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孤独の魔女と独りの少女【書籍版!8月29日発売中!】  作者: 徒然ナルモ
十一章 魔女狩りの時代と孤高の旅人
388/836

348.魔女の弟子と真犯人


「どういうつもりだ、エリス…何故俺を治癒した、それにこれはどういう状況だ…」


エリスとメムの戦いは終わった、エリスの最大奥義である『ボアネルゲ・デュナミス』によってメムを撃ち倒し新生アルカナとの戦いは終わった。


問題はその後だった、エリスはデティから治癒を受けた後倒れ伏したメムの治癒もしたのだ。あのまま放置してたら死んでたってのもあるが…それ以上にするべきことがあったから。


情報を聞き出すとかそんなことを今更するつもりはない、そんなことをしても意味はないから。エリスがするつもりなのはもっと別の事だ。


その為にも元気になったメムの事を拘束し、エリス達はメムを連行して…魔女様達のところに向かった。


「どういうつもりはこちらのセリフだが?エリス。何故そいつをもう一度ここに連れてきた?お前が勝つことくらい分かっていたから報告など要らんが?」


会議場の円卓に座ったカノープス様はエリスに引き立てられ会議場のの床に伏せられたメムの姿を見てそう口にする。その声音に怒りはない…どっちかというと結構ガチ目に困惑してるっぽいのが見て取れる。


「メグ、何か聞いているか?」


「い…いえ、エリス様がいきなりここに連れて行くと…」


「……どういう事だ」


「それは俺のセリフだ!エリス!俺を処刑したいならば好きにするがいい!」


「処刑をするかどうかはエリスに決定権はありません、それにするなら態々魔女様達の前ではやりませんよ」


「ならどういうつもりだ!」


メムは怒ってる、すごーく怒ってる。彼は最初から死ぬつもりだったから別にいいんだろうけど…だったらその前に一つやるべきことがあるんじゃないのか?


「分かりませんか?」


「分からんとずっと言っている!」


「機会を与えているんですよ、魔女様に口を利く機会を」


「は……?」


「言いたいことがあるんでしょう?だったら暴れないでここで言いなさい」


アルカナは魔女と魔女世界の全てに怒りを抱いた者達の集まりだ、みんな魔女に恨み言を抱えている…だから暴れて意思表明をしてきた。そしてエリスはそれを間違っていると口にして彼らを打ち倒してきたんだ。


暴れて意思表明などするな、そう口にしたならばエリスには暴力以外の意思表明をさせる義務がある。だから魔女様達の前に最後のアルカナたるメムを連れてきた。


これはエリスの自己満足でありケジメだ。シンの時にはそんな事出来なかったけど今ならそれが出来る、だからやる…それだけだ。


「魔女に言いたい事?あるさ!山ほどな!」


「言っときますけどなんの生産性もない罵詈雑言とか呪詛とか口にしたらぶん殴って海に捨てますからね」


「ぐっ…なら何を言えと…」


「はぁ、貴方達の恨みには理由があるはずです。人間何もなければそこまで怒りに身をやつす事は出来ません、その怒りの根底…貴方の主張を魔女様にぶつけて欲しいんです」


「……俺の主張を…?」


「そして、魔女様達にはそれを受け止める義務があります。出過ぎた事かもしれませんがそれでも彼等も人間です、この世の支配者として八千年間君臨し続けた魔女様達にはメムのような人間の言葉も耳に入れて欲しいんです」


「ほう…、だが何故お前がそれをする。魔女の弟子であるお前が」


「それはエリスがアルカナを全滅させたからです。魔女の敵だからその意見も主張もただ握り潰す、それじゃあエリスは彼らの言うように魔女の従僕になってしまう。エリスは従僕ではなく弟子ですから」


「お前は本当に屁理屈をこねるのが上手いなぁ。レグルスそっくりだ、愛らしい…愛らしさに免じて、そこの襲撃犯の話を聞こう」


「ありがとうございます、カノープス様」


本当はこんなことするべきじゃないのは分かってる、だってメム達は暴れて多くの人を傷つけた人間だ。それが最終的に魔女様に意見出来る…なんてただのごね得だ。


そんなことは分かってる、百も承知でやっている。けどそれでも聞いて欲しかった、魔女様が悪辣の権化であると思われたくなかったから。


「で?、お前は何故…このような凶行に至った」


「…………」


メムは戸惑ったように何度か視線をこちらに向けた後、観念したように…口を開く。


「俺達アルカナは…みんなこの魔女世界の歪みの被害者達だ」


そう口を開けば彼は口火を切ったように自分の身の上話や今まで受けた扱い、他にも仲間の話や事情を続けるように話していく。


その話はあまりに悲しく同情を引く物…じゃないだろう、彼の場合は人を殺してるし他の人達も擁護出来ない犯罪に手を染めている。同じ目に遭ってなんとか持ち直した人だって居るしそう言う人達に比べれば彼らは十分身勝手だ。


だが、それでも魔女様には受け止める義務がある。この世界を作ったのは魔女様たちなのだから例え身勝手で傲慢で言いがかりのような話であったとしても聞き届ける義務がある。


メムの話を聞いた魔女様たちの反応はそれぞれだ。


『まぁ、それは大変でしたね』と同情を向けるリゲル様。『随分苦労をかけてしまったね』と慰めるプロキオン様など同情的な意見が一方。


『世界ってのはそをなもんだろ、オレ様のせいにするんじゃねぇよ』と怒りを露わにするアルクトゥルス様。『それは貴方の問題であって私関係ないですよね』と呆れるアンタレス様など否定的な意見もある。


そんな中カノープス様は最後まで黙って聞き届け、メムの話を聞き終えると共に目を開き。


「なるほどな、思えばお前達の意見をこうしてしっかりと面と向かって聞いたのは初めてかも知れん」


「…魔女世界は歪だ、お前達さえ居なければと何度も思った…」


「そうか、それは不運だったな。…だが我はお前に同情はせんぞ、お前は我が愛する国民を何人も傷つけ幾多も殺した。それは罪であり罰を得るべきだ」


「…………」


「だが同時に、罪と切り分けて考えた時…我等にも出来ることがあったのではないかと、考えを改める材料にはなる話だった」


「…何?俺の話を聞いて…考える?」


「ああ、確かに我等は地図と国土で物を見て。真に守るべきである民草に無理を強いていたのもまた事実なんだろう」


「おいカノープス!こいつの話なんか真に受けてどーすんだよ!第一民草だなんだと口にしたって仕方ないだろ、オレ様達はこいつらのような存在を生まない為に人間一人一人に幸福を与えられる程に万能だったか!?無理だろ。幸運になるやつもいりゃ不運になるやつもいる、その不運の言い訳にオレ様達を使ってるだけだ」


「かもな、だが同時に我等は無理だ仕方ないで済ませられる立場ではないのだ。世を統べ導くとはそういう事だ、この世に数多人がいるなら数多の幸福を用意する…それが頂の玉座に腰をかける者の務めだ」


「でもよぉ!」


「ああ、だがアルクトゥルスの言うように我等には無理だった。我等の力が及ばず我等に反目する者を作ってしまったのは事実だ、我等の存在が多くの者の人生を狂わせたのもまた事実、そこは仕方ないでは済ませられん」


「…………」


「謝罪はいるかな?メム」


「要らない、謝罪は…要らない。アンタの言うように俺たちは犯罪者だ…人を殺したし騙したし盗んだし奪った。やり方を…間違えていたのも事実だよ」


するとメムは静かに…静かに項垂れる。拘束されて膝をついて頭を下げるように項垂れた彼の目からは…ポツポツと涙が溢れる。


「被害者ぶるつもりはない、それをしたら俺達の人生全てを魔女に捧げることになる。俺たちは俺たちなんだ…」


「そうだな、お前達はお前達…アルカナだ」


「ああ、だから…忘れないで欲しい。俺達のような存在がこの世にいることを」


メムは頭を上げ、今度はこっちに顔を体ごと向ける。エリス達…魔女の弟子達の方を向いて。


「…俺が憎いか、魔女の弟子達…!」


「…ああ、憎いな」


ボロボロと涙を流すメムの言葉に答えるのはメルクさんだ。アド・アストラの代表として彼女は答える。彼女は忘れていない、自分がどれだけの被害を被ったか…そしてそれ以上に何人の部下達がメム達の手によって傷つけられたか。


魔女に人生を狂わされたからとアルカナが魔女を恨むなら、同じく殺されたり傷つけられたり人生を狂わされた部下達を多く出したアド・アストラもまたメム達アルカナを憎むのだ。


「そうだろう、…だったらもう俺達のような存在を生むような世界を作らないことだな…!でなきゃ…でなきゃ俺達は、また生まれてしまう」


「…………」


「だから頼む、…一人でも多くの人間が…俺みたいなバカにならない世を…、こんなバカな奴が二度と生まれない世の中を作ってくれ…!」


「…当たり前だ」


同情したわけじゃない、理解を示したわけじゃない、彼らを許したわけでもない。


ただ、そう言う事例がある。と言うことを確認し認識しただけだ、治世をする上で彼らのような存在は切っても切れない存在である。そこを許容するかどうするかは自由だ。


だが、これからこの世界をまとめて行くメルクさん達は無視出来ない。これから少しでもメム達のような人間を作らないようにすること…そこを考え続けるのは、エリス達魔女の弟子の義務だ。


「…満足しましたか?メム」


「……ああ、これで少しは…報われた。アルカナは…俺たちの居場所はただ消え逝く炎ではなかったと…あの世でシン様に報告出来る」


「だといいですね、まぁ…貴方は多分処刑されませんがね」


「なんだと…?」


「ええ、そうですよね?メルクさん、メグさん」


いや確証がある話ではない。けど多分そうだと思う…何故なら。


「ああ、大いなるアルカナはマレウス・マレフィカルムの中枢を知る組織だ。奴らと戦う我らにとっては惜しい情報源。情報提供するならば減刑もする…司法取引というやつだ」


「……司法取引?」


「ああ、現に宇宙のタヴや太陽のレーシュ、星のヘエと言った面々も取引に応じている。彼らはもうマレフィカルムに義理立てするつもりはないんだとさ」


「……何?」


エリスはまだ一度もアルカナ関係者が処刑された話は聞かない。特にタヴなんかは上手い具合に自分の持っている情報で帝国を手玉に取りなんか上手い立ち位置に収まっていると少し前に会ったフリードリヒさんがやや悔しそうに語っていたのを覚えている。


特にメムには聞きたいこともあるし、それに大人しく応じるなら処刑とかはしないと……。


「待て、タヴ様やレーシュ様ヘエ様は…全員死んだんじゃないのか?」


「は?何故そう思った」


「そう思ったも何も…みんな秘密裏に処刑されたと聞かされて……、まさか…騙されたのか」


ハッとメムは小さく項垂れる。騙されたと…何者かによってメムは騙された。敬愛する上司達を全員殺されたと思い込んだ。…彼のこの強行軍はそれが原因か?


だとすると、居るな。メムに余分な復讐心を植え付け今回の事件の事実上の引き金を引いた人間が。


「おい、メム!騙された?誰にだ!言え!」


「…メム、貴方がその『秘密裏に処刑された』と言う言葉を信じたと言うことは、それを言った人間はそれを知り得る立場にいた人間…と言うことになりますが?」


メルクさんとメグさんが血相を変えて聞き出そうとする。秘密裏…なんて都合のいい言葉だろう。それを確かめる手段もないのに妙な説得力があるんだから人を騙したい人間が多用するのがよく分かるワードだ。


だがメムはバカじゃない、その言葉だけを無闇に信じる男じゃない。それを言った人間がそう言う立場にいなければきっと信じない。そしてその秘密裏という言葉に説得力を持たせられる…ということは。


「まさか、アド・アストラの人間」


チラリとデティがこちらを見る、デティだけじゃなくてみんなが見る。エリスが言った今回の事件の真犯人の話を思い出したからだ。


…グリシャにロストアーツの情報を渡し、アルカナのロストアーツ強奪事件を密かに手助けし、剰えメムに嘘の情報を与え今回の事件の発端になった真犯人…。


それがまだ残っているんだ。というかですよ?皆さんそもそも気になりませんか?


「皆さん、気になりませんか?」


「何がだ?」


「今回の戦いを見て不自然に思う点はありませんでしたか?メムの戦いを見て、おかしな点はありませんでしたか?」


「え?なに?急にクイズ?」


「と言われてもおかしな点なんて…」


アマルトさんとナリアさんが顔を見合わせる。エリスの問いかけに首を傾げて分からないとばかりに眉を顰める…そんな中、顎に指を当てた彼だけは、答えを見つける。


「…メムは今回の戦いにロストアーツを用いていない」


ラグナだ、彼はその事実に気がつきメムの体を改める…すると。


「使うも何も、そもそもメムはこの場にロストアーツを持ってきてねえ…!」


「なんだと!?それは本当か!ラグナ!?」


ラグナがメムの体を改めれば、メムは何も身につけていない事が分かる。そうだ、その通りだ。メムはエリスとの戦いで一度もロストアーツを使っていない…それもそのはず。


メムが本来持っているはずの『星魔拳タウルス』『星魔脚カプリコヌス』『星魔鎧レオン』の三つをメムは今回使ってこなかった、使えばもっとマシな戦いが出来たか…或いは足を引っ張ったかは分からないが彼は使わなかった。


エリス達が最後に確保するべきそれらをメムは持ってきてない、その事実にメルクさんの顔が青褪める。ここにないのなら…何処へ?当選の疑問が全員の胸中に過る。


「…返したよ、アド・アストラにな」


「返しただと!?そんな話私は聞いていないぞ!」


「そうか?…というかそもそも分からないのか?俺が何故ここに来たのか、ここに来るしかなかったのか」


「…………ッッ!!」


メルクさんが立ち上がる、メムの言葉にその真意に気がつきたから。何故メムがここに来たのか?何故こんな最悪の自爆を試みたのか?


単純だった、メムにとってはただの自爆だが…『この絵を描いた人間からしたら違ったから』。


「時間稼ぎか…」


「今星魔城オフュークスは…ユグドラシルはガラ空きなんだろう?戦力の大部分をこの島に移してしまった以上、そこの守りは疎かになっている」


「チッ、オフュークスの在り処にも気がついていたか」


もし、その真犯人の目的がロストアーツを集めオフュークスを動かすことにあるのだとしたら…普通にやばい、何せメムがロストアーツを放棄した今。


星魔剣と星魔槍以外のロストアーツが今アド・アストラに揃った事になる。真犯人のいるアド・アストラに…ユグドラシルに。


「……だが、はぁ…エリスの言う通りになってしまったな」


「は?」


メムが目を見開く、メルクさんの嘆息にメムは驚く。


悪いがメム、『それは想定内なんだ』。


「言う通り?何を言っているんだ…」


「メム、我々はお前の協力者が今日を狙って動き出す事を想定していたんだ」


「なんだと…、何故…!」


「だって今日しかありませんからね。どうあれその真犯人が動き出すには…この島に戦力が集中する今日しかない。真犯人がアド・アストラの中にいるならユグドラシルが空になる…オフュークスはガラ空きになる、とくればきっと今真犯人はいるんでしょう?オフュークスに」


メムがこの日を狙って襲撃を仕掛けるかもしれないと言う可能性が浮上した時点でエリスはメムが時間稼ぎに使われているかもしれないと言う可能性に気がついていた、そしてそれを既にメルクさん達に話していた。


だから敢えて、この日の襲撃にエリス達は乗る必要があった。計画が恙無く進行していると思わせて真犯人が動き出すチャンスを作るより他なかった。決定的な場面を抑えなければ…奴はきっと言い逃れをするから。


「先程、この防衛に加わっている人間のリストを見せてもらいました。そして今回の真犯人の疑惑をかけられているロストアーツの担い手達がこの作戦に全員参加していると言う事実を確認してあります」


「…………」


「つまり、今…オフュークスに向かいそこにロストアーツの担い手の誰かが現れれば、そいつが真犯人ってことになるんですよ」


本来ならここにいるべきなのにここには居らず、アジメク本土のユグドラシルにいる者こそが今回の事件の真犯人という揺るがぬ証拠になる。


そこを抑えて、そいつを捕まえる事ができれば…万事解決だ。


「なるほど、お前はそこまで掴んでいたか。…それでどうする?奴の目的は既に達成されつつある。この島からユグドラシルに即座に向かうのは不可能…そこを理解していたから奴もこの日を選んだ。それに乗った以上もうお前達に出来ることはないぞ…」


「ええ、勿論。そこも考えてありますよ」


故に今すぐユグドラシルに帰還する必要がある。でなければ真犯人はまんまと集めたロストアーツを使いオフュークスを動かしてしまう。オフュークスを動かした後何をするつもりかは分からないが危険であることに変わりはない。


だから今すぐ帰還しないといけないのにここは世界の果て、船を使って丸一日移動しないといけない。おまけにここにはポータルもないし転移魔術も使えない。


ユグドラシルには戻れない…と、真犯人は思っている。だから動いたんだもんな、だけど奴には一つ誤算があった。


この絶対のルールを作った人間が、今この場に居るということ。つまりこの島を会議の場に指定し転移魔術を封じ禁じている張本人、つまり…。


「お願いします!カノープスさまっ!」


「はぁ、やはり我頼りか…話の途中から見えていたぞエリスよ。オライオンの一軒の時から思っていたがお前我をメグ同様に足代わりだと思ってないか?」


とんでもない!だが真犯人の作った万全の計画を崩すには奴の予想を超える万能の力が必要なのだ。摂理や原理を無視した究極の力…カノープス様の力が。


「だがいいだろう、ここまで来たら事件の解決を我を見たい。何より可愛い我が弟子達を手玉に取った奴には相応の罰を与えたいからな」


「っ!じゃあいいんですか!?」


「勿論だ、協力は惜しまない。三年前お前が我に与えた至上の借りを…愛する伴侶を救ってくれた恩を返すは今ぞ!」


すると、カノープス様は立ち上がりその手に力を込める。


この島には転移魔術を封じる力が篭っている。この中ではメグさんも転移を使えない…だがその封じる力の根源たるカノープス様だけは別なのだ。


「転移先はユグドラシル最上階…オフュークス内部でいいな?」


「はい、というか知ってたんですね…カノープス様」


「無論だ、それで?…誰が向かう。全員…ではないのだろう」


「……はい、向かうのはエリスだけです」


ここもまた話し合いは終わっている。真犯人を捕まえに行くのはエリスだけ、いやエリスだけであるべきなんだ。


エリスの予測が正しいなら……真犯人は彼だから。もし彼が本当に犯人なら止めるのはエリスの役目だ。


「……マジで一人で行くのか?エリス」


「はい、すみませんラグナ。エリスがもしもミスったら後始末お願いします」


「ああ、けど生きて帰ってこいよ。なんてお前にいう必要はないか?」


「ええまぁ、何があってもエリスは生きて帰ってくるので」


「ん、ならいい…かましてこい、エリス」


拳を突き出すラグナはエリスが一人で向かうことに対して、最初は難色を示していたが…同時にエリスが一人で向かうという覚悟を理解してくれた唯一の人でもある。


ラグナ・アルクカースという男の根底にある行動理念は一つ『やるならやれ』、行動しようと思ったなら行動しろ…師匠アルクトゥルスから与えられたそれを尊重しているからこそ、ラグナはエリスの行動を尊重する。


「…すまんな、エリス…何から何まで君に任せて」


「本当は私もエリス様についていきたいですが…、ワガママを言って付き合わせたのは私です、なので…帰ってきてくださいね」


「まぁ〜、さっきの戦い見せられたら俺も手伝うぜ!なんて言えねえ〜よ、俺はお前が帰ってきてなんもかんも終わった時のためにここで美味い飯でも作っとくよ」


「エリスさん、物語は最後にはハッピーエンドに終わるべきです。だからきっと大丈夫ですよ」


「よく分からないけどエリスちゃんならだいじょーぶ!こういう時のエリスちゃんはマジの無敵だから!ふぁいとー!」


「ふぁいとー…あつい」


後ろを守る、そう宣言してエリスを送り出してくれる仲間からの信頼に応える為にはやるべき事は一つしかない。


真犯人を捕まえて、今度こそこの事件に終止符を打つ…ただそれだけだ。


「ありがとうございます、皆さん」


「もういいか?早くしないと間に合わなくなるぞ?」


「すみません、カノープス様…お願いします」


「ん、…では行くぞ」


その言葉と共にカノープス様は勢いよく虚空を掴み上げ…握り潰す。


バキバキと音を立てて崩れる虚空、破片を地面に落としながら消える景色、魔術ではなく強引に空間に穴を開けて作り出すのは時界門…、ユグドラシルへ、決戦の地へ向かう扉だ。


「それじゃあ…師匠」


「ああ、…よくぞそこまで辿り着いたな」


扉を前にして師匠の方へ目を向ければ、師匠は満足そうに頷いている。きっと師匠は誰が真犯人か分かっていたのかもしれない、それでもエリスに最後まで任せてくれた。


みんなも、師匠も、エリスを信頼してくれている。エリスならこの事件を終わらせられると。


……ええ、終わらせてみせますよ。この事件を…今度こそ、解決してきます!


「いってきます!みんな!」


そうしてエリスは気合を入れて、時界門を潜り向かう。真犯人が居るであろう…星魔城オフュークスの内部へと。



……………………………………………………


足を踏み出し目を開けば、そこはユグドラシル最上階六王の間であった。


転移魔術をを禁ずる法すら破ってカノープス様は確かにオフュークスのある最上階に届けてくれたようだが…さて。


「オフュークス内部に行くにはどうしたら…」


ミーニャさん曰くユグドラシル最上階のキノコの傘のように広がった部分こそオフュークスであると言っていた。つまり最上階たるこの六王の間にはオフュークスの…なんて言うんだろう、操縦席?みたいなところに通じる道があるんじゃないかと思っているんだが。


「しまった、その辺も聞いてくるんだった…ん?」


ふと、円形に広がるこの部屋の形を見て思う。ここは六王の間…それを体現するように六角形の部屋となっている。


壁面にはアジメク アルクカース デルセクト コルスコルピ エトワール オライオンと、アド・アストラを形作る六大国の風景をもした塗装がしてあり…。


「六大国じゃない、帝国がない」


ポツリと呟き探す。帝国の景色がない、たしかに帝国には六王たる人物はいないからここで省かれてもおかしくはないんだろうけど…あ。


「上か」


上を見る。するとそこには帝国のマルミドワズを思わせる絵画が書かれた天井と…その中央にぽっかりと空いた穴が見える。穴…空調設備って感じではなさそうだ。


「颶風よ この声を聞き届け給う、その加護 纏て具足となり、大空へ羽撃く風を 力を 大翼を、そしてこの身に神速を 『旋風圏跳』」


風を身に纏って空へと浮かび上がり、穴に近づいてみる…余裕で人が入れそうな大きさだ。ここまで大きいと入ってくれと言われてるみたいだな。


(よし、入ろう)


何があるか分からないが取り敢えず調べてみようとノータイムで覚悟を決めて穴の中に入り込むと…。


「…ビンゴかな?これ廊下ですよね」


穴の中には回廊と思わしき長い通路が広がっていた。そして…穴の脇には破壊された魔力機構が散乱している。


エリスはメグさんのような魔力機構の専門的な知識は持ち合わせないが、この魔力機構は恐らくは下からこの上の隠し通路に上がる為のものなんじゃないか?


だとしたら…、エリスよりも先に誰かがここに来て。上に上がる為の唯一の方法を破壊した…って言う風にも見えるよな。


(もう来ている…犯人が)


既にここを誰かが訪れている、それはもう一人しかいない。先に犯人が来ているんだ。


それを理解するなり、エリスは息を潜めながら急いでこの隠し通路を渡る。埃っぽくもしかしたら通気孔か何かかと思ってしまうが…多分違うな。


(この壁中を這い回ってるパイプ、これ魔力導線ですよね…多分)


一瞬変な凸凹な壁かと思ったが、違う。廊下を覆うこの壁全体にまるで毛細血管のように張り巡らされた朱色のパイプがびっしり張り付いているんだ。恐らくこれはミーニャさんの言ってた魔力に指向性を持たせる為の魔力導線。


他のロストアーツ同様、いやその比ではない程大量にここには魔力導線があるんだ。つまり…ここはオフュークスで間違いない。


その確信を得てエリスは早歩きでとにかく何かを、誰かを探す。


しかし、…広い。


(意外と広いな…、本当にお城のようだ)


通路を歩けばまた別の通路に出て、大きな通路に出たり小さな通路に出たりとなんだか本当にお城の中を歩き回っている感覚に陥る。いや一応城ではあるのか、星魔『城』だし…ん?


(だとしたら、もしかして…この城の玉座の間に何かあるんじゃ…)


エリスはこれでも世界各地のお城を巡ったお城マイスターでもあります。だから構造とかを見ればある程度どこに何があるかも分かります。特にしょっちゅう通される玉座の間への行き方なんて…初見の城でも簡単ですよ。


目的地が定まれば後は簡単、経験則からこの迷路のような回廊を歩いて行けば…ほらあった、一際大きな廊下の最奥、そこに…意味ありげな扉。あれ絶対そうだろう!


(……居るのか、あそこに)


もし、エリスの推察や推理が正しければあの部屋には『あの人』が居る。エリスでさえ当初は裏切っているとは全く思いもしない程完璧に味方を『演じていた』あの人が。


アルカナの細かなミス、思い違い、違和感からその存在に気がついたから良かったものの…もしエリス達誰もが気がつかなければ、あの人は一体何をするつもりだったのか。


どういうつもりで裏切っていたのか。それを問いたださねばならない…。


(………………)


無心になって、エリスはゆっくりと扉を開ければ。中から漂ってくるのは緑色の光…シリウスの魔力光だ。


一瞬そこにシリウスが居るのでは、と錯覚してしまうほど部屋の中にはシリウスの魔力と緑色の怪しい光が充満している。慌てて扉を開き…中を確認すれば。


そこに居たのは……。


「……誰もいない」


居なかった、部屋の中には回廊よりも多くのパイプが這っておりその中心に十二の台座が配置されているだけの…簡素な大広間が広がっているだけで、人は居ない。


代わりに十二の台座にはそれぞれロストアーツが配置されている。


エリス達が取り戻した星魔銃カンケールや星魔帯ピスケス。


メムが放棄したという星魔拳タウルスや星魔脚カプリコヌス。


十二の台座の上には合計九つのロストアーツが設置され、それぞれが緑色の魔力を台座に与え、台座はパイプを通じてオフュークス全域に魔力を流している。


これはあれか、オフュークスのにかけられた十二の機能拘束の解除を行なっているのか。オフュークスには絶大な力がある代わりにその抑止力としてロストアーツを機能解除のキーとして使用する必要がある。


一つにつき一個の機能が解放されていくシステム故に恐らくこの状態でも既にオフュークスはそれなりに起動することは出来るだろう。


だが…まだ空きが三つある。メリディアが持つ星魔槍アーリエスとステュクスが持つ星魔剣ディオスクロアと…ルーカスが持つ星魔鎌スコルピウスの三つがまだ納められていない。


「……奴の狙いは、なんなんでしょうか」


ここにロストアーツが納められていると言うことは、保管されていたロストアーツを奪いここに納めたという事だろう、既にその時点で奴もそれなりにリスクを負っている。今まで馬脚を現さず徹底して隠れていた奴がそのリスクを負ってでもオフュークスを動かそうとしている。


メムを焚きつけ情報を与え、グリシャを操り事件を起こさせたのは『あの人』だ。つまりこのロストアーツ強奪事件とオフュークスを狙った犯行はそもそも真犯人が望んだ事…というわけだが、何故オフュークスを動かそうとするんだ。


未だにそこが掴めない。こんなもの動かして何をしようってんだ。


「……ん?」


ふと、部屋に入り込み誰かいないか探っていると。部屋の入り口から気配を感じ何気なしに振り向くと…そこには、人影があって…。


「メリディア…!」


「え、エリス?」


メリディアだ、今の今まで姿を隠し行方不明になっていた彼女が居た。その手には星魔槍アーリエスを持ってこちらをやや驚いた様子で見て…。


やはり、やはりだ。メリディアは事件の真犯人を追っていたんだ。だから彼女もここに来た、エリスと同じ目的を持って…!


「メリディア!」


「来ないで!」


「え…」


慌てて彼女と合流しようとすると、凄まじい敵意を持って槍を向けられた。…来ないで?なんで。というかなんですかその目、敵を見るような目…恐れるような目は。


そんな目を向けられたら、エリス…立ち止まっちゃいますよ。


「なんで…こんな事するんですか」


「私は何もしてない!」


いやしてるじゃん、思いっきり槍を向けてるし…拒絶してるし。


「落ち着いてください、こんな…こんな事されたらエリス」


「何?私を張り倒して牢屋にでも入れるの?…違う、違うよエリス!私は犯人じゃない!」


「え?あ…」


そっちか!そっちですか!エリスがメリディアをロストアーツ強奪事件の真犯人だと疑っていると思っていたのか。


何もしてないってのは多分この納められたロストアーツ達のことを言ってるんだ。なんだ勘違いしちゃったよ……ん?


いや待てよ、なんでメリディアは自分を犯人扱いされていると思っている?何故エリスを追っ手だと思っている。メリディアへの追っ手は結局派遣されていない、エリスとルーカスで止めた。


なのに、まるでその言い草…今メリディアが追われているような。


「待ってくださいメリディア…!」


気がつく、メリディアの体を見てみると…無数の生傷が刻まれていることに。


もしかしてメリディア、今誰かに追われているんじゃないのか?そいつに犯人の濡れ衣を着させられていると言われて…エリスを拒絶してるんじゃないのか?


…今メリディアは、真犯人と戦っている真っ最中なんじゃ…!


「メリディア!後ろ!」


「え……」


刹那、メリディアの背後に煌めく光、白刃の凶光が反射しヌルリと振り上げられるのを見たエリスは咄嗟に叫ぶ…、その声に反応したメリディアは慌てて振り向き槍で防御の姿勢をとるが…。


ダメだ、傷で足が殆ど動いていない。踏ん張りが効いてない、あんなのじゃ防御しきれない…、そんなエリスの予測通り。振り下ろされた白刃はメリディアの防御ごと容赦なく叩き砕き。


その体が血を吹いて空を舞い、吹き飛ばされ、エリスの足元に転がる。


「メリディア!大丈夫ですか!メリディア!」


「うっ…ぅぅ…」


生きてる…大丈夫だ、生きてる。今の一撃で顔に傷は負ったが致命傷にはならない、…よかった。メリディアまで死んでしまったらエリスは引き返せないくらい…ブチキレるところだった。


ただでさえ、今のエリスは…キレかけてんだから。


「…………貴方だったんですね、裏切り者は…」


そうだ、今そこに裏切り者がいる。メリディアを撃破しその手から零れ落ちた星魔槍を回収した其奴が。闇の奥から姿を現わす。


間違いない、こいつが犯人だ…この事件の全てを裏から牛耳り、アルカナさえも手駒にし、エリスの友人達を不幸に追いやった張本人が。


今、エリスの目の前に現れる、何食わぬ顔で。


「どうしてですが、…どうしてこんな事を…」


頬に垂れる冷や汗、今もどこかに認めなくない気持ちがある。だが…これはもう言い逃れは出来ないだろ?


なぁ、なんと言ってくれよ…。


「どうしてこんな事をしたんですか!ルーカス!」


「…………エリスか」


ルーカスだ、護国六花の一人でアジメクの…いやそんなのはもうどうでもいい!メリディアと同じムルク村出身の彼が。ここに現れた、それはつまり彼こそが全ての絵を描き何もかもを裏から操っていた真犯人である事を意味するのだ。


…見知った顔である彼が、犯人…その事実にエリスは戸惑いを隠しきれず彼を睨みつけるのと、ルーカスは肩を竦め。


「何言ってるんだ、裏切り者はそっちのメリディアだ。俺はこのスコルピを奪いに来たメリディアと交戦しただけだ。…やはりガニメデ大臣の言うようにこいつは裏でアルカナと通じていたんだよ」


此の期に及んでルーカスはいけしゃあしゃあと言い訳を述べる。その顔には微塵も焦りは見られず、まるで本当の事を言っているようにも見える。


けど、それならなんで…。


「じゃあなんで貴方がここにいるんですか、貴方は今天番島で魔女様の護衛をしているはずでしょう」


「ああそうだな、だが出発直前でメリディアから会いたいと連絡があったんだ。表向きには犯人扱いされている彼女と表立って会うわけには行かずこうして抜け出す形になってしまった。そして…彼女の言うようにここに顔を出してみたら襲われて今に至るわけだ」


うっ!?思ったよりも理路整然とした言い訳が飛んできたぞ?一縷の隙もない…エリスにはそれを否定する手がかりがない、メリディアに聞いてみないと…でもメリディアとは気絶してるし。


いや、メリディアに聞いても無駄だ。どうせ『嘘を言っている、ロストアーツを持ち逃げした犯人の言葉を信じるのか?』と言われて終わりだ。


ルーカス…彼はかなり頭がキレるタイプの男だ。エリスなんかよりずっと頭がいい、だからこそこの一連の事件を彼が纏めて指揮をしたと言われれば…ある意味納得がいく点でもあるし、もしバレてもこんな風にのらりくらりと弁舌を奮って逃げおおせることも出来るだろう。


厄介な男だ…。


「なぁエリス、取り敢えずメリディアを治療室に運んでくれないか?襲われたとはいえこちらもかなりやり過ぎてしまった。幼馴染が傷つき倒れる姿は正直長く見て居たくない、お前もそうだろう」


「…ルーカスさんはどうするんですか?」


「ここに残ってもう少し現場を検証するよ、大丈夫…すぐ俺も後を追う」


ダメだ、ここで言う事を聞いてメリディアを連れて医務室に運べばルーカスはオフュークスを起動させる。


だって、今ルーカスの手にはスコルピウスとアーリエスが在る。オフュークスの機能拘束のほぼ全てを解除する鍵を今ルーカスは持っているんだ。


「どうした、エリス。俺はお前を曲がりなりにも幼馴染の一人だと見込んでメリディアを任せているんだぞ?」


ルーカスは着実に近づいてくる。星魔鎌を手に、星魔槍を手に、この機能拘束を解除出来る部屋に入りエリスに近づいてくる。


…今までにないくらい、穏やかな顔で、エリスを諭すように。


……なんで、今になって、そんなに優しい顔をしてくるんですか。貴方は…!


「ふざけないでください、ルーカス」


「あ?」


「エリスがここに来たのは貴方を真犯人だと推理してやってきたんです」


「……何を言いだすかと思えば、くだらない言い争いをしている場合か?そもそもなんで俺なんだ。俺は何もしていないだろう」


なんとか言えよとばかりにルーカスは自信満々に両手を広げる。確かにその通りなんだ、ルーカスは今の今まで一つとして抜かりなく行動している。


そこに付け入る隙は全くなく。証拠を突きつけてどうのこうのと言える物は一つもない、彼は完璧に仕事をした。その自信の表れがこのドヤ顔だろう。


「確かに…貴方は怪しい事を一つもしてません……」


「だろう?ならバカな言いがかりはすぐにやめてメリディアを医務室へ…」


「でも、貴方以外の人物は怪しい事…してるんですよね」


「ッ…どう言う意味だ?」


ルーカスはミスをしていない、ルーカス『は』ね。いやこれはどうしても仕方ない事なんだが…もしこの作戦を彼一人で完結させていたならエリス達はきっと気がつくことが出来なかった。


だが、彼はあまりにも多くの人間を巻き込みすぎた。故にボロが出る…ルーカスに非がなくとも他の人間がミスをする。そうだな…例えば。


「まずエリスが真犯人の存在に勘付いたのは、グリシャがロストアーツの保管場所を知っていた事です、彼もまた慎重な男です…そんな彼がこの作戦をするにあたって転がってくるかも分からないロストアーツの情報をあの酒場で待ち続けるなんて、そんな不確かな事をするはずがありません。…彼には協力者がいたんです」


「それがロストアーツの保管場所を知っていたロストアーツの担い手…か。確かに俺はロストアーツの保管場所を知っている。俺も担い手の一人だからな、だがそれを言えばそこにいるメリディアもまた容疑者だろう?」


「ええ、そうですね」


「なら引き続きメリディアが怪しいことに変わりはない、何より俺とメリディアを除いても担い手はまだ十人以上いるんだぞ?そいつら全員調べたのか?彼らの行動に一切不可解な点がなかったと証明出来るのか?それが出来ないなら俺一人を犯人扱いするなんてのは…、荒唐無稽な言いがかりでしかないぞ?」


ルーカスの言う通り、担い手は全部で十二人いる。ガイランドさんやシオさん、ライリーにステンテレッロさん…なんならメグさんも担い手だ。それらを全て調べたとは決して言えない、十人以上する容疑者全ての無実を証明するするのは難しいし何より時間もない。


だから、この場でルーカスだけを犯人と断定することは出来ない。


……さて、本当にそうだろうか?


「確かに、担い手全員の無実を証明することは出来ません」


「フッ、なら決まりだな…早くメリディアを連れて行け」


「ですがメム達を動かせる人間は…この十人以上いる担い手の中で、貴方だけなんですよ。ルーカス」


「…まだ何かあるのか?」


ええ、あまりますとも。全員の潔白は証明できない、だがたった一人の黒だけは証明出来てしまうんだ。


そう、これはそもそもの話だ。何故メムはこの計画に乗ったんだ?


「そもそもメムはこのロストアーツ強奪事件の果てに何を見たんでしょう。まぁ言うまでもなく全てのロストアーツを確保しこのオフュークスさえも掌握し、最強の武力を手に入れ死ぬまで戦い続けることだったんでしょうね」


「……それがどうした」


「でも、おかしくないですか?それが目的なのだとしたら…この目的は最初から実現不可能だ、だって…あの強奪事件の時既に、星魔剣ディオスクロアは行方不明になっていたんだから」


「…………」


星魔剣ディオスクロアはエリスの愚弟ステュクスがメルクさんから盗み出して何処かに逃亡していた、これはロストアーツ強奪事件の前だ。つまり事件が起きた時点で全てのロストアーツを揃えることは不可能な状態だった。


なのにメムは何故強行した?、保管場所を見たのなら星魔剣が無いことくらい気がつくだろう。


「メムは保管場所に星魔剣が無いことに気がついた筈、なのにその事を気にも止めず他のロストアーツを持ち逃げした。後は貴方のスコルピウスを奪い返しオフュークスの在り処を突き止めるだけで目的を達成できると息巻いて逃げた…何故星魔剣の存在を無視していたんでしょうか」


「…さぁな」


「わかりません?なら代わりに答えますよ。メムの中では既に星魔剣は確保したことになっていた。なんせメムに協力する男こそが…星魔剣を授けられることになってたんですからね。でなければメムはこの実現不可能な計画に乗りはしない…ですよね、ルーカス…いえ?本来の星魔剣の担い手」


「………………」


星魔剣はルーカスに授けられる予定だった、だが直前でステュクスが持ち逃げしてしまった為決定的なズレが生じてしまった。ルーカスに授けられる予定のそれは授けられず、メム達はその事を知らずに強奪を強行してしまった。


お陰で達成出来ない計画が引き返せないところまで行ってしまったんだ。


「達成出来ない、けど引き返せない、それを唯一あの事件の現場で知っていた貴方は密かに計画の軌道修正を一人で行おうとした。それがアルカナからのロストアーツの奪還…」


「ふむ…」


「アルカナからロストアーツを奪い返した貴方はアド・アストラ内部での評価を上げ、唯一ロストアーツを自由に出来る立場に立った。後は持ち逃げされた星魔剣が取り戻されるまで星魔鎌を確保し続ければ…星魔剣が取り戻された後その二つをそのままアルカナに横流しできますからね」


オマケに、アルカナからアド・アストラを救った英雄たる自分が内通者だと疑われる可能性を極限まで減らすことが出来る。ロストアーツ強奪からしばらくの間アルカナが身動き一つ取らなかったのはルーカスが星魔剣奪還まで動くなと指示したからだろう。


「ですが追い打ちをかけるように更に誤算が発生する。それがエリスの存在です…、エリスが幹部として戻った瞬間アルカナはグリシャからの情報を元に勝手に行動を再開した。再開してしまった…お陰でアルカナは星魔銃カンケールをアド・アストラに渡してしまった。これではもう星魔剣を取り戻すまで待機を続けると言う作戦は使えない」


「…………」


「そこで貴方は新たに行動を始めた。それが…レイバンを真犯人としてスケープゴートにする作戦です。貴方はレイバンを犯人だと怪しんでいたのではなく最初から奴がグリシャに利用されているのを知って代わりの犯人として突き出し…この事件を一旦終わらせる道を選んだ」


ここまで崩れてしまってはもうどうしようもない、そう思ったルーカスは全てに見切りをつけてもうこの事件を強引に終わらせてしまおうと代わりの犯人を用意してそれを自分で捕まえる作戦を思いついた。


それを理由付けるのは。


「レイバンがあの時念話魔装を使ってアルカナに連絡した後。即座にアドラヌスがやってきたのは貴方が側にアドラヌスを待機させていたからでしょう?」


「………」


「そして貴方はそれを撃退、星魔刃アクアリウスを奪還しこの事件解決の立役者という決して疑われない立場を手に入れ…事件を終わらせた」


「…………」


「これでもう事件は終わり、アルカナが勝手に自滅するのを待てばもうロストアーツ強奪事件は終わる…所を、貴方は狙っていた」


事件は終わらせた、だが彼の野望は終わらない。


アルカナがロストアーツを集められないなら、アド・アストラとして自分が集めてしまえばいいんだ。アドラヌスからアクアリウスを奪い返したのも不甲斐ないアルカナに変わって自分がロストアーツを集めるためだ。


「貴方の野望通りアド・アストラは着実にアルカナからロストアーツを奪い返していき、貴方が手を伸ばせばいつでも届く距離に集まっていった。そして…今日を狙った」


「…………」


「メムに見切りをつけロストアーツだけ置いて行かせて、偽りの情報を与え焚きつけて八魔女会議に突撃させれば…。エリス達はそちらに掛り切りになり貴方はその隙に集められたロストアーツを集結させて不完全ながらもオフュークスを起動させようとした…それが今この瞬間の説明です」


「……なるほどなぁ、そして俺はこの場に現れたメリディアを殺し星魔槍を確保し、俺の持つ星魔鎌と合わせて…合計十一の機能拘束を解き、誰もが天番島に釘付けになっている間に最強兵器をこの手にしようと企んだ…そう言いたいんだな?」


「ええ、メリディアがロストアーツを盗み出して消えたのは貴方の計画に気がついたから。どうやって気がついたかは分かりませんがルーカスの野望に気がつき、このままロストアーツを全てアド・アストラに置いておく危険性も悟り…一人でアーリエスを守るために、アド・アストラを守る為に姿を眩ませていたんです」


「……なら、何故ここに現れた?」


「貴方を止めるためですよ、メリディアも貴方がこの日を狙って行動を始めると分かっていたんでしょう。自分一人でオフュークスの場所を突き止め一人で考えてここにたどり着き…貴方を、幼馴染の凶行を止めに来たんですよ!」


メリディアは徹頭徹尾騎士だった。組織と祖国を守る為一人でロストアーツを一つ確保し計画を阻害する道を選んだ。


それでもその事を誰かに秘密裏に伝えることは出来た。でもそれをしなかったのは犯人がルーカスだと気がついていたからだ。もしかしたら幼馴染の彼が何処かで思い直してくれるかもしれない、メリディアが見つからなければ計画をあきらめるかもしれない。


その可能性を消さない為に誰にもルーカスが犯人だという事なく、黙って今の今まで汚名を被ってでも逃げたんだ。


メリディアは全てを守ろうとしていたんだよ。アド・アストラも、世界も、ルーカス自身も。だから最後の最後で止めるためにこの場に姿を現した…なのに、彼はそれを…それさえも裏切ったんだ。


「貴方にこんなバカな事をして欲しくなかったんですよ!幼馴染の貴方をメリディアは大切に思っていたんだよ!だからこんな無茶なことまでして守ろうとしたのに…貴方は、お前は!それを踏みにじったんだ!」


「…………」


「貴方を守ろうと誰にも何も言わなかったメリディアを、止めに来てくれた幼馴染を!貴方は今斬ったんですよ!なんとも思わないんですか…!」


「……はぁ〜、推理の発表会は終わりかな?エリス」


囀るなとばかりにルーカスは沈黙を破り額をぽりぽりとかく、焦りはない。あるのは苛立ちだけ…、イライラと貧乏ゆすりをして彼はエリスを睨み付けると。


「ああ分かったよ、認めるよ。その通り、俺さ?全部の絵を描いていたのはな」


「…何を、開き直って…!」


「クイズの回答に対して、正解だと言ったまでだ。よかったじゃないか…名推理が当たってな」


最早隠すのも面倒だとばかりにルーカスはヘラヘラと笑いながら肩を竦める。だが悪びれる様子はなく、メリディアを斬ったことも特に何か思う様子はない…それどころか追い詰められているという意識さえ見せない。


「まぁ確かに俺の目的はこのオフュークスを動かすことだった、だが本当にそこまでなんだぜ?俺の目的はこいつを起動させちょっと動かすだけで終わったんだ。お前が何もしなくてもこの事件は解決した」


「……どういう意味ですか?」


「お前は俺がこのオフュークスを動かして何をするつもりだと思ったんだ?街の破壊?国の破滅?世界を滅ぼし魔女を殺す?…馬鹿馬鹿しい、俺はアルカナみたいな自殺志願者達とは違うんだ、そんなバカやらなくても俺の目的は達成されていた」


「…じゃあ貴方の目的はなんなんですか」


「簡単だよ、ロストアーツ強奪事件の解決だ。言っておくが嘘でもなんでもない、俺は最初からこの事件を解決するために動いていた」


「はぁ?」


どういう意味だ…なんて問いかける間にルーカスは手に持つロストアーツをそれぞれ台座の上に置きオフュークスの起動を急ぐ。


おい待てよ、事件の解決が目的なら何故まだオフュークスを動かそうとする。というかそもそも…!


「そもそもこの事件は貴方が発案したものでしょう!」


「ああ、そうだ」


「この事件を起こした理由が事件を解決する為?そんなバカな話がありますか!そんな自分で掘った穴を自分で埋める為にここまでの事をしたと!?」


「そうだと言っている」


「なら貴方はこの事件を起こして自分で解決するために…アルカナを動かして…事件を大きくして、それで…それで……」


口にしていて思う、まさか…と。今エリスはルーカスがこの事件を起こした動機と思えるものに一つ心当たりが出来てしまった。


まさか、まさか…ルーカスは最初から…この為だけに?この事件を解決する為だけに事件を起こしたと?


「まさか、貴方…自分で起こした事件を自分で解決して…、英雄になるつもりですか…!」


「…フッ、ああ…そうだが?」


ゾッと血の気が引く、ニタリと笑いルーカスは嘘をついているようには見えない。


ルーカスは最初からオフュークスを動かして何かをしようってつもりはなかった。何かが起こる前に解決される予定だったからだ。全ては…自分の地位と名声の為に、ここまでのことをしたんだ。


「そうだな、筋書きとしてはこうだ。メリディアはやはりこの事件の裏で手を回していた犯人で、アルカナと結託してオフュークスを起動させ…魔女のいる天番島に向けて攻撃を仕掛けようと城ごと移動を開始した」


「何を言って…」


「天を駆ける要塞たるオフュークスの前には如何なる攻撃さえ通用せず、道中の街を…そうだな、二、三個消し飛ばしその恐ろしさを演出しながら天番島を目指す。このままでは最悪の兵器が魔女様に牙を剥く…そう思われたところに、俺が現れる」


「……あ、貴方は…どこまで」


「俺は偶然この城の中に入り込むことに成功し、凶行に及んだ世界最悪の悪役メリディアを殺害…同時にオフュークスを寸前で停止させ事件を解決する。八人の魔女全員の命だけでなく魔術導皇や同盟首長の命を救った俺は一躍世界一の英雄となる!、誰もケチをつけられない最高の存在として永遠にこの世に俺の名が残り続けるだろうよ…!」


クククと狂ったように笑うルーカスは台座に手をついて笑いを堪える。


こいつは最初からその為だけにロストアーツ強奪事件を起こした、最初から自分が解決するつもりで事件を起こした。自分が手を貸し事件をドンドン大きくして誰も解決出来ない状態にしてから…解決することで、彼は一気に最大の名声を得ることになる。


最初はその悪役をアルカナに押し付けるつもりだったんだろう。メム達を焚きつけてこの城を動かして貰い、その後味方だと思い込んだアルカナを背後から皆殺し…、その首を持って英雄になるつもりだった。


それが無理だったから、代わりに選んだのがメリディアだった。彼処で嘘の情報を流したのは…他でもないルーカスだったんだ!


「メリディアには悪役になってもらうつもりだった、だから焦ったぜ…ガニメデが大規模な捜索隊を編成していると聞いてな。あそこでメリディアを見つけてもらったら悪役の席が空いちまう」


「まさか、メリディアをここに誘き寄せる事も織り込み済みで彼処で庇ったんですか…!」


「まぁな、メリディアが俺の狙いに気がついていることくらい直ぐに分かった。あいつがずっと姿を隠しているのは俺の計画の最後の瞬間を狙っているんだとな。だから利用させてもらった」


「利用って、本気で言ってるんですか…!」


「本気だとも、幸いメリディアはここに来てくれた。お陰で…ここでメリディアを殺せばそれで全てが終わる状況が出来上がっていた。後はオフュークスを動かして丁度いいところで俺が止めて、メリディアを殺して外に持っていけば事件は解決ってわけだ。お前がジタバタ暴れなくても最初からこの事件は解決する予定だったんだよ。それなのに態々ここまで…ご苦労様」


「メリディアは貴方の幼馴染ですよ!」


「だから?同じ村出身だから尊べと?阿呆らしい、祖国を捨てたお前がよく言うよ」


なんて言いながらルーカスは部屋の中央に立ち、下劣に笑う。後はメリディアを殺すだけで俺は英雄だと…、肉を前にした野犬のように凶暴に笑う。


英雄になる。たったそれだけの為に?


たったそれだけの為に貴方はアルカナを利用し、事件を大きくし、あちこち被害を出して、庇おうとしたメリディアさえも殺して。幼馴染を世紀の悪役に仕立て上げて…自分の英雄譚を作り上げる、ただそれだけの為にこれほどのことを。


「くだらな過ぎて…反吐が出ます」


「くだらないか?俺の目的がくだらないか?エリス」


「ええ!バカみたいです!」


「バカみたいか…ククク、バカみたいと来たか、まぁお前から見りゃあ俺なんぞは滑稽極まるだろうよ。…だがな…俺がこうするしかなかったのはなぁ!テメェの所為なんだよエリス!」


「は…はぁ?エリス?」


「そうだよ!テメェが…英雄になんぞなりやがったから。忘れもしねぇよ…山賊に囚われた俺達を救い出したお前の姿。輝いて輝いて…誰もが手を伸ばしたくなるほどに輝いて。誰からも憧れられ誰からも感謝される…そんなヒーローになる瞬間を…よりにもよって俺の前で見せたんだ、お前は…」


ルーカスは苦しむような胸を掻き毟り嗚咽する。山賊に囚われたあの時…エリスの戦いが始まったあの時から、ルーカスはそんな感情をエリスに抱いていたのかと…戦慄し言葉を失う。


「俺にだって…俺にだってなれたはずなんだ!あの時は力が無かったが同じだけの力と立場があればお前のようになれたはずなんだ!お前のようなヒーローに!俺は!」


「……だから、アルカナを」


「ああそうだよ!お前が倒したアルカナを使ったのもそれが目的だ!アルカナを俺が倒して…魔術導皇達や魔女達を救い…世界をも救う、そんなヒーローに俺だってなれたはずなんだ!世界から注目される…そんなヒーローに!」


「…………」


「だから俺はなるぞ、お前が見せた夢を叶え、お前を超える英雄に…ヒーローに、俺はッッ!!」


エリスが見せた夢、エリスが見せた憧れ、エリスが見せた背中。ただそれだけを誰よりも強く焦がれたルーカスは力と立場を得てエリスという星に手を伸ばした。


子供の頃に憧れたヒーローに、彼は誰よりもなによりも強く憧れ続けた。だから誰よりも訓練を積んで護国六花と呼ばれるまでになって、体を鍛えて勉強をして信頼を得て作戦を立てて…全てはエリスが見せた物を超える為に。


それがこの事件の真相。ルーカスが凶行に及んだのは…エリスの所為なのか…!?


「だから退いてくれよエリス。お前は一回英雄になったんだから、次は俺の番でいいだろ…」


「貴方は、ムルク村にいた頃から…いえ、あの頃よりもずっと子供です」


「なんとでも言え、邪魔するならお前でも殺す」


「やって見せなさい、…エリスは貴方を止めますよ。今ならまだ間に合います、メリディアを助け出し貴方を引っ張り出して、この事件をエリスが解決します!」


メリディアが生きているなら弁明も出来る、ルーカスを連れて行けば本当の犯人がこいつだと証明できる、まだ間に合うんだ…最悪の事態は回避出来る。


だがら、エリスは…ルーカス、貴方と言えども容赦しませんよ!


「止める?バカが…もう遅い」


「そんな事ありません!」


「ある、…もう気がつかないか?もうオフュークスは動き出している」


「え?」


するとルーカスは後ろへクルリと振り向き手を払うと、その動きに呼応して星魔城オフュークスの壁面がぐにゃりと動き。一瞬で窓を作り出す。


この城…こんなことも出来るのか、って!?


「ぎゃー!!?もう動いてるー!?」


窓から身を乗り出して下を見れば、川のように流れる花畑が見える。飛んでいるんだこの星魔城オフュークスが!拘束されていた機能の一つである『浮遊』を使いユグドラシルから離陸して浮遊要塞へと変形して空を飛んでるんだ!


ってかあの花畑…、ここアジメクの彩絨毯か!?既にステラウルブスを抜けてる。こんな短時間で…!この城めちゃくちゃ早いぞ!?一時間もしないうちに世界の果てにある天番島まで行ってしまいそうだ。


やばい、早く止めないと…今の狂ったルーカスが天番島に何かしないと言い切れない。


「ルーカス!この城を止めなさい!今すぐ…って、貴方」


慌てて振り向けば…そこには台座に安置された全てのロストアーツを装着しつつあるルーカスの姿が見える。浮遊に必要な唯一の鍵…壊れた星魔鎧レオンだけを置いて、残りの全てを装備したルーカスはニヤニヤ笑い。


「止めなさい?…止めてみろよ。お前もぶっ殺して犯人の一人に加えてやるよ」


右手に星魔鎌、左手に星魔槍を持ったルーカスが不敵笑う。エリスを殺しメリディアを殺し偽りの英雄となる為に、彼は狂気のままにゆらりと構えを取る。


…メリディア、貴方はこんな奴を救おうとしたんですか?


救おうとしたんでしょうね。優しい貴方なら…きっと、だから意志をエリスが受け継ぎます。


ルーカスは、エリスが止めて見せます…!!!




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