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426.魔女の弟子と航海の終わり


「悪い!みんな!俺が悪かった!勝手な事言ってごめんなあ!もう黒鉄島目指すのはやめたわ!だははははは!」


『船長〜〜!!』


キングメルビレイ号の上で、ズタボロのジャックはデティから最低限の治癒魔術を受けた後両手を合わせてジャック海賊団の船員達に謝罪を入れる。


ラグナとの戦いに負けたジャックはどの道こんな調子でテトラヴィブロスに挑んでいては目的など達成出来ないと思い直し、黒鉄島と人魚を諦めると言って朗らかに笑う。ここに来るまでの間、一切笑うことのなかったジャックがもう一度笑い、いつもの調子に戻ってくれた事に涙を流しながら咽び泣く海賊団一同。


「全くお前は、バカなんだから一々思い詰めるな!」


「本当だよジャック、君がさぁ戦えって言うから戦ったのにさぁ、僕エリスにボコボコにされたんだよぉ?この埋め合わせはしておくれよぉ」


「うっ、うう…船長…私は…私はまだ船長に居なくなって欲しくないです」


三幹部達も怒ったり泣いたりと大忙しだが、少なくともこの中にジャックの強硬策を支持する者はいなかったらしく、全員が諦めると言うジャックの決断を尊重する。


船長ジャックの命令は聞く、それが海賊団としての掟だから。だけどそれはそれとして皆ジャックの異様な雰囲気を悟っていてからこそ、元に戻ってくれた事が嬉しいのだ。


そして…。


「ラグナぁ!」


「おっと、エリス…」


「ピェェェェエエッ!!ラグナァー!無事だったんだねー!よがっだー!」


「本当だぞ!本当に…心配したんだからな!」


「悪い、みんな」


エリスがラグナに飛びつき抱きしめ、その上からデティが涙と鼻水ダラダラ流しながらぴょんことしがみつき、メルクさんが飛んできてメグが体当たりしてきて…次々とみんなが抱きついてくる。俺が生きていることを確かめる為に。


…俺も俺でみんなに相当心配させてたみたいだな。


「本当に!エリスは…貴方が死んでしまったのかもと…本気で心配して…!」


「…ああ、けど大丈夫!俺ぁ死なねえよ!エリス!」


「そう言う問題じゃありません!」


怒られた…。そう言う問題じゃなかったか。


「…そうだな、心配かけた…」


「…………ラグナ」


優しくエリスを抱き返す、そうだ…みんな俺を心配してくれているんだ。一人で背追い込めば皆にこんな顔をさせる。俺がエリスのために強くないとしたように、皆も仲間達を守るために強くなったんだ。


なら、分け合っていかないといけないんだな…俺は反省したよ。


「海賊ぶっ潰したのね!ラグナ!褒めてやるわ!」


「ん?え?テルミア?」


ふと、目の前を見ると…テルミアが居た、こいつ村にいるんじゃなかったか?なんでここに?しかも海賊船に乗って…。


「あははは!いい気味よ!海賊ども!」


「なんでお前がここにいるんだ…?」


「知りません、この人はアマルトさんを回収した時なんか無言で一緒についてきたので一緒にいるのが当たり前な物かと思ったのですが…」


「と言うか状況が状況だから深く問い詰めなかったが…おいアマルト、この子は誰なんだ」


しかもエリス達に至っては誰かも知らないし。というかエリス?そろそろ離れてくれませんか?と思いもしたがその瞬間俺の思考を読んだのかエリスはギュッと更に強く抱きついてきて離れようとしない。まぁ…いっか!!


「あー、こいつはテルミア…俺たちの命を助けてくれたの命の恩人で…人魚だよ」


「何!?人魚だと!?いや話には聞いていたが実在したのか!?」


「おや?ですが私の見間違いでしょうか、テルミア様の足は私達と同じ二本足に見えますが…」


「説明が面倒くさい、テルミア!あれやれ!」


「命令しないでよ!…でも仕方ないわね、おいそこの海賊達!刮目しなさい!」


「は?なんだなんだ?」


「今人魚って聞こえた気が…」


すると、テルミアはその場の全員の注目を集めると…。懐にしまっておいた乾いた魚の鱗を手で掴み…魔力を高める。


「『イミテーション・トランス』!」


「なっ!?」


「これは…!?」


「魔術…いや呪術?」


周囲の海賊が目を剥き、メルクさん達が吃驚仰天し、デティがキラリと目を尖らせテルミアの変化を観察して、…文字通り刮目する。テルミアの足が繋がり鱗に塗れ、人魚へと変態するその瞬間を…。


「フンッ!どうだ陸人!お前達のような下賎な生き物には些か眩すぎたかな?言葉もあるまい!」


「お…お…おお!?マジで人魚!?」


「これは…いや、人魚…なのか?」


海賊達は目を丸くし、メルクさんは咄嗟にメグさんに答えを聞くが『全然分からん』とばかりにメグさんは首を振る。


するとデティが。


「なるほど、人魚の正体は魚に変じる魔術を使う少数部族。その魔術はきっとジャック同様海底遺跡に遺された古式魔術文献を解読し作られた現代呪術…、でも現代呪術は現行の魔術界に存在していないが故に知識のない人間が見れば魔術ならざる別の存在に見えた、それが人魚伝説の始まりだね」


「へ…?」


「ふむ、人は未知の物に出会った際自身の経験と知識から不明瞭な部分を想像で補完する物。しかし想像での補完が真実に近づくことはない…。多分海に古くから伝わる言い伝えや伝承が混合して『人魚を食べれば海で不死身になる』などの荒唐無稽な話が生まれた…と言った所かな」


「え?…もしかしてデティってすげぇ頭いい?」


ジャックがポカンと口を開ける、他の奴らも同様だ。まぁ見た目や普段の言動を見てたらそうは思わないだろうが、デティは俺達魔女の弟子の中で最も明晰な頭脳を持つ。特に魔術関連に関しては多分世界一かもな。


なんせ現行の魔術界隈で最先端とされる魔術論文の八割はデティが書き上げたものだ。そんなデティからすれば。わかるもんなんだなぁ。


「ん?荒唐無稽な話?肉を食えば不死身になるってのは?」


「私の考察にはなるけど、そう言う魔術を使っただけで肉そのものに特殊な効果が現れる事例は確認されていないよ。第一それなら人魚自身が不死身じゃないといけないし、もし本当に肉を食べて不死身なるならアマルトのを食べればいいよ」


「なんで俺なんだよ!?」


「……つまり、人魚の肉を食えばってのは…真っ赤な嘘、食っても別に俺は海を克服出来ないってことか」


「今現在ある材料から考察するに、私はそう断定するよ」


「そうか……デマ、掴まされてたって事か」


ジャックは小さく頷き、腕を組む。そうだ、人魚の肉を食べて不死身なれるわけじゃない。ジャックの目論見は初めから破綻していたんだ。それを悟った海賊達は。


「なんだよそれ、じゃあ船長は騙されてたってことかよ!」


「ふざけんじゃねぇぞマレフィカルム!船長!今から連中の根倉にカチコミかけましょうや!連中ぶっ潰してやろう!」


「戦争だぁ!最初から仕掛けてきたのはあのクソ共だ!」


やってやろうぜ!と一転海賊達はマレフィカルムに敵意を燃やす、どうやらジャックはマレフィカルム云々を既に話していたようだ。だが…こりゃあもうマレフィカルムの味方にはならねぇな。


「まぁ待てよお前ら、確かにマレフィカルムに騙されはしたが…そりゃ俺が間抜けだっただけさ、カチコミかけるまでもねぇ。だが…もう連中の言うこと聞いてやる理由もねぇな?だはははは!やっぱ俺ぁ死ぬまで海賊やるしかないってわけだ!だははははははは!」


膝を叩きながら大笑いしマレフィカルムとの決別を口にする。それを聞いてアマルトやナリアもホッとする。


もう人魚を襲うことも、マレフィカルムに入ることもない。つまり何が言いたいかと言うと。


俺達の目的は完全に果たされ、大勝利を収めたと言うわけだ。


これにて大団円、最高の終わりを掴めたと思えば一気に脱力してしまう。


ああ待て待て、俺の体。まだ気を抜くな、まだやるべきことがあるじゃないか。


「なぁジャック」


「あん?なんだよ」


「一つ、頼みごとをしてもいいかな」


「ん?んー…」


腕を組み胡座をかくジャックはクリクリと首を何度か傾げて何かを悩む、すぐに歯を見せて笑い。


「なんだよ、ラグナ。なんでも言えよ。お前にゃ一つ借りができた、そいつを返してぇ…どんな頼み事でも聞くぜ?」


「いやそんな大した頼みじゃないんだけどさ。これからもし航海を続けるなら、各地で人魚伝説の真相を話して回ってくれないか?」


「何?」


「へ?」


テルミアとジャックの視線がこちらに向く。頼みとはつまり人魚のことだ。もうマレフィカルムに参加しないってことはジャックはきっとこれからも航海を続けるんだろう、それなら序でに人魚の誤解を解いてほしいんだ。


「テルミア達人魚はありもしない伝説の所為で今までずっと虐げられて来たんだ。それも海賊にな。けど伝説がまやかしだって分かったならもう狙う奴はいないと思うんだよ、そして…その誤解を解けるのはこの海で一番の海賊であるお前を置いて他にいないと俺は思うんだ」


「なるほどな…、確かに伝説がデマなら訂正は必要かもしれねぇな。それにまぁ…勘違いで襲っちまった件については詫びを入れなきゃ筋が通らねぇ。俺は心の底から欲した物以外は取らない主義だ…人魚がそれでなかった以上、筋を通す必要がある…か」


「だろ?だから…」


「ん!よし!分かった!そのくらいなら請け負うぜ!…でも俺お前が思ってるほど周りに信頼がある訳じゃねぇし…、おうそこの人魚」


「テルミアだ!なんだよぅ」


「お前が良けりゃ俺の船に乗るかい、俺達と一緒に各地に赴いて人魚伝説の真相を見せて回る。それが一番の証明になる、だからどうだい」


船に乗るか そう聞かれたテルミアは一瞬『誰が海賊なんかに!』と言いたげな顔をしたが…直ぐに首を振り、海の向こうに見える黒鉄島の…海洋拠点を眺める。


テルミアの夢の始まった場所、そうだ…テルミアの夢は。


「…いいわよ!ただし!私が副船長だから!」


「へへ、よし!決まりだな!」


受ける、いつかあの島から出て自由に誰にも慮る事なく、人に怯えることなく気ままに暮らす。その夢を自分の手で実現するためにテルミアは冒険に出ることを決意する。


船に乗り世界を旅するってのは、ある意味テルミアの夢でもあるしな、何よりテルミアも口では渋々と言った様子だが…顔はなんとも楽しそうだ。


「おい!待て!副船長だと!?何故今さっき入ってきたお前がその座に就く!」


「なによ、あんた誰」


「ピクシスだ!」


「ああそう、ピクシスね、そういえばあんた黒鉄島で私に負けたやつじゃない。ちょうどいいわ、あなた私の舎弟ね」


「私は前に負けたわけじゃない!アマルトに負けたんだ!」


「実質私よ」


「違う!」


「だははははは!こりゃあ航海がまた楽しくなりそうだぜ!よっしゃ!マリナ!ラグナ達と仲直り記念の大宴を開くぜ!」


「ヘッ、負けたってのに楽しそうだねぇ…よし!仕方ない!あんた達も準備しな!」


『アイアイ!マリナの姉御ー!』


「俺たちも宴の準備、しますかねぇ…おーい、マリナさーん、俺も厨房に立ってもいいかなぁ」


「僕もお手伝いします〜!」


なんか早速宴の準備が始まるし、頬に絆創膏を貼ったマリナさんが気合を入れて船員達に準備の声かけをし、アマルト達がそれに答え…。


この船を降りる前の、和気藹々とした雰囲気がキングメルビレイ号に戻った気がして、なおのこと俺はこの一件の終わりを悟る。目的地たる黒鉄島の調査も終わったし…ジャック達も止められたし、多分人魚の伝説も打ち砕かれた。


やるべきことを全て終え、その上で一番良い結末を手にすることが出来た。それもこれもみんなで戦ったからだ、みんなが頑張ったからだ、俺一人ではこうは出来なかった。


この航海で俺はかけがえのないものを得られた、そんな気がするんだ…。


と黄昏てみたものの…。


「あのー、エリス〜?」


「ん……」


未だに俺から離れようとしないエリスにちらりと視線を向ける。見れば目元は赤く腫れており、頬も膨らませて意地でも離れないようだ。まぁ引き剥がすつもりはないし、しばらくこのままでいいか。


…………………………………………………………


そして、俺達は宴の準備をしつつ…後始末に奔走した、まずテルミア達の村にジャックを連れて挨拶に行き、今回の件の謝罪とテルミアを連れて人魚伝説が過ちであることを伝える旅に出る事を伝えた。


村のみんなは最初、かなり疑ったような視線を向けていたが。そこは一応俺を立てて信用してくれた上にジャックの持ち前のコミュニケーション能力の高さでなんとか信頼を勝ち得た。テルミアはそのまま自分の部屋に向かって荷物を取ってくると言って駆け出して…母と祖母に涙ながらに今までのお礼を言っていた。


人魚達の好意とジャック達から島を守った礼として食料を受け取り、その上で更に黒鉄島のボヤージュバナナを大量に回収。どの道人魚達は食べないとのことなので遠慮なくもらい宴で振舞うこととなった。


……ついでと言っていいかは分からないが、一応メグさんとメルクさんとデティで例の黒い遺跡の調査も行ってもらった。ジャック曰くやはりここはかなり前に放棄された本部跡地らしく今は使われてないとのこと。


じゃあお前は本部の場所を知ってるのか?マレフィカルムと連絡を取り合ったんだろ?とジャックに聞くと。


『俺が招かれたのはジズの館だけだ、流石に加入するかも分からん人間をいきなり本部には入れてくれなかった』とのこと。じゃあそのジズの館はどこだと聞くと。


これについても『今は何処にあるかも分からん』と返された、何にも知らねえのなこいつ。


まぁその後は普通になにもなしさ。ただただ普通に宴を楽しんだ。


昼間は殺しあった中だがそれは置いておいて酒と肉を楽しむ。アマルトとピクシスは酒を酌み交わし、ナリアとティモンは二人で笑いながら食事をし、ヴェーラはテルミアから色々と今までの話を聞いて、マリナさんが俺達に『よく頑張ったね!たんと食いな!』と肩を叩いてくれた。


海賊は悪人だ、けどそれは肩書きだけでみたらの話。人間個人で見たら…ここの奴らは最高に気持ちのいい連中だった。この海でジャック達と出会えたこと、そして一緒に冒険出来た事は…俺にとっても得難い経験だったと胸を張って言える。


ただその間もずっとエリスは俺の側から離れなかったが、まぁ良いとも。俺ももう顔真っ赤にしてデレデレしたり童貞臭い真似はしない。寧ろ─────。



「ジャック?」


「ん?…まだ起きてたのかよ」


宴も静まり、海賊も弟子達もみんな揃って酔い潰れて甲板で寝静まる頃。満月が海に写る幻想的な光景を前に…またもジャックはいつかのように月を肴に酒を飲み、黄昏ていた。


前回、この状態のジャックに話しかけて碌でもないことになったが。今はもう恐れる事はない。


「まだお前との戦いの熱が冷めないんだ、寝られそうにない」


「なら酒に付き合え…って、酒は戒めてるんだっけ?」


「……いや、付き合うよ。他でもないお前からの酒ならば」


「ヘッ…!」


その辺に転がっている木のコップを服で拭いてジャックがラッパ飲みしていた酒を注いでもらう。不衛生極まりないが…そんな事気にする場面でもないしな。


俺は酒の注がれたコップを片手に、ジャックの隣に座るように手すりに腰を掛ける。


「まぁ、なんだ…感謝するぜラグナ。お前が俺を止めてくれたおかげで俺は…」


「その礼はもうしてもらったよ、俺がしたくてしただけなんだ…寧ろお前の夢を邪魔したんだぜ?恨み言の一つでも言ってもいいのに」


「だはは、 まぁそうだな。せっかく掴んだテトラヴィブロスへの道だと思ったんだが…、世の中そんなに甘くねぇな…」


ため息交じりの言葉を聞くにジャックは本当に人魚伝説に賭けていたんだろう。だがそれは俺に阻止された上にまやかしだったと聞かされ完全に頓挫した、仕方ないとはいえ…ちょっと思うところはある。


ジャックはそれだけ、テトラヴィブロスに焦がれていたんだから。


「ま、俺は諦めるつもりはねぇよ。人魚がダメだったならまた別の方法を探すまでだ、たとえ海の果てまでだろう探し尽くしてやる」


「ジャック…!じゃあ海賊は」


「おう、死ぬまで続けるさ。世界一の大王様から言われちゃあ従わざるを得ないってもんよ、なぁ?兄弟」


くつくつと笑いながらジャックは肘で俺を突く。そっか…続けるのか、うん…その方がいい。犯罪行為を推奨するわけじゃねぇが、人にはそれぞれその身にあった役割ってもんが…ん?


「兄弟?」


「おう、お前は俺の魂の兄弟だ。もし海でなんか困ったことあったらなんでも言えよ?俺がどんな奴でもぶっ飛ばしてやるし、行きたいところがあるなら星の裏側にだって連れて行ってやる」


「兄弟って…、俺には尊敬する兄様や姉様が既にいるんだけど?」


「固いこと言うなよ、海の上でこの俺に勝てる男を兄弟と呼ばずしてなんと呼ぶよ」


「はぁ、仕方ねぇなぁ…」


そう言いつつ、何だかんだ嬉しくて。ちょっと照れ隠しをするように酒を一口仰ぎ飲む。久しく飲む酒だから味はよく分からんが、…別に俺戒めてるからって言っても酒が嫌いなわけじゃないんだよな。寧ろアルクカースの益荒男たるもの酒の一つも飲めずして何とするって国風だからか、どっちかっていうと好きだ。


「うま…」


「へへへ、…なぁラグナ、俺のこれからを話したんだ。お前のこれからも聞かせてくれよ」


「ん?んー?」


これからか、特に考えていなかった。今回の一件は空振りでまた一から情報を集め直しで、何をどうしたらいいかも分からない状態ではあるが…取り敢えず言えることは。


「陸に戻ってまた旅を続ける。俺はマレフィカルムを倒さなきゃいけない」


「…そうかい、残念だが、確かにお前は進み続けるべきなんだろう。なら俺は…ここから応援してるぜ」


「ああ、差し当たってボヤーサの街まで送ってもらえると嬉しいんだが…」


「任せろよ、ならそこまでは一緒だな、だはははは!」


「そうだな、それまで頼むよ…弟分」


「いや俺が兄貴分だろ!?俺のが年上だし!」


「でも俺勝ったし…」


「俺のがトータルでは勝ってる!」


「うっ、それを持ち出されると辛い…」


グイッと酒を飲み干し、取り敢えず誤魔化す。こいつを兄貴分と呼ぶのはなんか嫌だ。俺にとって兄とはラクレス兄様やベオセルク兄様のような尊敬出来てカッコいい人の事を言うんだ、酒にだらしない海賊ではないのだ。


なので、このお話はこれくらいで切っておく。このまま行けば『兄貴と呼べ!』とか言ってきそうだしな。


「んじゃ、俺寝るわ」


「お前…俺に逃げるなとか言っときながらテメェは逃げんのかよ」


「これは撤退だよ、わはははは」


「はぁ……んじゃ、最後にもう一個聞かせろ」


「あ?まだあんのかよ…」


くどいなこいつも、そう思いながら俺は手すりにコップを置いて一歩踏み出し、肩越しにジャックを見やると、やはり彼は…真面目そうな顔をしてこちらを見ており。


「見つかったか?この航海で、お前の夢」


「あー…」


そんな話もあったな、結局あれが何を意味した言葉だったのかよく分からなかったが…。


「一応な」


「へぇ、聞かせてもらえるか?」


「言っても分からねぇと思うが…いいぜ」


そう言いながら俺はポケットから片手を抜いて…拳をギリギリと握りしめながら。


「ジャック、知ってるか?この世にはな…海洋最強のお前がいるように、史上最強の存在がいるんだ」


「は?そりゃあ…魔女か?」


「いいや、魔女よりずっと強え」


「ほーん、そんな存在俄かにゃ信じられねぇが…お前が言うならいるんだろうな、で?それがどんな夢に繋がってんだ?」


「決まってんだろ、この世には…俺がいて、史上最強のそいつがいる。ならやることは決まってんだろ」


そうだ、シリウスだ。三年前出会い力の差を見せつけられたアイツだ、奴はあれほどの強さを見せつけながらその実力を一割も発揮出来ていなかったと言うんだから驚きだ。


そんな一割に俺は負けた、みんなでなんとかシリウスを押し返してあの世に送り返した。あれは勝利だろう…だが武人としての俺はあれを勝利とは呼びたがらない。なら…。


「いつかそいつより強くなる、それが俺の夢かな」


「…へぇ」


それは、海洋最強の男ジャックと戦うために頭を巡らせている時に…ふと思ったことだ。久しく忘れていた『挑む』と言う感覚、『挑戦する』という感覚に、俺は心底楽しさから打ち震えた。


敵は強い、果てしない。戦えばまた俺は窮地に追いやられるだろう。どれだけ鍛えたらあの領域に行けるかも分からない。だが…。


逆境だからこそ挑む、遙かなる挑戦であるからこそ楽しめるんだと俺は自覚した。


「やれるのかよ、ラグナ」


「ああ、俺は必ずやり遂げるぜ。挑み続け前に進み続ける以上物事は必ず結実する。だから俺は挑むことをやめねぇのさ」


それをエリスが教えてくれた、挑み続けること、前に進み続けること、それが…それだけが結果を出すための唯一の方法だと。ならばこそこのデケェ夢にも挑めるってもんさ。


「フッ、いい夢じゃねぇか。デカイ夢はやっぱ男の…」


「ああ、後…」


「まだあんのかよ!?」


「おう、取り敢えず差し当たってアルクカースの史上に残る一番の王様になって、序でにアルクカースを世界一の国にする…帝国をも超えるな、やっぱこれは俺個人の夢だよ」


「そ、そうか…それもまたデカイ夢…」


「あと師範を殴り倒す、散々殴られて来たんだから一回くらい殴って泣かすのも夢だ」


「……デカイのは結構だがお前、いくらなんでも…」


「あとはエリスだ、俺はもう迷わねーぞ。いつか必ずエリスを俺の伴侶にする、絶対に」


「……夢持ちすぎだろ」


「ダメなのか?夢、一つじゃないと」


「……いや、ダメじゃねぇな」


クククと一瞬キョトンとしつつも俺を見て笑うジャックは手摺にもたれかかり空を仰ぐ。心底楽しい、心底喜ばしいと言った様子で果てしない空を見る。


要するに、俺の夢は史上最強の存在を倒しその座を強奪し、祖国の歴史上最も有名な王になり、世界一の武術家である師範泣かして、世界綺麗で美しい女を妻にすること。言ってみれば欲望と野望の全部乗せだ。キリがないと言われればそうだし、欲張りと言われればその通りなんだろう。


けど、やりたいことが一つじゃなきゃダメなんて誰が決めた。俺は全部頂くぜ…?


「ふぅ〜、んじゃあ」


「ん?やっぱもう寝るのか?」


「いや、早速夢のひとつを叶える為にエリスを抱いてくる」


「は?…あ!テメェもう酔ってんのかよ!落ち着け!やめろ!」


「うるせぇ!離せ!俺はエリスを嫁にするんだ!」


コップ一杯の酒を飲み、何やら頬を紅潮させただならぬ雰囲気を纏わせ目を据わらせるラグナに異様な気配を感じたジャックは咄嗟に止める。先程の夢云々の話の時からやけに気が大きくなっていると思ったら…酔っているんだ。


酔うと何をするか分からない、昔からアルクカース人としての本能や獣的な本性を驚異的な理性で抑え込んでいるラグナだからこそ、その枷が外れた時は恐ろしい。故に彼は酒を断ち戒めているのだと…ジャックはこの時悟る。


「やめろバカ、うちの船は船員同士の姦淫は禁止なんだよ!船の上でガキこさえたら大変なんだろっ!」


「うるせ〜!エリス〜!俺は、俺は君のことが好きだ〜!」


「はぁ〜!飲ますんじゃなかった…!」


すうすうと寝息を立てるエリスに向けて歩いていこうとするラグナを取り押さえたままジャックは小さく溜息を吐くのであった。


そうして、夜は更けていく。ラグナとジャック海賊団の航海譚の終わりを告げるように。


平和な夜は…刻々と時を刻む。





………そして。


………………………………………………………………





…その日も私は海を眺めていた。


いつものように波は押し寄せ引いていく。風に乗った潮の香りとウミネコの鳴き声が日常の一部と化す程に…いつものように海を眺めていた。


自分の船は埃を被り、もう長いこと海に出ていない。出る気になれなかったから…。


「はぁ」


その場に座り込み、海の向こうを眺める。その視線にあるのは後悔と己の弱さへの怒りだけ。自分はなんと弱いのだろう、こんなにも弱いというのに何故海に出てしまったのだろう。


もう何日も続けている答えなき問いは永遠に続く。もしこの胸のモヤモヤが生涯続いていくのだとしたら…それも自分への罰なのだろう。


なんせ私は、あの日人を殺したのだから。


「…ここに居たか」


ふと、声を感じて振り返る。そこには…潮風にコートをはためかせる老人が立っていた。その目は責めるようであり…慰めるようでもあり、少なくとも…今の自分には直視できるものではなかったのは確かだった。


「お前はあれから、毎日のようにこの港に来ているな。余程悔やんでいるのか、ザルディーネ」


「はい…、レングワード会長」


ボヤージュの街に存在する漁師協会の会長レングワードは、悔いる様子でボヤージュの港に座り込む新米船乗りのザルディーネを見下ろす。


ザルディーネは優秀な若手だった。経験こそ浅い物の良い船乗りになるとレングワードは思った、思ったからこそ…大仕事を任せたのだが。


それが良くなかった、ザルディーネはその仕事で失敗し…心に深い傷を負ってしまった。負わせてしまったのだ。


全ては…ユールという国からやってきた商人ナリーアがボヤージュバナナを欲した事に起因する。ボヤージュバナナを取るためには船乗りが誰かエンハンブレ諸島に向かわねばならなかった。


だが、あの大海賊ジャック・リヴァイアの縄張りに近づきたがる者などこの街にはおらず誰もが拒否した、そんな中で白羽の矢が立ったのがザルディーネだった。彼はまだ新入りでジャックの恐ろしさを知らないが故にこの仕事を引き受け、護衛の冒険者を連れてエンハンブレ諸島に旅立った…だが。


「私は、悔やんでいます。私は…あの日、冒険者の皆様を見捨てて逃げ出してしまったのですから…!見殺しにしてしまったのですから!」


「…それは不幸な事故だ、ザルディーネよ」


不幸なことに鉢合わせてしまったんだ。この海の王…ジャックに。海を知らないザルディーネもジャックとキングメルビレイ号くらいは知っている、それくらいジャック海賊団は有名だ。


冒険者達をボートに乗せ黒鉄島に向かわせている最中、キングメルビレイ号の接近に気がついたザルディーネは…その場でジャックを恐れて逃げ出してしまったんだ。冒険者達を置いて…見殺しにして。


これがベテランの船乗りなら島に近づく前に海賊がいないか、あるいは危険がないかを確認するものだ。だがザルディーネはそれをしなかった、だからギリギリまで接近に気がつけなかった。


結果として冒険者の乗ったボートはジャックに瞬く間に沈められ…それ以来音沙汰がなかった。言うまでもなく、考えるまでもなく、冒険者達は死んでしまったのだ。


…ザルディーネの所為で。


「くぅ、あの日私がもっとしっかりしていれば…逃げ出さなければ、あの人達はまだ生きていたのに…!」


「仕方ない、ジャックが現れた以上…もうどうしようもなかったのだ。奴は腕の一振りで津波を起こす…そんなのを相手に海の上で逃げ切るなんて不可能だ。一人でも生存者がいたことを幸運に思わねばならない」


「ですが…会長!」


言い返そうとするザルディーネの肩に手を置き、レングワードは静かに首を振る。違うんだ、ザルディーネ…そうじゃない。


「君が今ここでするべきは、後悔だけじゃないはずだ…」


「会長…」


「生き残ったなら、生き残った者の責務を果たせねばならない。君の責務は…ここに座り込んでいるだけではない、立ち上がり…立派な船乗りになることじゃないのか?」


「ッ…!ぐっ…レングワード会長…!」


じわじわと涙ぐむザルディーネを優しく撫でる、過ぎ去ってしまったことは仕方ない。なら今は前を向くことが…一番なんだ。ザルディーネにはまだ未来が残されている、残ってしまった未来を懺悔と慚愧に費やすのはあまりに不毛。そんなもの海に沈んでいるのと同じだ。


「君は船乗りだ、なら…きちんと前を見ないとな」


「ッ…はい、はい!会長!私…頑張りますっ…!」


「ああ、さぁこの海に誓おう。君の船出はいつかこの街を栄光の港に送り届けるだろう」


ザルディーネの肩に手を置き、涙ぐむ彼と共に港から見える水平線に誓う。不手際により命を落としてしまった八人の冒険者の為にも前を向き二人で新たなる一歩を踏み出……。


…………ん?


「ん?会長…なんか水平線に見えます」


「あ、ああ…なんだあれは、船か?いやだとしてもあんな巨大な船…ボヤージュには…」


何か向かってくる、水平線からぼんやりと浮かび上がる巨大な船影が見える。なんだあれは…あんな巨大な船がボヤージュに来たことはないし、そもそも別の船がこの港に来るなんてそうそう無い事だ。


そう思い呆然としながら眼を凝らし、その船影をよくよく、よーく観察すると…見えてくる。


はためく旗、海賊旗が…。


「か、海賊旗!?」


「会長!あれ!キングメルビレイ号です!あの日見た船と同じだ!」


「じゃ、じゃああの船に乗っているのは…!」


ゾッと青褪める、ザルディーネもレングワードも血の気が引いてフラリとよろめいて眩暈を覚える。あれはキングメルビレイ号だ、キングメルビレイ号に乗る海賊が誰かと言えば万人が同じ答えを出すだろう。


「海魔ジャックが…ボヤージュに来てしまった…!!」


世界一の大海賊にしてこの海に於ける最強。最も恐るべき男が港にやってきている、当然ながらこの街にあれを迎え打てるだけの戦力はない、ともすればマレウス国軍でさえあれを追い返せるか分からない。


マレウスの将軍か国内最強と名高き近衛隊長でも連れてこない限り…この街は滅びてしまう。


終わりだ、もうどうしようもない、ジャックにみんな殺される…!


「ザルディーネ!急いで逃げる準備を!」


「もうだめですん間に合いませんよ!だってあんな近くにキングメルビレイ号が…!」


世界トップクラスの風読士を乗せると言われるキングメルビレイ号のスピードは船乗りであるレングワードとザルディーネの想像を絶する程に早く、ワタワタと慌てている間にももう目の前まで迫っており…。


お、大きい。なんて大きな船なんだ、見上げるほどに大きな船など見たことがない…。こんなにも大きかったのか…キングメルビレイ号は。


「あ…あわわ、もうダメだ…」


「ひぃ…!きっと縄張りを荒らされたことへの復讐に来たんだ…!」


腰が抜けて尻餅をつくレングワードとザルディーネはキングメルビレイ号を見上げると、二人の目の前に着港したキングメルビレイ号の甲板から誰かが覗く。


黒い髪と船長帽を被った大男、ナイフのように鋭いその眼光で二人を見下ろすあの男はまさか…。


『おう!悪いな!ちょっと港借りるぜ!』


「へ?」


船長と思われる男はにこやかにレングワード達に声をかける。…あれ、ジャック…だよな、キングメルビレイ号の船長と言えばジャック・リヴァイアを置いて他にいない。


それがなんで笑顔で…と思っているとキングメルビレイ号の甲板から港に向けて桟橋がかけられ。


『おう!行けよ!ラグナ!着いたぜ!』


『へへ、ありがとな!ジャック!助かったよ!』


『何言ってんだよ!俺とお前の仲だろ!』


「あ、あの人…私が置いていった冒険者達…?」


「へ…?なんで?」


そこから降りてくるのは赤毛の青年が率いる八人の冒険者達、あれはザルディーネが置き去りにして死んだはずの…。それが桟橋を渡ってジャック海賊団と和気藹々と話しながら降りてくるのだからもう訳が分からない。


「みんな!ありがとうな!みんなのお陰ですごい助かったよ!」


『問題ねえよ!ラグナ君!また一緒に航海しようぜ!』


『俺達ぁお前らの味方だぜ!いつでも呼んでくれよな!』


「ははは、おう!頼りにさせてもらうよ!」


しかも海賊達はなにやら別れを惜しむように涙を流しオンオン泣いているんだ。ザルディーネとレングワードは完全に蚊帳の外に追いやられ…物事は進んでいく。


『お前達には大きな借りができたな、…陸でも上手くやれよ』


「はい!ティモンさんも頑張ってください!』


『フッ、そうだな』


ティモンは甲板から降りていくナリアを眺めてハラリと別れを惜しむ涙を流し。


『また会おうね、絶対にね〜!』


「ヴェーラさんもお達者で〜!」


『ふふふ、楽しかったよ〜!』


ヴェーラはいつもの様子で手を振って、エリス達との歓迎を華やかに彩る。


『うっ…うう!』


「なんだぁ?泣いてんのかよ、似合わねーなぁ?」


『喧しい!泣いてなどいない!とっとと何処かへ行ってしまえ!』


とは言いつつもピクシスはその場の誰よりも涙を流し鼻を擦りながらそっぽを向きつつ、肩越しにアマルト達との別れを見守り続ける。


『ご飯はしっかり食べるんだよ!風邪引いちゃダメだよ!やることあるなら…最後まで気張りは!あたし達が着いてるからね!』


「お世話になりました、マリナ殿」


大きく手を振りここまで苦楽を共にしたメルク達に別れの言葉を告げるマリナ…そして。


『アホーイ!冒険は続くわ!航海は続くわ!私も頑張るからあんた達も頑張りなさいよ!』


「お前…馴染みすぎだろ…」


『さぁ野郎ども!仲間達の出航を祝いなさい!』


『アイアイ!テルミアの姉御〜!』


副船長用の帽子をかぶり、意味もなく眼帯をつけ、カトラスを振り回すテルミアに送り出される。海賊団に加入し副船長に就任してから秒で海賊団に馴染み今やマリナと並ぶ海賊団の姉御へと上り詰めたテルミアを見て…これなら人魚の方も大丈夫そうだとラグナは微笑み、その背に背負った巨大な麻袋を引きずりながら港に降りる。


『ラグナ…』


「あん?なんだよ」


そして、ジャックは静かに手摺に手を置いて。ラグナを見下ろすなりニッと笑い。


『俺は夢を目指して船を進め続ける、だからお前も歩き続けろ。俺たちは例え間に大陸が挟まろうが大海が跨ろうが途切れることのない友情で結ばれた…義兄弟だ!マレフィカルムのクソ野郎共に一発かましてやれ!』


「…フッ、おう!!」


拳を掲げる、共に旅をし殴り合い、深めた二人の仲は例えどれだけ距離があろうとも途切れることはないと証明するように…二人は拳を掲げ別れを告げる。


と…チラリとジャックはレングワードの方を見て。


『あ、そこにいるのボヤージュの船乗りだよな』


「ひぇっ!?ひぇぃっ!?」


『お前らエンハンブレ諸島でも漁をしてもいいぜ?海に出れなくて困ってたんだよな!俺が許可する!自由にしろよ』


「へ!?エンハンブレ諸島で漁をしても…!?」


『他でもない義兄弟からの頼みなんだ、ラグナに感謝しろよな!だはははははは!!』


それだけ伝えるとジャックはドンと手摺を叩いて海賊団に指示を飛ばす。


『シャァッ!湿っぽくなる前に出航するぜ!帆を張れ!錨を上げろ!俺達の船出はまだまだ続くぜ!ヨーソロー!』


『アイアイ!キャプテーン!』


グッ!と八人の冒険者に親指を立てながら港を離れるジャックと、『また会おう』『元気でな』とそれぞれの声を上げ手を振る海賊達が嵐のようにボヤージュの港を去っていく。


なにが起こったのか、なにが起こっていたのか理解出来ずポカンと口を開けるレングワードはただただ静かに事の趨勢を見守るしか出来ない。


なんで海魔ジャックがボヤージュの港に?襲撃をしに来たわけではない?というか死んだはずの冒険者がなんでキングメルビレイ号に?一体なにが…どういうこと?


「行っちゃいましたね、ラグナ」


「ああ、まぁ別れの挨拶は散々船の上で済ませたからな…俺達も行くとしようや」


「そうですね」


そして、ラグナはレングワード会長の方を向き直ると共に…その背に背負った巨大な袋を差し出して。


「丁度いいや、はい依頼の品。ボヤージュバナナだ、山程取ってきたけどこれで足りるよな」


「え…えぇ…?」


ドンと置かれた袋の口から丸いバナナがコロリと溢れる。確かにこれを取ってきてほしいと依頼は出した、これを取りに行くためにザルディーネと一緒に海に出した。


けど…今はただただ、バナナよりも説明が欲しいと思うレングワードなのであった。

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