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369.魔女の弟子と伴う影の目論見


ラグナ達が街の外で悪魔の見えざる手を撃退するよりも…ほんの少しだけ前、丘の上のライブ会場にて着々と迫るライブ開始時刻を待つのはプリシーラとその護衛を務めるアマルトとサトゥルナリアだ。


「そろそろ開始時刻だな」


時計を確認するアマルトが椅子に座り込み意味もなく呟く。別に自分が舞台に上がってなんか披露するわけでもないのになんかすげー緊張するのだ。何もしない俺でもこんなに緊張するならプリシーラの緊張は相当なものだろう。


「大丈夫そうか?プリシーラ」


「うん、みんなが色々してくれたから、いつもより清々しい気分。寧ろ舞台の上で歌うのが楽しみなくらい」


「そいつぁ良かった」


対するプリシーラは、なんとか落ち着いたみたいだ。俺が作ってやったキノコスープをチビチビ口に含んで下の上で転がしゆっくり味わうプリシーラは変にオドオドせず、どっしりと椅子に座って何かを確かめるように目を閉じている。


いいねぇ、ありゃあ覚悟を決めたか?


「何かあっても僕達が守るので安心してくださいね」


「ふふ、ありがとナリアさん…ナリアさんは凄いね、踊りも上手いのにその上強いなんて、憧れちゃうよ」


「そんなことありませんよ、強くはないですけど…それでも貴方の為ならなんだって出来るだけです」


ナリアも今回は気合十分だ。既に舞台周辺やステージ周りには魔術陣を書きまくってある。何かあればそれを即座に起動させ敵を撃退することくらいは出来る。


準備は万全、後はライブが始まるだけだ。


「…開始までちょっと時間があるわね、ねぇ…ライブが始まる前に少しだけ話しない?」


「いいですよ、黙りこくってるよりも健全ですからね。ね?アマルトさん」


「ああ、俺らで良けりゃ話し相手くらいにゃなるぜ?」


「うん…、ねぇ?二人は魔女大国に行ったことはある?」


「へ?」


いきなり、プリシーラに投げかけられた言葉にナリアが目を丸くしてチラリとこちらを見る。いやこっち見られても…なんて答えりゃいいんだ?


行ったことあるも何も俺達は魔女大国出身だ、けどそれをここで馬鹿正直に答えるのは文字通り馬鹿だろ。流石の俺もマレウスと魔女大国の関係が劣悪なのは分かってる、だから俺達は身分を偽ってるわけだしな。


…すぐにバレる嘘だとしても、ここは誤魔化しとくか。


「いや?行ったことねぇな」


「そうなんだ、…実はね。ここだけの話…私魔女大国に行きたいの、ポルデューク大陸のエトワールに」


「え、エトワール!?」


おいナリア、やめろ。なんかすげー嬉しそうな顔するのやめろ、せっかく吐いた嘘が速攻でバレる。


「うん、エトワール…本当はそこに行って歌の勉強して歌手になりたかったの、私」


「いいじゃないですか!プリシーラさんなら絶対成功しますよ!僕が保証します!」


「なんで言い切れるのよ、…でも行ってみたいのは本当よ。知ってる?エトワールでは街人みんながいつも歌を歌ってるの。みんなが歌を歌として楽しみ、歌を歌として評価し、歌を歌として愛でるの…私にとって夢の国だわ」


「……へぇ、そうなんですね」


やめろナリア、『別にそんなこともないけど…』って顔するのやめろ。俺も前エトワール行ったことあるけど大体そんな感じだったろお前の国。


「歌を歌って生きる、それが私の夢…だからアイドル冒険者になったの」


「そうだったんですね、良かったじゃないですか。マレウスでその夢を叶えられて」


「…それが最近分からなくなっちゃったの」


「?、と言うと?」


「…聞いちゃったの、私の親が私の活動を裏から牛耳っている事を」


「親?親が?プリシーラさんの親って冒険者協会に口聞できるくらい偉いんですか?」


「偉いわ、これ内緒だけど…私の親この国の財務大臣なの」


「あ、財務大臣なんだ」


いや軽い!軽いよナリア!?財務大臣は『ああ』で流していい職業じゃないよ!?ラグナやメルクで麻痺してるかもだが財務大臣の娘が冒険者やっててしかもアイドルやってるってかなりの異常自体だぞ!?うちの国で言ったらカリストがアイドルやってるようなもんだ!


…いや、やりそうだなアイツ。


「エストレージャ家は代々ネビュラマキュラに仕えて来た由緒ある家系なの。まぁクッソ分家あるからファンには直系なのは隠せてるけど…協会にはそうも行かない。母様は協会に働きかけて私の活動を裏から操ってるのよ」


「操ってるって、それ本当ですか?」


「ええ、由緒あるエストレージャ家の人間に相応しくない事はさせられないんでしょう。最近は楽曲の方向も定められて自由がなくなって来てるしこのライブツアーだって発端は母様よ」


「でもチクシュルーブ卿が主催だって…」


「エストレージャはレナトゥス派の一人よ、当然チクシュルーブとも繋がりがある。そしてチクシュルーブは新たな商業モデルを開拓したい…ここまで言えば分かるでしょ、このライブは根幹を見れば母様が私を政治的に利用してるだけなの」


ふーん、なるほどねぇ。チクシュルーブは麻薬入りタバコを平気で売り捌くくらいには金の亡者でやらせてもらってる奴だ、おまけに今んところ新進気鋭でノリに乗ってる。財務大臣的にも繋がりは持っておきたい…そしてその繋がりの発端として娘であるプリシーラに白羽の矢が立った。


チクシュルーブ卿にプリシーラの母ちゃんが働きかけてこのライブを主催させた、ライブの利益とアイドル運営の情報の代わりにエストレージャはチクシュルーブとの繋がりを得る。プリシーラはただただ家のしがらみに踊らされるだけ。


大体話が見えて来たな、つまり…。


「プリシーラ、お前が協会に抱いている不信感の根底は…お前のカーチャンが原因ってわけだな」


「…ええ、私を否定し 私の歌を否定する母様とエストレージャの家が嫌だったから私は出して冒険者になったのに、私らしく生きる為にアイドルになったのに、これじゃ意味がないわ」


分からなくなっちゃった…とはつまりそう言う事だ、プリシーラは家の呪縛を嫌い自分のアイデンティティである歌を歌う為にアイドル冒険者になった。


しかし、それが成功した途端に歌を否定していた母親が、いきなり干渉しプリシーラの歌唱を縛り始め、剰え利用まで始めた。


歌を歌って生きられる現状に文句はないが、歌えば歌うほど母の呪縛は強くなる…確かに夢を叶えられたかって聞かれりゃ微妙なとこだな。


「私は…私はこのままアイドルを続けていけるの?母が私の活動に見切りをつけたらまたいつ連れ戻されるか分からない。このまま歌い続けていいの?…そんな風に迷っちゃって…」


「……そう言う事だったんですね」


「ごめんね、ライブ前に話す事じゃなかったわよね…前エリスさんに同じ話をして困らせもしたし、はぁ」


本当にな、お陰でムードヤベェぞ。


しかし、家のしがらみ…先祖代々のしきたり、ねぇ。どこにでもある話だよこういうのは…本当にさ。


「…歌と家からの解放、どっちを優先したらいいのかしらね」


「さぁな、まぁ急いで結論出す必要ないんじゃないか?別に期限がある問題でもないし、マジで嫌気がさしたらなんもかんも捨てて逃げるのもいい」


「そんな簡単にいうけど、自分の道を選ぶっていうのは大変なのよ、特に私は…」


「いいや、関係ないね。家に従うも逆らうも…最初っから選択権はお前にしかない。夢を諦めるも諦めないも選べるのは自分だけだ、誰かに決めさせることなんかじゃねぇ、断じてな」


「アマルトさん…?」


「……悪い、変に熱弁しちまったな!なははは!」


結局は自分だ、諦めるも諦めないも自分の選択なんだ。誰かに強要されることじゃないし誰に任せていいものじゃない。ましてやもう死んだ先祖やまだこの世にいない子孫の事を考え家のしきたりだからと自分の選択を放棄する必要は全くない。


ンだが…分かるぜ、お前にとっちゃデカい問題だよな、親と家は当人からすりゃあまりに大きい。ましてや由緒ある家系なら尚更だよな。


なんとかしてやりてぇが、部外者の極みみたいな俺がなんとかすることでもないんだよなぁ。


「…励ましてくれてるつもり?」


「一応」


「ふふ、ありがと。…そうね 諦めるも諦めないも結局私次第だよね。じゃあ私がどんな選択をしても…みんな許してくれる?」


「そりゃあその時になってみないとなんとも…なぁ?ナリア」


「でも僕達は出来得る限り応援するつもりですよ」


そんな俺たちの言葉を聞いてプリシーラはニコリと微笑む、微笑…んだのだと思う、けど俺にはなんだかその笑みが異様に匂ったんだ。


どんな匂いって?具体的にいうなりゃ。嘘の匂いとでも言おうかね。けどそれを別にこの場で指摘することもなくライブ開始の時刻を目前に控え。


「すみません、今戻りました」


「あ、エリスさん」


「あ?遅かったな」


ふと、エリスが戻ってきた。外に何やら不審物があるとかないとかって話を確かめに行ってたのだが、どうやらエリスの顔を見るに時に問題は特になさそうだな。


「どうだった?不審物あった?」


「いえ、何にもなかったです。多分警備の人の見間違いでしょうね、こういう時に困った話です」


「なんじゃそら、警備まで緊張してんのか?」


「でもそのくらいが丁度いいですよ、僕達も見間違えるくらい警戒していきましょう」


肩を竦めやや呆れたように笑うエリスを見て、気合いを入れるナリア。しかしきになるな…不審物が無かった?それもうちょい深く掘り下げて調べても良くないか?警備に見つかった所為でその不審物を置いた人間が別の場所に移した可能性とかさ。


でもエリスは変に勘が冴えてるところがあるし、何もないなら何も無かったでいいのか?


「それより何を話してたんですか?随分重い空気ですけど…」


「いや…その、あれよ。この間の夜話したでしょ?あの時と同じ話よ」


ん?なんだエリスには先に親云々話してたのか?まぁプリシーラはエリスに対しては一段上の信頼を寄せてるみたいだし、当然っちゃ当然か。


「この間の夜?すみません、よく…」


「あれ?忘れちゃった?まぁそうだよね、あの後色々あったもんね…」


「すみません、それよりもうライブも目の前です。暗い顔をしてちゃお客さんに心配されますよ。笑顔です」


「うん、ありがとエリスさん」


「はい、体も凝り固まってますし、本番前に軽くマッサージしてあげますね」


そうプリシーラと共に微笑み合うエリスは本番を前にプリシーラの肩を揉みほぐそうとその手を肩に伸ばす、今のプリシーラは先ほどの話題で体が凝り固まっているのか。であるならば軽いマッサージくらいは別にいいだろう。


けど……。


「待った」


「え?」


止める、プリシーラの肩に伸びるエリスの手を掴み…止める。まだプリシーラに触るな、こいつに触る前に聞きたいことが一つあるんだ。


そんな風に手を掴む俺を見てエリスは不思議そうにコテンと小首を傾げて。


「何ですかアマルトさん」


「いや、三週間前の昼に食った飯…何だったか覚えてるか?」


「三週間!?そんな前に食べたご飯なんて覚えてないですよ」


「はは、そっか。そりゃあそうだよな」


「もう、いきなり何の話─────ッ!?!?」


掴んだ手を強引に引っ張りエリスの体を振り回すように投げ飛ばし壁に叩きつけ、大穴が開き瓦解し砂埃をあげる楽屋の壁…。いきなりの出来事に目を見開くプリシーラは立ち上がり。


「ちょっ!アマルトさん!エリスさんに何するのよ!?いきなりどうしたの!?」


「……テメェ、誰だ。お前エリスじゃねぇな?」


「へ?」


けどなプリシーラ、あいつはエリスじゃねぇんだ、どっからどう見てもエリスにしか見えないが…エリスが高々三週間前に食った飯を忘れるわけがねぇだろうが。ましてやこの間プリシーラとした話の内容を…そのあと何があったにしても忘れる奴じゃねぇんだよエリスは。


「プリシーラさん!離れて!そいつ悪魔の見えざる手です!」


「う、嘘!じゃあ本物のエリスさんは!?」


「知らねえ、けど簡単にやられるような奴じゃねぇから安心しろ。それよか今は…アイツだよ」


「…………」


砂埃をあげ、ガラガラと崩れる楽屋の壁の穴の中から、よろめきながら立ち上がるのは…やっぱりエリスだ。どこをどう切り取ってもどの角度から見ても紛うことなきエリスだ。


けど、アイツはエリスじゃねぇ。アイツと伊達に長い付き合いじゃねぇんだ、そのくらい分かる。


「…何するんですかアマルトさん、エリス達友達でしょ」


「ああ、エリスとは大の仲良しさ。お前とじゃねぇ」


「くっふふ…酷いですね、偽物でも友達の姿をしてる人間をこうも躊躇なく投げ飛ばせますか?」


「エリスの顔と友達になった覚えはないんでね、臭い事言うならハートよハート…エリスの姿に変身した別人相手に躊躇なんかしないね」


「変身…まさか気がつかれているとは」


ってことはこいつはやっぱエリス達が警戒してた変身魔術の使い手か。エリスを外に連れ出してその隙にエリスに変身、コンクルシオのエドマンの時のようにすり替わって俺達に近寄ってきたんだ。


コンクルシオの時は裏で手を引く係だったが、今回は直接仕掛けてきやがったな。


「エリスはどうした…って聞くまでもねぇか」


「フッ、奴は今頃惨たらしく殺され……」



「アマルトさん!ナリアさん!プリシーラさん!無事ですか!!」


刹那楽屋の扉が何者かに蹴破られ宙を舞い俺の頭の上を通過する。こんなメチャクチャやらかすのは一人しかいない…いや二人くらいか?


「エリスか!」


「なっ!?エリスがもう一人居ますよ!!」


エリスだ、新しく追加のエリスがやってきやがった、状況に見ても本物か?いや確かめるか。


「エリス!お前十年前の今日、昼飯に何食った!」


「え?十年前はマレウスの宿屋でグラタン食べましたよ、マカロニの中にチェダーチーズ詰まってるやつ、今度行きます?ここから近いですよ」


「よし本物!」


あの即答具合は間違いなくエリスだ、一応今から十年前はエリスもマレウスにいたしマレウスのグラタン食ったって話も整合性が取れてる。


「バカな、お前は外で始末されてるはずでは…!」


「あ?ああ、後ろから殴りかかってきた人ですか?そんなもん受け止めて逆に殴り返したに決まってるでしょう!あいつは今後一生固形の物食べられない体にしてから外に捨てておきました。そして次は貴方がそうなる番です」


「物騒!だが頼りになるぜ…。エリス、見ての通りこいつが例の変身魔術の使い手だ、こいつはここでぶっ倒しておくに限る」


こうして見ても偽エリスはどこからどう見てもエリスだ、変身の精度はえげつないくらい高い、失言が無けりゃマジで見抜けなかった程に完璧な変身だ。


ここで取り逃がすのはマジで怖い、仕留めるならここで仕留める。


「勿論、逃がしません…プリシーラさんはエリスが守ります」


ズシンと音を立ててエリスが一歩前にへと歩みだす。ただそれだけで床が軋むほどの威圧を飛ばして偽エリスを死んでも逃すまいと両手を広げる。こうなった時のエリスはマジで怖いぞ、なんせ一般的に人が持ち合わせる『情け』とか『躊躇い』が完全になくなってるからな。


故に俺もそれに加勢し偽エリスを逃さないよう部屋の隅に追い詰めると。


「…ふっ、逃さない?何を甘い事を…、ならばこれならどうだっ!」


「なっ!?」


刹那、偽エリスが俺に向けて突っ込んできやがった。こいつ…俺を抜こうってか!?させるわけがねぇだろ!


そう迎撃の姿勢をとった瞬間、偽エリスがニタリと笑ったのが見えた…。やばい、なんか企んで─────。


「『イミテーション・メタモルフォーゼ』ッ!!」


その瞬間偽エリスの体が眩い光を放ち、そのまま俺にタックルをかましてきやがるのだ。光に阻まれ目を逸らした瞬間を狙われた為俺は情けなくも態勢を崩しよたつき二、三歩後ろへとか引き下がる。


野郎…いきなり何を、そんな文句を口にしながら再び偽エリスに視線を向けると。


「……え?俺?」


そこには、俺そっくりな男が俺と同じように驚いた顔をしていた。こ…こいつまさか、次は俺に化けて!?


「テメェ!俺に化けるとか卑怯だろ!?」


「俺に化けてどう言うつもりだよお前!」


「はぁ!?化けてんのはお前だろ!」


「なっ、此の期に及んでお前!見苦しいにも程があるだろ!」


こ、こいつぅ〜!見苦しいのはどっちだよ!俺に化けて隙を伺って逃げるつもりか!


「テメェ!ふざけんな!その変身解け!自分の顔なんか見たくもねぇよ!」


「変身解くのはお前だろ!テメェの顔見てると腹立つんだよ!」


「こっちのセリフだ!」


「俺のセリフを取るんじゃねぇ!」


俺そっくりな男と取っ組み合いの喧嘩をするも、これが意外とやるもんで中々押し倒して捕らえる事が出来ない。これは援護がいるな…!


「エリス!今のうちにこいつ殴って黙らせろ!」


「エリス!今ならこいつ殴れるぞ!やっちまえ!」


「てめ!エリスを俺にけしかけるんじゃねぇ!」


「馬鹿野郎テメェ!殴られるのはお前だよ!」


「………………どっちがどっちだ?」


しかし、肝心のエリスはどっちが俺かわからないとばかりに首を傾げる。おいおい!俺はお前の偽物一瞬で見抜いたぞ!なんでそんなさっぱりですって感じで首傾げてるんだよ!一発だろ!こんなもん!


「…んー、ライブの開始がもう目の前ですね。ここから一々偽物探してるの面倒なんでもう二人まとめて殴って気絶させてもいいですか?気絶したら変身も解けるでしょ」


「馬鹿かお前は!?」


「面倒臭がるなよ!?」


「じゃあ殴って耐えた方が本物のアマルトさん」


「殴られるのは確定かよ!?」


「俺お前のパンチ耐えられる自信ねえよ!?」


気が合うな偽物!ってかこいつマジでヤバイよな!前からヤバイ奴だなぁとは思ってたけどこの三年でヤバさに磨きがかかってねぇ!?


「取り敢えず両方同時に行きますね〜!」


「やめろ馬鹿ー!」


「やめろアホー!」


「はい、せーのっ!」


刹那、エリスの両拳が握られ俺と偽物に向け同時に鉄拳が放たれる、ああーもう!仕方ねぇ!また今度仕返しするからなぁー!!!


「っ……!、っ…?ん?」


しかしいつまでたっても殴られる気配がない、痛みをないし衝撃もない、もしかして俺一発で昇天したか?と思わず閉じてしまった瞳を開けば…そこには寸止めされたエリスの拳が見える。


…殴られてない?見れば偽物の方も寸止めで殴られてない…。


「…フッ、分かりました。貴方が偽物ですね?」


「え!?」


「なっ!?」


見る、エリスは確かに偽物の方を見る。嘘だろ今のでどうやって見抜いて…。


「な、なんでそう言い切れるんだよ…!俺が偽物の証拠なんて」


「ほら、貴方の右手…腰の短剣に伸びています、対するこっちは反撃する気配さえない。本物の…エリスの友達のアマルトさんなら、絶対に友達を傷つけません!」


「なっ…しまった…!」


短剣だ、変身した際模倣した俺の衣装の一つにあったマルンの短剣に偽物の方は静かに手を伸ばしていたのだ。反撃してやろうとか迎え撃ってやろうって意識があったわけではないのだろう。ただただ単純に攻撃されそうになったから咄嗟に手が伸びた…ただそれだけだ。


そして、それだけでエリスは偽物を見破った…俺がエリスを傷つけることはないという信頼から、俺を信じてくれたから。


「というわけで死になさい偽物ッッ!!」


「ぐぶぇっ!?!?!?」


飛ぶ、今度はエリスの鉄拳が偽物だけを射抜き壁に叩きつけ気絶させる。…一歩間違えてりゃあの拳が俺に飛んできてたのかと思えばゾッとするよ。


壁に叩きつけられ、力なく倒れる偽物の俺。なんだかとても胸が締め付けられる光景を前に絶句していると…まるで答え合せをするように偽物の俺は姿を変え、白目を剥き泡を吹く短髪の男に、俺にもエリスにも似つかない男へと変身する…いや、元に戻ったと言うべきか。


「よし、正解だったようですね」


「正解だったようですねじゃねぇよ、お前あれが本物だったらどうする気かだったんだよ、殴り飛ばされる自分の姿見てたら俺泣けてきたよ!?」


「いいじゃないですか正解だったんだし、それにアマルトさんなら例えエリスに殴られそうになっても絶対に刃物に手を伸ばさないって信じてましたから。だって仲間ですもんね」


「お前は俺を殴ろうとしたけどな!」


「もう!綺麗に締めようとしてたのに!実際殴らなかったんだからノーカンでしょ!?それともあそこで寝てる偽物みたいになりたいですか!」


「ヒィン!コワイヨォ!」


助けてラグナァ!エリス怖いよぉ!…でもまぁ、確かにそうだわな。俺例えエリスにあんな風に殴られたとしても、罷り間違ってもダチには剣を向けねぇよ。それにエリスだって本気でダチを殴りやしねぇ…多分な。


「ともかく!面倒な変身魔術持ちを潰せました!早速こいつ縛って尋問しましょう。まず爪を剥ぎます」


「気絶してる人間の爪剥いでどうすんだよ、それもう尋問じゃなくてただの攻撃だろうが」


「それもそうでした!」


「というか、その…エリスさん?アマルトさん?」


「ん?どうした?プリシーラ」


「いや、もうライブの時間なんだけど…行ってもいい?」


ザッ!と音を立てて俺とエリスが同時に背後の時計を見る。ヤッベェ!マジでもうライブの時刻じゃん!クソくだらねぇのに構ってる間にもうこんなに…!


「あわわ!!エリスとしたことが!すみませんアマルトさん!ナリアさん!この偽物ふん縛って色々聞いておいてください!エリスはプリシーラさんを舞台へ連れて行きます!」


「え!?ちょっ!エリスさん!」


「では失礼します!!」



「あ、おい!…行っちまった。俺も励ましの言葉くらい言いたかったのに」


疾風の如くエリスはプリシーラを抱き上げると共に竜巻のようにグルグルと足を動かし砂埃を立てて部屋の外まで突っ走っていってしまう。お前がテンパってどうすんだよ…ったく。


しかし面倒な仕事任されたねぇ、偽物を拘束して色々聞いておく…か。


「まぁいいや、おうナリア こいつ縛るの手伝ってくれ。……ナリア?」


ふと、ナリアからの応答がないことに気がつき彼に視線を向ける。そういやナリアのやつ…偽物が現れた時からやけに無口だったな、ずーっと何にも言わなかった。

ってか偽物云々もナリアが居りゃ見抜くのも楽勝だったじゃん。他人の演技を見破る達人のナリアに最初から頼めばよかったんだ。


あーあ、くだらねぇことに労力を割いちまった………あ?


「おい、ナリア…お前どうした?」


「…………この人」


そこには顔面蒼白で冷や汗をかくナリアの姿があった。尋常じゃない、普通じゃない、怯えている?何に対してだ、分からない。分からないが放っておいていいはずがない。


俺はナリアの肩を掴み何があったかを聞くもナリアは未だ難しい顔をしたまま。


「…分からなかった」


とだけ譫言のように言うのだ。分からなかった?何が…いやまさか。


「僕が…見抜けなかった、偽物の動きは完璧にエリスさんやアマルトさんを模倣していました。変身魔術じゃそこまでの模倣は出来ないはず…」


「何!?演技のプロのお前が?」


見抜けなかったと言うのだ、演技のプロたるナリアが動きや喋り方から真偽を見抜けなかったと言うのだ。それがどれほどの異常事態か…俺にも詳しいことは分からないけどよ。


変身は姿を変えるだけ、そこから先はこいつ自身の技量…そう考えるならこいつは。


「息遣いから体重の移動のさせ方、指先の微妙な曲げ方や声の出し方…全てが完璧にアマルトさんでした、僕…ビックリしすぎて声出ませんでしたよ、こんなこと出来る人間がいるのかって」


プロだからこそ分かる違和感、分からないからこそ分かる恐怖、何をどうしたらそこまで完璧な模倣が出来るのか…あのナリアでさえ分からないと言うのだ。


「魔術ではなく技量だけでそこまでの模倣をしたとするなら、この人は立派に超人ですよ…」


「マジ?」


そんな大層な奴には見えないし、事実としてこいつは悪魔の見えざる手の幹部でもなんでもない歴とした大層じゃない奴だ。それがそこまでの技量を持っていたことに…ある種ネレイドと同じ超人と呼ばれるだけの力を持つこの男に、驚きを隠せない。


……取り敢えず尋問すっか。


……………………………………………………………………


『プリシーラちゃーん!』


『ライブ楽しみだわ、まだかしら』


『どんなライブなんだろー、楽しみだなぁ』


既に観客席には人がごった返している。街中から集められた人達全員がここにいるんだ、その規模たるや凄まじいものだろう。


そんな人々の活気が舞台袖から伝わってくる。エリスもかつては劇団に所属しそれなりの知名度を得た人間、こう言う舞台に立った経験はある。本番前の緊張感というのはやはり独特だ、体が震えるけど高揚する 足が竦むけど体が自然と前に出る。


まぁ今回舞台に立つのはエリスじゃないんだけどね。


「お客さん集まってくれてますね」


「ゴードンさんが言っていたけど…街の人たちみんな集められてるんだって」


「ええ、つまり街の人たちみんな貴方のライブを楽しみにしてるって事ですよ」


「そうね…」


緊張しているのか…と思えばそういうわけではないらしい。今のプリシーラさんの表情を一言で言うなら『勇壮』。戦地に赴く愛国の兵士のようだ。


彼女は愛する、舞台の上を。彼女は愛する、全ての歌を。彼女は愛する、全てのファンを。


故に、それを前にした時湧き出るのは恐怖ではない



「じゃあ、行ってくるね!」


「はい、頑張って」


その背中をポンと押して、彼女の胸に湧き出る『感謝』を後押しする。全ての舞台に 全ての歌に 全てのファンに愛を届けてきてください。


『みんなー!お待たせ〜!』


そうプリシーラさんが手を振りながら舞台中央に現れれば、それだけで地鳴りの如き歓声と歓迎の喝采。スーパースターの登場に焦らされ続けた観客達はその滾るような期待を一気に大爆発させるのだ。


そんな様を、客席からは見えない舞台袖から見守る。もし何かあっても対応出来るように…って言うのと同時に。


エリスも見てみたかったから、彼女の舞台を。


『みんなー!私のことずーっと待っててくれたんだよね!みんなの声!私にずっと届いてたよ!』


アイドルとは即ち偶像である。崇拝の対象であり信仰の矛先だ、手の届かない光たるアイドルに人は好意を超えた信仰心を抱く。


信仰は熱狂を生む、熱狂は人を疎かにする。愚かな人間は物を忘れる。辛いことも苦しいことも忘れた人間の手元には『今』だけが残される。


誰もが今を見る、今を見て今に熱狂し今に没頭する。


そんな最高の『今』がライブという時間なんだ。


『みんなが待っていてくれてるのを知ってるよ、みんなが私の歌を聴きたいって言ってくれる…その言葉に応えるために、私はここまで来たの。山を越え川を越え森を超え!ここまで冒険してきたの!』


そんなライブが、何処かの誰かの救いになる…そう信じて彼女は有る。その存在が救いで有ることを証明するために、今に没頭するファン達の為に…歌う。


『だからね。私の気持ち…私の心、歌に乗せて…みんなに届ける!じゃあまず一曲目!『ラブリーダッシュ』いっくよー!』


鳴り響く歓声を聴きながら、軽快な音楽が演奏隊により鳴り響き、熱狂の中心で歌い踊る彼女の姿をエリスは壁にもたれながら見守り続ける。


……もし、ハーメアの旅路も何者にも脅かされなければ、彼女もこんな景色を見てあんな風に笑顔で舞台の上を舞っていたのかな。


もしそうだとするならば、今はそれを守れた事を誇りに思うとしようじゃないか。


「ラグナ達は大丈夫でしょうか…」


しかし、先程変身魔術の使い手が攻めてきたと言うことはつまり敵はやはり動き出しているという事。もし何かあるならもう事態は動き出していそうなものだが…ん?


(あれは…)


チラリと舞台袖から目立たないように客席に目を向けると。


(デティ!メグさんもいる…それに隣にいるのはヴィンセントでしょうか)


客席の向こう側に、坂の下から登ってくる一団が見える。現れたのはメグさんとデティ ネレイドさんとその二人に連れられた血だらけのヴィンセントと疲弊した兵士達。そして縄で縛られ捕縛された見慣れない者達…恐らく悪魔の見えざる手の構成員達だろう。


きっとみんなであれを撃退したんだろう、とは思うが…ラグナやメルクさんはどこに行ったんだ?それになんか…。


(なんか、ヴィンセント泣いてない?)


遠目から見てるからよくわからないが、なんか血だらけのヴィンセントが泣いている気がする。誰かに泣かされたというより…あれは。


『駆け抜ける、空の果てまで♪この足が、動く限り♪』


「─────ッ!!!」


プリシーラさんのライブを見て泣いている?あれだけ関心を持ってなかった癖に?一体何があったんだ…?


『貴方を追い求めて、私は行くの♪貴方を追いかけて、私は探すの♪』


しかし、…歌声はいいけど。なんていうかチャラチャラした歌詞だな、いや歌詞が悪いってわけじゃないんですよ?けどプリシーラさんは可愛い声というよりどちらかというと美声の類に入る歌声だ。


マッチしてない、妖艶な美女が幼児の服を着てるみたいな…こう、破綻はしてないけど致命的になんか違うというか見ててモゾモゾするというか。これか…これがあれか、プリシーラさんと言ってた母親の干渉か。


聞けば彼女は歌う楽曲や歌詞に対して口出しが一切出来ない状態にあるらしい。それが普通のことなのか、或いは異常なことなのかは分からないので置いておくとして。


曲を作っている人間が、プリシーラさんという人間を全く知らないような気がする。歌が上手くて有名ならどんな歌でも歌わせていいと思ってるのだろうか…これじゃあ確かに歌に命懸けてるプリシーラさんからしても文句の一つも言いたくなるだろうなぁ。


(しかし、お母さん…か)


しかし、皮肉な物だ。ある意味母の為に戦うエリスが戦いの果てに守ろうとしているのが母から逃げようとしているプリシーラさんなのだから。


…つくづくややこしいもんだよな、親子って関係は。


『だから探して♪貴方も私を♪いつかきっと♪巡り会えるように♪』


『うぉぉーー!!プリシーラちゃーん!!』


ま、でも盛り上がっているようだし…これでいっか。


…………………………………………………………


プリシーラ・エストレージャによるパナラマライブ、色々あったけどライブ自体は無事成功。集まった観客達は皆満足して彼女の歌を聞き大盛況のうちにライブは幕を閉じた。


とはいえまだアイドルの活動は終わらない、歌を歌い終わったら今度は握手会があるというのだ。なんでもファンのみんなと交流して握手を交わし触れ合うことを目的としたイベントなのだが。


「会えて嬉しいです!プリシーラさん!僕ずっとファンで!」


「ありがとー、私も貴方の応援に応えられるよう頑張るねー!」


「…………」


エリスは見る、ステージのすぐ側に設置された握手会コーナーに長蛇の列ができているのを、プリシーラさんに続く長蛇の列が途切れず続いていることを。ざっと数えて百人近くいる…そんな人間とプリシーラさんは律儀に一人一人挨拶して回って話をしているんだから疲れるよ。


ちなみにエリスは…。


「はい、時間でーす」


「あ、あ、また!また来るからねー!プリシーラさーん!」


「ありがとー!」


「はい、次の方ー」


列の整理、握手の終わった人間の押し出し、観客の誘導をやってます。なんでこんな事と思わないでもないが、しょうがないよ…スタッフとして手伝ってくれる予定だった人達がみんなまとめてヴィンセントに連れていかれてしまったんだから。エリス一人でやらないと。


ああ、当のヴィンセントと兵士達は今城の方で休んでいるという。戦いで疲弊し傷ついた彼らをデティとメグさんとネレイドさんで運び込んで治癒しているそうだ。そっちの仕事が終わったら三人とも手伝いに来てくれると言っていた。


あと、ラグナ達は姿の見えないヤゴロウさんを見に行っているらしい。何かあった…ってわけじゃないよ?とデティは言っていたから何かあったんだろう。


そして、アマルトさん達は例の変身魔術の使い手を尋問中。なのでエリスは今一人だ。


「プリシーラちゃん!俺!俺の事覚えてる!?」


「うん、覚えてるよー、前のライブでも握手したよねー」


「おお!やった!覚えられた!じゃ、じゃあ俺…」


「はーい、時間でーす」


「ああ!?まだちょっとしか話せてないよ!早すぎじゃない!?」


「時間でーす」


聞くところによると今回は幹部達は別件で席を外しているそうな。故に今回はこの街には来ていないとの事。人攫い屋がそんなに多忙というのも世も末な気がするが…なんというやら、今回はそれでよかった気がする。


出来るなら、ライブツアーが終わるまでその別件に従事していてほしいものだ。


「プリシーラさん!握手してください!」


「うん、握手会だからねー」


「ありがとうございますっ!」


「どういたしましてー」


「また、絶対来ます。貴方の歌を聞くためにマレウスを回るのが今の僕の生きがいなんです、僕に生きる意味をくれてありがとう」


「……うん」


熱心なファンだ、ああいうのに好かれてるというのはとても幸運な事だとエリスは思うんですがね、でもどうして…プリシーラさんはそんなに複雑そうな顔をするんですか?


それは、やはり…母から逃げる為にアイドルをやめようという心が、何処かにあるからですか?ファンを裏切るという思考が何処かにあるからですか?


そんな顔するくらいなら…と思うが、そう思わせるほどに母の存在は彼女にとって大きいらしい。


「はい、時間でーす」


「プリシーラさーん!応援してまーす!」


ファンを押し出し、次のファンへ。今のエリスは歯車です、心はない、ぐるぐる回って働くだけ…。


「次の方ー?」


「プ、プリシーラちゃん」


「はーい、応援ありが…きゃっ!?」


刹那、プリシーラの悲鳴が響く。いきなり詰め寄ったファンが強引にプリシーラの手を掴んだのだ。もしやこいつ悪魔の見えざる手か?ぶっ潰すか?と構えたが…そこから何かをする気配はない、どうやらただのファンのようだ。


ガタイのいい髭面の見るからに冒険者ってなりの男は身を乗り出すようにプリシーラ


「ププ、プリシーラちゃん、俺冒険者なんだ、君のために冒険者になったんだ、こ…これから一緒に依頼に行かない?」


「え、えっと、私これから練習があるから…」


「じゃあそれが終わってから!」


……いや?ただのファンじゃねぇなこいつ。目が明らかにヤバイ…ってかプリシーラさんの手を強く握りすぎなんですよ。


「い、いや…」


「ねぇ!?いくの…行かないの!?」


「はい時間でーす」


時間にはまだちょっと早いが、これは急いで離れさせたほうがいいとエリスが髭面の冒険者を掴んで離れさせようとすると、その瞬間…。


「やめろ!僕の邪魔すんな!時間なんて知らねえよ!!」


なんて喚きながら腰の剣を抜き放ちエリスに離れるよう促してきた、やっぱりこいつおかしいやつだったか。


しかし、剣の持ち方から構え方まで何もかも素人って感じだな…。こんなの怖がるまでもない。


「やめなさいって言ってるのが分かりませんか」


「は!?知らねえよ!オレは今からプリシーラちゃんと…あ!ちょっ!」


刃を掴んで引っ張り男の手から剣を強奪する。そして刃先と柄をそれぞれ持って…ボキリと鉄製の剣を目の前でへし折る。こんなもん持って握手会に参加させたのが間違いでしたね…。


「な!?僕の剣が…」


「今貴方には二つの選択肢があります、全身の皮を剥がれて塩の山に一週間埋められるか今すぐここを立ち去るか…どっちがいいですか?」


「お、お前!ライブの職員程度が偉そうに…」


「あ?」


「ヒッ、いえ…なんでもないです」


師匠の真似をして軽く凄めば男はビクビクと怯えながら後退りし、蜘蛛の子を散らすように逃げていく…。流石師匠直伝『睨み殺し』、ああいう小物には効果覿面だ。


「大丈夫でした?プリシーラさん」


「う、うん。…いつもは親衛隊の人達がああいう危ない人達を遠ざけてくれてるから、こんな事なかったんだけどな」


親衛隊…ああ、例のプリプリ親衛隊。彼らそんな事までしてたんだ…本当にプリシーラさんの事を守ってくれてたんだな。


…彼らは今頃何をしてるだろうか、親衛隊もまた冒険者…悪魔の見えざる手の襲撃を受け壊滅したがああいう修羅場は潜り慣れてるだろうから死んではないと思うが。彼らはプリシーラさんにとって大事な人たちだったようだな。


「はーい、次の方〜?」


「うっ、なんだあの女…今素手で鋼剣へし折っだぞ…」


「もしかして字持ちか?ってか顔怖え…!」


「やべ…」


しまった、ついやりすぎた。やっぱ剣へし折るのはやりすぎだったかな…他のファンまで怖がらせたら元も子もないか。


「大丈夫ですよ、何にもしてない人は殴りませんから」


「エリスさん…それ多分逆効果」


「そうですかね?」


「……ぷふっ、あはは、でも嬉しい。ありがとエリスさん」


なんか笑われたんだが…、でもまぁ笑ってくれたならそれでいいか。


「おーい、エリスちゃーん!」


「あ、デティ!」


すると、城の方で兵の治療を終えたのだろう。デティとメグさん ネレイドさんの三人が一仕事やり終えた顔つきで片手を上げながら城の中より現れる。流石はデティだ、あの数の兵士をこの短時間で治療し終えた上でケロッとしてるなんて、やっぱり頼りになるヒーラーですよ貴方は。


「こっちは終わったよ」


「今ヴィンセント様達は城の中で休養を取っています、かなり錯乱している様子でしたので」


「…悪魔の見えざる手も全員捕まえたよ、…メグがオライオン製の手錠取り寄せてくれたから多分脱獄も出来ないと思う」


「ご苦労様です、ラグナ達は?」


「ヤゴロウさんの様子を見に行ってるよ、まだ飲んでるみたいだったから」


「まだ?…もう」


あの人なんのために何しに来たんだ?まぁエリス達がいるから別にいいんですけどもね。


「それよりアマルトが呼んでたよ?ここ代わるから行ってあげてよ」


「我々も握手会が終わり次第合流しますので」


「あ、そうですか?…まぁエリスこの場にいないほうがいいと思うので、お願いしますね」


多分変身魔術の使い手が目を覚ましたんだろう。ならそちらに向かおうか、どの道これ以上エリスがこの場に居続けるより他の人間に代わってもらったほうがいいだろう。


一応三人にさっき不審者が出た事を伝え、対応をお願いしつつエリスは舞台裏へと駆け足で戻る。


……にしてもさっきの変身魔術、すごい精度だったなぁ。だって来ている衣服まで変わるんだもん、あんな凄い魔術があるならエリスも習得しようかな。


なーんて適当な事考えながらエリスは舞台裏の楽屋、その扉を開…いやエリスが蹴飛ばしたら扉は無いんでしたね。まぁ風通しが良くなってるのでいいとしましょう。


「すみません、戻りました」


「お、ライブはどうだった?」


「大成功ですよ」


「そりゃよかった」


「出来れば僕達も見たかったですが、それはまた今度にしますか。今は…こっちが先決です」


楽屋の中には椅子に座るアマルトさんとナリアさん…そして床に正座させられる簀巻きの男が一人いた。こいつが変身魔術の使い手の正体か…。


「さて、色々と質問に答えてもらいましょうか」


「う…」


男はエリスの顔を見るなり怯えた目で震え出す。というかよく見たらほっぺたメチャクチャ腫れてますね…。もしかしてアマルトさん。


「拷問で殴ったんですか?顔パンパンですよ?」


「お前の一撃だよ!」


「あ、エリスか」


「それより!…おいお前、もっかい名乗ってくれるか?あんまりダラダラしてるとコイツまた切れるぜ…?」


「ヒッ、は…はい、私はチクル隊の幹部補佐…『変幻のコンディオ』です、変身魔術で裏からプリシーラを攫えと命令を受け今回の作戦に参加しました」


コンディオと名乗る男はガクガクブルブル震えながらお尻突かれた牛みたいにペラペラと自分から喋ってくれる。やはりコイツも幹部補佐だったか…。

というか、エリスの事をそんな猛獣でも見るような目で見るのやめてください。


「裏からねぇ、って事は表のは囮かい?さっきデティが言ってたぜ、外には大量の悪魔の見えざる手がいたってな」


「は、はい…みんなが外で暴れている間に、変身を得意とする私が裏から攫う…そのようにデッドマン様から命令を受けていました」


「これ以上、他に何かしでかすつもりはあるか?」


「もう何もない、外の兵力がやられ私がこうして捕まった以上…もう何も出来る事はない…!だから!どうか!助けてくれぇ!」


「…意外に小物だな、すげぇ技術持ってるからてっきり凄いやつかと思ったんだが」


確かに、彼の変身魔術…いや他人に成り代わる能力の高さははっきり言って異常と形容するに相応しいレベルだった。エリスが記憶を使っても本物のアマルトさんを見抜けなかったんだから。


しかし、その技量の高さに反して。今こうして泣き喚く姿はなんとも情けない。強さと人格は比例しないというやつか。


まぁいいか、この分なら色々教えてくれそうだ。


「コンディオ…と言いましたね」


「は、はい…」


「貴方達の本部の場所を教えなさい」


「え!?本部!?」


「おいおいエリス、ンなもん聞いてどうすんだよ」


「一応聞いておきたいだけです、もしかしたらそこに…他にも攫われた人達がいるかもしれませんし」


ハーメアのように夢を奪われ希望を踏み躙られた人間が他にもいるかもしれない、なら出来れば助けたいじゃないか。攫われたか果てに待ってるのは地獄なんだ…あんな地獄、味わう人間は少なければ少ないほうがいいに決まってる。


「教えなさい!」


「い、いや流石にそれは…」


「…あんまり暴力的な事したくないんですけど」


「ヒッ、わ…分かりました。場所はここから西部に行ったところにあるプラキドゥム鉱山地帯の窪地、その中の岩山の一つに偽装して悪魔の見えざる手の本部がある!」


プラキドゥム鉱山地帯ですね…それがどこか、頭の中に記憶したマレウスの地図を開いて確認すると。


ん、確かにある。プラキドゥム鉱山地帯…ここからそう遠くない。チクシュルーブから行けば一日と経たず向かえるだろう、この依頼が終わったらみんなに相談して乗り込んでみようかな。


「分かりました、ありがとうございます」


「んじゃあ次俺の質問でいいかな、ずーっと気になってることがあったんだけどさ」


ふと、アマルトさんが椅子に腰をかけたまま態勢を崩し軽く手を挙げると。


「お前らの依頼人って…誰?」


「っ…!」


依頼人、そういえばラグナが共有してくれた情報の中にあったな。コイツらは金のためではなく何か崇高な目的の為に依頼を受けていると。


つまり、彼等には何か…いや、そもそもプリシーラを攫おうとしている人間は何かしらの目的のために誘拐を目論んでいるという事だ。


じゃあ一体誰がなんのために?確かにここは知っておいたほうがいいかもしれない。


「お前ら、誰かに雇われてんだろ?プリシーラを誘拐したら誰に引き渡す予定なんだ?あ?」


「それは……」


「いーじゃん、もう本部の場所もゲロッちまったわけだしさ」


「…………」


コンディオは言い辛そうだ、その時点でもう生半可な相手が依頼人ではないことが分かる。冷や汗を流し苦しそうに目を瞑るコンディオは数秒悩むと。


「わ、私が言ったって…誰にも言うなよ」


「分かってるって、お前をチクリ野郎にはしない」


「……エストレージャだ」


「エストレージャ…?それってプリシーラの家名だよな、…ってまさか」


「そうだ、我々に依頼を持ちかけたのは…この国の財務大臣、マンチニール・エストレージャだ」


それって、確かプリシーラさんのお母さん…?お母さんが悪魔の見えざる手を裏から動かしてたって事?


「おいおい、マジで言ってんのか?なんでプリシーラの母ちゃんが…いやそれ以前にこの国の国政に関わる人間が、裏稼業の人間に依頼なんてしてんだよ」


「この国じゃよくある事だ。この国の上層部の人間…主にレナトゥスは裏社会にも顔が効く、奴は自身の権力で我々のような裏の人間を脅し都合のいい私兵として動かし、自分の権力の下支えとして来たんだ」


「…そういや、マンチニール大臣はレナトゥス派だったな。いやそもそもこのライブの発起人のチクシュルーブもそうだ…ってこたぁよぉ。これって」


「もしかして、このライブツアー自体…マンチニール大臣の罠?」


「私達悪魔の見えざる手を見逃す代わりに、アイドル冒険者をやっている娘を…プリシーラを攫ってこいとのお達しだ。これを達成すれば我々は大臣の後ろ盾を得て更なる市場開拓が出来る…とデッドマン様は言っていた」


……点と点が線で繋がり始めた、なるほど このライブツアー自体マンチニール大臣の罠だったのか。仲間のチクシュルーブを使いライブを開催してその騒ぎに乗じてプリシーラを誘拐、連れ戻すのが目的…と言うわけか。


「大臣がそんな、こんな無茶苦茶やるってのかよ。腐ってんなこの国」


「…母親が、プリシーラさんのライブをぶち壊そうとしてるってことですか?だとしたら僕…許せないですよ」


「エリスもです、…まさかここまでプリシーラさんの活動に無理解だとは」


悪魔の見えざる手の背後にはこの国の大臣か、しかもチクシュルーブ同様レナトゥスの一派と来たもんだ。


確かにレナトゥスのおかげでこの国は反映したかもしれませんが、おかげでこんなに腐敗しきった政治が横行するんじゃ意味ないだろうが。


「な、なぁ…話したんだし、解放してくれるよな?」


するとコンディオが伺うようにエリス達に聞いてくるけど…解放?


「は?別に話したら解放するとは言ってなくね?」


「え?」


「はい、解放するとは一度として言ってません、貴方はこれからブタ箱行きです」


「そ、そんな!」


残念でしたね、でもエリス達としてもこれ以上コンディオに関わられても困るんだ。こいつの変身技術は異様に高い、またさっきみたいに成り代わられたら厄介だ。君にはここで大人しくしていてもらおう。


「ではこれから貴方をパナラマ城に連行しますね」


「くぅっ!そんなァッ!」


「……しかし」


しかし、参ったな。まさかこのライブ自体がプリシーラさんを陥れるための物だったとは思いもしなかった。


とは言えライブを見に来てくれるファンは本物なんだ、さっき舞台上でプリシーラさんが見せた笑顔は本物なんだ。たとえライブツアーに裏があろうともエリス達が迫る魔の手からプリシーラさんを守り続ければ済む話なのだ。


「キビキビ歩く!」


「うぅ…」


「あ、エリスさん、私のライブどう…」


ふと、楽屋を出ようとしたところでバッタリプリシーラさんと鉢合わせする。どうやら彼女も今しがた握手会が終わった所のようで…ッ!


「…………!」


「ちょっ!」


突如コンディオが動き出した、プリシーラさんの顔を見るなり紐で体を縛られていると言うのに信じられないほど機敏な動きで彼女に向かって走り出した。その速さたるやエリスがとっさに手を伸ばしても捕らえられない程の速度だ。


こいつ何者…そんな疑問が浮かぶよりも速く、コンディオはプリシーラさんにドンッと肩からぶつかりその身を押し倒して…って。


「なにすんじゃ!お前は!」


「ぐぇっ!?」


即座に追いつきコンディオを殴り飛ばす、プリシーラさんは…無事か。ナイフでお腹刺されてるとか、壁に頭をぶつけてるとか、そんな様子はない。ただ肩からぶつかられて尻餅をついただけみたいだな。


「大丈夫ですか?プリシーラさん」


「…………」


「プリシーラさん?」


「え?あ…大丈夫よ、なんでもない」


ん?なんだ?今なんか反応が悪かった気が…。


「やいこの野郎!いきなりうちのプリシーラに体当たりかますとかどう言うつもりだぁ?ええ!?」


「くうっ、逃げられるかと思ったが…そこの女が邪魔をして…うぅ」


「逃げるつもりだったのか!ったく油断も隙もねぇ。おいエリス、もっとしっかり捕まえとけよ、逃げられたら事だぜ」


「え、ああ…はい」


逃げるつもりだったのか?の割にはプリシーラさんを避ける素振りもなにもなかった気がする、寧ろ狙いはプリシーラさんを押し倒す事…いや接触する事のようにも見えた。一体なんだったんだ?


「取り敢えず、三人でそいつを牢に連れてこうぜ。また逃げ出すかもだし」


「そうですね、プリシーラさんはネレイドさん達と一緒にいてください」


「…うん」


ともかく今は捕まえたコンディオの護送が先だ、なんかプリシーラさんの顔がさっきから妙な気がするが…そう言うのも含めて今は後回しだ。


一応ライブも無事終わった事だし、次を見据えていかないと。


……………………………………………………


「どう言う事だ、こりゃあ…」


「…デティ達を連れて来なくて正解だったかもしれんな」


デティより齎された知らせ、四ツ字冒険者ヤゴロウが滞在する宿屋で人死にが出た可能性があると聞かされたラグナとメルクリウスは、一旦その場の処理をデティ メグ ネレイドの三人に任せ、ヤゴロウのいる宿屋の様子を見に来ていた。


ヤゴロウの強さは知っている、ともすれば魔女大国最高戦力クラスの実力があることも知っている。とはいえ街の中には隠密特化のチクル隊が忍び込んでいるとの話も聞いた。


どんなに強い奴でも後ろからこっそり刺されりゃ死ぬのが世の道理。昨日からずっと酒盛りしてるって話だし、酔どれ状態のヤゴロウが襲われでもしたら大変だと…急いで現場に急行したのだが。


「こりゃひでぇ、メルクさん平気か?」


「…平気だよ、だがここまで凄惨な現場は私も見たことがないな」


「俺もだよ…」


トツカ風味の宿屋の中に入った瞬間、異常事態を悟る。


なにせ、宿屋の壁や床に…夥しい量の血が塗りたくられ、地獄のような様相を見せていたからだ。むせ返るような血の匂い…この場にいるだけで下手すりゃ狂いそうな状況だ。デティを連れてこなくて正解だった。


「これはヤゴロウの血か?」


「いやどうだろうな、人間一人の血の量にしては多すぎる…」


「複数人が虐殺されてるってことか、…ともかく奥に入ってみよう」


「…気が滅入る」


流石のメルクさんもこの血だらけの宿屋の奥に行くのはちょっと気が引けるようだ、とはいえ回れ右して帰るわけにもいかない。俺達は血塗れの廊下を水音を立てて歩み…奥へ奥へと入り込んでいく。


ヤゴロウが居たのは一番奥の部屋だ、血で真っ赤に染まった襖に…ゆっくりと手をかけて開けてみる。もしかしたらまだ敵がいるかもしれない…そんな不安を感じながら、それを横へと押し退けると。


そこには。


「ふ〜ん、ふんふん…ふ〜ん」


上機嫌に抜き身のカタナを片手で持ち上げ、付着した夥しい量の血を拭き取るヤゴロウの姿…と、切り裂かれ人型ではなくなった肉の残骸が部屋の中に散乱していた。


多分、悪人が死んだ後に行く地獄ってのは、こんな感じの景色なんだろうな。


「…ラグナ殿にメルク殿でござるな?」


するとヤゴロウは振り向く事なく声を上げ、血に濡れた着物を重そうに羽織り直し…手入れを終えたカタナを腰に差し直す。


「いやぁ申し訳無かったでござる。敵の奸計に嵌りすっかり酔い潰れてしまっていたでござる、戦力になれず申し訳ない」


「い、いやいいんだ、済んだことだからな…けど。何があったかは教えてくれるか?」


「何がと言われても見たままでござる。ここに転がっている下郎共は拙者を酔い潰した上で刀を奪い、十数人がかりで拙者を暗殺しようとした不届き者でござる」


「酔い潰した上でカタナを奪いってお前…よく生還出来たな」


「ほろ酔い気分で立ち回り、相手の剣を奪って皆殺しにしたでござる。故郷に居た頃はよく寝込みを襲われたのでこのくらいは慣れっこでござるよ」


なはははと笑うヤゴロウの姿はまさしく修羅そのもの。血を浴び血を流し血を踏みしめ血を纏う、この凄惨な現場をたった一人で作り上げたと言うのになんのこともなく豪放磊落の笑ってみせるその姿には狂気さえ感じる。


…こいつ、エリスが思ってるような人間じゃねぇ。人殺しを厭わないタイプの鬼だ。


「全員殺したのか?」


「無論でござる、一人として逃さずここで斬り伏せた。…何か問題でも?」


「…いや、殺しに来てんだ、殺されもする。この場で殺人を咎めること程無意味な話はない」


「なはは、その通りでござる…しかし、これではエリス殿に合わせる顔がないでござるなぁ、彼女は人斬りを厭う。一緒に戦えると心待ちにしていたというのに…残念無念」


するとヤゴロウは血に濡れた装束を引きずったままこちらに歩み寄り、俺達の脇を抜けると。


「では拙者は服を綺麗にしてくるでござる。それとこの事はエリス度には内密に」


「エリスに嫌われるのがそんなに嫌か?」


「嫌でござる、拙者に笑顔を向けてくれる人間は少ないでござるからな。そんな少ない人間の前でくらいいい格好をしていたいでござる」


内密に…か。確かにヤゴロウは自衛の為に悪人を斬っただけ。複雑ではあるが咎める事は出来ない…ちょっと血生臭過ぎるけどな。エリスに知らせない方がいいというのはまぁわかる、知ればきっと彼女は思い悩む。


「では、失礼するでござる」


「おい、この宿屋の惨状どうすんだよ」


「後できっちりなんとかしとくでござるよ〜」


するとヤゴロウは懐からキセルを取り出しどこぞやらへと向かっていく。きっと体についた血をなんとかしに行くつもりなんだろう。


…変に手慣れている様子なのが気になるが、俺はそんなヤゴロウの背中を見送り…。



「…撒き餌には食いつかなんだか、まぁそれ良いでござる」


「……?」


宿屋の奥に消えるヤゴロウの意味深な言葉だけがその場に残り、俺とメルクさんは血の池地獄に取り残される…。


しかし、どうすんだよこれ…。


「あのヤゴロウとかいう男、危険だな」


「メルクさんもそう思うか?」


「ああ、奴は人の死と流血に異様に慣れていた、きっとこういうことをするのは初めてではあるまい。だというのに先日彼に会った時彼からは血の匂いがしなかった…恐らくはそう言った偽装もまた達人級なのだろう」


まるで猟奇殺人犯だと足元の血を見ながら語るメルクさん。一介の冒険者と呼ぶにはあまりに異様なヤゴロウの姿に…俺はただただ戦慄する。


あいつは、本当に味方として信用していい男なのか?というかそもそも。


何者だったんだ、アイツは。

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