別に魔女を引き取ってくれるなら大歓迎だけど?
「―――ぷはぁっ・・・んん~っ、このくらいでいいかな?」
身体を起こした私はベトベトになった口元を拭うと、陽が傾いてきている窓の外へと視線を向けて小さな呟きを漏らす。
「んへへ~♡そふぃ・・・もっとぉ♡」
その呟きに反応するようにぐったりとしながらも恍惚とした顔で涎でべちゃべちゃになった口元を綻ばせて微笑むサナエは、催促するように私の首元に腕を回して唇を尖らせる。
「だーめ、これは私の気持ちを教えるためのものなんだから。私の愛情が伝わったのなら今回はここまでだよ」
「やーっ・・・もっともっと、ソフィの愛が欲しいよぉ」
はー、可愛すぎかよぉっ!けど手は出さないからね、あんまりやりすぎるとサナエが動けなくなっちゃうし・・・それに―――
「覗き見されながらでは、する気が起きないなぁ・・・」
「ふぇ?・・・っ!?」
そう口にしながら扉の方へと視線を向けた私につられて同じ方向を見たサナエは、無表情で扉の隙間から視線を向けるユキナの姿に気付いて驚いた表情を浮かべる。
「ソフィ様とサナエ様の仲ですから口付けぐらい普通なんでしょうけど、ずるいです・・・」
ゆっくりと扉を開いたユキナはジッと私たちの姿を見つめながらそう口にした、どこか暗いオーラを放つユキナは可愛らしく頬を膨らませる・・・オーラと行動が合ってない気がするけど。
「ずるいも何も・・・私とソフィは心と身体も繋がった仲なんだから、ユキナがどう思おうが関係ないの。ねぇ~、ソフィ?」
サナエの言う通りだけど、ユキナはムッとした表情のまま機嫌が直った様子はない・・・というか。
「ロズダはどうしたの?確かアイツのことを聞きに行ってたんだよね?」
私の疑問にハッとした表情を浮かべたユキナは、先程とは打って変わって慌てた様子で口を開く。
「そっ、そうでした!サナエ様のせいで話が逸れちゃいましたっ「は・・・?」――大変なんですっ、ロズダさんが・・・ロズダさんがっ!」
「? ロズダがどうかしたの?」
不機嫌そうに眉を顰めるサナエを宥めるために頬を優しく撫でながらユキナに問い掛けると、切羽詰まったような様子でユキナは続きを口にする。
「ロズダさんが、一緒に旅できなくなっちゃうかもしれませんっ!!」
「えっ・・・別に良くない?」
ユキナの言葉を聞いた私は、率直な意見をすぐに口から吐き出した。
「良くありませんよっ!ロズダさんがいないと私、わたしぃ・・・!」
私の言葉に顔を歪めたユキナは瞳を潤ませながら心情を漏らす、そういえばユキナはロズダと最近仲良さげだったっけ?
・・・仲良さげっていうだけで済ませていいのか疑問だけど。
「とりあえず何でそんな話になったの?貴女たちはあの魔女の話を聞きに行っただけなんでしょ?」
サナエの疑問に私も頷いて同意する、ユキナはそれに対して小さく頷いてから口を開く。
「最初はロズダさんの小さい頃の姿を映した絵から始まったんですけど、その姿がとっても可愛くてついつい貰っちゃったんですけど・・・そのことにロズダさんが慌てていてとっても可愛くてですね、ついからかっちゃったんです。でもすぐに私の耳元で『夜は覚悟してくださいね、ユキナさん?』って言われてしまって、もう夜が楽しみで・・・って話が逸れちゃいましたね。少しずつ成長するロズダさんの絵がどれも魅力的でついつい欲しいと交渉してしまって、結構な時間がかかってしまったんですけど・・・でも話の終わりにロズダさんがロード☆ロードさんの元から許可を貰わずに村を出たという話題になって、そのことでロズダさんは小さく縮こまってしまって・・・私が声をかける時にはロズダさんがこの村に残るっていう話になっちゃってたんですっ!」
ユキナの話を聞き終えた私は素直な感想を口から漏らす。
「自業自得じゃない?」
「そんなことないですっ!ロズダさんだって何か事情があったのかもしれませんし、ロズダさんの側にいられないのは寂しいですっ!」
私の言葉にすぐさま反論するユキナ、いやでもロズダだしなぁ・・・そんな深い事情は無いと思う。
「そんなにあの魔女が心配なら、ユキナが側にいればいいんじゃないの?」
私の伸ばした手に頬擦りしながら気持ち良さそうな声を漏らしていたサナエの突然の提案に、ユキナは驚いた表情を浮かべるもすぐに何かを考えるような仕草をする。
「好きな人が離れていってしまいそうなら、無理やりにでも側に縛り付けちゃえばいいのに・・・ソフィがしてくれたみたいにね♡」
トロンとした瞳をこちらに向けるサナエの意見に同意するように私も頷いてから口を開く。
「たしかにそうだね、ロズダを連れて行くのが難しいなら・・・ユキナがロズダを手中におさめちゃえばいいんだよ、そうすればロード☆ロードもロズダの外出を認めてくれるかもよ?」
「そう、なんでしょうか・・・?けどやってみるのもいいかもしれませんね、わかりましたっ!今日の夜、私少し頑張ってみますっ!」
気合を入れるように拳を握り締めたユキナは、お辞儀をしてから勢いよく部屋を後にした。
「ユキナ、ずいぶんあの魔女のことが気に入ってたんだね」
「二人で過ごすことが多かったからかな、ロズダの意識が私以外に向くのならそれでいいんだけど」
っていうか、ただの魔女を家出もどきぐらいで村に縛り付けようとするかな?ロズダにも何か秘密があるのかも、そこまで気にはならないけどね!




