表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
398/835

356.魔女の弟子と星魔剣


「だいぶ軍資金も溜まってきたな、そろそろサイディリアルに行けるかな」


「どう〜?ステュクス」


「そろそろ旅に行けそう?」


冒険者協会のロビーにて机に資料を並べてステュクスは頭を抱える。あれから数日、ぶっ続けで依頼を受けまくってサイディリアル行きの資金を集めてきた。サイディリアルに行くだけならさしたるほどの金もかからないが、移動速度と安全性を求めようと思うと金がいる。


俺達はここまでマレウス行きの行商の護衛を無料で受け持つことで馬車に乗せてもらってきた、だがここからは自分達で馬車を確保して自分達で向かわなければならない。


そうなるとやはり金だ、マレウスの馬は質がいいから当然高いし、馬車も買おうと思うとやはり少し足りない、いや…レンタルでいいのか?ともかく今はサイディリアルに向かってこの国の王に会うのが目的だし、それ以外のことは取り敢えず置いておくか。


「ええと、馬がこのくらいで馬車がこのくらいで、食料と数と人数はこのくらいで…他の雑貨も合わせると、うーん…ギリだが足りるかな」


紙に色々書き込みつつ、今手元にある金を書き込んで計算する。こう言う細かい計算は俺の仕事だ、一応このチームのリーダーだから帳簿をつけるのも俺の仕事。


昔は計算なんて苦手だと思ってたが、やらざるを得ない環境に置かれ続けると人間なんでも出来るんだなって思うよ。


「足りるって事は、そろそろ出発ね」


「ようやくか」


俺と同じ机に座るカリナとウォルターがステュクスのつけた帳簿を見て、物事が次の段階に移ったことを悟る。昔に比べて魔獣が増えた事 協会も最近は儲かっている事、この二点が噛み合って今冒険者は空前の好景気に見舞われている為、当初は数ヶ月かける予定だった貯金も物の一ヶ月と少し程度で済んだ。


後はここからサイディリアルまで最速最短で直行すれば良い、向こうには冒険者協会本部もあるから稼ぎには困らないだろうし、ともかく今は全財産叩いてでも安全な場所まで行くのが先決。


「私もっとここらで魔獣狩ってたいよ、ステュクス」


「いい修練になるし、何より楽しいし!」


しかし、子供達にとってはそんな事どうでもいいのか、はたまた危機的状況をイマイチ理解していないのか。リオスとクレーはステュクスの下した判断にややブーたれる。


マレウスに来てからのこの二人の活躍ぶりはまさしく獅子奮迅、マレウスよりも強靭で凶暴な魔獣が平然と街道を闊歩する世界有数の危険地帯アルクカース出身だけあり 二人の対魔獣戦闘術は既にステュクス達を上回るほどに冴え渡っていた。


寧ろ、二人の深い魔獣への理解度にはステュクスも日々勉強させられているほど。


「そうだな…」


とはいえ今はそんな子供達の意見を聞いている暇はない。恐らくの話にはなってしまうが今も着々とアド・アストラの追っ手が迫っている可能性がある。いつ後ろから刺されるかも分からない生活を長く続けられるほどステュクスの肝は豪胆ではない。


だが…。ステュクスは帳簿に目を落とす。ギリギリ間に合う計算となっているその帳簿を見て…彼は少し思い悩み。


「じゃあ、今日もう一度だけ依頼を受けて、明日出発しよう」


「ええ!?まだ依頼受けるの!?」


ステュクスは述べる、もう一度だけ依頼をここで受けてからサイディリアルに向かおうと。


それに対してカリナは不満そうに眉を顰め、口元に皺を寄せながら文句を言う。彼女にとっても今の状況は芳しくない。が…理由ならちゃんとある。


「いや、最近めちゃくちゃ討伐系の依頼受けまくってんじゃん?しかも達成速度もメチャクチャ早いと来た」


「まぁ、近場の魔獣を狩ってるわけだしね」


「だがその近場でも比較的高ランクの魔獣ばかりを狙ってる、実入りがいいってのもあるしリオスとクレーが居たらどんな魔獣も怖くないってのもある。ただそんな理由はともかくとして俺達は今実績を積みつつあるんだ」


「……なるほど、協会から『字』の進呈の話が出たんだね」


流石はベテラン冒険者ウォルター、話が早い。


その通りだ、高ランクの魔獣を少数で狩りまくってるチームのリーダーたるステュクスに協会から『字』を与えようって話が出始めたらのだ。


冒険者の中でも頭一つ飛び抜けた存在たる字持ち、協会にとって有益な存在である証たる字は持っているだけで協会から受けられる援助の幅が広がるのだ。


「そう、次討伐系の依頼を達成したら俺に『一ツ字』が進呈される。もし俺が一ツ字冒険者になれれば協会から色んなものを借り受けられるんだ。例えば…遠方に出向くための馬車とそれを引くための馬とかな」


「馬車をレンタル出来るって事?いいじゃないそれ」


「だろ?そうすりゃ必要な経費も結構浮く。悪い話じゃないと俺は思ってるんだ」


「ステュクス一ツ字になるの!?すごーい!」


「一ツ字って凄腕冒険者の証だよね!凄い凄い!」


リオスとクレーは喜色に湧くが、ぶっちゃけステュクスが一ツ字になれるのはリオスとクレーのおかげである部分が大きい。本当はこの二人が字をもらうべきなんだろうが…二人はまだ見習いと言う扱い。故にここはチームの代表としてステュクスが受けることとなったのだ。


そこを理解しているが故に、ステュクスにとっては少々喜んでいいのか微妙なところ。結局自分の実力ではないのだから。


「十代で一ツ字なんて、凄いじゃないかステュクス」


「ええ、誇らしいと思うけど…アンタはあんまり嬉しそうじゃないわね」


「まぁ昔もっと凄いのを見てるからな」


例えば姉エリスとか。彼女は十二歳で既に三ツ字冒険者だった…そこを思うと自分なんか全然平凡に思えてしまう。


「まぁ、ともかくだ。今日は一旦依頼を受けてそれをクリアしたらこの街を出る…それでいいな?」


「ええ、賛成よ」


「文句はないね」


「オッケー!私頑張るー!」


「僕もー!」


満場一致、チームからの理解も受けられた。ならば早速依頼を受けに行こうとステュクスは帳簿をガサッと纏めて鞄に流し込みつつ立ち上がる。時刻は昼時、時計を見ずとも協会内部の空気を見ればわかる。


アマデトワール支部は昼時が最もごった返す時間なのだ、というのも新人冒険者を選別する登録試験が終わり、夢が叶った新米冒険者とそうではない部外者の二種類の人間が会場からロビーに雪崩れ込んでくるからだ。


見れば右も左も分からないって顔の若者達がゾロゾロとロビーを歩き、そしてそれに対して声を掛け勧誘する冒険者達が群れをなしている。


『おい聞いたか?なんか凄い優秀なのが一気に五、六人入ってきたらしいぞ』


『マジか、今日は豊作じゃねぇか』


『なんでも戦士試験を武器なしで、オマケに教官ぶちのめして終わらせた奴もいるらしい』


…何人か有望なのが入ってきたらしい、しかし戦士の試験を武器なしでクリアとは見上げたやつもいたもんだ。


好きな武器を選んで試験官相手に打ち合い、試験官がその腕前を見る…というのが試験の内容だ。そしてこのアマデトワール支部は基本的に二ツ字以上を試験官に据える場合が多い、つまり其奴は登録試験時点で二ツ字を素手でぶっ倒せる実力があるということだ。


凄いというかなんというか、寧ろそんだけ素手で戦えるなら普通武闘家の試験受けるだろ。


「んじゃ、俺依頼受けついでに支給品もらってくるわ」


「わかったわ、なら私達はここで待ってるわね」


「あ!あ!私とリオスはちょっと街に行ってるね!」


「昨日の依頼で姉ちゃんの靴が壊れちゃったから、安いやつ買ってくる!」


「ん?靴が?」


見ればクレーの靴がズタボロになっている事に気がつく。リオスもクレーもバカみたいな怪力で踏み込むから靴の消耗が激しいんだ。あれだけの踏み込みを支える靴の気持ちになるとなんだか居た堪れないな。


「わかった、でも…」


「だいじょーぶ!喧嘩売られても買わないし変な誘いには乗らないから!私達もう冒険者なんだよ!」


「いつまでも子供じゃないよ!」


「……そうだったな」


リオスとクレーは子供扱いを嫌う。仲間として戦士として扱う事を望んでいるし俺もそのつもりでこの子達を仲間にした、なら無粋な事を言うのはやめようか。


「じゃ、またここで合流な」


「ええ、いってらっしゃい」


「いってきまーす!」


そして、ステュクス達はそれぞれ三組に分かれ行動を始める。手早く依頼を終わらせて一秒でも早くサイディリアルに向かうため、各々は動き始め…。


「ふぅ、…しかしただ待つってのも暇ね」


「若いのが率先して動いてくれるならいいじゃないか、頼りになるリーダーもいるしね」


今の事態をカリナの視点から言わせて貰えば…、ステュクスがああも前向きに活動出来てる事自体おかしいと言わざるを得ない。


だって今私達を追いかけているのは世界を股にかける最強の統治機関アド・アストラだよ?単騎で一国滅ぼせるような外部がダース単位で所属しているやばい組織でバックには八人の魔女が付いている。もしマレウスと全面戦争になれば一ヶ月と経たずマレウスは滅ぼされる。


それでもマレウスが今も存続しているのはアド・アストラがマレウスに対して潜在的な脅威を感じているからに他ならないとウォルターは言う。カーテンの向こう側に何がいるか分からないから手を伸ばせずにいるのが今のアド・アストラだ。


もし、カーテンの向こう側に大したものがないとバレれば、マレウス諸共私達を鏖殺する為にアド・アストラの大軍が軍歌を鳴らして国境を破壊するのにさしたる時間は必要ないだろう。


そんな奴らを相手に、ステュクスは私達を連れて逃げ果せるつもりでいる事に…なんというか胆力を感じる。いや、あいつの場合はただバカな怖いもの知らずって可能性もあるが。


「それもそうね…ん?」


ふと、その場に残ったカリナとウォルターは…それを見つける。ロビーの一角 数人の新米女冒険者を複数人の悪漢じみた冒険者達が囲っているのを。明らかに女冒険者達の方は困っている…。


「…ねぇウォルター」


「先輩冒険者としては…見過ごせなせないね」


「ええ、助けに行きましょう!」


正義感が強い方ではないが下卑た男が淑女を襲っていると言うのなら捨て置くわけにはいくまいと、カリナは女冒険者…メルクリウスを助ける為に、立ち上がるのであった。


………………………………………………


「へぇ、メルクって言うのね」


「ああ、よろしく頼むよ、カリナ」


女目当てで集まっていた大拳闘会を追い払ったカリナとウォルターは先程助けた女冒険者達と席を共にしていた。カリナとしても暇だし話し相手がいれば良い…と言う軽い気持ちでの相席。


と同時にちょっとした物珍しさがあったからだ。


「先程冒険者試験を通過したばかりの新米故、右も左も分からぬ中でのあの騒動だ、君達には助けられたよ」


そう語るのは先程助けた女冒険者達の中で、筆頭格とも取れる青髪の麗人…名を『メルク』とだけ名乗った彼女だ、カリナは彼女に凄まじい好奇心を抱いていた。


何せ…。


(佇まい、服装、そしてこの肝っ玉…どう見ても一市民には見えないわね)


カリナの知る粗野で粗暴な冒険者とはまるで違う高貴な立ち振る舞い。あれだけの悪漢に囲まれても眉一つ動かさない胆力。そして何より見るからに高そうなコート…どう見ても一般人には見えない。


恐らくメルクはどこかの貴族のだろう、側にはメグと名乗るメイドを連れているし…、このナリアって子とデティって子はメルクの娘なのかもしれない。


恐らく子供達に社会見学でもさせる為に身分を偽って冒険者協会に入り込んだのだろう。たまにあるんだ…高貴な身分にいる人間が、貧乏で野蛮な人間を見世物として見物する為に冒険者協会に顔を出す…なんて事が。


(メルクなんて名前の領主は聞いたことないけど、顔を売っておくのは悪い事じゃないわよね)


ここらで一つ貴族に恩を売り、ついでに気に入られでもすればきっとステュクスの役に立つ日も来るだろう。事実としてステュクスもこの国の王に恩を売り かなり気に入られているからこそ、こんなやばい事態でも希望を持ててるわけだしね。


「えっと、メルクはこれから冒険者としてやっていくのよね?」


「ああ、そのつもりだ」


「一応聞いてもいい?メルクって…その、戦えるの?」


「無論だ、そこらの冒険者よりは強いつもりだ」


いきなり大口…、でも不遜には見えないのが不思議だ。まぁこれは多分本当だろう、だってメルク…コートの内側から覗く腕、めっちゃ筋肉ついてるもん。


まるで軍人みたいな体つき、最近の貴族ってのは凄いのね。


「へぇ、ならその腕っ節を試すために冒険者に?」


「いや、と言うよりまぁ探し物だな」


「探し物?」


探し物をするのに冒険者になるか?普通。それだったら依頼する側じゃ無いのか?まぁいいけど…、とカリナは視線をメルクからデティに移し。


「そっちのおチビちゃん達も?」


「チビッて言うなッッ!!これでも成人だよ!!」


「ご、ごめん」


いきなりブチ切れるデティの剣幕に思わず謝罪してしまう。え?いや…成人?嘘だぁ…。だってどう見てもリオスやクレーと同年代だよ、こんな小さな成人居るわけないって。


「おいデティ…」


「あ!ごめんねカリナさん。私身長のこと言われるとついカァッ!ってなっちゃうの…」


「いや、こちらこそ口が過ぎたよ。世の中には色んな人間がいる、それをこちらの尺度で語ってしまう事は無礼に当たるものさ、だろう?カリナ」


「そうね、ちょっと偏見だった」


「いえいえ…」


ウォルターに窘められその話題は一旦終わる。世の中にはそう言う人もいる、そしてそれを気にしている人もいる。あまり迂闊な事は言わないほうがいいだろう。


しかしデティが成人だとすると、その母親であるメルクは一体何歳になるんだ?いやそれともそもそも母親ではない?だとしたらこれはどう言う集まりなんだ?


「しかし、冒険者協会というのは…ああいう事は日常茶飯事なのか?」


ああいう事、とは先程の大拳闘会の無理矢理な勧誘だろう。そもそも新人に対して先輩が圧力をかけ無理に加入させることを協会は禁してるんだからよくあっちゃいけないんだが…それでも。


「まぁね、新人の間は暫く言い寄られると思うわ。私もそうだったから」


よくあるのだ、カリナもまたその被害者だったからこそ言い切れる。


「何?君もか」


「そう、って言ってもまだ私が今よりもずっと若かった頃だけどね。私を新米と見て無理矢理勧誘しようとしてきた奴らがいたのよ。目的は都合のいい使いっ走りを作る為…若いうちから飼い殺してあとあと自分達が楽する為に新米を囲い込むなんてのはよくあることなの」


「ゲスな話だな」


「ほんとね、あの時アイツが助けてくれなければどうなってたか…」


「アイツ?」


ステュクスの事だ、私が新米で自分よりずっと体の大きな男達に囲まれて…怯えて声も出せないでいたところを彼が助けてくれたんだ。偶々試験の日が一緒で偶々入り口で軽くすれ違っただけの私を彼は助けてくれた。


それ以来かな、ずっと私はステュクスにまとわりついてるんだ。


「今のパーティメンバーよ。ここにはいないけど無理な勧誘から私を助けてくれたやつがいるの」


「ほう!なんか運命的な出会いだな!」


「う、運命って…そんなんじゃないわよ」


「出来れば名前も聞いておきたいが…」


異様に食いついてくるわね…、まぁステュクスの名前くらいならいいか…。


と、ステュクスの名前を口にしようとした瞬間脳裏を過る…、ステュクスがここ最近ずっと気にしていた『アド・アストラからの追っ手』の存在。


…まさかとは思うけど、この人達アド・アストラの差し向けた追っ手じゃないよな?その問いを肯定する材料はどこにもない。


だが、否定する理由もどこにも無い。


(……言うべき?言わないべき?そもそもこの人たちは何処から来たの?さっき言ってた探し物ってもしかしてステュクスや私達のことじゃ無いの?)


「…?どうした?カリナ」


「え?あ…いや別に」


迂闊だったかもしれない、今この状況下で全く素性の知れない人間と関わりを持ったのは間違いだったかもしれない。もしここでステュクスの名前を言った瞬間目の色変えて襲いかかってきたらどうしよう。


そう考えれば先程までのリラックスした雰囲気で話す事はもはや不可能だ。とにかく今は一刻も早くこの場を離れないと…。


「ああ、そうだ…そろそろ私──」


『そろそろ私、仲間と合流しないといけないから、それじゃあね』…これを言えていたらカリナの心配は杞憂で終わり、ここで偶然出会ったメルク達との縁も切れていただろう。


だがそうはならなかった、唐突に訪れたのだ…それは。


「ああ、ここにいたんですねメルクさん。デティもナリアさんもメグさんも…おや?そちらの方々は?」


「え?」


協会の奥からそれは歩いてきた。黒いコートと金の髪を揺らしてメルク達に親しげに話しかけ…カリナの顔を見るなりやや訝しむように表情を歪めた。


恐らくメルク達の仲間と思われるその女を見たメルクは、彼女に向けてこう声をかける。


「おお、来たか…エリス」


(エリス…!?)


エリス…そう言ったのだ。それはステュクスが散々恐ろしいと語っていた彼の実の姉と同じ名前。とはいえエリスと言う名前だってそこまで変わってるわけじゃ無い、ちょっと古風ではあるけどいないわけじゃ無い。もしかしたら同名の別人かも知れない……。


なんて、淡い希望は持てない。


(この人…間違いなくエリスだ。孤独の魔女の弟子エリスだ…、ステュクスのお姉ちゃんだ)


だってそっくりだから。ステュクスと同じ髪 ステュクスと同じ目の色、顔つきも何処となく似ているが。エリスの方がステュクスよりも幾分か顔立ちがいい。お姉ちゃんの方がイケメンってどんな姉弟よ。


っていうかやばいやばいやばい…!間違いなくなった!この人達アド・アストラが差し向けた刺客!ステュクスが恐れていた刺客だ!私達を殺しに来た人達だ!


咄嗟に顔を向けてドッと溢れた冷や汗を拭い考える。…どうしよう。


「すみません、ちょっとケイトさんに呼び出されていて遅れました」


「何やら重要そうな話だな」


「ええ、実際重要ですよ。なのでみんなが揃ってからお話したいのですが…その前に」


するとエリスはどかりとと椅子に座りカリナ達を見つめるように、逃さぬように視線を向けつつ腰を落ち着け、口を開くのだ…まるで鋭いレイピアのような声は真っ直ぐカリナに向けて放たれる。


「この方達は?」


「ああ、先程悪漢に絡まれていたところを助けてくれた親切な冒険者のカリナさんとウォルターさんだ」


「へぇ…」


エリスの視線は相変わらずカリナを見据えたままだ、その鋭い視線には独特の緊張感があり思わず生唾を飲んでしまうくらいには恐ろしい。ステュクスがこの人を恐ろしいという意味が分かるかも知れない。


(っていうかめちゃくちゃやばく無い?今。…私達の正体には気づいて無いっぽいけど…バレたら即アウトよね)


こうして前にして分かるが、エリスの佇まいには一切隙がない。あのウォルターでさえ口を閉ざすほどの使い手だ…最早エリス以外の物事に思考を割く余裕が出来ない程に彼女の風格は凄まじい。


戦えば恐らく勝ち目はない、下手に逃げても捕まるだろう。ならば…ここは一刻も早くこの場から自然な形で離脱すること、それがベストだ。


「すみません、ありがとうございました。エリスの友達を助けていただいて」


「い…いえいえ」


「紹介しよう、彼女はエリス…私の盟友だ」


「へ…へぇ、この人がさっき言ってた他の仲間?」


「いや、そういうわけではない。…ああ、君達にはエリスの事を言ってなかったな、私達は八人組でな?もう一組分かれて行動している奴らがいるんだ」


まだいんのかよ!?って八人…八人?そういえば魔女も八人…いやいや、まさかね。


っていうかそれよりも、なんかさっきからエリスがずっと私のこと見てんだけど!?何!?もう怪しまれてるの!?私!なんにも怪しい事してなくない!?


「……エリスはエリスです、よろしくお願いしますね?カリナさん」


「よ、よろしく」


エリスの視線は常に思考を孕んでいる。何かを考えているのが見て取れる。だがその思考までは受け取ることが出来ずカリナはズバズバに手汗をかいたまま、エリスの求めた握手に答える。


「ウォルターさんもよろしくお願いします」


「ああ、君はとても礼儀がなっているんだね」


「いえ、師がいいので」


続いてウォルターと握手をするは微笑む、師が良いと。ステュクスの話を鵜呑みするならその師とは魔女レグルスだ。ちょっと信じられない…神話の中の登場人物が物を教えた人物が今目の前にいるって事実もそうだが。


今まで魔女なんて存在を知覚したこともなかったから、『あ、魔女ってやっぱりいるんだ』と…ちょっと不思議な感覚に陥る。


「ふふふ、冒険者界隈でやっていくなら礼儀や礼節は何よりも武器になる。腕っ節なんかよりもよっぽどね」


「なるほど、深みのあるお言葉ですね。ウォルターさんは冒険者をやって長いので?」


「一時期引退していた時期はあったが、そうだね。ケイト・バルベーロウの現役を知るくらいにはこの業界は長いよ」


「ほう、それは凄いですね。色々と教えて頂きたいです」


「こんな老兵から聞いて助かる話があるなら、いくらでも」


焦りに焦る私と異なり、ウォルターはなんともどっしり構えている。ウォルターだってエリスの正体に気がついているだろうに…、流石は幾度となく修羅場を切り抜けてきただけはある。こういう時のウォルターは頼りになるな。


「そうだ、よかったらいくつか冒険者協会の事を教えて頂けませんか?まだこの協会のルールに疎い点もあるので メルクさん達が巻き込まれたようなトラブルを事前に避けるためにも、いくつかご教授願いたいのですが」


「勿論いいとも、ただ悪いね。今日はチームで依頼を受ける話になっているんだ。直ぐにチームリーダーが依頼書を持ってくる、後日で良ければお話ししよう」


「これから依頼なんですね。ではどうでしょう?そのチームリーダーの方も一緒にここでご馳走させては頂けませんか?エリスの友達を助けてくれたお礼をしたいのです」


「ははは、君の師は余程人への恩を重んじる姿勢だったようだ。だが我々が受けるのは討伐系依頼、あまり討伐が遅くなると被害が拡大する可能性もある、誘いはありがたいがそれを受けるわけにはいかないかな」


エリスの誘いを自然な形でのらりくらりと避けるウォルターの手腕に思わず唖然としてしまう。この人こんなにやれる人だったんだ…。


というか、なんかエリス物凄くしつこくないか?異様にこの場に留めようとするというか…。


なんて考えていると、今度はエリスの視線がこちらに向かい。


「カリナさんもこれから依頼ですか?」


「え?うんうん、私も依頼。ウォルターと同じチームだからね」


いきなり話かけられビビる。でも…なんだろうか、ステュクスから聞かされた話ばかり鵜呑みにしていたが、こうして話してみると意外にいい人そうじゃない?


ステュクス曰くいきなり殴りかかってくるような人だって言ってたけどそんな様子もない、寧ろ物腰は柔らかだし私達への恩義をなんとか返そうとしてくれている。


もしかしたら、ただ単に姉弟仲が悪いだけで…話の通じない人じゃないのかもしれない。


「そうですか、カリナさんにも色々教えて頂きたかったのですが…」


席に座りながら眉を八の字に曲げるエリスを見てちょっと罪悪感に駆られる。上手くやれば説得出来るかもしれない、エリスはそんなに怖い人でもない。


…うん、そうだな。サイディリアルに着いて私達の逃避行がひと段落したら、エリスに接触してステュクスとの仲を取り持ち仲直りさせるのも良いかもしれない。そして星魔剣を持ち出した件を懇々と説明するのだ。


止むに止まれぬ事情があったと話せばエリスだって分かってくれる。そうすればきっとエリスを通じてアド・アストラを落ち着かせられるかもしれない、それから星魔剣を返せば万事解決じゃないか。


よし、そうしよう。そうする為にも今はこの場を離れて急いでステュクスと一緒に街を出ないと。


「あはは、旅慣れした貴方に教えられることなんて無いよ。でもそうだね、またいつか会えたらその時はお互い腰を据えて話そうか」


「あはは、そうですね。その時はちゃんとご馳走させてくださいよ?」


「ふふふふ、そうね。期待しておくわ」


互いに笑顔を向けてこの話は終わる。円満な形で終われたことにホッとしつつ私は席を立つ。このままステュクスに裏で合流してリオスとクレーを回収して街を離れよう。


依頼なんて後だ、エリスがいる街で活動してたら何が起こるか分からない、どっかでばったり顔を合わせたらその時点でジ・エンドだからね。


「あ、すみませんカリナさん。一つ聞きたいんですが…」


「ん?何?」


ふと、呼び止めるようなエリスの言葉に振り向いた…その時だった。




「いえ、なんで『エリスが旅慣れしてる』ってことを知ってるんですか?」


「へ…?」



振り向いたその時、目に入ったのはエリスの顔だ。さっきまで笑っていて優しげな印象を受けていた彼女の顔だ。彼女の顔の筈だ。


なのに今はどうだ、さっきまでの柔和な雰囲気は消し飛び、瞳孔を開かれ 眉間に皺を寄せ 睨みつけるような鋭い視線で私を問い詰める。


何故、エリスが旅慣れしてる事を私が知っているのか。今さっき会ったばかりの筈の私が…。


「メルクさんが言っていました、エリスの事は話していないと。メルクさんが新米冒険者であることは貴方だって知っている筈ですよね?だから助けたんですから。ならその仲間であるエリスもまた新米冒険者だと思って然るべきなのに…なんで旅慣れしてるって貴方は知ってるんですか?」


「あ…いや…」


「貴方、何か知っていますね…?」


下手こいた、こいつ…やっぱり私達のこと疑ってボロを出さないか伺ってたんだ。


油断した、やらかした、私がステュクスからエリスの話を聞いている事がバレてしまった…いや、まだ何か誤魔化せる筈だ。どうにかして誤魔化して…。


「なるほど、エリスがやけにカリナ達に食い下がると思ったら…何かあるんだな?」


「ふーん、エリスちゃん最初から物凄いカリナ達のこと疑ってたもんねぇ…」


「え?カリナさん達…僕達の敵なんですか?」


「ふむ、カリナ様とウォルター様、…何処かで名前を聞いた気がしますね…」


エリスに続いてメルクやデティ、ナリアにメグが立ち上がる。そこから立ち上る威圧と魔力は私達が束になってもまるで足りないくらい凄まじく濃厚な気配。さっきまで仲良く話していたのに全員が敵意を放っている…私の一言を聞き逃さなかったエリスの直感により私は…。


ああ、これ終わったかも。


「メルクさんを助けてくれたことには感謝します。ですがそれはそれとして…知ってる事洗いざらい話してもらいますよ」


「し、知らないわ!何も!私は何も!」


「いいえ、貴方はエリスの事を知っています…ですよね?デティ」


「うん、カリナさん今嘘ついてるよね。ごめんね?私分かるんだ」


「うぐっ…どうしようウォルター」


「…これは……」


ウォルターが冷や汗を流しながら顔を歪める。それは言外に『もうどうしようもない』と語るようで。


最早言葉で誤魔化すのは不可能。戦って切り抜ける?それは無理なのは明白だ。なら逃げる?出来るか?


いや、無理だとしてもなんとかしないと…殺され……。






「ぅおーい、カリナ〜?ウォルター?すげーいい感じの依頼受けられたぜ〜?」


刹那、一触即発の現場に響く間抜けな声。私とウォルターを呼ぶ声。そして今一番聞きたくない…この場に響いてはいけない声を聞いた私は、本当に…咄嗟に、反射的に声の方を向いて。


「ステュクス!?」


「…ステュクス?」


「え?」


名前を言ってしまう。そして依頼書を片手に呑気に歩いてきたステュクスは私と一緒にいるエリスを見て、足を止める。


みるみるうちに顔を青く染め、冷や汗を噴き出させ、ガクガクと見たこともないくらいに震え、ガチガチと恐怖で歯を打ち付け…。


「ね、ねねね、姉ちゃん…」


その瞬間、なんか…何もかもが終わった気がした。


………………………………………………………………


ケイトさんの話を終え、みんなと合流したエリスは…メルクさん達が見慣れない冒険者達と話をしているのを見かけた。


最初はなんとも思わなかったが、その瞬間脳裏を過ぎったのはケイトさんの話。冒険者協会にはマレフィカルムの手の者が居るという話。もしかしたら其奴らが早速攻撃を仕掛けてきたのかもしれない。


事実、エリスを目にした瞬間カリナの様子があからさまに変わった。動揺して驚愕していた。これは何かあると見たエリスは彼女達がボロを出さないか色々突きましてきたら。


予想外の奴が出てきた。


「ね、ねねね、姉ちゃん…」


「ステュクス…」


ステュクスだった、以前マレウスで喧嘩別れした後から会っていなかったエリスの弟。いや星魔剣を盗みリオスとクレーを攫った極悪人が今エリスの目の前に現れたんだ。


思って見なかった存在の登場に一瞬呆気を問われるが。即座に湧いてくるのは激怒と憤怒 、こいつ…マレウスに逃げ延びたと聞いていたが、こんなところにいやがったのか。


エリスは徐に立ち上がり、あからさまに怯えるステュクスに歩み寄る…すると。


「寄るな!寄るんじゃねぇ!」


剣を抜いた、腰に差してあった銀の機甲剣…この世に残った最後のロストアーツ、星魔剣ディオスクロアをエリスに突きつけたのだ。


「やはり、貴方がそれを持ち出していたんですね…ステュクス」


「だ、だったらなんだってんだよ!」


「…なんだってんだよ?貴方は自分が何をしたか分かっているんですか!貴方の所為でエリスの友達がどれだけ大変な目にあったか!」


そもそもこいつがロストアーツを持ち出したからメルクさんの立場が危うくなって、彼女はあんなにも傷ついたんだ。それほどの事をしておいて呑気に冒険者生活して、やばくなったら『なんだってんだよ』なんて宣って開き直るか。


つくづく救い難い。こいつと同じ血が流れていると思うと反吐がでる。


「大変な目?そりゃこっちのセリフだよ…!」


「フンッ、ロストアーツを持ち出した理由はなんです?マレフィカルムに売り払うつもりですか?それとも純粋に力が欲しかったとか?どちらにしても浅ましいんですよ!」


「ち、違…違う!俺がこれを持ち出したのは…」


「リオス君とクレーちゃんはどこへやったんですか!それも貴方が攫ったんでしょう!二人を返しなさい!」


「そっちも取り戻しに来てんのか?…なんであんたが…。ってか攫ったんじゃねぇ!二人は俺について来たんだよ!」


「ハッ、此の期に及んで付いて来た?馬鹿馬鹿しい。貴方は昔から思い込みが激しいですもんね、都合のいいように現実を改変しているんでしょう」


「思い込みが激しいのはどっちだよ!少しは俺の話を聞けよ!クソ姉貴!」


「クソ姉貴…まぁこの際クソは百歩譲って許すとして、姉貴とは呼ばないでください…貴方はもうエリスの弟でもなんでもない」


「こっちだって、こんな姉なんか願い下げだよ!」


「ちょっとエリスさん…落ち着いて」


「ステュクス!落ち着きなさいって!」


ヒートアップし始めるエリスとステュクスの言い合いを諌めるようにナリアとカリナが動く。ナリアはただただ荒れ狂うエリスを見て悲しくなり、カリナはエリスとの関係修復という淡い夢を抱いて。二人とも睨み合う姉弟の間に入ろうとするが。


「ナリアさん、危ないので退いていてください」


「カリナ、下がってろ。殺されるぞ」


大切な友達の言葉さえ押し退け二人は一触即発を通り越し、既に燃え盛るような怒りと共取り返しがつかないつかないほどに距離を詰める。


「エリスは今からこいつを殺します、巻き込まれてしまうので皆さんは離れてください」


「やっぱ俺の事殺しに来やがったか…。易々と殺されると思うなよ…!」


息がかかるほど至近距離で睨み合う。肉体的な距離はこんなにも近いのに…二人の心はこんなにも遠い。


もうダメだ、止められない。そう皆が悟ると同時に…戦いの火蓋は。


「ッッゥオラァッ!!」


ステュクスの神速の大上段により切って落とされる。ステュクスの剣技の腕前は既にアジメクの正規騎士に勝る程の物だ。元騎士団長ヴェルト仕込みの剣術とここに至るまでの修羅場の数々で磨き上げた剣はジュリアンとの戦いでも多大な戦果を彼に与えた。


しかし。


「遅い」


「ぐっ!?」


通じない、エリスには通じない。正規騎士に勝る程度ではエリスの相手にはならない。何せ彼女は今現在史上最強と呼ばれる騎士団長クレアと同格か…或いは上回る数少ない人間なのだ、ステュクスが未だ超えられぬ師匠ヴェルトよりもエリスは遥かに強いのだ。


ステュクスの神速の振り下ろしを暖簾でも避けるようにサラリと避けると共にエリスのカウンターがステュクスの鳩尾を打ち、彼口元から胃液が溢れる。


(ッッ嘘ッだろ!?なんだこの重い拳!軽く腕振っただけでこんな重くなるかよ!?)


「ステュクス!!!」


たったの一撃でフラフラと足を縺れさせたステュクスを心配するようにカリナが声を叫ぶ。しかしステュクスは今にも助けに入りそうな彼女を手で制する。


頼むからエリスには手を出さないでくれ、姉だから庇ってるんじゃない。今はまだステュクスだけが攻撃対象となっているが、もしカリナが攻撃すればエリスはカリナも狙う。俺とカリナの二人を相手にしてもエリスは全く問題なく皆殺しに出来るんだ。


「手…出すな!」


「でも…ッ!ステュクス!なんか来る!」


「は?」


そんな注意を促す言葉を受け、慌ててエリスの方を向けば…。


「焔を纏い 迸れ俊雷 、我が号に応え飛来し眼前の敵を穿て赫炎 爆ぜよ灼炎、万火八雷 神炎顕現 抜山雷鳴、その威とその意が在る儘に、全てを灰燼とし 焼け付く魔の真髄を示せ 」


何か唱えていた、エリスがブツブツと何か言っていたのだ。その呟きとともにエリスの拳に炎の雷電が走り──。


「『火雷招』」


「ッッッ!?!?」


煌めく灼熱の閃光、ステュクスとエリスの間に挟まる形で轟く雷鳴は一気に拡散するように膨らみステュクスを焼き尽くそうと燃え上がる。


古式魔術、その中でも最も破壊力に優れ 一人で万軍に匹敵させるだけの武力を与えると言われる古式属性魔術、それを扱う孤独の魔女レグルス、そしてその弟子エリスの特権たる自然の猛威がステュクスに襲い掛かり…。


「ッ!星魔剣ディオスクロアッ!!」


しかし、ステュクスが咄嗟に手に持った機甲剣を前に突き出せば。まるで剣そのものに意思があるかのようにステュクスの目の前で蠢動する熱の塊を喰らい始める。


「む……!」


それを見たエリスの顔色が変わる、あれは星魔剣ディオスクロアの能力。魔術を分解し内部に魔力として貯蔵する力、あれを前にすれば如何なる魔術師も無力同然。対魔術師戦最強の武装とまで呼ばれたその力を目にして、やや苛立った様子で目を細める。


「ぐっ…効かねえよ!アンタの魔術なんか!」


栓を抜かれた浴槽の水のようにエリスの魔術は星魔剣の中に吸い込まれ姿を消し、代わりに星魔剣に多大な魔力が宿る。いくらエリスが強力な魔術を使おうとも無意味である、星魔剣を持つ以上エリスは絶対にステュクスには勝てない。



…と、ステュクスはエリスに思わせたいのだ。だが実際は…。


(マジかよ、今の一発で魔力タンクが満タンになっちまった…。どんな威力の魔術だよ…!)


機甲に取り付けられた目盛りを見れば赤いラインに振り切れている。もうこれ以上吸収出来ないと星魔剣が弱音を吐いている。今回はまだなんとか吸収出来たからいいが…もしさっきのやつ以上のが来たら吸収しきれない。


こんなの初めてだ、道中何度か魔術を受けて来たが容量の心配なんてしたことなかったぞ。


(マジで、俺の予想の範疇に収まる人じゃねぇなこの人は)


『お?なんだなんだ?喧嘩か?』


『だははは!いいじゃねぇか!やれやれ!』


『お?あれステュクスじゃねえか?俺ぁステュクスが勝つ方に賭けるぜ?お前は?』


『バカみてねぇのか、あの女の方が明らかに強えよ』


『おいお前ら、あんまり激しくするなよ〜』


周囲の冒険者も騒ぎに気がついたのか声を上げ始めるが、止めにくるものはいない。こんな喧嘩冒険者協会では日常茶飯事なのだ。故に職員も激しくやり合うなと注意はしつつも止めにくるようなことはない。


止めてくれた方がステュクス的にはありがたかったが…。


「ふむ、魔術は効きませんか」


「あ?」


ふと、そんな喧騒の中からエリスの声が聞こえ…即座に自分がエリスから目を離していることに気がつき、背筋を冷やしながら咄嗟にそちらを向くと。


「『旋風圏跳』ッ!」


「なっ!?はっ…ぐぇっ!?」


一瞬で飛んできたのは風を切って飛ぶ拳。弾丸のような速度のそれは的確にステュクスの頬を居抜き殴り飛ばす。余所見してたの差し引いても反応出来ない、あれは幾ら何でも速すぎる。


「魔術が効かなくとも、魔術が使えなくとも、貴方如きこれで充分なんですよ」


「ぐっ…くっそ…!」


エリスは魔術師だ、ステュクスは剣士だ、本来この距離で戦えば…いやそもそも戦いにさえならないはずなのだ。一も二もなく剣士が魔術師を斬り殺して終わる距離、その筈なのにステュクスは全くと言ってもいいほどエリスに敵わない。


剣を振るい、切り掛かり、烈火の如く攻め立てるステュクスが滑稽に見えるほどにエリスはいとも容易くその斬撃を回避する。ジュリアンとの戦いでちょっとは自分も強いのかも…なんて淡い幻想を抱いていたステュクスの自信を叩き壊す程に、届かない。


「フンッ!」


「がぼがっ!?」


「ロストアーツを返しなさいステュクス!それはこの世にあってはいけない兵器です!」


「ぐっ…そりゃ、同意するけどよ」


代わりに叩き込まれるエリスの拳の連打、鳩尾を叩き降りた頭を搔き切るようなフックで揺らし、よろめいた体を掴んで起こして頭突きと蹴りで再度ステュクスを張り倒す。


まるでストリートスタイル…、ガラの悪いチンピラ格闘術の達人とも言うべき動きにステュクスは圧倒されながらも、剣を地面に突き刺し起き上がろうと息を吐く。


「けど、こいつと同じ兵器は後十個くらいあんだろ…、そっちはいいのかよ」


「それはもう全部エリスがこの手で破壊しました。あとはその剣だけです」


「マジかよ…」


ステュクスは星魔剣を超然的な兵器であると思っているし事実そうである。だからこれと同じものが後十数個あると聞かされた時には色々考えもしたが…。


まさか、それら全てがもうエリスによって破壊されていたとは…。しかもその口ぶりから察するに持ち主ごとやったんじゃないのか?このヤベェ兵器持った奴を既にエリスは倒してるって?


どこまで怪物感出せば気がすむのかね。


「それを返しなさい」


「か、返したら許してくれる?」


「ダメです」


「くそッ!」


剣を取り返そうとするエリスに向けて立ち上がりざまに振り上げの斬撃を放つも、今まで当たらなかったものが急に当たるわけがない。エリスはスルリと体の向きを変えるだけでステュクスの決死の奇襲を回避し、それと共に足を引っ掛け見事に転ばせ。


「貴方の存在はエリスにとって汚点そのものです。誰だって汚い部分は消し去りたいでしょう」


馬乗りになってステュクスの動きを封じる。エリスの目には一切の躊躇はなく、ただただ激しい怒りに満ちている。


「ふざけんなよ…、ふざけんな!いきなり現れて人の事汚点呼ばわりしやがって!テメェ何様だよ!」


「物を盗み人を攫い、混乱を引き起こした貴方を汚点と呼ばずしてなんと呼びますか!」


「だから違うって!違うって言ってるだろ!なんで話聞いてくれないんだよ!」


「貴方にとって都合のいい言い訳を聞く余地などないからですよ、世の為に動くアド・アストラに害なした時点で貴方は世界の敵なんです。世界の敵に耳を貸す理由などどこにありますか!」


「アド・アストラが世の為に…?よく言うぜ、そのご大層な組織のせいで何が起ころうとしてたかあんた知ってんのか!」


「貴方は…魔女だけでなく今度はアド・アストラの事まで侮辱しますか!どこまでエリスの事を小馬鹿にすれば気が済むのか!」


拳を振り上げる。軽く振っただけでステュクスの内臓を歪ませた拳が今度は全力で振るわれる。あんなので頭叩かれた頭蓋骨がナッツみたいに砕けてちまう!


馬乗りになられ逃げ場のないステュクスは咄嗟に歯を食いしばり、迫る衝撃に対してせめてもの抵抗を見せ…。


「『フレイムインパクト』ッッ!!」


「っ!?」


すると、そんなエリスを止める為背後から燃え盛る業火が迫り、拳を振り上げたエリスの上半身を火に包む。


…カリナだ、カリナがステュクスを助ける為炎熱魔術をエリスに向けて放ったのだ。このままではステュクスが殺されると理解していたから、しかし。


「……………」


エリスを包んだ炎は即座に掻き消え、中から火傷どころか服に焦げ目一つ作らぬエリスが現れ、ギロリとカリナに視線を向ける。


「嘘…魔術食らって無傷とか、どんな人間…」


「カリナさん…貴方にはメルクさんを助けられた恩があるんですけど、残念です」


「やめろ!エリス!やめてくれ!カリナには…仲間には手を出すな!憎いのは俺だろ!」


「仲間、つまり共犯者ですか。カリナさんそこを動かないでくださいね?これが終わったら貴方にも話を聞きますから。その時は大人しく答えてくださいね」


カリナにも殺意を向けるエリス、しかし。エリスの意識がカリナには向いた瞬間を狙って今度はウォルターがエリスに飛びかかり。その首に向けて斧を振るう…が。


「やはり通じないか…、これは魔力防壁かな」


ウォルターの斧の一撃がエリスに届く前に何かに阻まれ動きを止める。魔力防壁…ジュリアンが魔装を使って出していたあれか?いやあれより随分硬そうに見える。


というか、それを生身で出してるってのかよ…!


「ウォルターさん カリナさん、邪魔するなら貴方達とはいえ容赦しませんよ…!」


「参ったな、これは…」


「どうしようウォルター!このままじゃステュクスが!」


「…………」


エリスは狼狽えるカリナとウォルターを見て、一何かを考えた様子を見せたが。そんな思考を首を振って振り切ると…ステュクスを見下ろす。


このままじゃ殺される。俺が死んだら次はカリナとウォルターの番だ。こいつはやる、このイカれ女は絶対にやる。


やらせてたまるか、俺の仲間を!!!


「やれて…たまるか!『魔統解放』ッ!!」


「なっ!?」


必死に星魔剣を握りしめ、その内に収めた魔力を解放し爆裂させる事でエリスの体を吹き飛ばす。さしものエリスも自身がぶっ放した魔力をそのまま受ければ体勢を崩さざるを得ないらしく、吹き飛ばされつつもクルリと猫のように着地し距離を取る。


「厄介な力ですね、それ…」


「うる…せぇ、絶対手を出させないからな…俺の仲間には」


「仲間?貴方が巻き込んだんでしょう!」


いや、それを言われるとその通り過ぎて何も言い返せないんだけども…。なんて言い竦むと


「巻き込んだんじゃないわ!私が私の意思でステュクスと一緒にいるのよ!」


「彼は私達の希望なんだ、それを奪おうというのなら当然抗うまでだ」


「…二人とも」


カリナもウォルターも俺を守るように前に立ち、エリスと相対する。あれだけの力の差を見せつけられておきながらそれでも俺を守る為に戦う道を選んでくれる。


巻き込んだんじゃなく、自分の意思で…か。こりゃ負い目を感じる方が失礼ってやつかな。


「悪いな、クソ姉貴…俺頼もしい仲間を持っちまったみたいだわ」


「…………貴方はいつも…、まぁいいです。邪魔するなら叩きのめして進むまでです。エリスは…この場でステュクスを殺しますから」


エリスの身から立ち上る魔力が空間を軋ませる。こりゃいくらなんでも強過ぎる、勝ち目があるとか無いとかそれ以前の問題な気がしてきた。


どうするか…、三人がかりでも勝てるか分からない。なんだったらエリスの後ろに控えてる奴ら、あれも多分エリスの仲間だと思う…エリスがやばくなったらあいつらも混ざってくるだろう。そしてエリスの仲間ってことは少なく見積もって俺らより強い。


数でも質でも負けてる、絶望的過ぎるな。


「さぁ、退きなさい!」


「うっ、怖ぁ…!」


「君幾ら何でも弟の事嫌いすぎじゃ無いか。何があったんだい…」


「くっ、来るぞ!」


エリスが一歩踏み出し、その圧倒的力が猛威を振るおうとした瞬間…。


「やめろぉーっっ!!」


「ステュクスを虐めるーーっっ!!」


「む?」


飛んでくる、観戦する人混みを掻い潜って飛んでくるのは…リオスとクレーだ。買い出しから戻ってきた二人がこの状況を見てエリスを敵と見做し襲いかかったんだ。


クレーは蹴りを、リオスは拳を凄まじい勢いで放ちエリスに攻撃を加える…しかし。


「フッ!」


「嘘ぉっ!?」


「何この人、めっちゃ強いじゃん!」


弾かれる、クレーの蹴りを腕一本でサラリと受け流しリオスの拳を受け止め弾き返す。あの二人でさえ全く通じない、それはリオスとクレーにとってもはじめての事らしくエリスの強さに恐れ戦く。


やばい、あの二人もやられる…そう冷や汗を噴き出した瞬間、エリスの顔色が変わる。


「なっ、…貴方達」


攻撃を弾いた後、リオスとクレーの顔を見たエリスは初めて顔色を変え、驚愕に満ちた声でその身から溢れた魔力を閉ざし、その敵意もまた消え失せる。


…何だ?何があって…。


「その髪色、その顔つき。まさか…リオス君とクレーちゃん…?」


「え?なんで私達のこと知ってるの?」


「知ってるも何も…覚えてませんか?エリスですよ!エリス!」


「エリスって…ステュクスのお姉ちゃん?」


「いや違…いや合ってるのかな、でも違って!そうじゃなくて!」


「ステュクスが言ってた…お姉ちゃんはステュクスを殺そうとするって」


「なんで…構えてるんですか」


愕然としている。リオスとクレーに敵意を向けられる事自体がショックであるとばかりにワナワナと震える。まさかエリスのやつ…リオスとクレーと知り合いなのか?世界中を旅してるエリスならありえるだろうけど…。


「エリスは貴方達を取り戻しにきたんです!一緒にお家に帰りましょう?お父さんが心配してます…」


「嫌だ!家には帰らない!」


「なっ!?なんで!」


「僕達は冒険者として生きるって決めたんだ!それを邪魔するなら!かかってこい!」


「………………」


完全にエリスは脱力してしまう。呆然と唖然と口を開いて思考停止する。連れ戻しにきたと述べた言葉を二人に拒絶されたエリスは…静かに一歩引く。


構えをとった二人に対して攻撃を仕掛ける気配なく。


「エリスは…子供は殴りません、絶対に」


そう語るエリスの顔を見て…思う。それはエリスがかつてそうだったから…エリスは下衆な父親に殴られて生きてきた子供だったから。その辛さを知ってるからエリスは子供を殴らない…殴れない。


そして、俺は…本当はそれを助けるために、修行してて…。なのになんでこんなことになってんだ…。


「僕達は子供じゃ無い!」


「いいえ子供です、子供である以上殴りません」


「むぅ〜!!!」


「…お願いです、退いてください。エリスはステュクスを殺したいだけです」


「なおの事ダメ!ステュクスは絶対殺させない!」


「…………」


どうあれ、今のエリスを止めることはできない。因果が拗れてこうなっちまった以上分かりあうことは出来ない。だから…。


「リオス!クレー!一旦引くぞ!」


「え?逃げるの?倒さなくていいの?」


「倒せんのか?お前らに!」


「無理かも…」


「よしっ!ってわけで!撤退!」


「あ!待ちなさい!卑怯ですよ!ステュクス!子供を盾にして逃げるなんて!」


リオスとクレーを伴って逃げ出す俺達に対してエリスの声が飛ぶ。その気になれば魔術をぶっ放したり構わず突っ込んできて攻撃を仕掛けることもできるがエリスはそれをしない、リオスとクレーが子供である以上派手なことは仕掛けてこない。


そういういやらしい打算も含めて俺は走り出す。集まった観衆に紛れて協会の外にとにかく逃げる、エリスが魔術を使えないならこれでも逃げられる筈だ。


…………………………………………………………


ステュクスを見つけ、攻撃を仕掛け、後一歩のところまで追い詰めたエリスの前に立ち塞がったのは…誘拐されたはずのリオスとクレーだった。


二人は誘拐されているにも関わらずステュクスを守ろうとした、カリナさんもウォルターさんもステュクスを守った。


訳がわからない、どうしてみんなそいつを守ろうとするんですか…。




「待ちなさい!ステュクス!」


「待つのはお前だ、エリス」


「っ!メルクさん!?」


そんな風に呆然とするエリスの隙を突き人混みに紛れて逃げようとするステュクス。エリスは追いかけようとしたが…、そこを手を掴んで止めるのはメルクさんだ。


「止めないでください!メルクさん!ステュクスが逃げてしまいます!」


「あの人混みに逃げられてはどの道追うのは不可能だ。今は仕方ないと諦めるより他ない」


「いいんですか!?あいつはロストアーツを持ち逃げして貴方を苦しめた犯人ですよ!」


「お前が今必死になって追いかけようとしているのは、本当にそれだけが理由か?」


「っ……」


メルクさんの諌めるような視線に思わず言い竦む、何も言えなくなってしまう。他でもないメルクさんに言われた以上…何も言えない。


「まぁー、ステュクスがアド・アストラ的に許されない事をしたのは事実かもしれないけど。今のエリスちゃんには任せられないかなぁ」


すると今度は相変わらずテーブルの上でジュースを飲んでいるデティが口を挟む、エリスには任せられない。そう語る彼女の口調は穏やかでありながらその目つきは非常に険しい。


「どうしてですか」


「頭に血が上り過ぎだよ、憎いのは分かるけど『ロストアーツを取り戻すため』って言う公然とした理由を使うのなら…もう少し冷静になって動いて欲しいかな」


「ああ、それになエリス。ステラウルブスで君の話を聞いたから今回は君に任せ事の流れを静観したが…やはり、やはり血を分けた姉弟で殺し合うのは、どうなんだ?」


「…………」


苦言を呈されてしまった。血を分けた姉弟で殺し合うのは良くない…か、だけどエリスからしたら血を分けた姉弟だからこそ、彼を許せないんだ。


ロストアーツを盗み、魔女を愚弄し、アド・アストラを罵った彼を…野放しには出来ない。ステュクスの体にエリスと同じ血が流れている以上。エリスは彼を他の人間と同じには扱えない。


「…何やら彼にも言い分があるようだった、それだけでも聞いてやることは出来ないだろうか」


「…メルクさんは、メルクさんはいいんですか!アイツはロストアーツを盗んだ犯人ですよ!メムやルーカスと同じ!それにリオス君とクレーちゃんも攫って…」


「リオスとクレーは自分の意思でステュクスについて行っているようだったが?」


「…騙されてるんです……」


「君らしくない凝り固まった意見だな」


「………………」


「まぁいい、直ぐに割り切れというわけじゃない。だが…何を言おうとも、何をしようとも、ステュクスは君の弟だ。今日初めて彼の顔を見て確信したよ」


「…そんなにそっくりでしたか?」


「ああ、仲間を守ろうと立ち上がるステュクスの姿は…私が良く知る君の姿と同じだった」


「…そうですか」


ステュクスは好かれていた、皆から好かれていた。カリナさんとウォルターさんはきっと悪い人ではない、それはメルクさんを助けてくれた時点で分かっていた話だ。リオス君とクレーちゃんは良くわからないが あの子達が悪い子たちな訳がない。


そんな人達が挙って彼を助けようとしていた、ステュクスを命がけで守ろうとしていた。


今回だけではない。ソレイユ村の時だって彼はいろんな人に守られていた、そしてその時も今回のようにエリスは一人でステュクスを守ろうとする人たちから睨まれていた。


…人はそう簡単に誰かのために命は賭けられない、誰かを守るために身を呈する事など出来ない残酷な生き物だ。それが懸命にステュクスを守ろうとする…と言うことは、彼にはそれだけの何かがあるってことだ。


口先で騙したり、下手に利用しようとする下衆には出来ない芸当…それが、ステュクスなのか。


「………………」


「………………」


沈黙が流れる、みんな不安そうな顔でエリスを見ている。メルクさんもやや不安そうだ、エリスはみんなにこんな顔をさせたいわけじゃないんだ。


エリスとステュクスの喧嘩を見守っていた他の冒険者達も『なんだよつまんねー終わり方』などと口にしながら疎らに散っていき、後にはエリス達一段だけが取り残される。


ステュクスと戦い、未だにこの胸に燻る何かと決着をつけられずただただ呆然とするだけのエリスとそれを見守る仲間達だけが、取り残される。


「ふんす、今回こそ合格出来た」


「よーす、みんな〜色々もらってきた…ぜ…?」


「…なんか、異様な空気だな」


「ラグナ…」


すると、どこに行っていたのやら。やや自慢げなネレイドさんと両手いっぱいに作物を持ったアマルトさん、そしてそれに追従するラグナがこの異様な空気を見て顔を顰める。


「なんかあったのか?」


「何もない、そうだろう?エリス」


「はい…」


「絶対なんかあったやつじゃん、まぁいいや。それよかみんな用事は終わったよな?じゃあ一旦エリスの話を聞こうか?聞いた話じゃエリス…ケイト支部長に呼ばれたんだろ?それを聞こうか」


話したくないなら聞かない。色々と察してくれたラグナは詳しく聞くこともなく馬車に戻ることを提案する。


…ケイトさんから受けた話、エリス達にとって重要な話だし共有しないとな。


「……ステュクス」


だが、今エリスの頭の中を支配するのはステュクスだ。アイツのことはまだ許せていない…けど。


どうすればいいんだ、どうしたらいいんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ