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258.魔女の弟子と白銀世界を征く


「ブルルンッ!、ブフー…」


「どうどう、落ち着いてください」


ピンと張る手綱を握りしめ、寒空の中ズルズルと鼻水を啜れば まるで抱きしめるような空風がエリスの体を更に冷やす、こんなに着込んでいるのにこの国の冷気は常軌を逸してますね


「首尾はどうだ?エリス、…大丈夫か?」


「ああメルクさん、全然大丈夫ですよ」


すると馬橇の仕切りの中からメルクさんが白い息を吐きながら現れる、大丈夫か大丈夫じゃないかで言えば大丈夫じゃないが、それでも弱音は吐かないよ、買って出た御者だからね


「そうか、…しかし これがオライオンの雪原か、生命の気配すら感じないな」


「ですね、エトワールよりも凄いですよ、ここは」


メルクさんと共に周りを見回せば、一面の銀世界だ 大地は雪によって染まり、空は曇天にて染まる、目を凝らしても大地と空の境界線さえも見えず、エリス達は今一体どこに向かっているのかさえ見失いそうになる


…今、エリス達一行は神聖軍の凱旋をやり過ごすと共に確保していた馬橇に乗り込み 揃って雪原へと飛び出す形で聖都エノシガリオスを目指す旅路に出たのだ


ルートは街と山の間に跨る森を抜け 聖都へ入る順路となる、道中通る街は少なく 森には恐ろしい魔獣が出ると噂であり、簡単な道でないことは百も承知 だけど…と、チラリと横を見ればあいも変わらずそこには巨大な山が見える


ネブタ大山だ、なんでもメグさんがカノープス様から受け取った情報によると八千年前の戦いの最中 巨大大陸のど真ん中を抉るシリウスの攻撃によってすっ飛んでったものがあそこに落ちて 長い時間をかけて山になったものらしい


つまり、あれは今二つの大陸の間に跨る巨絶海テトラヴィブロスがかつて陸地だった頃の岩土がそのままそっくり彼処に移動したもの ということになる


馬鹿げた話だよ、だってあれ このポルデュークでも一二を争う巨大山脈だよ?、それがシリウスによって飛ばされた巨大岩石だったなんて…、本当にデタラメな奴だ


まぁともあれ、彼処を飛び越えていけば聖都は目の前だが、当然道などないし 頂点付近には魔獣さえ住んでいない程絶踏の領域だというし、とてもじゃないが踏破は無理だ


そしてもう一つのルート 街側を辿るのは確かに安全だが、残念ながら今 街には神聖軍が凱旋で訪れている最中だ


邪教アストロラーベをオライオンの郊外に倒しに行っていた神聖軍が帰還し、その勝利を民衆に広めるため 街をなぞるように移動しているのだ、だから 街が密集しているルートには行けない、いつ敵対化するかも分からない連中と同伴は出来ない


などの理由でエリス達は残された唯一のルートである森と平原を征く道を辿ることになったのだ


「はぁ…」


一つ 息を吐けば肺が痛み、口の中が針で刺されたような刺激が走る、空気が冷たい…吹き荒ぶ風が大地を冷やし エリス達を凍らせようとしてくる、平原故 風は減速することは無い、それ故にブリザードが発生した場合逃げ場がない


危ないルートだ、それを意識しながらエリスはブレイクエクウスの手綱を握る


「ブルルン…」


「よしよし、頑張ってください」


一つ 良い点があるならこの子達ブレイクエクウスが思ったよりも役に立つことか


世界最大の馬とも言われるブレイクエクウス種は同時に世界最大の剛力を持つ馬とも知られている、エトワールにいた馬も結構ゴツかったが これは別格と言える


その剛力で馬車を引けばスイスイ前に進める、馬車旅に慣れているエリスから言わせて貰えば驚異的な速度と言えるほどに


しかもこの怪力でありながらこの子達はかなりの臆病者、だから軽く手綱を握ればそれだけで言うことを聞いてくれる、まぁ下手に刺激しすぎるとパニックを起こしてど偉いことになるから 危険ではあるのだが…


「…はぁー…えぶしっ!」


「エリスさーん、そろそろ交代の時間だよー!」


すると今度はメルクさんの脇を潜ってナリアさんが馬車の外へと出てくる


色々考えている間に交代の時間か、この絶対零度の世界だ 御者をやり続けるのは些か難しいということで エリス達の中で馬車を動かすスキルを持つ者達が持ち回りで御者をすることとなったのだ


一応馬を引けるのは旅の経験から馬を引けるエリスと戦車を動かしたことのあるラグナ、後なんでも出来るメグさんと旅劇団時代の経験でナリアさんの四人、アマルトさんとメルクさんは馬を引かない代わりに魔獣が出たら対応する係…故にさっきみたいに都度都度顔を覗かせてくれるのだ


まぁ 今のところ魔獣が出る気配はない、さっきも言ったが生命の気配がないんだ、草木も生えないこんな世界じゃ 如何に魔獣といえど生きていけないからね


「ありがとうございます、ナリアさん」


「うん、任せて?これでももう何年も馬を動かしてきた経験があるんだから 慣れっこだよ」


そう笑いながら手綱を握る彼の姿は異様な程に様になってた、エリス以上に馬の扱いに慣れている…、というかこの寒さの中で御者をする事そのものに慣れているようだ


それもそうか、彼は子供の頃から旅劇団をしてたんだ、それもあのエトワールで、この環境ではエリスよりも熟練だ


「では、よろしくお願いします」


「はーい、魔獣が出たらいうね?」


「はい」


そう軽く挨拶をしながら布で仕切られた馬車の中へと入り込む、ちなみにこの布 メグさんが帝国から持ってきた代物でいつのまにか勝手に取り付けられていたのだ、なんでも…断熱性能の高い魔装布らしく、これで仕切るだけで内部に冷気が及ばない仕様なのだとか


これのおかげで馬橇内部はぬくぬくだ


「これは…懐かしい感覚ですね」


布を掻き分け馬橇の中に入る、エリス達が借り受けた馬橇は急いで借りられるような代物だった為かなりの小柄だ、一人が御者をする為前に出ても 五人が中に入っているにはあまりに狭苦しい…のだが


馬橇の中は非常に開放的だ、天井は見上げるほど高く、走り回れるほど幅もある…、見た目と裏腹に内部がクソ広い為ギャップを感じてしまうほどだ、…この感覚は懐かしい


そうだ、エリスと師匠が昔使ってた馬車 あれと同じなんだ


あれも思えば帝国製故に魔装の一種なのだろう、あれは中に魔装が仕込まれており内部をそこそこの広さに拡充できた…


けど、エリス達の今乗ってる馬橇はその倍は広い、メグさんが取り付け式の空間拡充魔装を馬橇にくっつけた瞬間 内部が広がったのだ


…あの馬車の魔装 遂にほかの馬車にも取り付けられるようになっていたのか、まぁエリス達があれを受け取ったのはもう十年以上前 そこそこのヴィンテージ、今はそれより進化していて然るべきか


「お?、交代したか?、まぁ 暖まれ」


そうメルクさんが手招きしてくれるが、問題はその姿勢だ 豪華なソファに座り 作り出した銃の手入れをしながら足元には小さな暖炉が置かれているんだ


まるでそこそこの豪邸の中にいるような光景、これもメグさんのおかげだ、馬橇の中を拡充するなり絨毯を引いたりソファやテーブルを持ってきて 一つの居住空間に仕立て上げてしまったのだ


おかげで旅してる感はゼロだ


「あはは…、なんていうか 優雅ですね」


「全くだ、宿にいる時より居心地がいい、先ほどナリアが其処彼処に暖房陣を描いてくれたから寒さも感じない、ここに住めるぞ」


なんて談笑しながらメルクさんの手前に置かれているクッションを一つ抱きしめ もう一つをお尻に敷いてくつろぐ、あああったけぇ…これナリアさんの暖房陣だ、彼はこの雪国では必需の人物の一人かもしれないなぁ


「しかしメグの魔術は本当に便利だ、雇いたいくらいだよ」


「あー、なんとなく分かります、でもメグさんのこの万能性は帝国のバックアップあってこそですしー」


「それもそうか、それに彼女には幾ら積んでも靡かなそうだしな、我々が師を裏切らないように 彼女もまた裏切るまい」


「ですねー」


あったかなクッションを抱きしめながら冷えた体を温める、これが本当に旅か?これは本当に旅なのか?エリスの中の旅人魂が叫ぶが 今は無視する、…理由は言うまでもない


『わー!、メルクさーん!助けてくださーい!』


すると、そんな談笑を断ち切るように外からナリアさんの悲鳴が響く、御者たる彼からの救援だ、つまり


「どうした!、魔獣が出たか!」


「違いますー!、でっかいクマですー!、助けてくださいー!」


「熊!?そうか 熊も出るのか…、馬が食われては大変だ、行ってくる」


すると即座にメルクさんは手入れしていた銃を片手に馬車の外へ向かっていく、熊ならメルクさんで大丈夫だろう、いや熊も熊で恐ろしい存在だが 流石に猛獣にやられるような人じゃない


心配事があるならあの手の銃の音で馬がびっくりしないかくらいだな…


「ふむ…」


メルクさんが仕事に消えたのでエリスは再び話し相手を求めて馬橇の中を見回す、そういえばメグさんとアマルトさんの姿がないな、とはいえ馬橇の中は広い なんか奥にはどこに繋がってるか分からない扉もあるし、向こうにいるのかもしれない


「ん?ラグナ?」


するとふと、クッションも毛布も使わず冷たい床の上に座り壁にもたれるラグナの姿が目にとまる、彼はこの快適な空間をカケラも利用していないように見えるが…どうしたんだろう


「ラグナ?、どうしたんですか?そんなところで」


「ん?、ああ…エリス、いや あんまり快適だと緊張が途切れちゃいそうで」


たはは の笑うが、ラグナ 貴方が一番緊張感がなかったではないですか、と言いたいが 今のラグナの雰囲気は少し固い…、具体的に言うなればやや眉間に力が偏っているように見える、彼はああ言う顔をしている時 何かを考えている場合が多い


…あの顔は、学園にいるときはあまりしなかった…、そうだ 継承戦の時にしていた顔で…


「…ねぇねぇラグナ」


「はいはいなんです?」


「隣いいですか?」


「いいよ、エリスなら許可なんか取らなくてもな」


「では」


クッションを二つ抱え、お尻に敷いていたそれをラグナの隣に放り投げ、抱きしめていた方をラグナの膝の上に投げ、隣に座る


「…なんでクッション渡すのかな」


「それエリスが温めてたやつなので、使ってください、流石に外の冷気が来なくても寒いでしょ?そこだと、ラグナただでさえ寒さに弱いですから」


「…ごめん」


するとラグナはおずおずとクッションを抱きしめれば、あっという間に耳まで真っ赤になる、いや…そんな灼熱に温めたつもりはないのだが…


まぁいいや、それより聞きたいことがあるんだ


「ねぇラグナ」


「んー?」


「もしかして、メグさんの事 あんまり信用してません?」


「……いや、そんなことはないよ」


そうですかね、エリスはなんだかさっきから…と言うか具体的にはユピテルナの街についた頃からラグナの様子がおかしいことには気がついていましたよ?、まるで何かについてずっと考えているような


それはメグさんが道具を取り出す都度に色濃くなる、今この状況…メグさんがお膳立てした快適な空間にも、やや難色のようなものを示しているようにも思えるんだ


それはもしかして、メグさんと言う人間を信用しきれていないのではないか と思えるのだ、だってラグナとメグさんはまだ会って間もない、それは 信用には至るまい、けどエリスとしてはメグさんを疑って欲しくはないんだ、特には同じく友達たるラグナには


「なんだかさっきから難しい顔してますし」


「違うよ、メグさんはいい人だその能力の高さは信頼している、彼女の人の良さも十分理解しているから 信用出来ないなんてことは絶対にない」


「なら…」


ううむ、ラグナはきちんとメグさんを信用してくれている、ならなんでそんな顔をするんだろう…、ああ もしかして


「もしかして、思ってた冒険と違う…って思ってます?」


「え?」


「ラグナはもっとこう…険しい冒険とかワクワクするような艱難辛苦を求めてたんじゃないんですか?、この旅に…でも、メグさんのおかげでそれが台無しになったとか」


つまりはラグナも男の子だ、その辺に長い棒が落ちてたら披露し おっきい武器があったらワクワクするような男の子なんだ、それが冒険に憧れないわけがない 旅に憧れないわけがない


きっと、苦難ばかりの苦しい旅を想像してワクワクしていたに違いない、それをみんなと協力して打ち砕いていくのを想像していたに違いない…、けど それはメグさんの高い従事能力によって肩透かしを食らった


馬橇の旅だって、本当はもっと険しいもののはずなのに、今エリスはクッションに座って談笑すらしている、そんな状況を彼は好ましく思ってない


だから、そんな難しい顔をしてるんでしょう?


「いや別に…そんなことはないけど」


「へ…」


「俺だって戦士達の王で一軍を預かる将軍だ、行軍の険しさは知ってる、だから この手の長距離移動は可能な限り消耗が少ない方がいいと思ってるし、何より みんなに苦しんでほしい なんて思うわけないだろ?」


「た たしかに…」


そこで思い出すのは学園の課外試験の時のこと、遠くの山まで遠征に行くことになった時のラグナの姿だ、メルクさんやデティは思ってたのと違うとブー垂れたものの ラグナだけは文句の一つも言わず、効率的に動こうとするエリスに付き合ってくれた


それはラグナ自身が継承戦での馬車旅に慣れていたからだ、それは今回も変わらない


ラグナは天真爛漫で本能のまま動くタイプだが、こう言うところは意外にシビアでクレバーなんだ、冒険に憧れは持つもののそれはそれとして動けるタイプだ、楽しみにしてたとかそんなことで表情を歪める男ではなかった


エリスの勝手な思い違いか、恥ずかしい…


「じゃあなんで怖い顔してるんですか」


「え、怖い?俺の顔?」


「はい、ベオセルクさんみたいです…」


「そ…れは相当怖いな、悪い…けど 別に怒ってたりするわけじゃないんだ、ただな」


ううーんとラグナは一つ考え込むと…


「うん、俺さ 次の街でちょっと買い出し行ってくるわ」


「え?、でもメグさんに頼めばなんでも取り寄せてくれますよ」


「そこが怖いのさ…、そうなる事が」


「怖い?…」


ラグナの表情がグッと濃くなる、怖い?なんでも揃うのが怖い?、一体どういうことなんだろう、随分思わせぶりなことを言う…


何が怖いのか 何を恐れるのか、この状況に危惧するべき部分があるならエリスも知っておきたいと口を開いた瞬間


「おーい、お 二人いるな」


「ん?、アマルト?何してたんだよってかどこ行ってたんだ?」


すると奥の扉を開けて現れる腰にエプロンを巻いたアマルトさんの片手には一枚の皿が湯気を立ててかぐわしい匂いを漂わせているではないか、もしかしてそれ今作ったんですか?この馬橇の中で?


「いやな、さっきオライオンの食材を買ったからさ、ちょっと色々試してみたくて作ってみたんだけど、味見してくれるか?」


「作ってたってどこでだよ、ここ馬橇の中だろ?」


「ほらそこの扉、あれメグが時界門を作ってさ、屋敷の厨房と繋がってんのさ、そこでな」


「一旦帰ってたの!?」


「まぁまぁ、すぐに帰ってこれるわけだしさ、それよか 食え」


そう言いながらアマルトさんが座り込むラグナに対して差し出すのは鶏肉の塩茹でだ、普通こう言うのはソースか何かかけるものだが 何もかかっていないただの塩茹で、彼らしくもない一品だ


「…これだけ?」


「ああ、これだけ 好きだろ?肉」


「好きだけど、茹でちまったら味しないし…まぁ、トレーニング中はよく食ってるし 嫌いじゃないんだけどさ、アマルトがこういうのを作るのって意外だなぁ〜って、ソースとか作りそうだし」


「ソースはまだ出来てねぇの、それよりほら 早く」


なにやらアマルトさんはワクワクしてウズウズしているように見える、…ああ、そうか そう言えばその食材は…


「んじゃあありがたく」


するとラグナはアマルトさんに急かされるように渡されたフォークで串刺しにしてパクリと一口で塩茹でを食べてしまう


モグモグと咀嚼しモチャモチャと粘土のように嚙み潰し、僅かな味を探すように目を閉じて…おしまいにゴクリとそれを飲み込むと…


「…これ、なんかしたか?」


「んふふ、なんかって?」


「塩茹での癖にえらく美味かった、味が抜けてないし まろやかってかコクってか…俺は味を言語化するのが上手くないからなんて言ったらいいか分からないけど、少なくとも俺が今まで食ってきた鶏むねの塩茹でとは比較にならねぇ美味さだ、アマルトが何かしたからこんなに美味いんだろ?」


「嬉しいねぇ、俺をそこまで信頼してくれるってのは…でも違う、違うんだなぁ〜これが、なーんにもしてないんだわ」


「ん?、そうなの?」


な?とアマルトさんがこちらにウインクしてくる、そうだ この鶏胸肉 というかオライオンの食材は『特別』なのだ、エリス達もそれを知ったのはついさっき


食材を軽く買いに出かけた時のことだ……



───────────────────────────


それはネレイドさんと教会で出会う前、先に食材を軽く買いたいと言い出したアマルトさんにより ユピテルナの商店通りにフラリと足を踏み入れた時のことだ


「お、やってんねー」


「ええ、やはりこう言う商店の通りは何処も活気があっていいですね」


通りかがった商店通りの左右には様々な店が軒を連ねている、野菜を売っていたり 魚を売っていたり、少ないが肉も売っている場所もある、他にも祭具を売ってたり信徒服の仕立をしていたりするような店も見えるな、あれらはこの国特有のものと言えるだろう


売っているのは皆信徒、買っているのも皆信徒、テシュタル教特有の目を伏せたままやや顔を俯かせ 指を交差させるように合わせての祈りの挨拶をしながら談笑する様はなんとも神聖な空気を感じる


「祭具も売っていますね、エリス様 私あの十字架欲しいです」


「おもちゃじゃないんですから…、それよりアマルトさん まずなにを買います?」


「そりゃ野菜よ、野菜は食材のお母さんだからな、肉になる牛や豚だって草食って育つわけだしな、まず野菜がダメなら肉もダメになる その地域の野菜を見れば食材のレベルが分かるってもんさ」


へへへ となにやら嬉しそうに野菜屋を探すアマルトさんの姿は、何処と無く料理人に見える、まぁ彼は料理人ではなく 飽くまで趣味で料理を嗜んでいるだけだが、その腕前は世界一の料理人タリアテッレさんによって作られ帝国の給仕長さえ唸らせる程なんだ、もう立派にプロだよな


「お、あったぜ…って 思ってたより品揃えがいいな」


チラリと横に見える野菜屋の店先を見て アマルトさんは眉をあげる、想像していた以上に品揃えがいいんだ


いやだってこの雪だよ?この冷気だよ?、草木一本生えない絶界で よくもまぁこれだけの作物を育てられたもんだと舌を巻くほどだ


「ああ、アマルト様はカストリア出身だから知らないのですね?、このポルデュークでもきちんと作物は育つのですよ、魔女様の加護があれば 本来ならば育たない作物もご覧の通り豊作でございます」


「へぇ、便利だなぁ魔女って、まぁこれだけの大国だ まず食料供給の問題をなんとかするのは定石か」


その通るだ、エトワールも雪国だが瑞々しい果物が育つくらいには豊作な国、それもこれも魔女様の加護のおかげなんだ、カストリアではあんまりその実感が湧かないかもだが この厳しい環境ではそれが如実に出る


ポルデュークで魔女様の加護無しに生きていくのは非常に難しい、故にこの寒さ漂うオライオンの近辺には非魔女国家はほとんど無い、全て滅びるか 滅亡寸前になって帝国に擦り寄って消えたかのどちらかなんだ


まぁそれでもちらほら非魔女国家は存在しているし、そこに生きている人たちも細々ながらも力強く生きてるだけどね、今は関係ない話だが


「よっ、野菜屋のおっちゃん 儲かってるかい?」


「ちょっとアマルトさん!」


「ああ、えっと こうだったか?」


いきなりフレンドリーに店主に話しかけるアマルトさんの尻をべしりと叩いて手本を見せる、この国での挨拶は笑顔を向けて片手をあげるのではなく やや俯いて指を顔の前で交差させる祈りの挨拶が主流なんだから と、アマルトさんと共にオライオン式の挨拶を模倣すると、店主は


「ああ、構いませんよ旅のお方、それは飽くまでテシュタル教の挨拶 この国の挨拶の仕方というわけではないので、無理に行う必要はありませんよ、


ははは と綺麗に切りそろえられた口元の髭を揺らし清々しい笑顔で応対してくれる店主、凄いな この国の人達はみんなこんな風に優しいのか?、それもこれもテシュタル様の教えか…


「そうか?、なら野菜見てもいいかな」


「どうぞ、どれも大地の加護をふんだんに受け取った恵みの作物です、旅の方々にも神の施しがあることでしょう」


「いいねぇ、…うーん これは…」


ふむふむと野菜を前に考え込む姿勢を見せるアマルトさんはなにやら怪訝そうな顔をしているように見える


そう言えば、彼と同じくタリアテッレさんから教えを受けたアビゲイルさんは食材を吟味する慧眼を持っていた、というのもそもそもタリアテッレさん自身 食材にこだわりを持った方だったからだ


一流の料理は一流の食材から、どんな食材も美味しくできる自信はあるけど 真に美味しいものを作ろうと思えば 食材の育った土から吟味する、そんな人なんだ タリアテッレさんは


その教えを受けた彼もまた、食材を見る目はあるということ…


「どれもいい代物だな、…見事だ、俺の国じゃあこんないい野菜手にはいらねぇな、これは」


わりかし本気の顔で野菜を眺めて唸る、エリスは彼ほど食材を見る目はないけど、それでも分かる ここに置いてある野菜はどれも素晴らしい物だと


色艶も良い、大きくそれでいて身が詰まっている、一級品とはまさにこのことだ


「よかったら お一つ食べてみますか?、さぁどうぞ」


「え?、いいんですか?」


「構いませんよ、私とて商売人です、商品を褒められれば気もよくなるので」


そう言いながら小さく切り分けたキャロットをエリス達に一切れづつ渡して来る、え?生のまま?いやまぁ生のまま食べられますけど…、なんてエリスが躊躇する間もなくアマルトさんは一口 口の中に放り込み、咀嚼し始め


「んー…おっ!、これは美味い!ってか味濃っ!?なにをどう育てりゃこうなるんだ…、まだ何にもしてねぇ生のままだってのに…」


「え?そんなに美味しいんですか?」


「いいから食えよ、これは言葉で言うより食ったほうが早い」


「それもそうですね」


なら一口、と切り分けられたキャロットを口に運び 口の中で噛み潰す、うん シャキシャキしてますね、生なだけあってやや固いですが それ故に噛む都度に味が染みわたる、大地の中で蓄えた栄養が美味の二文字となって口に溢れ鼻より抜ける


…甘い、第一の感想はそれだ、まるで砂糖菓子を食べだかのような甘さ、野菜特有の独特の甘さ それが口いっぱいに広がるのだ、がしかし 異様なのはその濃度、メチャクチャ濃いんだ


後味がどうとか言う暇もない、口の端まで甘みが広がり自然と美味しいと口走るような濃厚な味わい


人参は熱で炒めると甘みを増加させる性質があるが、これは生…火を通していないのだ、なのにそこら辺の人参を焼いたそれよりも尚甘い、完成された味わいだ


「美味しいですね、これ…こんな味の濃い人参を食べたのエリス初めてですよ」


「人参だけではありませんよ、他の野菜も この作物を食べて育った牛や豚も、オライオンの食材は全部美味しいですからね」


「…こりゃいい、これで一品作れそうだな…、どうやって料理するかな…」


良いおもちゃを見つけた子供のようにそれらの食材を見てニタニタ微笑む彼の頭の中に 一体幾つの品目が浮かんでいることだろうか、いやエリスも思いますよ?これだけいい食材があればなんだって最高の料理になる


ここの店主は別にこの作物を特別なものとして扱っていないと言うことは、これはこの国では普通なことなのだろう、だとするとオライオンの食材のレベルがみんなこのレベルということになる…


なんてレベルの高い食材を作る国なんだ、オライオン人の力の源はこれかな?


「アマルト様、私はこの人参を使ってグラッセを作ってみたいです」


「お、いいねぇ ってするとバターが必要だな、この国のレベルならバターも期待できそうだ、買いに行こう」


とアマルトさんがくるりと反転してグラッセのためバターを買いに行こうと足を踏み出した瞬間


「ありませんよ、この国にバターは」


店主の無情な一言に足を取られアマルトさんがひっくり返るようにすっ転び


「ないの!?バター!?一個も!?」


「はい、バターは食材を加工するためのものでしょう?、ならテシュタル教徒のこの国にはありませんよ」


「なんで!?」


「ああ…」


そうか、そうだったな この国はテシュタル教徒の国…だとするとバターなんか置いてないよな


テシュタル様の教えの中にはこんなものがある 『食材はなるべく加工せず食べることが美徳とされる』、大地や動植物の恵みをそのまま味わい 素材本来の味を楽しむ事がこの国にとっては美徳なんだ


以前ホーラックで出会ったテシュタル教徒のシスターアリアさんもまたその教義に従いとても質素な食事を取っていた、それをこの国は全域で行なっている


故に当然 加工の一手間たる調味料なんか使わないし 使わないから置いてないどころか作ってもいない、そう言う国なのだ ここは


「アマルトさん、テシュタル教の教えには食材を加工しない旨に関する記述があります、この国はそれを守って 調味料に関する物を製造していないのでしょう」


「え!?ってことは、無いのか!?胡椒も砂糖も!?塩は!?」


「塩はかろうじてあるかなぁ、それ以外はないねぇ」


「えぇ…どんな国だよ…、こんないい食材が揃ってりゃ一流の料理が作れるのに…、それを お前…ほとんど加工せずに食うってのか、失礼じゃないか それは…」


「まぁ、テシュタル様の教えだからね、その代わり我が国の食材は加工しなくても美味しいだろう?」


「そりゃそうだが…、あ!トマトは!トマトはあるか!」


「トマトかぁ、うーん、 比較的温暖なアジメク側では出回ってると聞いたことはあるけど…」


「あるんだな!あるんだな!?、なら……よし!」


いいんだ…、トマト一つでそんなに変わるとは思えないけど…、ブツブツと呟きながら何かをメモしているアマルトさんを尻目にエリスは…


「それじゃあお野菜いくつか頂けますか?」


────────────────────────


「へぇ、じゃあこの国に調味料がないから味付けは出来ないんだな、なんか勿体無い こんなに美味いのに」


モチャモチャと追加の鶏むねを食べながらこの国のお台所事情を聞いて興味があるんだかないんだかって顔で腕を枕に壁にもたれかかるラグナは言う、勿体無いと


まぁ普通の感覚ならそう思うよね、エリスだってご飯は美味しい方がいいし 味は豊かな方がいい、その為の調味料だし その為にレシピは存在するわけだし


「そうだな、けど 調味料が無いのはこの国だけさ、メグの屋敷には調味料が一式揃ってるからな、味付けはそこで出来る」


「世界各地から集めた珠玉の調味料セットでございます、この国の食材にも負けないかと」


「つまり今日の晩飯は期待出来るってことか?」


「ええ、お任せを 存分に作ります、アマルト様が」


「俺かよ!いや 俺が作るけどさ…、いい食材もあるし なに作っても美味くなりそうだし、ふふふ なに作ろうかなぁ」


ラグナに鶏胸を食べさせるだけ食べさせたら満足したのか、再びアマルトさんは満面の笑みでメグさんの作った屋敷への扉潜って晩御飯の仕立てに戻っていく、なんというか…


「楽しそうだな、アマルト…」


「ええ、あんなにニヤニヤしてるアマルトさんは久し振りに見ましたよ」


すっごく楽しそうだ、余程いい食材を使って料理をするのが楽しいんだろう、自分は料理のプロじゃ無いし 趣味で作ってるとはいえ、彼は心底料理をするのが楽しいようだな


「アマルト様は根が真面目なので、ああやって誰かの為に料理を作れるのが楽しいのでしょう」


「お、メグも分かってきたな、そうだよ それがアマルトの可愛いとこだよ」


「確かに、アマルト様は可愛いですね」


へへへと笑い合うラグナとメグさん見て、なんとなく感じるのは二人の友情だ、ラグナはやはりメグさんを警戒しているわけじゃ無いんだ、けど…だとしたら あの顔は一体どういうことなんだ?


「ふぅ、寒かった」


バッ!と馬橇の仕切りが開かれれば外から凄まじい冷気が流れて込んできて 思わず寒さに震える、見れば 外に出たという熊を退治し終えたメルクさんがパンパンと手についた雪を払って戻ってくる、流石はメルクさん 熊相手に傷一つないとは


「おかえりなさい、メルクさん 熊はどうなりました?」


「追い払ったよ、人を襲うしか能のない魔獣でないなら殺す意義がないからな」


「えぇー、熊の肉って美味いって聞くんだけどなぁー」


「ならお前が今から行って捕まえてこい」


「やだぁ、寒いもん」


ラグナは本当に寒いのが苦手みたいですね、外にいる時は一番震えてましたからね、アマルトさんなんか震えるラグナを指差して『アイツに牛乳括りつけたらバター出来そうだな』とか言ってたし…


「ん、そう言えば外に面白いものが見えたぞ?」


「え?、毛のない熊とか?」


「そんな愉快なものではないが、気になるか?、なら外を見てみろ」


そんなメルクさんに導かれるようにエリス達はみんな揃って仕切りからニュッと顔だけ出して外を見る、うぅ 顔だけ出してるだけなのに寒ぃ〜


「えっ…、何してるんですか皆さん」


そして顔だけ出すエリス達を見てやや目をひきつらせるナリアさんを放ってエリス達が注目するのは メルクさんの言う『面白いもの』だ、最初は何のことか分からなかったが…、直ぐにそれは目に入った


「あれを見ろ、かなり遠方だが遠視の魔眼を使えば見えるだろう?」


「どれどれ…?」


メルクさんの指示に従うように遠視の魔眼を用いる、メグさんが使えるのは知ってたけど ラグナもメルクさんも使えるんだ…、いや 使えるようになったのか


まぁいい、それより注目するのはメルクさんの指差す先、エリス達の進路からはかなり外れた地点に見える物、流れる雪でやや見え辛いが 確かに何か見えるぞ…あれは


「石の塔か?…」


ラグナが真っ先に答えたおかげで、ボヤけた輪郭がはっきりと捕らえられた あれは塔だ、それもかなり巨大だ 横幅だけで街一つ分あるんじゃないかってくらいの塔が近くの山から頭を出している…


なんてデカい塔なんだ…、ん?あの塔がある方向って


「あれはプルトンディース大監獄だ、デルセクトの大監獄を作る際図面を見せてもらったから間違いない」


「あれが…」


確かに方角的にも間違いない、あれはプルトンデュース大監獄だ…、大監獄なんていうだけあって大っきいなぁ…


「え?、何処ですか?僕見えませんよ」


「あちらの方に大きな石の塔があるんです、山のように大きいですよ」


「え!?プルトンデュースって…あの一回入ったら洗脳されるまで二度と出てこられないっていう…」


「そうです、見た目からして大きいですね…」


「ああ、しかもあれは近くにも巨大な空間を持っている、見かけ以上に凄まじい広さだぞ」


一体何人を収容するつもりで作ったんだ、あれでしかも地下にまで空間があるなんて…、絶対入りたくないな


「もし俺達が失敗したら、まとめてあそこ行きだな」


「縁起でもないこと言わないでくださいよラグナ」


「悪い悪い、でも…失敗しないからいいだろ?」


この人は…全く、すごい自信なんですから、まぁ その自信故に彼を信じられるのですがね…ん?


「あれ?、皆さんあっちにも何か見えますよ…、あれは 街ですかね」


「ああ、街だな 森を前にした最後の街 ガメイラデアだ、彼処でズュギア大森林を超える為の支度を整えるぞ」


エリス達の最初の目的地、第一関門ズュギア大森林を手前に持つ唯一の街 ガメイラデアの姿が見えてくる、取り上げず彼処で一旦足並みを揃えて エリス達はズュギア大森林を踏破する予定なのだ


「あ 彼処には神聖軍はいないんですよね」


「はい、ご安心をナリア様、彼処は人口も少なく聖都エノシガリオスのルートからも大きく外れているので神聖軍は凱旋には立ち寄らないでしょう、プルトンディースなどの主要な軍事施設からも外れているので 余程のヘマをこかない限りは大丈夫かと」


神聖軍は森林を迂回するように街を辿る、態々森林手前の街に来る予定はないだろうとの事、森林を超えて その先にある険しい雪原を超えれば最たる軍事施設がある聖都を目前にする為 多分、彼処が最初にして最後の一息つけるスポットになるだろう


取り上げず、彼処で不足がないようにしておかなくては、そんな決意と共に 馬橇は進んでいく


……………………………………………………



ズュギア大森林、それはこの国随一の大山たるネブタ大山から伸びる大国随一の大森林…、その広さは最早森と形容するよりも 木と自然の国と形容する方が正しいかもしれないほどに広い


そのあまりの広大さは人類を寄せ付けず、内部には大量の魔獣が巣を作っており絶大な危険を秘めている為 構造の正確な把握が出来ていないのが実情だ、一応横断することは出来るが それでも下手に歩き回ればあっという間に遭難してしまうのが現実、遊び半分で抜けられるようなところではない


故にアジメクの星惑いの森同様 未だ謎多き森の一つに数えられている、まさに神秘の森


そんな森を目の前にするのが恵森街ガメイラデアだ、森の木々を恵みとして受け取り その恩恵のままに大きくなった街である、ここもまた例に漏れずテシュタル様を崇めており 毎日テシュタル様が眠っているとされるネブタ大山の方角を見て祈っている


小さ過ぎず されど決して大きくないガメイラデア、質素に堅実に神の教えを守り続け細々と 身を削るような日々を過ごす敬虔なる街、因みにラグビーの強豪を排出する街らしいので普通に街人はみんな超ゴツいです、信徒の街って聞いて油断すると面喰らいます


まぁ、森の恵みを受け取る街なんで 街の男はみんな木こり 街の女はみんな木材加工してる人達なんで、普通にフィジカル面では他国の人間なんかじゃ比にならないんですよね


そんな街へ辿り着く頃にエリス達が既に夜になっていました、朝一に出掛けて ついたのが夜、結構な速さで移動してたんですが まぁ街と街の間が長いこと…、流石に夜になってからあれこれ動くのは危ういので、今日は一旦お休みして 行動は明日からということでエリス達はみんな街の近郊に馬橇を止めて そこで一夜を明かしました


と言ってもまぁこれが呑気なもんで、メグさんが向こうからテーブルやらなんやらを持ってきて馬橇の中で晩餐です


アマルトさんが腕によりをかけて作った料理、原材料はどれもオライオン原産のもの、そのどれもがレベルが高く ただでさえ凄まじいアマルトさんの料理のテクニックと、彼謹製のソースや独自の配合を行った調味料が合わさりもう神の祝福の如き味わいでしたよ


「まぁ、アマルト様 やはりお料理が上手でございますね、このメグ 少し嫉妬してしてしまいます」


丸いテーブルに六人でアマルトさんの作った料理を摘んでいると メグさんが口元を押さえて驚愕する、彼の料理はアガスティヤでも味わったが 見知らぬ土地の食材を一発でここまでのものに仕上げる彼の腕前は 本当に凄いんだ


「確かに、アマルト また腕を上げたな」


「本当です!、僕こんな美味しいの食べたことありませんよ!」


「よせやい褒めるなよ、いややっぱもっと褒めろ、…つっても 食材の力が強いってのはあるよな、…本当にすげぇ食材だ、コイツらを御するのは大変だが まぁ俺の腕前にかかればこんなもんだな」


彼の作った人参のグラッセを摘みながらエリスは染み入るように感じる、確かにこれを使いこなすのは難しいだろう


食材がいいから誰が作っても美味しくなるかといえば…なる、それはなる、だが一級品に仕上げようと思うと凄まじいくらいの努力がいる


なんせこの食材、物がよすぎるが故に主張が激しいのだ、下手な味付けじゃむしろ逆に食材に押し負ける、かといって濃くし過ぎると折角の味が死ぬ、…これはそんな絶妙なラインを初見で見極め 食材の味を引き立てつつ押し上げる、そんなアドリブで仕上げたんだろう、エリスには出来ない芸当だ


「……うぅ、美味しいです アマルトさん」


「エリス?お前は美味いもん食ったら泣く癖どうにかしろ?、なんか罪悪感がすげぇ」


「ずびばぜん…、涙があぶれでぎで」


「怖…」


うぅ、涙で鼻が詰まって折角の味が味わえない、でも感動してしまう、こんなに美味しいものがあるなんて こんなに美味しいものを作れるなんて、凄いなぁアマルトさんは


「いやぁ本当に美味いよアマルト!、それにこの肉 …大蒜入ってるよな!」


「おう、この国には大蒜は無かったから帝国経由でアルクカースのを使ったんだ、それにメルク お前の味付けは薄味にしてあるし、エリスのはまぁ 鮮麗に作った、その方がお前ら喜ぶと思ってな」


「何?我々の好みを覚えていたのか?、学園生活はもう一年も前だというのにか?」


「アマルトさんエリス達のことめっちゃ好きですね」


あの生活は…つまり、エリス達が学園にてアマルトさんと共同生活を送ったのは一年前、彼と生活していた時間よりも長い、だというのにそれをそれぞれ覚えてるなんて、アマルトさんは本当にエリス達のことが好きだなぁ


「うっせぇ!折角作るなら喜ぶ方がいいと思って一生懸命思い出したの!、幸い腕が覚えてたからな…、でも悪い ナリアとメグのは好みが分からなかったから普通に作っちまった」


「そんな!、いいんですよ!むしろこれ凄く美味しいです!」


「はい、今食べているものが好物になりそうです」


ナリアさんもメグさんも まだ出会って間もない為 好みの方は把握していないというのだ、とはいうがエリスも別に把握してない、特にメグさんに関しては謎が多過ぎる、寧ろこうやってメグさんが食事する場面なんてエリス一度か二度くらいしか見たことないよ


メグさんの好物ってなんなんだろう…


「折角だ、言えここで 好きなもん」


「えぇ!?、いいんですか?」


「そんな…メイドが好物なんて」


「そういうのいいから早く言え、どうせこれからもお前らの飯は作ることになりそうなんだし、覚えておいた方がいい」


そう言いながらポッケから取り出したメモ帳片手に好物を伺うアマルトさんを前に、見つめ合う二人…すると


「ぼ 僕は…甘いのが好きです、それ以外だと 白身の魚が…」


「ん、甘いのだな あのチビ助と同じか…、で?メグは?」


「私は辛いものが好きです、それもとびきりに辛いやつ、激辛とでも言いましょうか」


「へぇ意外…ってわけでもねぇな、お前そういう酔狂そうなの好きっぽいもんな、でもお前が激辛食ってるの見たことねぇけど」


「そりゃ…、メイドが人様の目の前で好物なんて食べられませんよ、なのでいつも影で唐辛子齧ってます」


「やめろ健康に悪い、次からそういうのも食卓に並べるから、安心しな」


メグさんって辛いの好きなんだ、アマルトさんのいう通り あんまり意外ではない、メグさんそういうの好きそうと言えば好きそうだ、けど…そっか 我慢してたのか、そりゃ知らないわけだ、なんせ彼女と過ごした半年間 彼女は任務の真っ最中だったんだ、そんな中で好物なんか食べないか…


「よっし、んじゃあ食い終わったら各自 自分で皿は洗えよ、寝床は…」


「それでしたら我が屋敷の寝床をお使いください、こちらは寒うございますので」


「寝るのはアガスティヤで…か、至れり尽くせりだな…」


メグさんが用意したあの扉はそのままアガスティヤにあるメグさんの屋敷に繋がっている、彼処は暖かく かつ静かだ、ふかふかのベッドの上で夜も安心して眠れるとは、メグさんが居るだけで旅が快適になり過ぎるな


「では遠慮なく使わせてもらいますね」


「ええ、お願いします、因みに男性陣は別部屋ですよ」


「ん、ああ 俺はいいよ」


するとラグナは肉を食べながら メグさんの誘いを断るラグナ、やはりだ…やはりラグナの顔がなんだか難しい顔をしている、なんだろうこの…分からないけど、この感覚


「…どうしてで、ございますか」


「いや別にメグさんを信用してないとかじゃないし 寝床を貸してもらえるのは凄くありがたい、けど やっぱり馬車に誰も残らないのはちょっと不安かな…、いつ神聖軍が現れるか分からないんだ、朝起きて戻ってみたら包囲されてた ってのもやだしな」


「それは…確かにそうでございますね」


ラグナの言うことには一理ある、いくら時界門ですぐに戻れても エリスたちが寝るのはアガスティヤ、別の国だ 物理的に距離があり過ぎる、故に外で誰かが動いていても エリス達はまるで気がつけない


となると、やはり何があるか分からないこの場を空けるのは危険か、一応ここ 敵地だしね


「では、ラグナ様が残るなら私が…」


「いえ、エリスが残ります、ラグナ 交代で見張りをしましょう」


「え…でも」


「メグさんは今日一日働いてたんですから、夜はしっかり寝てください」


今日一日メグさんは働き詰めだ、時に御者として馬を動かし、時としてアガスティヤとここを行ったり来たりして物を運搬し、それ以外の時はエリス達のサポートをして、一人だけ明らかにオーバーワーク


メグさんはエリス達のメイドとして来ているのではなく、立派に一人の戦力としてきているのだ、一人だけに疲労や苦労は押し付けられない、こう言う時こそ役割分担しないとね


「…分かりました、では 申し訳ありません」


「ええ、メグさんはここではメイドじゃないですから、自己犠牲は要らないですよ」


「はい、痛み入ります」


「そう言うわけです、じゃあラグナ 一緒に寝ましょうか」


ここにめいいっぱいお布団やシーツを持ってきて、二人で寒くないようにして寝る、勿論片方は見張りとして起きてなきゃだけどね、と伝えるとラグナは…


「ん…ん?、あ!そうなるのか!?、エリスと二人でか!?」


ボッ!とみるみるうちに顔が真っ赤になる、な 何を怒っているのだろうか、いや怒ってはないか…じゃあなんで赤くなるんだろう、エリスと一緒は…嫌なのかな


「ほほーう、そうかそうか…ふふ ラブコメの気配だな」


「違うって!」


「あそっか!二人がここにいるなら俺もと思ったが、邪魔になるなぁ!がんばれよーラグナ〜」


「何を!」


「はい!僕達消えますので!ファイトです!ラグナさん!」


「だから何を!?」


なんかみんなにからかわれてポンポン肩を叩かれ回るラグナを見て、ホッとする…嫌われているわけではなさそうですね、なんて…彼に好かれているか嫌われているかで一喜一憂するなんて …


ともあれ、みんなでお皿片付けて 明日は早いのでみんな早々に寝床についた、エリス達のためにアマルトさんは体を温めるスープを 保温を行える魔装筒に入れて持ってきてくれたり、メルクさんが大量に暖かいお布団持ってきてくれたり、ナリアさんがそこら中に暖房陣を書いてくれたりで 至れり尽くせりの環境を整え、エリス達は二人で馬車に残り 眠ることになった




メグさんの持ち寄ったカンテラも光を失い、騒々しかった馬橇の中には夜の帳が流れ込み 室内を暗く染める…


外には雪の吹き付ける音だけが響き 馬橇がギシギシ軋む、外にはブレイクエクウス達が居るが 彼らはそもそもこの環境に適応した生命体、その分厚い皮脂と筋肉 そして毛皮で一切の熱を通さないらしい、一応メグさんが寝床を整えるために簡易的な風除けを作ってくれていたようなので彼らの心配はするまい


「…………」


「………………」


そんな闇の中エリスはラグナと共に二人で一つの部屋で静寂を保っている、エリスもラグナも今日は一日御者をして回った身だ、疲れはあるが ラグナ曰くこんなもん疲労にもならないとのことで 先にエリスに休むように言ってくれたんだが…


(…眠れない)


寝れない、寝れるわけない そこにラグナがいて、ドキドキで眠れないですよ…


チラリと薄目で見ればラグナは毛布を羽織ったまま座って馬橇の入り口を見つめており、その感覚は外に向けられていることがわかる


彼は真面目だな…、ああ でも早く寝ないと…、寝れそうにないけど、ラグナと二人で といった時には気がつかなかった、こんなにも意識してしまうことを


「……寝れないのか?エリス」


「えっ…!」


ラグナの問いかけに思わず目を開いてしまえば、気がつく 入り口を見ていたラグナの顔が肩越しにこちらに向けられていることに


「す すみません…、寝ないとって思うんですけど」


「いやいいさ、異性と一緒に寝るなんて エリスも経験ないだろうしさ、まぁ俺もないけど」


ナリアさんを異性としてみるならばあるけど…


でもそう勘違いしてくれるならいい、うん …いい


「…悪いな、エリス」


「何がですか…?」


「俺、変にピリピリし過ぎかな」


ふと、ラグナはこちらから目を外しながら言うのだ、ピリピリしてると、うん ピリピリしてるな、妙な緊張具合だ…この場ではなくこの旅での話だが


「そうですね…、変に緊張してるような気がします…」


「…するさそりゃ、みんなの前じゃ言わないけど 不安なんだぜ、俺」


「不安?ラグナがですか?…それは珍しいですね、どんな敵を前にしてもビビらない貴方が…オライオンを前に不安になるなんて」


布を擦れさせながら体を起こす、だって彼らしくない、彼はどんなに強い奴が相手でもビビることなく向かっていける、たとえ相手が世界最強でもだ…、そんな彼が不安になるなんて…


「別にオライオンに関しちゃなんとも思ってない、やり合うことになるならやるだけさ」


「あら…」


オライオンではなかったか、…なら


「この一件の解決法に関して…さ」


「解決法…って言うと」


「使うんだろ?識確魔術」


そこか、…まぁ そうだよなぁ、だってラグナはエリスが識確魔術を使うこと自体には反対ではない、だが


「聞いた話じゃ使う度に三日も寝込んでるみたいじゃないか、…確実にエリスの体に負荷がかかってるんだろ?」


「ええ…まぁ」


「そんな方法に頼らないとダメな事、それ以外の方法を何も用意出来ない自分の無力さと愚かさ、…もし 次使ったらエリスが二度と目覚めないかもしれない、そう思うとな」


「そんな事ありませんよ、平気ですから…」


「そうは言うけどな、俺はエリスを守る為に強くなったんだ 強くなりたかったんだ、なのに ここ大一番で最大の負荷をエリスに押し付けて、平気な顔なんかしてられねぇよ」


……そっか、こんなこと言ったら彼は怒るかもしれないが、エリスは嬉しいんだ


だってエリスという友達を彼が大切にしてくれているってことの現れだから、…彼には心配ばかりかけるけどさ


「それでピリピリしてるんですか?」


「まぁ…それもある、けど もう一つのは、あれだな 仕事柄って奴かな」


それがメグさんに関することか、別に彼はメグさんを嫌ってるわけでも疑ってるわけでもない、けど どうにもメグさんを頼る事を嫌がってる節がある、まさか帝国とアルクカースの確執故とか言わないよな…


まぁ、そこは彼を信じよう いつか解決してくれる事といつかエリスに打ち明けてくれる事を…


「…この旅の果てに 世界最悪の存在との戦いが待っていて、その末にエリスは識確魔術を使う、守りたい奴を無茶させるために俺は背中押してんだよなぁって思うとな…、悪い 変なこと言って」


でもそこまでエリスの事を気にしてくれるとは、…有難い 有難いけれど


「ラグナ?…」


「ん?、え エリス?」


手を添える、ラグナの手に エリスの手を、エリスの手には彼がコルスコルピでくれた手袋が、慌てて振り向く彼の体に合わせて揺れるのはエリスがコルスコルピであげた赤いマフラーが…、それ大切にしてくれているんですね


「一つ、言っておきたい事があります」


「言っておきたい…事?」


「はい、今後の旅に関する…大切な話です」


エリスは今から酷な事を言う、彼の性分的にはなんとも受け入れ難いものだろうが、同時に彼の心を想うとやはり言わなくてはいけないと想う事、エリスは…彼の



ゴクリと固唾を呑むラグナに向けて、エリスはそれを伝える


彼は最初怒ったような顔をしながら、そのまま流れるように申し訳なさそうな表情に移りー最後には決心したように頷いてくれた


ありがとうございます、ラグナ、引き受けてくれて…、貴方に任せておけば エリスとしては安心出来ますから





そうして、二人だけの夜が、だんだんと明けていく、寝れたか…とは聞かないでほしい


………………………………………………………………


「なぁー、本当に行くのかよー」


朝、あれだけ冷え込んでいた大地は太陽の光によって暖められ まぁ比較的マシになり、きらめく陽光に照らされパウダースノーがチラチラ輝く中 馬橇の外に出るラグナを引き止めるようにアマルトさんが寝ぼけて頭を擦り口を開く


そんな彼の言葉にラグナは振り向き


「ああ、やっぱメグが食材を確保してくれるって言っても、やっぱり何でもかんでも用意してもらうのは悪いしさ」


昨日言ってた買い物に行く と言う奴をする為にラグナは今日 朝一番でガメイラデアへと出かけるらしい、そんな彼の背後には メルクさんやナリアさんも追従する


「まぁ、我々もオライオンの空気を知っておかねばならんしな、丁度いい 私もラグナについていく、何か買うなら財布役が必要だろうしな」


「あ、僕もいいですか?、もし森に行くなら必要そうなものがここに売ってるかもだし」


彼らもまたラグナと同じように買い物に行くようだ、まぁナリアさんとメルクさんはいい加減外出したいって気持ちがありそうだけど


「必要なものがあれば私が用意しますのに…と、言いたいところですが 馬橇を用意出来なかった手前強くは言えませんね、では皆様のお帰りをお待ちしております」


「はい、朝も寒いので 冷える前に買ってきてくださいね」


「そーそー、今日中に森に入りたいんだからさ、まあ 帰ってきたときのために、あったかいもんでも作っておくよ」


そんな三人を見送るのはエリス達料理出来る勢もとい昨日外出した面々だ、まだ食料はあるし それで昼飯でも作って待っておくと言うのだ


「ありがとよ、じゃあなるべく早めに済ませてくるから 待っててくれ」


「はい、ラグナ ではまた後ほど」


とエリスが軽く手を振れば、ラグナはギョッとしたように表情を硬くする、…昨日のこと気にしてるのかな…


一応昨日、エリスの意見を彼に伝えた後、彼からも彼の真意を聞いた、メグさんを相手に表情を難しくしていた その心を


まぁ彼らしい話だった、というか むしろ正しいとも言える理由で彼はメグさんを見て表情を硬くしていたんだ、その為に今日買い物に行く というのも分かる、この外出はこの旅に必要なものだ


あと思うところがあるなら、それをとっととみんなに打ち明ければいいのにと思う、別にみんなもラグナの事を悪く思ったりはすまいよ


そんな風に思ってる間にラグナ達は手を振りながら一旦街の方へと向かう、…よし、とりあえずラグナ達が戻ってくるまでに旅の支度を整えておかないとな


と決意を固めると…


「では私は旅に必要な物品を今のうちにアガスティヤから取り寄せて…」


そう、メグさんが時界門をその場で開けようとしたその時だった……


「ッ……!?」


「メグさん!?」


突如、フラリとメグさんの体がその場で揺らいだ、まるで体から力が抜けてしまったかのようひ 糸の切れた人形のように


倒れそうになるその体をエリスが支えても、礼の一つも言えず彼女は下を眺めている、どうしたんだ らしくもない…


「どうしたました?メグさん」


「………………」


「メグさん?」


「なんでも、ありません …すみません、少々はしゃぎ過ぎたようでございます」


ありがとう とエリスの手から離れる彼女はまたすぐいつものような涼しい笑顔を向けてくるんだ、どうしたんだろう 急にバランスを崩すなんて、はしゃぎ過ぎたと言えばそれはそうだが…


もしかしメグさん…無茶してないかな



「それよりエリス様、昨日何かありましたか?」


と…その言葉にエリスの思考は叩き斬られる、なんだって?


「そうそう、男と同衾したんだしさ」


「ちょっ!何言ってんですが二人とも!」


ラグナがいなくなるや否や二人してエリスの肩に寄りかかりどうなんだと聞いてくる、昨日何かあったのかと、しかも同衾って…


「何もありませんよ、何かあったらみんなに伝えてますし」


「そうじゃないよ、ほら 男と女の口に出せないされど出すもの出す的な…ぅげっふぅっ!?」


「次そんな事言ったら強めに殴りますからねアマルトさん」


「も…もう既に結構強いグーが飛んできたんだが…」


下品な空気を感じてグーで彼の腹をドツきあげ、悶絶するアマルトさんを置いてエリスは馬橇の中へと戻る、全く そんなバカな話があるわけないじゃないですが全く、もう 本当にアマルトさんは全く!


「やらかしましたねアマルトさん」


「ああ…盛大に、謝っとかないとな」


そうして エリス達は馬車待機組と街へと外出組へと、一旦別れるのであった…





……がしかし、それは、唐突に引き起こされた、一切の前触れ無く 物事は、急速にうごきだしたんだ




ラグナ達が出かけてから数十分経った後くらいだ、エリス達が揃って馬橇の中で森への強行策の為準備を整えていた時だ


「これでよし…」


「ん?、メグ 何してんだ?」


「見て分かりませんか?、これから毎夜 ここに一人見張りを立てるなら、その見張りの方が不自由にないように環境を整えているのです」


そう語りながらメグさんは馬橇の内部のその一角にスペースを作り環境を整えていたのだ


熱波を発生させる魔装を配置してその目の前に安楽椅子と毛布、そして脇には数冊の雑誌が置かれており…


「随分優雅見張りになりそうだな…」


「ナリア様が帰って来たらまたここに暖房陣を描いて頂かないと、あれは雪国では必需魔術でございますね」


「そこは同意する、しかし、ラグナ達まだ帰ってこないのか?すぐ帰るって言ってたけど」


メグさんが用意したスペースを三人で見ていると、ふと 外から雪を踏みつける足音が聞こえてくるのだ、ずしずしと…どうやらラグナが帰って来たようだ


「ああ、噂をすればラグナが帰って来たみたいですね、出迎えましょうか」


そう エリスが馬橇の仕切りに向かった瞬間だ…


…何故気がつかなかったのだろうか、こちらに向かってくる足音の数が 一つであることに…


「エリス様…!、待ってください、足音が…」


「へ?…ッ!?」


刹那、メグさんに止められ 足を止めたエリス、されど仕切りは払い除けられた、エリスがやったんじゃない こちらに向かって来た人物が 仕切りを引きちぎるように払い除けたのだ


そんな乱雑な音に、嫌な予感をビンビンに感じながら 振り向けば…



「ッ!?貴方は…」


「マジかよ…」


「…………」


全員が戦闘態勢を取る、何せそこにいたのは



「神の敵は、ここか…?」


壁のような巨人、水色の髪の間から覗く銀の瞳は凄まじい敵意を放ってエリスを見据えている


そこにいたのは、闘神将ネレイド…即ち


敵襲だった

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