自然の国と獣の国ではいざこざが・・・?
ロズダさんの手を握りながら隣を歩く私は、周りを見渡しつつロズダさんの歩く速度に合わせて歩みを進めていました。
「一体こっちに何があるんでしょう・・・っ?ロズダさっ――」
返事が無いことに不思議に思いながら、隣に目を向けて口を開くと同時に口元に人差し指を押し当てられた。
「静かにっ・・・誰かいるようです、それに揉めているような会話をしていますね」
唇に押し当てられたロズダさんの指から体温を感じた私は、胸が高鳴るのを感じて頬を赤くしてしまった。
「もう少し近づいてみましょうか・・・ユキナさん?」
「――え!?あ、そうですね!い、行きましょうっ!」
慌てて声が大きくなった私に優しく注意を促したロズダさんに手を引かれるまま、声の聞こえる方向へと慎重に進んでいった。
進んだ先には少し開けた場所があり、そこには色々な種類の花が植えられていてその真ん中に花の髪飾りのような物を着けた緑の肌をした少女が佇んでいた。
「あれは・・・ドライアドですね、まだ幼い少女のようですが。先程の声は・・・」
「あの子しかいないみたいですね・・・っ?」
会話しているということは二人いると思っていたロズダさんと同じで私も首を傾げていると、少女が口を開いて腰を捻り始めたので警戒したロズダさんに抱き留められて木の影に移動した。
「どう・・・?私のお花畑を荒らすのをやめてくれる?」
「これはいわば戦争だぞっ!んっ・・・そんな甘いことなど言ってられるかっ・・・あふぅっ」
少女の言葉に反論したのは、少女に馬乗りにされているらしい獣の少女だった。
「まだそんな生意気なこと言うんだぁ、じゃあもっとあまーい蜜をあげるねっ♪」
「んくっ・・・い、いらないっ―――んむぅっ!」
耳をピンと立てた獣人の少女の反論にドライアドの少女は楽しげに口元を歪め、口の端から涎とは違う蜂蜜のようなものを溢れさせていたが、首を横に振る獣人の少女の口の中に無理矢理流し込み始めた。
「――ぷあぁっ♪それじゃあもっと楽しもうね?昔みたいに仲良く遊ぼっ♪」
「んはあぁぁっ・・・もぅっ、やらぁぁ」
涙目になった獣人の少女に、馬乗りになったドライアドの少女はとても楽しげに口角を上げていた。
「あれは、狼の獣人ですね。それに戦争・・・?バサル・ボウ国とリーファス国は友好関係を築いているはずですが・・・」
私の顔を包む柔らかい感触を味わっていた為、ロズダさんの言葉が耳をすりぬけていっていた。
「柔らか・・・ふかふかぁ・・・」
私がそう声を漏らしながら顔をさらに強く押し当てて堪能していると、ロズダさんの視線を感じたけど特に何も言われなかったので気付かなかったことにした。
「ふふっ・・・ともかく一度戻ってあの方たちに伝えた方が良さそうですね、幸い彼女たちはこちらに気付いてないようですし」
「んんっ~・・・んっ」
私は顔をうずめながらもロズダさんの意見に頷いて返して、名残惜しく感じながら身体を離してソフィ様とサナエ様がいる場所へとロズダさんと手を握り直して戻り始めた。
「そういえば、あのドライアドでしたっけ?の少女が口から溢れさせていたものって何ですか?」
「あれは媚薬の一種で本来は薄めて使うものなんですよ、原液で使えば普通の人間は壊れてしまうそうですが・・・あの少女は獣人ですから大丈夫でしょう、たぶん」
媚薬・・・ロズダさんに使えば、って何でロズダさんに使うことを考えているんですかっ!?わっ、私なんか変ですぅっ!
サナエの火照った身体を鎮めて獣状態に戻った私の背に脱力したサナエを寝かせてすぐに、どこかに行っていたユキナとロズダが戻ってきた。
――おかえり、どこに行ってたの?
「少々そこまで、それでたまたま聞いた話なのですが・・・どうやらバサル・ボウ国とリーファス国は今、仲違いをして戦争をしているようなんです」
戦争?その割にこの近くで血の匂いとかは嗅いでないけど、もっと国境を中心とした場所でやってるのかな?
――ならば、この国を離れてウィンディア国に戻るのも手だがな・・・さて、どうするか
「えっと、私はどうにかしてあげたいと思いましたっ!」
ユキナが片手を上げてそう主張したことに少なからず驚きながらも、その意思を尊重してあげようかと考えているとユキナとロズダが手を繋いでいることに気付いた。
――二人とも随分仲良くなったんだね、今まで二人っきりで何してたの?
私がそう尋ねるとユキナは耳まで赤く染めながら慌てた様子で目を泳がせ、ロズダは微笑みを浮かべて手を離そうとするユキナの手を強く握りながら口を開いた。
「そうですね・・・親睦を深める為に触れ合っただけなのですが、アハハッ」
「むうぅぅっ!ロズダさん、余計なことを言わなくていいですよぉっ!」
ロズダの肩をペシペシッと叩くユキナは無意識なのか、離そうとしていた手を握り直していた・・・本当に仲良くなったね、今までの宿屋でももしかして何かあったのかな?
――ともかくまずは情報を集めなければどうにもしようがない、明日起きたサナエに話してから色々考えようか
「それがいいでしょう、ではユキナさんもお休みになられては?なんなら膝を貸しましょうか?」
「・・・じゃあ、お言葉に甘えて」
私の近くに腰掛けたロズダに促されるまま膝に頭を乗せたユキナは、少しして穏やかな寝息を立て始めた。
「アハハッ・・・可愛い寝顔ですね、今から見ることはどうぞご内密に」
そう口にして口元に人差し指を当てたロズダは、寝息を漏らすユキナに口付けを交わしていた。
――別に構わんが、ユキナに鞍替えでもしたか?
こんな変態に目をつけられて可哀想に・・・そう思って見ていると、ロズダはキョトンとした表情をしていたがすぐに口を開いた。
「甘い物は別腹、というでしょう?つまりそういうことですよ、もちろんちゃんとアナタのことも愛していますよ?」
その愛情を全てユキナに向けてどうぞ、ユキナには悪いけど犠牲になって・・・必要な犠牲だから!
再び眠るユキナに視線を向けたロズダを一瞥してから、私はサナエの寝顔を眺めるのでした・・・やっぱりサナエは可愛いねっ!




