当初の目的を思い出した私たちはようやく新たな地へ
「・・・えっと、ソフィ様?」
「んぇ・・・?」
瞳をトロンとさせながら緩んだ口元から涎を垂らすサナエの姿に私がゾクゾクしていると、茂みの向こうから控えめな声色で話しかけられた・・・あれ、何か忘れてるような?
「あ・・・」
声がした方へと顔を向けると恐る恐るといった様子のルルイの姿があった、そういえばルルイとロイに別れの挨拶をしに来たんだった・・・!
「サナエ様は、大丈夫なのですか・・・?」
「うん、ちょっと疲れちゃったみたいだけど平気だよ。ルルイが出してた甘い匂いを嗅いじゃったみたいなんだ、それよりそっちは済んだの?」
サナエを心配そうに見つめていたルルイに対して、私はサナエを抱きかかえて顔を見せないようにしてからそう尋ねた・・・するとルルイは目に見えて狼狽し始めた。
「っ!!・・・ももっ、もしかして・・・見てしまったん、ですかっ・・・!?」
「見てしまったって、ロイがルルイの胸にっ「いっ、言わないでください!!」――わわっ」
私が言い切る前に大声を上げて遮ったルルイは頬に手を当てて恥ずかしそうに身を捩った、そんなルルイの声に反応したらしいサナエが私の腕の中で身動ぎして顔を上げた。
「んん〜っ?ソフィ・・・?どうかしたのぉ?」
目を擦りながら欠伸を噛み殺してそう尋ねてきたサナエ、けど口の周りが涎まみれだから変な気分になっちゃいそう・・・とりあえず軽くキスをしてから返事をすることにしょう。
「ちゅっ・・・なんでもないよ、サナエ。ただルルイが恥ずかしくて声を上げちゃっただけだから、ねっ?」
「そう、なのですが・・・改めてそう言われると、だいたい元はといえばソフィ様が・・・」
私は悪くないもんね、こんな人目につきそうなところで盛ってたルルイとロイが悪いっ!
「――ってそうだ、二人のお盛んな現場を見てすっかり忘れてたけど・・・私たち、そろそろ次の国に行こうと思うんだ。だから別れの挨拶に来たんだけど」
そこで言葉を区切った私はルルイの顔をジッと見ると、ルルイはさっきまでの自身の行為を思い出したのか顔を真っ赤に染めた。
「うぅっ・・・わっ、忘れてください!―――こほんっ・・・それで、もうこの国を去るのですか?もっとゆっくりしていってくださってもいいんですよ?」
咳払いをして仕切り直したルルイにそう言われた私とサナエは数秒見つめ合い、同じ意見なようなのでこくりと頷き合ってルルイへと視線を戻した。
「ルルイとロイの邪魔はできないからね、またこうやって鉢合わせちゃったらわるいもん」
私がそう言うとサナエは頷いて同意を示し、ルルイはさっき以上に顔を耳まで赤くした・・・心なしか涙目になってるような?
「もう・・・お許しをぉ・・・」
頬に手を当てて困ったように眉を下げたルルイは弱々しい声でそう口にした、そんなに恥ずかしかったんだ・・・じゃあ屋内ですればよかったのでは?
「私の場合は突然甘い香りを出してしまうといいますか・・・いえっ、それもロイと二人っきりの時が大半なのですが・・・」
「それって単純に、ルルイがロイとシたいから無意識に出しちゃってるだけだと思う」
ルルイの言葉にサナエは私が思っていることをそのまま伝えた、やっぱりサナエもそう思う?
「えぇっ・・・!?そ、そんな・・・私は別にっ」
否定を口にするルルイだけど・・・それ以外に説明しようがないしね、ロイといる時以外も出してたらまだ言い訳できたけど。
「ルルイって意外と、ムッツリ?」
「そっ、そんな・・・!わたっ、私はぁ・・・」
本人も薄々感じていたのか、私の言葉に対しての否定の言葉が出ずにモゴモゴと言い淀んだ。
「? 何の話ッスか?」
うろたえるルルイの後方からそんな声が聞こえたと思ったら、ルルイの肩越しにロイが顔を覗かせた。
「ろ、ロイ!?えぇっと、何の話かって聞かれると困るんだけど・・・」
「ルルイがロイとシたいがために甘い匂いを出してるって話かな?」
ロイの疑問に答えを返せないルルイに代わって私がそう口にすると、ルルイは慌てた様子でロイの近くへと近づいた。
「違うの、ロイ!別に意図して出しているとかじゃなくて、無意識に出ちゃってるというか・・・べっ、別にロイといつもそういうことがシたいとかじゃなくてね?ロイといると胸がドキドキして抑えられなくなっちゃうというか、とにかく違うのっ!」
ルルイの捲し立てるような言葉の数にポカンとしていたロイだったが、言い終えて肩で息するルルイに向かって思ったことを口にした。
「ルルイって、エッチだったんッスね!」
笑顔でそう言ったロイにルルイはピシッと動きを止め、私とサナエは「うわぁ・・・」とロイの素直な物言いにドン引きした。
「―――ふ、ふふふふっ・・・」
「? ルルイ?どうかしたんッスか――むぐっ!?」
顔を俯かせてゆらりと幽鬼のような動きをしていたルルイはロイの呼びかけを受けた瞬間、ロイの口を木の根っこを巻き付かせて塞ぐと足も縛って腕を引っ張った。
「ロイ、少しオハナシがあるから私の家に行こうか?とびっきり甘いモノをごちそうしてあげる」
「むぐぐっぐぐ?むっむーっむ!」
口と足を縛られて自由に動けないロイだが、ルルイの言葉に嬉しそうに自由な腕を上げて喜んでいた・・・いや、甘いモノってもしかしなくてもドライアドの蜜・・・
「それではソフィ様、サナエ様。私とロイはお見送りできませんが、どうかお気をつけて・・・帝国の動きも活発になっているというお話ですから」
「え、あっうん。わかったよ、ルルイもその・・・ほどほどに、ね?」
私の言葉に意味深な笑みを浮かべたルルイは、ロイを引き摺りながら森の中へと消えていった・・・次に会う時にロイが無事だと、いいね。




