夕刻、私の元に黒い訪問者が来る・・・あ、ちなみにいつものことです
昼食を食べ終えて、彼女から昨日あったことを聞きながら彼女を眺める。
やっぱり可愛いよなぁ・・・この容姿だとやっぱり求婚とかされたりするのかな・・・むむむっ・・・
「それで・・・ってあれ?どうしたの?すごく険しい顔をしてるけど・・・」
・・・はっ!つい考え事に夢中になって彼女の話を聞いていなかった・・・!私一生の不覚っ!しかも心配までさせちゃうなんて・・・!
――なんでもない・・・こともないけど、サナエは求婚されたこととか・・・ある、の?
私が少し・・・いや、かなり不安に思いながら聞くと彼女は目を見開いた後・・・私の体に乗せていた手に力がこもった。
「あるけど・・・なんでそんなに不安そうに聞くの?私がソフィ以外と結婚を考えると思ったの?そんなことは世界が終わったとしても有り得ないことだし、貴女以外なんて虫けらの様なモノなんだからなびくことなんてないのにどうして不安に思うの?それはもしかして私を信用してないってことなの?そんなことないよね、だってソフィには私しかいないし他の誰かなんて必要無いものね?だから不安に思うことなんてないの、ソフィには私が・・・私には貴女さえいればそれだけでいいんだよ?むしろ他のモノなんて要らないと思うんだけど・・・でもまだ時機ではないから、ね?だからソフィは私とずっとずっとずっとずっとずっと一緒に居てくれるだけでいいんだよ」
たしかに彼女の言う通りかも・・・不安に思うってことは彼女を信頼しきれてなかったみたいじゃないか!そんなことない!私には彼女しかいないんだから信用してないなんてことは無い!
――私もサナエが居ればそれだけでいいよ、不安に思う必要はなかったんだね・・・ごめんね?
そう言って彼女の頬を舐めるとくすぐったそうに目を細めた、嫌がる素振りはなくむしろもっと舐めてと言わんばかりに身体を私の舌に押し当ててきた。
なので目いっぱい舐めることにしたんだけど、彼女を舐めると甘い感じがしてとても幸せな気持ちになるんだよね・・・うまうまっ♪
気が済むまで彼女を舐め回した結果、彼女は全身私の唾液でベトベトになってしまった。
でも彼女は何故か清々しい顔をして恍惚な表情を浮かべて頬に手を当てていた、こんな姿でも絵になるなぁ。
そんな姿を・・・私の唾液まみれになった姿を見て・・・私は何とも言えない幸福感と征服感を味わっていた。
何だろうねこの感じ・・・もっと私のモノで染めたいというか・・・独占欲がこう・・・沸々と湧いてくるよねぇ。
などと黒い感情が湧き立ち、心を支配しかけた時―――
「あっ!もうそろそろ夕食の準備しないと・・・ついでに服も着替えてくるね、そうしないと周りが煩いから」
ご飯っ!わーい!サナエの料理は美味しいから楽しみだなぁ!
黒い感情はご飯の誘惑には勝てないのでした・・・というわけで彼女は食事の準備と着替えの為一旦下におりていった、ってこの気配は・・・あいつか。
――また来たのか・・・っ
私は訪問者の方へ尻尾を振るう。
ズガァンッ!
尻尾が振るわれた場所は抉れ、その周りにはヒビが入って軋んでいた。
しかし訪問者には当たらなかったらしく反対側の位置に降り立っていた。
パッと見た感じは黒い烏、だがその目は一つしかなく、口はクチバシではなく顔の端まで開いた人の口のようになっている・・・いつ見ても気持ち悪いなぁ・・・
『相変わらず冷たいですね?私はこんなにこーーーっんなに愛しているというのに・・・』
――貴様の愛は実験や研究対象としての愛だろう
『いいえいいえ、これは純粋で穢れのない恋情ですとも・・・アナタに四肢をもがれ、その雄大で偉大なお姿を拝見してから・・・この心はアナタを思い、恋焦がれているんですもの』
単眼の怪鳥はこちらを凝視しながらそんなことを言ってくる・・・そんな世迷言を。
――私は貴様になど興味はない、私に必要なのはサナエだけだ
『あぁ、あの小娘ですか・・・あんな数十年しか生きられぬ者にどうしてそこまで入れ込むのか、私なら永遠に一緒に居てあげられるというのに・・・』
――貴様となど誰が一緒に居るものか
『・・・こうなればあの小娘を殺して・・・っ!』
ソレが何かを言い終える前に、一線の閃光が瞬いた。
光は天まで届き、雲を穿つ。
私の口から放たれたその光線はソレの顔を捉え、消し去った。
残った胴体は熱を発して体液は沸騰し、身体という器を溶かしていく。
完全に器が融け、赤い水溜まりと化したソレはまだ熱を発し、蒸発していった。
それを横目で確認してから私は一言ポツリと言の葉を漏らした。
――サナエに危害を加えようとする者は誰であろうと許しはしない・・・それがたとえ、神であったとしても。
私の言葉は誰に聞かれるでもなく、虚空へと消えていった。
その後、食事の準備と着替えを終えた彼女が戻ってきたと同時に抱き寄せて頬擦りしたのは仕方ないと思う。
だって、サナエ成分が不足してきたんだもの・・・しょうがないよね?彼女も満更でもない顔してたから大丈夫!夕食は言うまでもなく美味しかったですっ!