ようやく侍女は鍵探しの旅に出る?
しばらくの間、ユキナ視点でお送りします。
「そっかぁ、せっかくゆっくり過ごせそうだったのにぃ・・・残念だねぇ」
ロズダさんに甘えてフカフカ感を味わった後、モルモニさんの暮らす建物を訪れた私たちにモルモニさんは残念そうに眉を下げてそう口にする。
「そんなに悲しまなくても、私たちは心で繋がってるから心配いらないよっ!」
「別にお姉ちゃんのことを言ったわけじゃないよぉ、あたしはユキナちゃんのことを言ったのぉ」
メルティさんの言葉に素っ気なく返したモルモニさんは、私に視線を向けると手招きする。
「? どうかしたんですっ――ひゃっ!?」
誘われるままモルモニさんが寝そべるベッドに近づくと、唐突に腕が伸びてきてモルモニさんに抱き寄せられた。
「モルモニ?何をしてるのですか?今すぐユキナさんを離しなさいっ」
「そうだそうだー!私だってそこまで抱き着けてないのにー、そこ代わって!それが駄目なら交ぜてー!」
ロズダさんは静かな口調でメルティさんは大きな声で抗議する中、モルモニさんは焦らず騒がずゆったりとした様子で私の頬に口付けした・・・って、ふぇっ!?
「もももっ、モルモニさん!?ききっ、急に何をぉ・・・!?」
「んんー?ユキナちゃんが可愛くてついねぇ、それに私もユキナちゃんのお嫁さん・・・どっちかというとお婿さんかなぁ?に立候補しようかなってぇ、けどやっぱり双子なんだねぇ。好きな人って重なるんだぁ、びっくりだよぉ」
私の問い掛けにそう返したモルモニさんは静かにこちらへと顔を近づけ、身動きの取れない私の唇へと自身の唇を押し当て・・・る前にそこはロズダさんが阻んで、私をモルモニさんから引き剥がした。
「モルモニ・・・?」
「なるほど・・・私もユキナちゃんに口付けをっ―――むぎゅっ・・・!?」
何処か含みのある笑みを浮かべるロズダさんがそう口にすると同時に、隣に立っていたメルティさんが何か納得したように頷きながらこっちを見ていたけどロズダさんに顔を鷲掴みにされていた。
「だってぇ、こんなに心を揺さぶられたのは初めてなんだもん。ユキナちゃんを魔女の間で共同財産にしないぃ?」
「さんせーい!ユキナちゃんみたいな可愛い娘を、ロズダだけが独り占めするなんてズルい!それにユキナちゃんは純粋な人間種なんだから、魔女同士ではできない重婚と愛の結晶を作れるんだよー!」
たしか魔女同士だとお腹に愛の結晶を宿す方は、相手の魔力を覚えて他の魔女とは愛の結晶を作れない。
けど私みたいな普通の人間は魔力を覚えることがないから、複数の魔女と愛の結晶を作れるらしい。
「えっと、私も皆さんのことは好きですけど・・・やっぱりそういうのはロズダさんと」
「大丈夫っ!これからいっぱい仲良くなって、必ず愛し合ってみせるからさっ!」
「あたしは動けないから皆みたいに積極的にできないけどぉ、ユキナちゃんが会いに来てくれると嬉しいなぁ」
私の言葉を聞いてもメルティさんとモルモニさんは諦める素振りを見せず、むしろ積極的に私と関わっていこうという意思を感じる。
「あの二人は言いだすと聞きませんから、これからはもっと私がユキナさんの側にいますね?」
そう口にして私を抱き寄せたロズダさんは、私のオデコに口付けをして柔和に微笑んだ。
「あぅ・・・は、はい。お手柔らかに、お願いします」
微笑を浮かべるロズダさんを直視できずに恥ずかしさで顔を背けながら呟くと、ロズダさんはさらに強く抱き締めてくれる。
「むむぅっ・・・!」
「道のりは長そうだけどぉ、案外押し倒せればぁ・・・ふふっ」
唸るメルティを尻目に、モルモニは何かを画策するように呟きながら小さく笑いを漏らしていた。
ロズダさんの温もりと匂いを感じていたけど、モルモニさんに会いに来た目的を達したということで建物を後にしようとしたが・・・モルモニさんが私の服を掴んで離してくれなかったので、この日はモルモニさんの家で泊まらせてもらうこととなった。
「んっ・・・んん、ぅっ・・・?」
泊まることになった翌日の朝、私が目を覚ますとちょっとした違和感を覚えた。
「少し、膨らんだ・・・?うぅん、それより・・・匂いが、ちがっ――ぅっ!?」
目の前で柔らかそうに上下する膨らみに顔をうずめた私は、いつも感じる感触と匂いではないことに首を傾げながら顔を上げて驚きの声を漏らした。
「んぅ、うぅー・・・?あぁー、おはよぅ。ユキナちゃん」
寝惚け眼をこちらに向けて薄く微笑むのはロズダさん、ではなくモルモニさんだった・・・な、なんで!?昨日はたしかにロズダさんと一緒に寝たはずなのにっ!?
「も、もしかして夜にお手洗い行った時に間違えちゃった?すすっ、すみません!すぐロズダさんの元に戻りますねっ・・・?」
モルモニさんの腰に回していた腕を離してベッドから抜け出そうとしたが、今度はモルモニさんが私の腰に腕を回して抱き寄せる。
「大丈夫だよぉ、むしろ間違えてもらわないと困ってたよぉ」
「それってどういう・・・うひゃっ!?」
モルモニさんに疑問の声を漏らしたと同時にモルモニさんが大きく動き、気付けばモルモニさんが私にのしかかっているような体勢になっていた。
「え、えぇっ!?モルモニさっ・・・!あのっ、どいてくだっ・・・ひぅっ・・・!」
どうにかして抜け出そうとしても体重をかけられているために身動きが取りづらく、モルモニさんに声をかけたと同時に首筋を舐められて変な声が口から漏れる。
「んふぅ・・・ユキナちゃんは可愛いなぁ、このまま食べちゃうねぇ?」
「食べる・・・!?ひゃ、んんっ・・・くすぐった、ひくっ・・・!」
モルモニさんの言葉に驚いていると再び首筋を舐められて甘噛みされる、食べるってそっちの意味ですか!?抵抗しようにも手首を押さえられていて突き放すこともできない、そう思っているとおもむろに顔をこちらに近づけて・・・?
「だ、ダメですよ!キスは、ロズダさんとだけ・・・!」
「大丈夫ぅ、すぐにロズダのことを忘れさせてあげるからぁ・・・♡」
私が顔を背けながらそう訴えるもモルモニさんには聞き入れてもらえず、背けた顔もモルモニさんが操る青白い手によって戻される。
「それじゃぁ、いただきまー・・・すっ、ぐぇ」
せめてもの抵抗で目と口を固く閉じた私の耳に聞こえてきたのは、キスをした時の甘い音ではなくモルモニさんの呻き声だった。
「まったく油断も隙も無い・・・そういう所は姉のメルティに似ていますね、っと」
「うわぁー」
横から顔を鷲掴みにされていたモルモニさんはロズダさんの手によってベッドの端に追いやられ、重みがなくなって解放された私はロズダさんに抱きかかえられることでベッドから出ることができた。
「無事ですか、ユキナさん?何かされてはいませんか、ってこれは・・・」
ロズダさんは抱きかかえる私の様子を確認していたが、ふと緩んだ服の首元と首筋に視線を向けてスッと目を細める。
「ろ、ロズダさん・・・私は大丈夫ですから、そのっ・・・モルモニさんをあまり、責めないであげてください」
私の言葉にニッコリと笑みを浮かべたロズダさんにホッと胸を撫で下ろしていると、おもむろに部屋の外に出ると抱きかかえていた私を下ろして優しく頭を撫でてくれる。
「少しモルモニと話をしますから、ユキナさんはここで待っていてください。すぐに終わりますから」
そう口にしてから唇を私の唇に軽く押し当ててキスをしたロズダさんは、柔らかい笑みを浮かべてから部屋の中に戻っていった。
「っ・・・えへへぇ・・・♡」
ロズダさんにキスしてもらった私は口元が緩むのが抑えられず、ロズダさんが部屋から出てくるまで頬に手を当てて身を捩っていた。




