魔女の意見は基本無視する方向で
気付けば一年という月日が経ってしまいましたが、ようやく続きを書き溜めることができたので少しずつですが進めていければと思います。
「やはり考え直しませんか?あの国に行っても何もありませんよ?えぇ、本当に。行くだけ無意味です、ですから・・・あの、話を聞いてくれていますか?」
ロズダは次の行き先を告げてからずっとあの調子で行くのを渋っている、ってかうるさいな!
「うるさい」
「――くふぅ・・・!あぁ、そっ・・・そうでは、なくぅ・・・」
悶えるのか抗議するのかどっちかにしろよ、あと行くことは決まってるんだから観念しろ。
「そもそも貴様の故郷だろう、なぜそこまで嫌がる?故郷は大事にするものではないのか?」
「そうとは限らないよ、ソフィ?故郷に帰りたくないとか、消し去りたいとか思う人だっているよ?」
「そこまでは思ってないのですが・・・」
なんか実感がこもった言葉だなぁ・・・でもサナエの故郷ってラーナリア国でしょ?何か嫌な事でもあったのかな、だとしたらその原因を排除してあげないとね!
「私はサナエの為だったら一国潰す所存だよ!だから嫌な事があったらいつでも言ってね?」
「ソフィ・・・うん、ありがとうっ!」
困惑した表情を一瞬浮かべたサナエだったけど、すぐに笑顔を咲かせて私の胸に飛び込んできた。
「ロズダさんの故郷・・・!私、興味があります!」
「ゆ、ユキナさん・・・あぁ~、うぅ~・・・」
ロズダは目を輝かせたユキナの姿に困惑しながら、観念したように肩を落として項垂れた。
「・・・そういえば、ローレンワイス国が私の故郷だと・・・どうやって知ったのですか?」
項垂れながらそう口にしたロズダに、ユキナは首を傾げながら返事をした。
「獣人の占い師さんが教えてくれたんですよ、ローレンワイス国は魔女の出身地だって!」
「アメスリィーーーーーっ!!!」
項垂れていた状態からいきなり顔を上げてそう叫んだロズダ、ユキナは突然のことに驚いてバランスを崩して転びそうになっていた。
「っというか、うるさいぞ」
「あぁんっ♡」
大声を上げたロズダの後頭部を引っ叩くと、嬌声をあげて身体をよろめかせた・・・しまった、つい手をあげてしまった!
「あぁ・・・アナタ自ら手を出してくださるなんて、んんっ!・・・んはぁ」
発情し始めたロズダに冷めた視線を向けていると、側にいたユキナが頬を膨らませてロズダのお尻を抓った。
「んひぃっ!・・・ゆ、ユキナさん?」
突然の痛みに身体を仰け反らせたロズダは余韻を感じるように身を震わせ、声をかけられたユキナはムスッとしてそっぽを向いた。
「むぅ、なんでもないです・・・・・・ロズダさんのバカ、ソフィ様が素晴らしい方だってことは分かってますけど・・・私のことも構ってくださいよっ」
「えぇっ、それは・・・いえでも、うぅ~ん・・・」
機嫌を損ねたユキナの姿に何やら思案をしながらオロオロするロズダは、こちらに助けを求めるような視線を向けてきたが私はあえて無視することにした・・・原因はお前だから、自分でどうにかしろ。
「ロズダはユキナに任せて、私たちはリーファス国とバサル・ボウ国の守護獣と巫女に別れの挨拶をしに行こうか」
「うん、えへへ・・・ソフィ~♪」
私の提案に頷いて答えてくれたサナエは、私の腕に抱き着いて頬を緩ませていた・・・サナエが可愛すぎてヤバイ!
「あぁっ・・・!お待ちくださいっ、できればユキナさんを宥めてからに―――」
「むっ・・・それって私が面倒くさいって言いたいんですか?」
「なぜそうなるのですか!?私にとってユキナさんは大事な方ですよ、面倒くさいなど思うはずがありません」
「ふぇっ・・・!?そっ、そんなこと言われたって許してあげませんから!」
「あら、残念。では喧嘩中ということで部屋は別に取るのですね?私、とっても残念です」
「え・・・うぅぅっ、それとこれとは別でぇ・・・部屋は一緒がいい、ですぅ」
「ふふっ、ではお部屋で二人っきりで・・・オハナシしましょうか?じっくり、ね?」
「っ・・・は、はいぃ」
後ろでユキナとロズダがそんなやり取りをしていたが、私はサナエの可愛さに見惚れていて聞こえていなかった。
私がケルベロスとオルトロスの匂いを辿っていくと、国境付近に到着したと同時に二匹の姿を捉えた。
『むっ?ソフィ殿とサナエ殿ではないか、今日はどうしたのだ?ロイはルルイに連れられて森の方へと向かったぞ』
ケルベロスはそう言ってルルイたちが向かったであろう方向に三つある内の一つの頭を向けた、それよりなんでお前はオルトロスを下敷きにしてるの?
『・・・ん?あぁ、この状況か。少し激しく動いた後なのでな、休憩しているだけだから気にしないでくれ』
私の視線で考えていることに気付いたのか、疑問の答えを口にした。
激しい運動をした後・・・喧嘩をした後に仲直りの方法で交わったと言っていたことがあったな、つまり・・・
『ぐぅー、ぐごっ・・・姉上、もう少し加減をぉ・・・ぐごー』
呑気に寝言を呟くオルトロスにケルベロスは体重をさらにかけて圧をかけた。
それにより苦しげな声を漏らすオルトロスを無視して、先程まで考えていた思考を打ち切って私は当初の目的を果たすために口を開いた。
「仲が良いのなら何よりだ、それより私たちはそろそろ次の国に向かうことにする。今回はそのことを伝えに来た」
私がそう言うとケルベロスはなるほどといった風に頷いてから口を開いた。
『ならばロイたちにもしっかり伝えておいてくれ、私はこの愚妹を見ていないといけないのでなっ』
ケルベロスはそう言ってオルトロスの頭をペシペシ叩いて口元を緩ませた。
「そうか、わかった。じゃあサナエ、行こっか?」
「すぅ、はぁっ・・・んぇ?んー。わかったよ、ソフィ♪んんーっ、えへへぇ♪」
私は特にそのことに追求することなく、ロイとルルイが向かったという方向へサナエを連れて歩いて向かった。
サナエは私がケルベロスと話をしている時から匂いを嗅いでいたけど、言ってくれればいつでも嗅いでいいんだよ?




