それはないでしょうな」


「…え?」


否定された、サイラスに一蹴されるが如く


「確かに地図は最初要塞側にあり それを盗み見ること自体は不可能ではありません、ですがその後誰がどの地図を引くかは分からない上、スタート地点から動いている可能性もある 、事実ラクレス様はスタート地点から速攻で動いていますし その情報をアテに動くのはいささか無理がありますな」


「た…確かに、それなら何故こちらに」


「恐らく…ただの布石でしょうな」


布石?、この山にはエリス達を倒しにきているのではなく 、ただ別の何かをしに来ているのをエリスがこちらに来ていると勘違いしてしまっただけ?、だとするととんだ空回りだ


「布石って、姉様はこの山岳地帯には何をしにくるんだ?」


「ふむ、これはただの予測ですが 多分山の中に隠れている可能性のある、もしくはこれから山を隠れ家にする可能性がある陣営を潰すために、山を丸々焼き払うつもりでしょうな」


「や 焼き払う!?そんなめちゃくちゃな」


「めちゃくちゃも何も 案外有効な手ですぞ、何せ継承戦の舞台となるホーフェンの地はその七割が山岳地帯、つまり七割の可能性で候補者が隠れているのです、それに山の中に後々逃げられると面倒ですしな…潰すなら初手から潰すに限るのです」


「いいんですか?山を燃やしても…」


「いいことはないでしょうが、やるでしょうな ホリン様なら」


やるだろうな、エリスからいいのかと聞いといてなんだが 多分ホリンさんならやる、何せ王になった時の公約に『税金で浴びるほど酒を飲む』と声高に宣言してしまうほどめちゃくちゃな人だ、自国の領土一つを燎原に変えたって何食わぬ顔で笑ってるだろう


それが勝つためなら尚のことやるだろう、その予想はラグナも同じらしく エリスと揃って冷や汗を流している


「…なら、姉様をこの山に近づけてはいけないな…どうすればいいか?サイラス」


「私から進言するのであれば、ここはもう打って出るしかないのでは?」


「で…では?って簡単に言いますけどあっちは数の上でも戦力でも上なんですよ?、討滅戦士団のルイザさんもいますし、真っ向勝負したって勝ち目はありませんよ!」


エリスは叫ぶ、このまま戦えば勝ち目はない…エリス達側に討滅戦士団をなんとかできる手札は少ない、オマケにラグナ軍は五百人 ホリン軍は八百人、数でだって負けてる 打って出ても勝ち目はない


「いえ、むしろ今しか勝ち目はないとも言えますぞ?、エリス君」


「な…なんで」


「敵は今 谷を通って来ているのですよね?、つまり狭い通路を通る為に軍を縦長に配置しているはずです、となると 両軍がぶつかる時の横の面積は制限され数の優位を活かせなくなりますし 大軍を展開し自在に動くこともままなりません、数で負けていても対抗できるでしょう」


「た…確かに」


言われてみれば軍は縦長に配置されていたし、いざ敵とぶつかっても横に展開して敵を囲む なんて真似もできないはずだ


「でも向こうには討滅戦士団のルイザさんもいるんですよ?、どうやって倒すんですか?」


「いや、倒す必要はない…継承戦は候補者が敗北した時点で その陣営は丸々敗北となる、つまりホリン姉様だけ討てれば…ルイザを相手する必要はない」


「そうなんですか、ホリン様だけを…出来ますかね 勝敗が関わってくるなら、間違いなくルイザさんがホリンさんを守りますよね」


「ああ、そこが問題だ…どうやって引き離すか…」


ルイザさんは倒せない、まずその前提で話を進める 討滅戦士団の実力が如何程のものか分からない、だがエリスが今まで戦ったアルクカースの戦士達すべてを差し置いて最強と言われるだけの人だ、まず勝ち目はないだろう


「…ふむ、エリス君 第二王女陣営がこの山に到着するまで、どのくらいかかるか目測は取れますかな?」


「ええ、どうでしょう あのスピードでそのまま移動すると、…一日くらいかかるんじゃないですか?」


「結構早いですな、なら迷っている暇はありません、準備をしましょう 迎え撃つ準備を」


む 迎え撃つのか!?、いやしかし このまま手をこまねいていても いずれホリンさんは山に到着し このホーフェンの山々を焼き払うだろう、そうなればエリス達は巣を潰されたアリの如く山から逃げ飛び出すことになる、逃げた先ではきっとホリン軍が展開して待ち伏せているだろう


方々に散ってろくに戦うことが出来なくなったラグナ軍は背後の猛火と前方のホリン軍に挟まれ押しつぶされることとなる、…つまり敗北だ ならホリンさんを山に到着させないのは絶対条件となる


「分かった、迎え撃とう プランはあるかい?サイラス」


「万全は期しています、しかし時間と人手が必要です エリス君、直ぐに山を飛び回って斥候に出ている人間を集めてください!、後 やってほしいことがいくつかあります!、とにかく時間との勝負です、どれだけ準備を出来たか…そこが勝敗に関わって来ます」


「分かりました、迎え撃つんですね」


「ああ、ホリン軍との激突の地は…この谷の出口辺りです」


そう言ってサイラスさんはエリスが渡した地図を取り出し、谷の出口…この山の目の前で迎え撃つと言うのだ、どうやってやるかは分からないが ここは彼に任せる、なんたって彼はこの軍の軍師なのだから


それだけ確認するとエリスは山の中へ駆けていく、山へ散っていった戦士達を呼び戻す為


………………………………………………………


ホーフェンの裂傷、魔女アルクトゥルスが このホーフェン地方で反乱を起こしたホーフェン公の軍勢を蹴散らす際放った一撃の余波により生まれた、超巨大な大地の亀裂が長い年月をかけて谷となったものと伝えられる


それほど深くないが それでも一足跳びに飛び越えることができないほど高い断崖が両脇を囲んでいる、お陰で手持ちの軍勢が縦長に配置されることとなったが、この谷でかち合う可能性は低いだろう…他の陣営に発見されないように移動するにはこの谷はうってつけだし、まぁ仕方ないと言えば仕方ないと アルクカース第二王女 ホリン・ブランデンブルク・アルクカースは牙を見せ獰猛に笑う


「ねぇ、ホリン?本当にいいの?山を丸々焼いちゃうなんて、どんな影響が国に出るか」


「んぁ?、あ〜ルイザ〜!そんな固いこと言わないでよう」


ふと、ホリンの隣を歩く討滅戦士団ルイザの諌めるような声に ホリンは猫撫で声をあげて弁明する


ただの人間が ホリンを諌めたり忠告したりするようなことがあれば、ホリンは聞く耳すら持たず拳で返事をするだろう、だがルイザにそんなことはしない 彼女は小さい頃からホリンの面倒を甲斐甲斐しくも見てくれた世話係だ


こうして継承戦にも真っ先に駆けつけてくれたし、親友とも言える彼女を殴ったりしない…


「山なんてどうでもいいじゃん、黒焦げの禿山に変えたって種とか植えときゃまたいつか元に戻るでしょ!多分!、それより今は勝つほうが大事」


にゃははと笑いながらとんでもないことを言う、山は国の財産だ だが目の前の勝利には変えられない、あの山を焼いて 中に隠れてるであろう連中を炙り出す、そうすりゃ勝ちにグッと近づけるって算段よ、私なんて頭いいのかしらと思いついた時には笑ったものよ


「そんな簡単に行くとは思えないけど、でもまぁいいわ 貴方がやりたいなら私は従う、貴方を王にする為なら街にだって火を放ってやるわ」


「頼もしいぃ〜、で?ルイザはどう思う? 山に候補者はいると思う?」


ホリンははっきりいって戦争初心者だ、戦争の指揮など取らず 趣味の武術屯集に勤しんできたから、戦争のいろはとか分からない、だからこう言う判断や指揮は全てルイザに一任している、彼女は一流の戦士であると同時に一流の指揮官でもあるのだ


「…どうかしら、ラクレス様は多分砦の確保に向かっているだろうし ベオセルク様はどこに潜んでてもおかしくないからなんとも言えないけど、多分 ラグナ様はいるでしょうね」


それはなんとなくわかる、ラグナは平原のど真ん中で堂々と陣を構えるタイプじゃない、山の中でスタートしていた場合その場で拠点か何か建てている可能性が高い そしてこのホーフェンは七割が山 つまり七割強の確率でラグナは山の中に陣を敷いている、そこはホリンも感覚的に理解していた


「火をつけたら、ラグナ達は驚いて山を出てくる そこを私たちで突っつく、そう言う作戦よね?」


「いえ、多分迎え撃ってくるわ、ラグナ様達は私達の到来に気がついているもの…さっき山の上を飛んでこちらを見ている子が見えたの、多分敵の斥候ね 撃ち落としても良かったけど、逃してこちらを迎え撃つよう仕向けたほうが楽でしょ?」


「え?空飛んでた?、全然見えんかったわ」


ルイザは昔から超人じみたところがある、目がいいと言うよりは勘がいい…多分何かを感じて山を見たら人みたいなのがこっちを見ていた気がする、そのくらいの感覚だろうが多分ルイザが言うなら間違いない


「じゃあこの谷で戦いになるの?、やりづらぁ」


「問題ないわ、戦いにくいのは敵も変わらないし 前衛には既に歩兵隊を固めていつでも接敵できるようにしてある、何より私が最前線で指揮を取るんだもの 万が一危なくなっても私が出れば何も問題はないわ」


「確かに確かに!ルイザにかかれば敵はないか」


ホリンもルイザの実力は認めている、血気盛んなホリンが唯一ルイザに逆らおうと思えないのは、ルイザという戦士が隔絶して強いからだ、彼女に勝てる戦士などこの国にはデニーロくらいしかいない、他の討滅戦士団と戦っても引き分けか決着がつかないかくらいだし


ルイザに任せれば、ラグナの脆弱な軍程度 瞬きの間に消しとばすだろう、豪将ルイザに敵はない


「で?どこで仕掛けてくると思う?」


「普通に谷の出口辺りでしょう、あそこは上に上がるための坂があるから、頭上をとって優位に立とうと考えるはずよ、まあ 私にはそんなの関係ないけれどね、今のうちに前方に移動しておくわ、貴方が危なくなったら戻ってくるわね?」


「私は大丈夫だよ、ルイザは心配性だなぁ」


「心配性になったのは昔から無茶ばかりする貴方のせいよ、じゃ 寂しくても泣かないように」


「泣かないよ!」


それだけ言い残すとルイザは壁面を蹴って飛び上がると 一足に軍の最前線へと移動してしまう、あーあ 私も戦いたいなぁ…けどルイザがいる以上私はあまり戦う機会に恵まれないだろう、精々ベオセルクとの戦いくらいかな?私の出番があるのは…


「まぁいいや、ラグナ…精々足掻いて見せなよ、勝つのはまぁ 無理だろうけどさ」


ホリンは一人、谷の闇の中 軍を率いて呟く、末弟の奮闘を祈る…私を楽しませてくれるようにと


……………………………………………………


戦いの支度、サイラスさんはそう言った…、あれから直ぐにエリスは山を駆け回って斥候をしている人たちを大急ぎで掻き集め、事情を説明し ホリン軍迎撃の支度の為 ラグナ軍総掛かりで谷の出口付近に色々と準備をし始めた


はっきり言って、サイラスさんの用意周到さには脱帽した まさか『こんなもの』まで用意しているとは思わなかった、確かにあの時策があるとは言っていたが こんな手があるとは


ともあれ準備は出来た エリスもラグナもバードランドさんもハロルドさんもカロケリ族のみんなも丸々こき使われてなんとか一日全てを用いて。次の日…つまりホリンさん到来の当日には迎撃の支度は整った


整ったのだが


「すみません、ラグナ…山中を探し回ったのですが、モンタナ傭兵団の皆さんだけ見つかりませんでした」


モンタナ傭兵団とはエリスがラグナのところに帰って来た時、宿の出口で難癖つけて来たチンピラみたいな人たちだ、曰く 新設の傭兵団で若い傭兵しか所属しておらず、血気盛んでやる気満々な人たちらしいのだが、彼らだけどれだけ山を探し回っても見つけられないのだ


「そうか、モンタナ傭兵団が…いや もしかしたら彼らはラクレス兄様のところへ斥候に行ってるのかもしれない、ラクレス兄様が砦にいると聞いてなんか張り切っていたし」


「か 勝手にですか!?」


いくら血気盛んだからってそんな単独行動されると困るのだが、下手に捕まってエリス達の拠点の場所をゲロったら何もかもおじゃんだと言うのに


「…いや、今更連れ戻す時間もない、彼らとてプロだ ヘマはしないと信じよう」


「エリスはあんまり信じられませんけどね…、ともあれ時間はないのは確かです」


そうだ、もう時間はない あれからエリス達はせっせこ働いて迫るホリンさんの軍勢を迎え撃つべく準備を進めた、場所はホーフェン山岳地帯とホーフェンの裂傷を繋ぐ場所、谷がせり上がり坂となっている この出口付近にホリン軍迎撃戦線を引くこととなった


昨日は丸一日 全員がかりでサイラスさんの言う仕掛けを用意することとなった


「しかしすごいですよね、こんなものまで用意してるなんて」


迎撃戦線の奥 谷の出口付近に配置された『それ』を見上げる、こんな凄いものまで用意しているなんて…確かにこれをそのまま運んだら警戒される、だが持ち前の策略を以ってしてものの数時間で『これ』を組み上げてしまった


サイラスさん曰くこれは一発限りのびっくりどっきりの切り札らしい、確かに初見の衝撃は凄まじいが 通用するのは初見だけだろうな、二度目は対処される


どのみちエリス達に二度目はない、一度引けばもう後がない…勝つか負けるかだ


「オイ!こちらは準備オーケーダゾ!、アタシは手先が器用だかラナ!、アレくらい楽勝楽勝!」


「リバダビアさん!、ありがとうございます!」


ヌッハッハと自慢げに笑いながらリバダビアさんがカロケリ族を率いて戻ってくる、いやカロケリ族だけじゃないバードランドさんやハロルドさんも続々と持ち場に戻ってくる、サイラスさんが用意した『仕掛け』とやらは万全に配置できたらしい


仕掛けは万全 後は人…つまりエリス達次第だ、皆が持ち場に戻ったのを確認するとラグナはそれらを見渡し声を上げる


「皆もう知っていると思うが、既に ホリン姉様の軍勢が山を目指して進軍中だ もう数時間しないうちにここに現れるだろう、恐らくだが姉様は山に火を放ち俺たちを炙り出す心算らしい、それを許せば 全体的な戦況は姉様に傾くこととなる、故に俺たちはここで姉様を迎え撃ち、ここで討つ!」


その言葉を ラグナ軍は静聴する、継承戦が始まってからいきなりの両軍激突、だが足元が浮つく物はいない、皆落ち着いてかつ高い士気の中 戦いに臨めるのは、やはりエリス達が二日前倒した斥候部隊の戦果があるからだろう


「作戦としては、先程も伝えたが 奇襲による電撃戦により王女であるホリン姉様だけを狙い討ち果たすつもりだ、その為に討滅戦士団のルイザを引き離し分断する必要がある…だから部隊を二つに分ける!、前面でルイザを足止めしながら軍勢を引きつける部隊と、俺と一緒にホリン姉様を討ちに行く部隊」


囮と本命…エリス達には真正面から挑んでホリンさんを倒すだけの力はない、故に一点集中でホリンさんだけを倒すのだ、一応作戦はある…最後の部分はやや不安は残るが


「まずホリン姉様を討ちに行く部隊だが、アルミランテさん…カロケリ族を率いて俺と来てください、そしてエリス 君も俺と来てくれ、それ以外のものはサイラスの指揮の下軍勢を押さえておいてくれ」


ホリン討伐隊はカロケリ族とエリス達、はっきり言ってラグナ軍の最高戦力を全部ここにぶつけ、後の物は全て足止めに回す、極端な話だ…もしかしたら損害が出るかもしれない、だが負けるよりはマシだ


「ラグナ様、その足止めの先鋒 ワシらに任せてもらえんかのう」


そう言ってを上げるのはハロルドさんだ、ヨボヨボの手をあげながら名乗りを上げた、虚弱そうな体だが 彼らが歴戦の戦士であることをエリス達は知っている


「いけるか?ハロルド、相手は現役の討滅戦士団だぞ」


「分かっとるわい、現役の連中に老練の妙技見せたるわい…それに、若い衆が戦果を挙げたのにワシらだけ大人しくしとるわけにはいかんからのう」


どうやらバードランドさんに焚きつけられてのことらしい、だがハロルドさんならエリスはやれると思う、何もルイザを倒すわけではない 時間を稼ぐのだ、ならこの場では力ではなく技術が物を言う、そしてその技術でハロルドさんに勝る者はこの場にはいない


「分かった、君達に任せる…頼んだぞ ハロルド」


「任された!、フフフ 血が騒ぐわい」


「よし、なら作戦の細かいところを詰めていく…まず、ホリン姉様が現れたら前面に軍団をおびき出し…………」



そうして、細かな作戦を詰めていく、その間もエリスは遠視の魔眼で油断なく 谷の奥を見つめる、ホリンさんが現れたら直ぐにでも対応出来るように…


遂にホリンさんと直接対決だ、あの人の武技武練にエリスは一年前 圧倒され尽くした、この一年でエリスは強くなったが、果たしてどこまで通用するか……


そんな不安を抱えたまま軍議は終わる、そしてそのちょうど一時間後だった



谷の奥から、ゆらりと揺らめくホリンさんの軍勢が 谷の奥に姿を現したのは




…………………………………………………………


「伝令!谷の出口付近、敵兵団の姿あり!既に布陣を固めており こちらを迎え撃つ様子です!」


伝令兵の報告を受け、ルイザはやはりと息を吐く…仕掛けるならここしかないものな、どうせその谷の出口付近には罠がたんまり仕掛けてあるのだろう、何が予想できるだろうか


谷の出口の急勾配を利用して丸太でも転がしてくるか?、それとも谷の上から弓で掃射だろうか、どちらにしても恐るるに足らず、ホリンの集めた軍は皆が皆一流の武芸者だし 何よりどんな仕掛けが来ても私で対応できる


ルイザは軍の最前線で軍を引っ張り、ホリンは一応 軍のど真ん中で馬に跨って軍を俯瞰している、もし 奇襲か何かあって ホリンの方に敵兵が言ってもルイザなら一瞬でホリンの元へ戻ることができる


さて、そんな私を前にどんな戦いを見せてくれるのか 些かな昂りを覚えながら目の前で布陣すると言う敵兵を覗き見るルイザ、そこには


「待たれよーーっ!、ここを通りたくば 老い先短かきこの老兵の命運を断ってからにせよ!!」


おじいちゃん軍団だ、…奴らの話は聞いている 確かにラグナ様が仲間に引き入れたと言う退役戦士達だ、確かに昔は一流の戦士だったかもしれないが、所詮は昔の話 昔は剣でも今は菜刀だ


「はぁ、がっかりさせてくれるなよ」


思わずため息が溢れる、目の前に見えるのはおじいちゃんおばあちゃんの軍勢を 凡そ五十程度か?、あの程度じゃあ足止めにもならない…が 手を抜く理由もない、蹴散らす


「如何いたしますか?」


「如何も何も敵がいるんだから倒す以外ないでしょう、歩兵隊を前へ …蹴散らします、もしかしたら罠があるかもだから気をつけてね」


「はっ!、歩兵隊!前へ!」


ルイザの指示を元に前線で槍を構えていた歩兵隊 およそ二百五が前へ出る…、確かにこう言った谷じゃあ横に並べる数に限度はある、だがそもそも相手は吹けば飛ぶような貧弱な老いぼれども そして数もさして多くない、谷で迎え撃つ意味があったのか?…


…何を考えているんだ、そうだ 何も策もなしに迎え撃つはずがない、おかしい 何か引っかかる、奴らは活かそうとしている、谷というこの環境のなにかを…この狭さ以外の何かを、なんだ?


「突撃!薙ぎ倒し第二王女ホリンの名を奴らに思い知らせよ!」


ルイザが思考する間も戦況は動く、ルイザの指示に従って歩兵隊は目の前の老兵へ突っ込み …そして


「この!老兵をなめるでないわい!」


…普通に戦闘が始まった、なんだ てっきり奴らに近づいたら罠が発動すると思ったのだが、普通に歩兵隊と老兵隊の戦闘が始まった、数でも勢いでもこちらの方が上 当然の如く目の前の小競り合いの戦況はこちらの方が上


老兵隊はみるみるうちに追い込まれ傷つき、徐々に後退していき 終いには


「い…一旦退却!退却ー!」


地力では勝てぬと踏んだか、歩兵隊と激突してより数分もしないうちに老兵隊は敗走し退却していく、なにがしたかったんだ?、当然歩兵隊も逃すまいと追撃を開始する 、その追撃の勢いに乗って谷を乗り越えようという心算だろう、それに乗じて私や後詰の兵士たちも進軍を再開する


本当になにが…、いや待て!この戦いの流れ何処かで聞いたことがあるぞ、敗れたふりをして敵を誘い釣るやり口、かつてギデオンさんが得意としたという戦略に似ている…

というかよく見れば老兵隊はこっ酷くやられたように見えて脱落者が一人も出ていない、奮戦しているように見せかけているだけだ 誘われている?


…やはり罠 その言葉が頭をよぎった瞬間、退却する老兵隊の中から とある一団が姿を現わす、あれは…


「しまった!後ろに弓兵隊を控えさせていたか!」


退却する老兵隊と入れ違いになるように、逃げる一団の中から弓を番えた老兵が突如として現れたのだ、恐らく前方に立つ老兵隊の後ろに這い蹲り姿を隠していたんだ…!


突如目の前に現れた老弓兵隊にこちらの歩兵隊はたたらを踏む暇もなく次々撃ち抜かれていく、しまったと思い引き返そうとした瞬間 さっきまで逃げていた老兵隊が引き返してきて、先ほどまでとまるで違う猛烈な攻めで逃げようとするこちらの兵士を薙ぎ倒していく


「フハハハ!甘い甘い!、血気盛んなのは良いがもう少し慎重になることじゃのう!」


ハメられた!この私が老いぼれごときに!、読み切れなかった!…いやまだ間に合う、前に出た兵士達を引かせ一旦態勢を整えればあんな小細工…


「引け!一旦態勢を整え再度突撃を…!」



「ひぃっ!、地面から急に兵士が現れて…ギャァ!!」


前面出た兵士達が退こうとすると、今度はいきなり地面から老兵が現れ 退却する兵士達の行く手を塞ぐ、地面から…?いや違うなあれは 砂を被せた土色の布の中に隠れて 岩に擬態していたんだ


いきなり現れ退路を断つ敵兵に、我が軍の歩兵隊は完全に掻き乱された もう実力云々以前の話だ、前へ逃げようとする後方の兵士と 後ろに逃げようとする前方の兵士が激突してしっちゃかめっちゃかになっている、迂闊に大勢を前に出したのが裏目に出たか


士気は最悪だ、あの混乱がこちらにまで伝わってきて、どこに敵兵が隠れているのだと疑心暗鬼になり周囲を見回す兵士が出る始末、くそっ!あんな少数の老いぼれ達にいいようにやられて!


「援護に向かう!、こちらから更にあの老兵隊を囲ってやれば 奴らは逃げ場を失う、そうすれば…」


そうルイザが指揮を出した瞬間、ルイザ達の立っている場所が一瞬暗くなる、頭上を何か通り過ぎたのだ、鳥?いや鳥にしては大きすぎる…しかも猛烈に嫌な予感が


ぞわりと鳥肌を感じた瞬間、ルイザの背後より地鳴りが響く、ズシンと まるで巨大な何かが降ってきたかのように…


「な 何事だ!」


「岩です!岩が降ってきました!、こちら目掛けて岩が…も もう一発来るぞーっ!」


岩!?岩だと!?まさか谷の上から岩を降らしたのか、いや そんなもの見れば分かるし警戒もしていた…一体なにが、そう思考した瞬間 再びルイザの頭上を影が通り過ぎる


今度は見逃さない、慌てて視線をやれば…ルイザの頭上を岩が飛んでいた 、まるで鳥のように砲弾のように 勢いよく打ち出され、ルイザ達後詰の兵士たちを狙って岩が飛んで来ていた!


「な…!?これは、岩が降ってきているのではなく 飛んできている?、まさか…」


あんな岩 いちいち投げ飛ばすには労力がかかる、…恐らくこれは 投石機だ、戦争でもよく攻城戦に使われる岩を投げ飛ばす機構…、それが恐らく老兵達の更に後方 谷の出口付近に設置されてこちらに向かって発射されているんだ


いや待ておかしいぞ、第四王子陣営の積荷は当然確認していたがそんなもの用意している素振りはなかった!、奴らが持っていたのは最低限の武器と食料と拠点建設用の建材だけ、投石機なんてどこにも……


「…!、そうか建材か!…まさか奴ら、ただの木材ではなく バラバラに分解した投石機を拠点建設用の木材として用いていたのか!」


恐らく…いやこれは本当に恐らくだが、奴らが拠点建設用に持ち運んでいた木材 、あれはただ木を切っただけの木材ではなく、投石機などの攻城兵器をバラバラに分解したものを持っていき 、それを後から拠点にでも攻城兵器にでも組み替えられるように用意していたのだ


それなら拠点を切り崩せばいくらでも攻城兵器を用意できる、無用の長物となればそれをバラバラにしまた防衛拠点に戻し防御に回す事ができる


ぐっ、今度は小さな石を雨のように飛ばしてきた、石は物の大小に限らず 高速で射出すればそれだけで武器になる、谷の上から自由落下させるよりはるかに強力だ


「ギャッ!、い 石が…こんな場所じゃ戦えません!お おい!後ろに!行かせろ!」


「無茶言うなよ!、俺の後ろに他の奴がいて引けないんだよ!」


「くっ…落ち着きなさい!」


後詰の兵士たちもてんやわんやだ、谷の中では兵士達が詰まってうまく動けない、後ろに行こうにも前に行こうにも他の兵士が邪魔して身動きが取れず 降り注ぐ岩や石に痛めつけられ続けるのだ


指揮系統はめちゃくちゃだ、後詰を前に出そうにも 私の声など聞かずおしくら饅頭状態だ、チッ 武芸者を兵士として起用していることがこんなところに悪影響が出たか

こいつらは腕っ節はあるが戦争をしたことがないただの武芸者だ、こういう想定外の事態に弱い…


こうなったら私が前へ出て道を切り開くしかない、そもそもあんな雑魚ども私一人で蹴散らせるんだ!


「チッ…仕方ない、こんな状況での出撃なんて癪だけど…私が出るか」


「おい!ルイザが動くぞ!今度こそ撤退撤退!」


私が大槌を構えると老兵達はいち早く撤退していき 谷の上へと逃げていく、チッ…前に出した歩兵隊はほとんど全滅か、判断が遅かった


まぁいい ここで連中を全滅させれば話は同じだ 槌を背負い…一歩前へ踏み出した瞬間、谷の上が騒がしくなる なんだ…また何かをしようというのか、相変わらず嫌な予感は止まらないが


「おい!聞こえている者は私に続きなさい!、道は私が開くわ!」


なにがきても打ち砕く!全霊で駆け抜ければ後ろに控えていた兵士達も何人か私につられて前へと出てくる、今この状況を打破するには敵に次の一手を打たせぬため、早急に谷の上の勢力を制圧する必要がある


敵が何かを用意している隙に接近して、少しでも状況をこちらへ傾けさせる!


そう覚悟を決めて坂を登り 谷の上に出た瞬間


「ッ…!、誰もいない?」


周囲を見渡しても誰もいない、老兵も他の兵士もなにもいない…どういう事だ?


違うな、どういう事もなにも 『こういう事』だ、詰まる所私達は いや私は


「釣られた…?」


そう口走った瞬間、背後で爆発音が響く…!どこから?砲撃!? 、慌てて振り向けば


谷が、いや谷の一部の壁面が黒煙を上げて爆裂していた 、岩の壁は粉々に砕け、巨大な瓦礫隣谷の底に降り注ぐ、ガラガラと音を立てて瓦礫達は積み重なり 自然の壁となり…谷の底で待機していた軍団を 中頃から前と後ろに分断する


「ホリン!」


そうだ、そもそも敵の狙いは私とホリンの分断だったのだ 、敵に挑発されるがままに最前線へ出てしまった私とホリンの間には混乱し切った軍団と巨大な瓦礫の壁 そして物理的な距離が跨っている、やられた これではすぐに合流できない…!


「ううん、でもあんなどデカイ瓦礫の山を作ってしまったらアイツらの方もホリンに近づけない筈、奴らがやきもきしている間に あんな瓦礫の山なんか吹っ飛ばして…」


再度、引き返そうとする私の頭上を何かが通過する、これは何度も見たから分かる 森の奥に配置された投石機から放たれる岩だ、今更岩一つ降り注いだ程度じゃ驚きもしな…し…しな…


「な…そ そんな無茶な…」


目に入ったのは空を飛ぶ岩、それに、組みつくようにひっついている 敵兵達、原始的な民族衣装を着込んだカロケリ族…そして、小さな子供二人


まさか いやまさか投石機でホリンのところまで飛んでいくつもり!?、無茶な!出来るわけがない!出来るわけがないというのに私の直感は告げている…、奴らはやる ホリンのところまでたどり着く、これが 奴らの狙いだと


呆然とする私を置いて 敵兵を連れた岩は瓦礫の山を飛び越え…ホリンがいるであろう後方へと飛んでいく


「チィッ!、やってくれたな…!ッ!」


急いで跡を追おうとすると、今度は背後から…森の影の中から石ころが飛んでくる、まるで挑発するかのように、お前の相手はこちらだと言わんばかりに


「よう、討滅戦士団サマ?随分お急ぎな様子で どちらに行かれますんで?」


「テオドーラ…」


すると石ころを手に持ったテオドーラが森の奥から現れる、なんだ まさかこの子私と戦おうというのか?


「…テオドーラちゃん、確かにあなたは討滅戦士団に入団していてもおかしくない実力を持っているわ、でもね?…だからって私とあなたが同列じゃないことくらい分かるわよね」


「さぁて、やってみないと分かんないっスよ?、あなたの相手は私が務めることになってるので」


ふーん、そうかそうか この子が私の足止め役か、そっか…随分ナメられたものだ


「別にね、私にかかればあなた達をここで皆殺しにしてあの瓦礫の山も砕き割って ホリンを助けに行くくらいわけないのよ?、小賢しい策なんか 私の力の前じゃあ無に等しいの」


「のわりにゃホイホイ誘われてきてますよね、存外頭良くないんスね ルイザさんって」


頭の中で 一本の紐が…私を人として足らしめる一本の理性という名の紐が切れる、切れる…キレてしまう、ぞわぞわと血管が浮き立ち…


「口の利き方がなってないわねテオドーラちゃん!、敬語の利き方教えてあげるからあの世で実践しなさい!」


争心解放を用い軍勢を率いてテオドーラに殴りかかる…大丈夫 コイツを殺してからでも余裕で間に合う、そもそもアイツらじゃあホリンは倒せない


ホリンはたったひとりで一軍を相手取れる程の実力を持っているのだから、あの程度の人数じゃあ倒せない


………………………………………………



「ぎゃぁああああああっっっ!!!」


エリスの短い人生で出した事のないような声をあげながら今 エリスは空を駆けています、サイラスさんとラグナの提案により、急増隠れ投石機の投石に みんなで組みついて敵本陣に向かう 、という作戦に安易に乗ってしまった自分を殴ってやりたいです


ハロルドさん達は上手くやってくれた、ルイザは谷の外へ出た瞬間 カロケリ族の皆さんが壁面に仕込んでくれた爆薬をエリスが遠視の魔眼を併用した魔術で撃ち抜き、谷の中には見事 瓦礫の山が生まれ、ホリンさんの軍団を前と後ろで分けることに成功しました


後はこの投石に乗って ホリンさんのいる瓦礫の向こうまで行ければいいのですが…死ぬ、このままでは死ぬ 地面にぶつかって死んでしまう!


「エリス!落ち着け!、作戦通りに!」


突如、どこからか響くラグナの声で我に帰る そうだ!作戦!着地はエリスに任されてるんだった!、慌てて岩にへばりついて詠唱をする


「颶風よ この声を聞き届け給う、その加護 纏て具足となり、大空へ羽撃く風を 力を 大翼を、そしてこの身に神速を 『旋風圏跳』!!!」


旋風圏跳…風を纏わせるのはエリスの体ではない、このエリス達を運ぶ岩だ、岩はエリスの風により減速し ふわりと浮かぶように地面にゆるゆると降りていく…た 助かった


「フハハ!流石エリス!、これだけ近づければ後は飛び降りていけルナ!」


「え?リバダビアさん?」


すると同じく岩にしがみついていたリバダビアさんが、岩が減速するなりその岩からピョーンと飛び降りていってしまう、まだ結構高さがあるのに…というか!地面にはワラワラと敵兵が控えているじゃないか!


いや当たり前か、敵軍を分断しただけで後方にも兵士はいるにはいる!…が、それをなんとかするのが同じく付いてきたカロケリ族の皆さんだ


「グルルルォォァァァァッッッ!!!!」


「うわぁぁっ!?岩から敵兵が降ってきたぞ…ぐはぁっ!?」


獣のごとき雄叫びをあげ、着地と同時に槍を振るい 並み居る敵兵を蹴散らしていくリバダビアさん、つ…強い


「では我らも続ク、上手くやレヨ?若き王子ヨ」


「ああ、任せてくれ アルミランテさん!」


「ウム、…行くぞ!勇敢なりしカロケリの戦士達ヨ!」


「オォォォォッッ!!」


アルミランテの号令により次々岩から飛び降りるカロケリ族、予想だにしない空からの奇襲に敵の兵士たちは、なす術なく来襲するカロケリ族達に蹴散らされていく…


「…よし、エリス じゃあ俺たちは…」


「はい!ホリンさんですね!」


エリス達の仕事は、カロケリ族の皆さんが敵兵を惹きつけている間に敵の総大将、第二王女ホリンを打ち倒すこと!、ホリンさんはどこか?なんて探す必要はない…既に見つけている、敵軍の真ん中で 余裕そうにエリス達を睨んで笑っている


「ククク…面白い乗り物だね、ラグナぁ」


…あの人をエリスとラグナの二人で倒す!


「行きますよラグナ!舌噛まないでくださいね!」


「ああ…!!」


岩を再び風で操り、今度は加速させる、ホリンさんめがけ 岩ごと突っ込む!…このまま弾き飛ばしてやる!


が…


「…にししっ!、そんなし石ころ一つで私を潰せるかなぁ!」


手に持た槍を一度 片手で振るうとエリスの風を纏った岩はまるでバターのようにすっぱり切れて、切り刻まれていく!


「っとぁっ!?」


慌てて岩から飛び降りてゴロゴロと地面の上をのたうち回りながら着地する、どうやらラグナも同じタイミングで飛び降りたのか エリスの隣で華麗に着地している


「あははっ!、まさか私のところまで来るとはねぇラグナ!やるじゃん!」


エリス達の乗っていた岩は、その数秒後 ホリンさんの手により粉々に切り刻まれてしまう…少し遅れていたらエリス達も、っ!今更怖気づいてられるか!己を奮い立たさせ立ち上がる


「貴方を倒しに来ました…ホリン姉様!」


「へぇ、…たった二人で?なめてくれんねぇ」


周囲の敵兵はカロケリ族のみんなにより遠ざけられ、戦場のど真ん中にポッカリと空間が開く…まるでエリスとラグナの為の闘技場だと言わんばかりの空間が


目の前には槍を片手に立っているホリンさん、自分の目の前まで敵が来たというのに全く動揺しない、むしろ猛々しくも笑ってすらいる


あの笑みは余裕の笑みだ、エリスとラグナを相手取ってもなお負けない余裕からくるものだ、事実彼女にはそれだけの実力がある…


「まぁいいや、…今日はお姉ちゃんも加減しないよ?、やれるもんなら やってみなよ!ラグナ!」


ホリンさんとの戦いは最終段階へ移った、今までの作戦は全てこの時のためにある、エリスとラグナがホリンさんを倒せるかどうか それに全てがかかっている


「いくぞ、エリス!」


「はいっ!ラグナ!」


第二王女ホリンとの 決戦が今幕を開ける



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