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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界の大盛りラーメン大将

作者: ネコねこ⑨

「いらっしゃいませー!」


 そこには、毎日行列が絶えないラーメン屋があった。

 


 太い食べごたえのある麺に、動物の骨から出汁をとったパンチのあるスープ。

 そして、なにより丼の上高くまで盛られた野菜と、大きな肉に目を奪われる。


 とても美味しくて、ボリューム満点だ。

 何より、このラーメンは安い。

 

 儲けは置いておいて、皆に腹一杯食べて欲しい。

 その願いから、作られたラーメンであった。



 この店の店主は俺だ。今は、『ゴロー』と名乗っている。

 

 俺は死後、この異世界に転生したようだった。

 

 この国は裕福な国ではなかった。

 平民には厳しい生活をさせて、その上でふんぞり返る裕福層がいた。

 

「どこの世界もこんなものなのか。」


 俺は、この世界に絶望した。

 

 だが、周りを見渡すとどうだ。

 彼ら平民達の目には、絶望の色はなかった。

 

 ここから、のし上がってやる!

 そう言った類の、力強さを感じた。


 彼らは、この国の希望であった。


 俺には一体何が出来る。

 皆のために何か出来ることはないかと、悩んだ。


 そして行き着いた。

 安くて腹いっぱいになれる、ラーメン屋を開こうと。

 

 思いついたはいいが、そこからは大変だった。

 前世の記憶を頼りに、試行錯誤を重ねて完成した。


 それが、『ゴローラーメン』である。


「マスター!いつもごちそうさま!」


「まいどー。」


 ラーメンを食べ終わり店を出るお客さんは、満腹で幸せそうな顔をしている。


 その顔を見るたびに、俺の心は満たされた。



 店を閉めた後も、忙しい。

 明日の仕込みがあるからだ。


 頭にタオルを巻いて、汗を垂らしながら寸胴の中のスープを混ぜる。

 これが、なかなか大変な作業で、手には豆がいくつも出来ていた。


 これもみんなのためだ。

 そう思うといくらでも頑張れた。



 時計の針が頂点に達するころ、仕込みを終えた。


 さて、俺は頭に巻いたタオルを取る。

 今日はもう1つ仕事が残っていた。


「さて、行くか。」


 そう言うと、懐から仮面を取りだし顔に付ける。


 行き先は汚職の現況、裕福層のある男の首を取りに行く。


 屋敷の前に着いたが、何て大きさだ。

 これも、皆の苦しみの上に成り立っていると思うと、怒りが込み上げてくる。

 

「やはり、こいつだけは始末しなくては。」


 あらためて、決意を固くした。



「命だけは助けてくれ〜。」


 あっけないもので、俺はすぐに奴のもとへとたどり着いた。

 今、首もとに刃を突きつけている。


「金か?金ならいくらでも用意してやるど。だから、首のそれをどけてくれんか。」


 ゲスが。

 刃に力が入る。

 奴の首から、少し血が流れた。


「わしには、家族がいる。わしが死んだら、家族が路頭に迷う。」


 そんなことは、どうでもいい。

 だが、心で迷いが生じた。


 その一瞬の隙に、護衛達に背後を取られた。


 俺は数人に押さえつけられた。


「この賊の面を取れ。」


 仮面を取られた。

 顔を見られる。


「お前はマスターじゃないか。まさか、あんただったとわな。驚きだ。本来ならば重罪だが、若い頃に食べたラーメンは美味かったな。そうだ、雇ってやろう。」


 俺は今まで何をしてきたか分からなくなった。

 

 平民の力になればと作ってきた『ゴローラーメン』が、この国を苦しめる豚を作り出してしまっていたとわ。


「お前達もまた、美味いラーメンを食べたいだろ?」


 豚は護衛達に問いかける。


「断る。」



 俺は暗い牢屋に入れられた。

 何日たっただろうか。

 空腹で力が入らない。

 

 こんな時こそ、ラーメンを食べたい。





好評だったら、続編あるかも?

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